映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

2023年読んだ本

2023-12-31 20:17:27 | 
2023年読んだ本

1.現実脱出論 坂口恭平
2.ラストダンスは私に 岩谷時子物語 村岡恵理◎
3.フルライフ 石川美樹
4.才能を伸ばすシンプルな本 ダニエルコイル
5.自閉スペクトラムの少女が出会う世界 サラ・ヘンドリックス
6.脳はこうして学ぶ スタニスラス・ドゥアンヌ
7.60歳からはやりたい放題 和田秀樹◎
8.70歳の正解 和田秀樹◎
9.天才はディープ・プラクティスと1万時間の法則でつくられる ダニエルコイル
10.正義の味方が苦手です。 古市憲寿
(1月 10冊)

11.この部屋から東京タワーは永遠に見えない 麻布競馬場
12.世界史の構造的理解 長沼伸一郎◎
13.加賀乙彦自伝 加賀乙彦◎
14.ある若き死刑囚の生涯 加賀乙彦
15.一生安心金持ち大家さん 高橋誠一
16.お金持ち大家さんの成功法則 高橋誠一
17.左翼の害悪 森口朗
18.東京水辺散歩 陣内秀信◎
19.東京凹凸散歩 大竹昭子◎
20.マルクスエンゲルス小伝 大内兵衛◎
21.永遠の都3 小暗い森 加賀乙彦◎
22.あの日の新宿  佐藤洋一◎◎
23.ある晴れた日に 加藤周一
24.永遠の都4 涙の谷 加賀乙彦◎
25.ザザビーズ 石坂泰明
26.桜庭一樹のシネマ桜吹雪 桜庭一樹
27.泥沼スクリーン 春日太一
28.雲の都 幸福の森 加賀乙彦◎
(2月 18冊)
29.数学者たちの楽園 サイモンシン
30.誰も知らなかった50歳からのご自宅戦略 沖有人
31.マンションは学区で選びなさい 沖有人
32.独身こそ自宅マンションを買いなさい 沖有人
33.イノベーションのDNA クリスクリステンセン◎
34.永遠の都5 加賀乙彦
35.2020年以降も勝ち続けるマンションバイブル 沖有人
36.ジョブ理論 クリスクリステンセン
37.教育×破壊イノベーション クリスクリステンセン
38.メグレと若い女の死 ジョルジュ・シムノン
39.非才 マシューサイド
(3月 11冊)
40.直観を科学する マイヤース
41.科学は「ツキ」を証明できるか ベン・コーエン
42.億トレⅢ 林知之◎
43.凄腕ディーラーの戦い方(億を稼ぐトレーダーたち 2) 林知之
44.勝率9割の選択 のぶき◎
45.ギャンブルだけで世界6周 のぶき
46.街とその不確かな壁 村上春樹◎◎
47.超「超」勉強法 野口悠紀雄◎
48.戦争と平和
(4月 9冊)
49.わかっちゃいるけど、ギャンブル!
50.波の音が消えるまで 風浪編 沢木耕太郎◎◎
51.波の音が消えるまで 雷鳴編 沢木耕太郎◎◎
52.波の音が消えるまで 銀河編 沢木耕太郎◎◎
53.魅惑の魔都マカオでバカラ浸け 田村光昭◎◎
54.幸せなお金持ちになるための日経225 ついてる仙人
55.賭博常習者 園部晃三
56.実践的スペキュレーション ビクター・ニーダホッファ
57.神楽坂芸者が教える女の作法 夏栄
58.黄金の稲とヘッジファンド 波多野聖
59.ウォール街のイカロス バートンビッグス
60.書き出しで釣り上げろ レス・エジャートン◎
61.資産設計の黄金比率 ロナルドコルデス
62.カジノ 黒野十三
63.カジノゲーム 田島ムーズ
64.カジノゲームパーフェクトガイド
65.カジノゲームバイブル ピータースヴォボダ◎
66.カジノ教本 アンドリューゴールドスミス
67.素数の音楽 マーカスデュソートイ◎
68.レンブラントの身震い マーカスデュソートイ◎◎
69.51のデータが明かす日本経済の構造 宮本
70.いま映画をつくるということ
(5月 22冊)
71.ストラクチャーから書く小説再入門 KMワイランド◎◎
72.歴史の中の多様な「性」 三橋順子
73.東京六花街-芸者さんに教わる和のこころ
74.知の果てへの旅 マーカスデュソートイ
75.数学が見つける近道 マーカスデュソートイ◎
76.画文でわかるモダニズム建築とは何か 藤森 照信   宮沢 洋◎
77.日本人の諷刺精神・東京の下層社会 紀田順一郎◎
78.数字の国のミステリー マーカスデュソートイ
79.最強のFX1分足スキャルピング ぶせな
80.ポストモダン建築巡礼-1975-95
81.シネドラ建築探訪 宮沢洋◎
(6月 11冊)
82.旅行が楽しくなる日本遺産巡礼 磯達雄、宮沢洋
83.オーバーヒート 千葉雅也
84.灘校物語 和田秀樹◎
85.東大医学部 和田秀樹&鳥巣徹
86.感情的にならない話し方 和田秀樹 
87.70歳の正解 和田秀樹◎◎
88.60歳からはやりたい放題 和田秀樹◎◎
89.100歳で現役! 女性曲師の波瀾万丈人生 玉川祐子◎
90.機械学習 エテム・アルペイディン
91.バカという生き方 和田秀樹◎
92.脳が老化する前に知っておきたいこと 和田秀樹◎
93.教育は遺伝に勝てるか 安藤寿康
94.ゲーム理論の裏口入門 野田俊也
95.カメラをとめて書きます ヤン・ヨンヒ◎◎
96.文学国語入門  大塚英志
97.シン・モノガタリ・ショウヒ・ロン大塚英志
98.新「階層消費」の時代 小沢雅子◎◎
99.最暗黒の東京 松原岩五郎◎
100.兄 かぞくのくに ヤン・ヨンヒ◎◎
101.朝鮮大学校物語 ヤン・ヨンヒ
102.中核と革マル上 立花隆◎◎
103.世界最高峰の経済学教室 広野彩子◎
104.幸福の経済システム 小沢雅子
105.図解正しい家計術 ゆりもと
(7月 24冊)
106.ママさんFPが教える貯蓄をラクラク10倍にする家計見直し術 ゆりもと
107.フェルマーの最終定理 Sシン◎◎
108.新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 橘玲◎
109.やってはいけない勉強法 石井貴士
110.リスク バーンスタイン◎
111.FXプロの定石 川合美智子◎
112.知的生活の方法 渡部昇一◎
113.記憶の切繪図 志村五郎◎
114.半七捕物帳ー江戸探偵怪異譚 岡本綺堂、宮部みゆき
115.ポスト大企業体制 井原哲夫
116.映画の正体-続編の法則 押井守◎
117.アダムスミス 高島善哉◎
118.モチベーションで仕事はできない 坂口孝則◎◎
119.素数の音楽 マーカス・デュ・ソートイ◎◎
120.フォンノイマンの生涯 ノーマン・マクレイ◎◎
121.気の導引術入門 早島正雄◎◎
