阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

中村哲医師の殺害と日本だからこそできる平和貢献の在り方

2019年12月06日 11時12分52秒 | 政治

 アフガニスタンで30年間にわたって人道支援を行ってきた日本人医師・中村哲さんが殺害された。私は米国の対テロ戦争についての現地調査や、アフガニスタン大統領選挙などに関わっていたこともあり、国会内でアフガニスタンについての連続勉強会を主催していたことがある。中村医師には何度かお話を伺ったが、テロとの最大の闘いは貧困の撲滅であると語る姿にとても共感した。未来に希望を持てない人々たちが現状への怒りをテロに託す連鎖を止める唯一の方法は未来への希望をつくることだと長年の思いが確信になった。

 中村さんは現地の人々に溶け込んだ活動を通して信頼関係を築いていた。米軍とは距離を置いているから武装勢力を怖いと思ったことはないと強調していた。米国の戦争に盲従することがいかに日本への信頼を失わせ、日本が行える平和貢献の可能性を喪失させるかと力説していた。また軍によるエスコートなども徹底して断っていた。私とは活動のレベルは違うが、これらの点は、現場での活動を通して心から共感することだった。私自身が襲撃を受けた経験、銃撃によって仲間を失った経験を経てもなお、武器を持たず信頼関係を築くことこそ最大の安全対策だと確信する。もちろん、綿密な準備や経験に根差している必要があり、本当に危険な状況になれば撤退する勇気も併せ持っていないと成り立たないことではある。

 2001年10月、中村さんは米国によるアフガニスタンでの対テロ戦争を自衛隊が後方支援するためのテロ対策特別措置法を審議する特別委員会で参考人として発言した。私は、当時、首藤信彦衆議院議員の政策秘書としてこの委員会に出席していた記憶があるが、紛争のリアリティーを知らず、降り注ぐ爆弾の下で生きる人々への想像力もない小泉政権に対し、米国に追従し、自衛隊派遣をすることが日本に対する信頼を失墜させるとの訴えには現場を知る人だからこその説得力を感じた。

 このような意見も取り入れ、また首藤信彦議員の提案もあり、当時の民主党はパキスタンのペシャワール、そしてアフガニスタンのカブールに事務所を作り、私はペシャワール事務所に派遣されることになった。現地では街頭募金で集めた約2400万円を、復興を支援する現地NGOに寄付することになった。鳩山由紀夫代表(当時)も参加するペシャワールでの会議を主催し、支援する団体を決めるためのセッションを準備するのが私の主な役割だった。70を超える現地NGOから寄せられた提案書を読み、プレゼンテーションを行ってもらう準備に奔走した。(この時滞在していたパールコンチネンタルホテルはその後爆弾テロによって破壊された)

 武力に頼らず平和に貢献する国家としての信頼を勝ち得ること、その結果として米国にはできない平和貢献をするのが日本の役割だ。それは現地にとっても、日本にとっても、米国にとっても遥かに意義があることだと思う。中村さんの遺志を引き継ぐ政治に変えたいと強く願う。