122.頭が良くなる本 トニーブザン◎◎
123.実践論矛盾論 毛沢東◎
124.帳簿の世界史 ジェイコブソール◎◎
125.偶然のチカラ 植島啓司◎
126.続知的生活の方法 渡部昇一◎
127.社会学 加藤秀俊
128.数学に感動する頭をつくる 栗田哲也◎◎
(8月 23冊)
129.数学による思考のレッスン 栗田哲也◎◎
130.女のくせに 江刺昭子
131.飴と飴売りの文化史 牛嶋英俊
132.これが答えだ少子化問題 赤川学
133.ウエストがくびれた女は男心をお見通し 竹内久美子◎◎
134.数学的思考の技術 小島寛之
135.日本のシン富裕層 大森健史◎
136.動物が教えてくれるLOVE戦略 竹内久美子◎
137.ミルトンフリードマンの日本経済論 柿埜真吾◎
138.そのビジネス課題、最新の経済学ですでに解決しています 安田他
139.相場の道 林輝太郎
140.相場金言集 林輝太郎
141.東京お散歩ノート 菅沢真衣子
142.運は実力を超える 植島啓司◎
143.賭ける魂 植島啓司◎
144.ようやく「自分」という動物のことがわかってきた 竹内久美子◎
145.占いはなぜ当たるのですか 鏡リュウジ◎
146.確率で言えば ジョン・パウロス
147.賭ける魂 月本裕
148.女は良い匂いのする男を選ぶ 竹内久美子
149.デイトレーダー 馬淵一◎◎
150.中二階の原理 伊丹敬之
151.億トレⅢ 林知之他◎
152.直感力を高める 数学脳のつくりかた バーバラオークリー◎◎
153.三行で撃つ 近藤康太郎◎
154.ラストワルツ 井波律子
155.ゼロからわかる歩いて知る神社と神さま 植島啓司
(9月 27冊)
156.タロットの秘密 鏡リュウジ◎
157.韓国女性映画 夏目深雪
158.ケルト十字法大辞典 鏡リュウジ◎
159.経済物理学の発見 高安
160.模倣の法則 タルド
161.カラ売り屋vs仮想通貨 黒木亮
162.カラ売り屋日本上陸 黒木亮
163.兜町の男清水一行 黒木亮◎
164.ぼくの浅草案内 小沢昭一
165.なぎの葉 野口冨士男
166.名人 川端康成
167.週4時間だけ働く ティモシー・フェリス
168.世界をこの目で 黒木亮◎◎
169.データの見えざる手 矢野和男◎◎◎
170.冬の喝采 黒木亮◎◎
171.コーチ マイケルルイス
172.100倍クリックされる超ウェブライティング実践テク 東香名子◎
173.人生を「幸せ」に変える10の科学的な方法 ソニア・リュボミアスキー
174.リスクは金なり 黒木亮◎
(10月 29冊)
175.超ライティング大全 東香名子◎
176.獅子のごとく 黒木亮◎◎
177.すべてはノートから始まる 倉下忠憲
178.「書く仕事」のはじめ方 藤木敏明
179.歴史主義の貧困 Kポパー◎
180.高速仕事術 上岡正明
181.輝ける闇 開高健
182.果てしなき探求上 Kポパー
183.果てしなき探求下 Kポパー
184.勝つための準備 エディジョーンズ&持田昌典
185.株・日経225先物 儲ける「勝脳」の鍛え方 ついてる仙人
186.うねりチャート底値買い投資術 上岡正明
187.メイクバンカブル 黒木亮
188.法服の王国上 黒木亮◎
189.法服の王国下 黒木亮◎
190.うねり取り格式投資法 林知之
191.40歳でGAFAの部長に転職した男ぼくが20代で学んだ思考法 寺澤伸洋
192.巨大投資銀行上 黒木亮◎◎
193.巨大投資銀行下 黒木亮◎◎
194.アジアの隼上 黒木亮◎◎
195.アジアの隼下 黒木亮◎◎
196.花腐し 松浦寿輝◎
197.国家とハイエナ上 黒木亮◎
198.国家とハイエナ下 黒木亮
199.トップレフト 黒木亮◎
200.物質と記憶 ベルクソン
201.長銀破綻 須田慎一郎◎
202.私が行ったさびしい街 松浦寿輝◎◎
203.トリプルA 上黒木亮◎◎
204.トリプルA下 黒木亮◎◎
205.崩壊連鎖ー長銀日債銀粉飾決算 共同通信社◎
206.半島 松浦寿輝
207.経済学の道しるべ 岩田規久男◎◎
208.愚者よお前がいなくなって淋しくててたまらない 伊集院静◎
209.無月の譜 松浦寿輝◎◎
210.乳房 伊集院静◎
(11月 36冊)
211.あやめ 鰈 ひかがみ 松浦寿輝
212.ぼくの大好きな青髯 庄司薫
213.変哲もない一日 阿部昭
214.戦後思想の巨人たち 高澤秀次
215.晴れのち曇りときどき読書 松浦寿輝
216.赤い三日月上 黒木亮
217.赤い三日月下 黒木亮
218.シュルレアリズム宣言 アンドレブルトン
219.岬へ 伊集院静
220.黄昏客思 松浦寿輝◎
221.なんでもありか 伊集院静&西原理恵子◎
222.我、拗ね者として生涯を閉ず上 本田靖春◎
223.ぜんぜん大丈夫  伊集院静&西原理恵子◎
224.幸せがずっと続く12の行動習慣 リュボミアスキー◎◎
225.映画1+1 松浦寿輝◎
226.白鍵と黒鍵の間に 南博
227.EXIT売却 奈部誠
228.リーマンショックコンフィデンシャル上 アンドリュー・ソーキン◎
229.バーンスタイン 
230.東京の100横丁 矢吹申彦
231.黒田清記者魂は死なず 有須和也
232.危機と決断バーナンキ回顧録上 ベンバーナンキ◎
233.実録総会屋 小川薫◎
234.銀座の怪人 七尾和晃
235.もののたはむれ 松浦寿輝
236.酒と賭博と喝采の日日 矢野誠一◎◎
237.キネマ旬報物語 掛尾良夫◎
238.虚業 小池隆一 七尾和晃◎◎
239.アホー鳥に行く 伊集院静
240.修羅場の経営責任 国広正
241.バブルの肖像 都築響一
242.総会屋とバブル 尾嶋正洋
243.笠井重治 七尾和晃
244.ゴールドマンサックスM&A戦記 服部
245.ポールソン回顧録 ヘンリーポールソン
246.リーマンショックコンフィデンシャル下 アンドリュー・ソーキン◎
247.超メモ革命 野口悠紀雄
248.BB\PP 松浦寿輝
読書にも流れがある。今年の前半は飲む機会も多かったのか?落ち着かなかったのか?あまり読めなかった。こんなこともあるだろう。勉強法の本でたいへん参考になった和田秀樹が書いた老人になってからの過ごし方の本が既存概念と違う部分があり、ずいぶんと読んだ。加賀乙彦の本もその頃読んだ。大久保育ちだった少年時代のことも書いた自伝的要素も強い。2人とも東大医学部出のインテリだけど、世間が想像するような一直線な人生を歩んでいない。

競輪、競馬や麻雀、外遊してのカジノなどのギャンブルには手を出さなくなって久しい。でも、ギャンブル小説には親しみがある。人気作「深夜特急」にもその要素があるが、改めて読み直して沢木耕太郎の「波の音が消えるまで」は最高におもしろい。いわゆる究極のギャンブルの必勝法にとらわれた男の話だ。気がつくと、ギャンブル必勝法の本をたくさん読んだ。年末,伊集院静がなくなった。風来坊だった伊集院静のバクチパフォーマンスをいくつかの本で再読したのが楽しかった。ギャンブル必勝法はある意味ビジネス必勝法でもある。ただギャンブルは勝ちそうに見えても,こればかりは思い通りにならない。

ギャンブル必勝法は近世の数学者の課題だ。ギャンブル本から数学史に移る。バーンスタインの「リスク」は近世の数学者のギャンブルへの挑戦や確率論確立について書いてある。この本を読みながら科学者への奮闘について関心を持つ。数学者のマーカスデュソートイの数学史の本はおもしろい。若き日に読んだ数学史は何だったと思うくらいだ。素数の追求が楽しい。気がつくと会社の机の上に素数一覧が書いてある。ついでに「フェルマーの定理」の解決に向けての本を再読した。日本人数学者が解決に向けて大きく貢献している。コンピューター発展に尽くした天才「フォンノイマンの生涯」は何度も再読した。来年こそは「オッペンハイマー」を映画館で見たい。

難しい本を読むときのコツをつかんだ。各段落の先頭の行だけを読んで一旦全部読了してしまうことだ。実はそれで要旨はつかめる。重要部分は付箋をつける。それで取るに足らない本だと思ったら読まない。付箋の少ない本は却下だ。読むべき本だと思ったら,その先頭の行ないしはその近くの重要なセンテンスを黄色のマーカーで塗り続けていく。それをつなげていくと1つの本の流れが深くわかっていく。よく本屋で売っている数分で読みきる速読法では頭に入らないことが多い。取るに足らない本であればそれでも読めるかもしれない。でもまともな本はある程度文章を読まなければならない。

30代の頃オレンジのマーカーで本の重要な部分をひいていた時,そのセンテンスが浮き彫りになって頭にこびりつくことに気づいた。無機質な白い紙が意味あるものに変貌する。もともと色分けした本はそうはならない。本を読むコツがわかった時だ。なんでもっと若い時にもっと気がつかなかったんだろう。それ以降読書が楽になった。図書館で借りるときはマーカーは引けない。気になったところだけ付箋をつけておく。そしてその付箋のつけたページをiPadの写真に撮る。でもマーカー作戦にはかなわない。気に入った本はその後買ってしまうことだ。そしてマーカーを引く。

読書にのらない時は再読が1番良い。植島啓司、栗田哲也,竹内久美子いずれも自分に大きな影響を与えた本を書いた人たちだ。

大学2年の時に経済小説に目覚めた。城山三郎や山崎豊子、清水一行の本を貪るように読んだ。面白かった。その清水一行の評伝を黒木亮が書いた。それを立ち読みしているうちに気がつくと黒木亮の本を大量に読む。箱根駅伝で2回早稲田のタスキをつないだ後に国際金融の道に進んでいた黒木亮はロンドンに住み経済小説を書き続けている。いわゆる投資銀行や平成の金融危機などをここまで書いている作家は他にいない。同世代だけに妙に腑に落ちるところがある。黒木亮の本をきっかけに平成の金融危機やアジア通貨危機を追いかけ、総会屋についての本も読んだ。死語になりつつあるとは言え恐ろしく影響力を持っていたのだと理解した。

荒井晴彦の映画「花腐し」を見た。原作者は松浦寿輝だった。映画の内容を原作で読もうとしたとき、恐るべき筆力の人だと思った。その後猛烈に松浦寿輝の本を読んだ。難解な本もあり全部が全部自分に合うとは思わないが、「無月の譜」などの自分にあった本もいくつかあった。東大教授から小説家になった履歴の割には、上野近辺の下町生まれの素地を持ち、裏社会スレスレの話や優秀なのに社会を脱落した人たちの話が多い。これがいい。

松浦が書いた「私が行ったさびしい街」が今年の自分のベストである。文章のタッチがミシュラン並みの高級店のシェフの技である。これこそ至福の日本語だ。
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映画「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」

2023-12-31 08:30:53 | 映画(韓国映画)

映画「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」を映画館で観てきました。

映画「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」は朝鮮半島の国境38度線上で宝くじの当選クジをめぐって韓国、北朝鮮両国兵士が右往左往するコメディだ。メジャーな韓国俳優は出ていない。普通だと見過ごしてしまいそうだが、「笑いが止まらない」という評判で面白そうな気配を感じる。

朝鮮半島の国境軍事境界線板門店に駐在中の韓国兵士パク・チョヌ兵長(コ・ギョンピョ)が何気なく拾ったロトクジがなんと57億ウォン(約6億円)の賞金に当選してしまう。本にはさんでこっそり持っていたのに、風にクジが吹き飛ばされて北朝鮮側国境を越えてしまう。大慌てのチョヌは夜中にこっそりと国境の金網をくぐっていくと、北朝鮮兵に銃を突きつけられる。飛んでいった宝くじを偶然ひろった北朝鮮兵リ・ヨンホ(イ・イギョン)だったのだ。

ひろったヨンホは自ら引き換えができないのでチョヌに交渉を持ちかける。持ち分でもめる。しかし、国境線でお互いに交渉しているのが、南北両軍の上司にわかってしまい結局3対3での交渉となる。結局、韓国側で金銭引き換えると同時に逃亡しないように、南北お互い1人ずつ人質を出すことになるのであるが。。。

確かに笑えるコメディだ。

板門店の軍事均衡地帯では朝鮮戦争停戦から長期にわたってお互いに牽制しあっている。そこでの緊張をもとにこれまで映画がつくられてきた。軍事衝突が絡んでそんなに明るい話はない。でも、これはコメディだ。

せっかく当たった宝くじがすっ飛んでいけば誰もがあせる。それがお笑いになるのか?いや、宝くじの行方を探すだけではこんなにも面白くならない。南北両側に多彩な登場人物を用意して、いくつもの伏線となるエピソードを用意する。それを物語の行方とともに少しずつ回収する。韓国映画らしい脚本づくりのうまさを感じる。北朝鮮美人兵士と韓国兵士との禁断の恋も用意する。

特におもしろくなってくるのは、南北両側から人質を出した後だ。当然、オフィシャルな話ではない。交渉にあたる3名と一部の身内以外は内緒で、人質が敵軍に配属される。

北朝鮮側に配属された兵は、最初特殊部隊で瓦割りなどの剛健な鍛錬を受けるが、すぐさま農場に移される。なかなか繁殖が進まなくて困っていた農場だった。ところが、ニワトリや豚たちが交わりやすいようなムードたっぷりの工夫をしただけで、気がつくと次々と卵ができる。食糧事情の悪い北朝鮮では大歓迎だ。平壌に行ってくれとまで言われる。逆に焦る。このやりとりが笑える。

韓国軍に配属された北朝鮮兵が国境線上の大量の地雷が埋まっているエリアを演習中、仲間が地雷に引っかかる。ミスると大爆発だ。とっさに的確な処置をして助けてしまう。うわさが伝わり連隊長は大喜びだ。激励に来て何処出身だと言われて、北朝鮮の町の名前を言おうとして思わずハンブルクと言ってしまう。ドイツの戦争映画を繰り返し観ていてドイツ語を話す。それを上司が良いように訳す。かわす会話が楽しい。

その人質は、宝くじの当選金をもらうまでは戻らない。でも、当選金をもらう前に宝くじをなくさないように股に挟む。そう簡単に引き換えできない。予期せぬ関門をくぐらないといけないのだ。こんな感じで笑えるネタを最後まで用意する。実に楽しい。

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2023年好きだった映画10+10

2023-12-30 19:43:16 | 映画 ベスト

2023年好きだった映画を10本列挙する。(まだ観るので一日早いけど)
もちろん映画の出来もあるけど好みが優先である。
結局観た映画の本数は186本(名画座、Netflix映画含む)、自分なりに気に入って自分の控えに〇(マル)したのが50本。(2007年からつけて控えは3279本)選んで観ているから絶対没は少ない。いざ選ぶとなるとなかなか難しい。意識していないが、頑張る女性への応援という作品がなぜか多い。

順番は順位ではありません。題名クリックすると記事になります

⒈ロストキング

シェイクスピア劇では悪者にされている英國王フィリップ3世を擁護しようとシングルマザーのサリーホーキンスが歴史の新事実に迫る物語。

⒉バッドランズ

特殊詐欺の首謀者で社会の底辺を彷徨う大阪の女を安藤さくらが演じる。脇役の援護射撃もありリズミカルに泥くさい世界に迫る作品となる。

⒊アウシュヴィッツの生還者

アウシュヴィッツの収容所で負ければ死ぬボクシングの試合を勝ち抜き、戦後は不敗の王者ロッキーマルシアノに挑戦した男の生き残り物語

⒋あしたの少女

コールセンターに勤めた実業高校の実習生が派遣先でむごい目にあう。それを警察が取り締まる刑事役のペドゥナがカッコ良すぎる。

⒌ジュリア

あるピアニストが人生それぞれの場面で別の選択していたらどうなったの?それぞれの場合の別の道を映像で教えてくれる。音楽、美術、カメラワークいずれも絶品

⒍アンダーカレント

突如夫が失踪して1人となった銭湯の店主が探偵を使って真相を探ると意外な展開に。真木よう子が主役で「さよなら渓谷」以来の情感こもる好演。

⒎BLUE GIANT

上京してジャズのテナーサックスで身を立てようとする青年の成長物語。上原ひろみ中心の現役プレイヤーによる臨場感あるサウンドを劇場で楽しめる。

⒏絶唱浪曲ストーリー

ちんどん屋稼業をしていた大卒女が、たたき上げの浪曲師の口演に魅せられ入門。師匠が病に倒れ100歳の三味線弾きの弟子になり修行するドキュメンタリー。

⒐仕掛け人 藤枝梅安

鍼医者なのに暗殺請負の藤枝梅安を豊川悦司が演じ、料亭女将天海祐希と対峙するが2人に因縁あり。天海祐希の存在感が圧倒的で夜のムードが冴える時代劇の傑作。

⒑縁路はるばる

香港の理系独身男に突如モテ期が訪れて、次々と美女とデート。女の子がいずれも香港の辺境に住み、あちらこちら右往左往する現代香港の風景を実感するラブコメ。

キネマ旬報のベストとは被らないものが多いだろうなあ。でもこんな映画が自分の好みだ。

自分なりのベストと甲乙つけがたい10本

⒈セールスガールの考現学

アダルトショップで働くモンゴルの女子学生

⒉TAR

ケイトブランシェットの怪演

⒊市子

時間軸をずらして真実に迫る構成力に優れたミステリー

⒋AIR

エアジョーダン誕生秘話と営業のお手本

⒌フェイブルマンズ

スピルバーグの青春、ミッシェルウィリアムズが良かった。

⒍愛にイナズマ

一流映画監督を目指そうと崩壊した家族を撮る女の子

⒎茶飲友達

茶飲み友達を装った高齢者向け風俗、リアル感が半端でない。

⒏メグレと若い女の死

パトリスルコント監督による簡潔なフランスサスペンス

⒐春に散る

師弟関係の描写に優れる高揚するボクシング映画

⒑ナポレオン

恐妻家ナポレオンの実態と戦闘場面の大迫力

追加

わあ!迷うなあ

⒈ポトフ

最初の30分で究極のグルメ映画と確信

⒉正欲

同時並行のStoryの収束と新垣結衣の瑞々しさ。

⒊告白、あるいは完璧な弁護

クライムサスペンスの韓国らしい観客の読みを外す展開

⒋花腐し

荒井晴彦の世界に陶酔、「さよならの向こう側」がアタマに焼きつく

⒌SHE SAID

真の報道はこれぞと思わせる登場人物の行動力

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映画「ファーストカウ」

2023-12-26 06:08:47 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)

映画「ファーストカウ」を映画館で観てきました。

映画「ファーストカウ」は19世紀前半西部開拓途中のアメリカオレゴンでの出来事を描いた女性監督ケリー・ライカートの作品である。ケリー・ライカート監督作品は初めて、アメリカでは2019年に公開されている。普通だとスルーのパターンだが、評論家筋の評判が良い。他にイマイチな作品ばかりなので選択する。

 

オレゴンの田舎町に、料理人のクッキー(ジョン・マガロ) と中国人のルー(オリオン・リー)が流れ者のように来て毛皮業に足を突っ込む。気のあった2人は何か商売をやろうと企んでいた。

仲買人のファクター(トビー・ジョーンズ)が購入した一棟の乳牛に注目して、こっそり乳牛から乳をとり、材料を混ぜ合わせてお菓子にする。市場で売り出すと、おいしいと評判になり連日行列だ。うわさを聞きつけ乳牛の持主の仲買人も買いに来るのであるが。。。

 

評判ほど大きな感動は特になかった。

確かに独特のムードは悪くはない。でも、題材がある種の「泥棒」なので、潔癖症が多い日本人でも自分にその自覚のある人は見ない方がいいだろう。泥棒行為が見つかるかどうかの話に過ぎない。同じような題材を中世や近世以前の日本を舞台にしても作れる話だ。映画の結末を「寛容」という一言で片付ける評論家の神経を疑う

 

開拓途中のオレゴンといっても、よくある西部劇に出てくる町の域に達していない。もっと原始的だ。一時代前の西部劇だと、原住民と開拓民の対決がテーマだった。ここでは共存共栄で生きている。一世紀時代はズレるが、マーチンスコセッシ監督「キラーズオブザフラワームーン」に出ていたリリーグラッドストーンが似たような役柄で出演している。

 

コンビを組んだ2人は身寄りもなく金もない。前半はかなり沈滞しているムードだ。

気がつくとウトウトしてしまう。

色んなアイデアを2人が思いつくけど、実現不可能となった時にクッキー(ドーナツと言ってもいい)を作ることを思いつく。ここからは話が引き締まってくる。目がシャキッとして飽きのこない展開にかわる。

 

深夜に牛のいる邸宅に忍び込んでも誰も気づかない。乳を絞られるは大きな鳴き声を出さない。静かだ。こっそりととった乳をベースにドーナツをつくって市場で売ると大ウケだ。誰もがおいしいと言って行列もできる。材料は?と聞かれて、中国の秘伝として乳牛の乳とは当然言わない。2人はもっと儲けてやろうと、連日深夜の乳とりを欠かさない。

そうしているうちに、牛の所有者の仲買人が噂を聞きつけ、食べに来る。故郷英国の味と似ていると大喜びで、屋敷に招待してブルーベリーを混ぜたお菓子をつくる。そろそろ潮時かと思っても、やめない。そこでミスが起きる。バレてしまうのだ。

実はそれだけのストーリーだ。

ただ、中国でも北部出身のルーが広州からの貿易船に乗って、ピラミッドを見ながら欧州経由でアメリカに向かうセリフの事実がありえるとは思えない。映画作品情報記載の1820年代にスエズ運河は当然ない。1840年のアヘン戦争前の中国は世界中から開国と自由貿易を迫られてもびくともしない時代だ。こんな中国人がいるのかな?と思ってしまう。最近のアメリカ映画は人種を均等に入れることにこだわりが強い。アジア人を強引に入れ込む結果として不自然な設定になったのでは?

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映画「PERFECT DAYS」 役所広司&ヴィムヴェンダース

2023-12-23 19:50:08 | 映画(日本 2019年以降)
映画「PERFECT DAYS」を映画館で観てきました。


映画「perfect days 」はドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース監督の作品で役所広司カンヌ映画祭主演男優賞を受賞した作品である。ヴィムヴェンダースの監督作品ではロードムービーの名作「パリテキサス」が好きだ。ジンワリと心に残る。オール東京ロケで言語は日本語役所広司はトイレ清掃員を演じる。トイレ清掃に従事している役所広司を映し出している予告編を観たけど、まさか清掃作業のルーティンだけのストーリーではないだろう。先入観なく映画館に向かう。

見上げると東京スカイツリーが見える古いアパートの一室に住む平山(役所広司)は東京の公衆トイレの清掃員だ。朝早く起きて軽のバンに乗って、各地のトイレをまわって清掃作業をする。仕事は丁寧だ。平山の日常生活と、同僚や行きつけの飲み屋などでの触れ合い、家出してきた姪との交情を淡々と描いていく。


シンプルな佳作だ。
セリフは少ない。ほぼオールロケで、役所広司の動静をカメラが追っていく。役所広司が清掃にいく公園などにある公衆トイレの建物のデザインがいずれも斬新なので驚く。便器も最新式でウォシュレットもつく。普通街の公衆トイレはこんなにきれいではない。その一方で、役所広司が住むアパートは昭和40年代に建てられたと思しき風呂なしの古いアパートで、本とカセット以外は荷物も少ないシンプルな部屋だ。

朝目覚めて出発の準備をした後でバンを運転しながらカセットテープの古い洋楽に耳を傾ける。曲の選択のセンスは抜群だ。現地での休息時にはフィルムカメラで写真を撮る。トイレ清掃作業した後は、銭湯で身を清めて、浅草駅地下の一杯飲み屋でハイボールを飲む。たまに美人ママのいる居酒屋にも寄り、帰るとフォークナーや幸田文の文庫本を読みながら静かに寝る。そんな毎日に少しづつ変化がある。小さなエピソードを積み上げる。


自分がもしこれから1人住まいをするなら、こんな生活をするのかな?と感じていた。映画を観ながら、遠方に行くというわけでないけれど、ロードムービー的な感覚があるなとも感じる。役所広司はほぼ出ずっぱり。あえて類似している映画をあげるとジム・ジャームッシュ監督の「パターソン」かな。バス運転手の日常を日めくりで静かに追っていくその映像作りに似ている。

山田洋次と吉永小百合が組んだ「こんにちは、母さん」も東京スカイツリーを見渡す隅田川沿いの光景が再三映り、この映画と似たようなロケ地だ。隅田川に架ける桜橋を自転車で渡る役所広司の表情が清々しい。吉永小百合も銭湯に行っていたな。ホームレスを田中泯が演じるのは両作で共通する。


この映画を観て驚いたことがいくつもある。こんなにハイセンスな公衆トイレがあるとは知らなかった。調べると、渋谷区がユニクロなどと組んだプロジェクトのようだ。隈研吾などの日本を代表する建築家が設計している。恵比寿駅前のトイレだけは知っていた。それと、古いカセットテープの買取価格がそんなに高いのかと驚く。

後は、石川さゆりが出てきた時も驚いた。役所広司が常連の店に入った時、着物姿の美人女将がいる。アレ!石川さゆりかな?、声がちょっと違うかな?そう思っていたら、歌い始めて背筋がゾクッとした。間違いない。「朝日のあたる家」を歌う石川さゆりに感動した。こんな店あったら週3行くな。元夫役で三浦友和がでてくる。出番は少ない。

すごい傑作とまでは思わない。でも、無口な中年の役所広司の少ないセリフと妹に再会した時の感極まる姿がジンワリと心に残る。
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映画「市子」 杉咲花&若葉竜也

2023-12-20 21:42:53 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「市子」を映画館で観てきました。


映画「市子」は突然失踪した同居人女性は他人だったことがわかって、彼女の過去を追いながら現在の行方を探るミステリードラマだ。ここに来て主役での起用が増えている杉咲花と若者の偶像を描く作品で活躍する若葉竜也の共演。監督脚本の戸田彬弘監督作品を観るのは初めてでオリジナル作品だ。

予告編で、結婚を申し込んだのにその女性が別人だったという設定は分かっていた。ただ、それだけではストーリーの全容はわからない。昨年公開の死んだ夫が別人だった「ある男」をとっさに連想する。若葉竜也が毎度常連の今泉力哉監督の新作に出ずにこちらにかけたのかとも思いつつ映画館に向かう。

市子(杉咲花)が同棲している長谷川(若葉竜也)からプロポーズを受けて喜んでいる。ところが、市子は長谷川が帰宅する前にアパートを飛び出して行方不明になる。その長谷川を後藤刑事(宇野祥平)が市子の写真を持って訪ねてくる。そして、あなたの暮らしていた女性は市子ではないと言われあぜんとする。警察が捜査を進めるとのと同時に、長谷川は市子が歩んできた道筋を追いかけていく。



構成力に優れたミステリーだ。
時間軸をずらしながら、市子の歩んできた道筋を追っていく。途中でこの映画の結末がどのようになるのかよめないミステリー要素がある。映像から目が離せない。それぞれの場面に軽い伏線を残しながら、真実に迫る。俳優陣の演技もいいけど、巧みに構成して編集をまとめた戸田彬弘監督をほめるべき映画だ。予想外によくできている。もっと評価されてもいい。

時間軸は小学校時代、高校生時代、そして現在と3つの時代をめぐっていく。

小学校時代にすでに母親(中村ゆり)はシングルマザーで、夜は飲み屋で働いている。市子は小学校時代から普通ではない。カネがないので万引きもしてしまう。同級の友人とのお付き合いで、仲良くなったり、ケンカしたりするエピソードに伏線を散りばめる。それがのちのちの謎解きにつながっていく。

高校時代からは、市子を杉咲花が自ら演じる。市子の付き合っている男、市子を慕う男子の同級生母親のもとにたむろう男たちとの関わりが映し出される。シングルマザーの母親はいかにもという感じで男出入りが多い。そこからある事件につながっていく。


いくつもの時代を巡るエピソードで、少しづつ市子のこれまでの人生がわかっていく。市子はTVのニュースで白骨遺体が発見されたことに敏感に反応して家を飛び出す。でも、少しずつ謎が解けても肝心の市子が最終どうなっていくのかがわからない。どういう形でストーリーに区切りをつけるのかドキドキしながら追っていた。

杉咲花は身近にどこにでもいそうな女の子だ。高校生役を演じてもあまり不自然さはない。シングルマザーにまとわりつく変な男との微妙な関係を巧みに演じる。「法廷遊戯」でも殺人に絡んだが、むずかしいシリアスドラマを平気な顔をしてこなす。起用しやすいタイプなので来年も出番は多いだろう。


若葉竜也現代若者の偶像を描くには欠かせない俳優だ。失踪して探していく中で、刑事だけでなくむかし市子が関わり合った同僚、同級生、市子の身内など色んな人と交わる。探す側なので出番がむしろ杉咲花より多いかもしれない。今泉力哉監督作品などで超絶長回しをこなしているので、演技には安定感がある。

特に中村ゆり演じる母親と会う場面がよく見えた。徳島の海辺の町での場面は、海辺のロケーションも含めて肝となるシーンだ。ここのところ、シングルマザーがでる映画が多く、人気女優が次々と堕落したシングルマザーを演じている中でも美形の中村ゆりに実際にいそうな水商売独特の匂いを感じる。杉咲花に漏らすあるセリフにドキッとする。

もともとは舞台劇として設定した「市子」とは言え、今回は登場人物が住む寂れたアパート、むかし市子が住んだ古めの団地小学校校内ベイサイドなどロケーションが主体でリアルな空気を感じさせる。


エンディングの前まで、結末がわからなかった。最後はディテールを語らずにある人物を映し出した。
これでいいのではないか。
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映画「ポトフ 美食家と料理人」 ジュリエット・ビノシュ&トラン・アン・ユン

2023-12-19 21:50:06 | 映画(フランス映画 )
映画「ポトフ 美食家と料理人」を映画館で観てきました。


映画「ポトフ」は美食家の男性と女性シェフのカップルを描いたベテラン女優ジュリエットビノシュ主演のフランス映画だ。ベトナムのトランアンユンカンヌ映画祭で監督賞を受賞している。

料理としてポトフを知ったのは大学生の時、広尾の日赤病院前の東京女学館横の通りを隔てた場所にあるヴィクトリア洋菓子店という洋食屋も兼ねたお店で食べた。時おり自分もブログの番外編でおいしい食べ物を取り上げるが、ここの洋食は絶品だった。今だにここで食べたOXタンシチュー、ミンチソテー、ポトフを上回る洋食に出会わない伝説の店だ。フランス風野菜スープであるポトフという言葉には今でも心を動かさられる。


トランアンユン監督の初期の「青いパパイアの香り」「夏至」には登場人物が料理をつくる印象的な場面がある。しかも、ジュリエットビノシュ「イングリッシュペイシェント」以来、自分が時代を遡りながらブログでもほぼ取りあげてレオンカラックス作品や「存在の耐えられない軽さ」を追いかけている。絶対に見逃せない作品だ。

フランスの郊外、美食家のドダン(ブノワ・マジメル)と彼のレシピを最高の味で提供する料理人ウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)は森の中にある同じ住まいの別部屋で暮らしていた。ドダンの求婚をようやく受け入れて皆の祝福を受け、ユーラシア皇太子のために出すポトフのレシピをともに考案していくが。。。直近でウージェニーは、体調の異変を感じていた。


断言できる!史上最強のグルメ映画だ。
作品情報にそのような外国マスコミのコメントが書いているが、これは大げさではない。それは映画が始まって約30分強で確信できる。

TV「料理の鉄人」キッチンスタジアムを思わせる厨房には、生魚、野菜、お肉と食材が満載である。それをジュリエットビノシュ演じるウージェニーと女性2人の助手が3人で下ごしらえをする。ウージェニーが手ぎわよく捌いていき、煮たり、焼いたりしていく。ものすごく手が込んだ作品だ。それ自体が美しい絵になっている。完成品になる前から色合いがきれいだ。調理場面を映すカメラアングルも抜群だし、料理をつくる時に発する音に食欲を感じる。明らかに今まで観たグルメ系の映画を凌駕する。

何も情報がないので、家庭料理でこんなの作っちゃうの?これだけ揃えたら食材の費用はすごいだろうなあ?こんな量を助手を含めた4人で食べるの?と思っていたら、ダイニングには連れ合いのドダンに加えて4人の男性がいた。解説に美食家となっているので、そうコメントしたけど、こいつら何者なんだろう?貴族なの?今でもそう思う。

ダイニングでとりわけしたものを食べていく。何ておいしそうなんだろう!
これには驚いた。


あえて料理映画の名作といわれる「バベットの晩餐会」と比較する。
パリから戦乱を避けてデンマークでメイドとして働く主人公が宝くじに当たったので、最高の食材で雇い主をもてなす話だ。自分は最高の料理映画と思っている。そこでは、そのメイドが手ぎわよく一人で料理をつくる。それ自体がすごいけど、今回の「ポトフ」の前半戦の方が動的だ。助手2人と一部連れ合いに手伝わせてつくっていく姿の方が、「料理の鉄人」で鉄人シェフたちが助手を従わせてつくるような躍動感を感じる。

同じく台湾出身のアカデミー賞監督アンリー監督が台湾時代につくった「恋人たちの食卓」の美的感覚もすごい。ただし、これも一人でつくっている。飼っている鳥をしめて捌く。包丁の手捌きなども映像にうつるがすごい。比較した両作品いずれも完成した料理が美しいし、名作であることには変わりがない。でも、カメラワークの躍動感と究極のフレンチのすばらしさで「ポトフ」を最高の料理映画と推挙する。トランアンユン監督の手腕といえよう。


そういえば、比較作品を振り返って気づいたことがある。「バベットの晩餐会」「ポトフ」はいずれも女性シェフで、時代設定は奇しくもほぼ同時期である。「ポトフ」の解説に1885年のフランスとなっているが、そのセリフはない。ただ、1830年代半ばのワインを50年海底で寝かせたワインを飲むシーンがありそれで想像するのだ。「バベットの晩餐会」もパリの混乱でメイドが脱出してからの年数で推測する。

帝国主義の英国、ドイツは良くてもフランスとしては決していい時代ではない。その中でもまだ落ち着いていたのであろうか?トランアンユンの母国ベトナムフランスが主権を持つのも同じ年で2年後に仏領インドシナ連邦フランスの植民地統治となる。動きがある時代だ。そんな時代に厨房にガス?オーブンがあったのはすごいと思った。日本はほとんどないだろうなあ。

トランアンユン「夏至」などはグリーンがきれいな映画である。この映画も同じような感覚を持つが、印象派の絵画を連想させるような色とりどりの色彩で映し出す場面が続く。うなるような美しい映像だ。


主人公2人が主体の映画であっても、助手になる若い2人の女の子の使い方がうまい気がした。この辺りはトランアンユンの初期の作品を感じさせるうまさだろう。ただ、終盤に向けては少しストーリーがだれたかな?料理映画としては5点でも映画としては4点だね。最後に向けてのキッチン内の風景をぐるりと見せるカメラアングルは悪くないけど。
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番外19 シャトーブリアンの夜

2023-12-16 10:28:11 | 散歩
東京のど真ん中でお肉コース食べてきました。
神戸牛のお墨付きで、良い年が越せそう。

アミューズ


魚介類
生ウニ、アワビ、サーモン、キャビア、いくらなど
こんな食べ方はじめて。絶品


肉カイノミとトリュフ


右側がタン フォアグラ


サラダ


シャトーブリアン

出された皿興奮して撮り忘れ、残念。きれいだった

元々は真ん中がシャトーブリアン


カレーパスタ


デザート


おいしかった。
ワインは白赤両方で。お肉はいいなあ。

そういえば、昨年末行ったすし屋(記事)が今回発売ミシュランで2から3にランクアップ
すげえ!きっちりお酒が飲めるのがいいんじゃないかな。
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映画「枯れ葉」 アキ・カウリスマキ

2023-12-15 21:07:54 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「枯れ葉」を映画館で観てきました。


映画「枯れ葉」はフィンランドのアキカウリスマキ監督の久々の新作である。復活してくれてともかくうれしい。Amazon primeに突如初期の作品がラインナップされて、未見の「マッチ工場の女」「真夜中の虹」まで見れた。いずれも独特の風味を感じる。

最初アキカウリスマキ監督作品を観た時、昭和30〜40年代の日本にタイムスリップしたようなフィンランドの背景の中、無表情で寡黙な登場人物が質素な美術のもと実に暗いと思った。ところが、観続けているうちに、二郎ラーメンのように中毒になってくる。この感覚がジワッと心に刺さる。いちばん好きなのは「ルアーブルの靴みがき」「浮き雲」だ。今回常連のカティ・オウティネンは出ていないが、評論家筋の評価は異様にいい。初日に映画館に向かう。


ヘルシンキの街で、アンサ(アルマ・ポウスティ)は理不尽な理由から仕事を失い、ホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)は酒に溺れながらもどうにか工事現場で働いている。ある夜、ふたりはカラオケバーで出会い、互いの名前も知らないまま惹かれ合う。だが、ホラッパはアンサが伝えた電話番号を書いた紙をなくしてしまう。アンサは連絡を待っているが来ない。そうしているうちに、アンサもホラッパも再び失職してしまうのだ。このまま連絡が取れないと思っていたところで、運がめぐって来る。しかし、それも続かない。

いかにもアキカウリスマキ監督作品らしいドツボの連続だ。
いつもながら、路面電車の走るヘルシンキの街は地味だ。建物も古ぼけている。人々を取り巻くのは昭和半ばの色彩だ。主人公をはじめとして登場人物は無表情かつ寡黙で、セリフは最小限である。そして、物語は単純だ。カップルとなる2人は単純な仕事に従事する労働者。しかも、2人とも運に恵まれずついていない。ここまでやるかと思うくらい窮地に落とす。そこに、ロックを基調としたバンドの音楽が流れる。この辺りは毎回似たようなものである。でも、そのワンパターンがいいのだ


時間も80分台にまとめる。すばらしい。
主人公アンサを中年の域に差し掛かりつつある未婚女性にしているのは「マッチ工場の少女」に似ている。ようやく運が巡るようにも見えたけど男はアル中だ。勤務時間中にも小瓶を飲むし、トラムの停留所で寝てしまい野宿することもある。

アンサの父も兄もアル中で死んだ。あんまり酒に溺れてほしくないと言うと男は反発していったんは話が潰れる。そこからがミソだ。未練たらたらの男が改心する。ここで再転換してラストに向かう。ところが、もう一度奈落の底に落とす。いかにもアキ・カウリスマキ監督作品らしい。最近年甲斐もなく、飲み過ぎで失敗した自分には心に響く。

アキカウリスマキの作品にはドツボのままで終わる作品もある。
でも、「ルアーブルの靴みがき」のように希望がもてるのは何よりだ。名曲「枯葉」が優しく包む。ぶっきらぼうだけど、ウォーミングハートのこんな感じがいい。
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映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」 ティモシーシャラメ

2023-12-12 05:06:17 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」を映画館で観てきました。

 映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」「チャーリーとチョコレート工場」ジョニー・デップが演じた工場主ウィリー・ウォンカの若き日の物語である。メジャーへの道を歩んでいるティモシー・シャラメがウォンカを演じる。監督はポール・キングだ。

テイムバートンの長いキャリアの中でもジャックニコルソンがジョーカーを演じた「バットマン」と同じくらい「チャーリーとチョコレート工場」が好きだ。それだけに、監督と主演が代わってどんな作品になるか楽しみだった。ミュージカルの要素も強いようだ。ファンタジー系を観ることは少ない。今回はと観に行く。

ウィリー・ウォンカ(ティモシー・シャラメ)は亡き母(サリーホーキンス)との約束、「世界一のチョコレート店を作る」という夢を叶えるために、チョコレートの町にやってきた。彼が作る魔法のチョコは、瞬く間に評判に。しかし、それを妬んだ町のチョコレート組合3人組に目をつけられてしまう。

強欲な宿の主人(オリヴィア・コールマン)や小さな紳士ウンパルンパ(ヒュー・グラント)にもひどい目にあわされる。以前からマダムに働かされている人々や孤児の少女ヌードル(ケイラ・レーン)の助けでチョコレート作りをひっそりとおこなう。

単純なファンタジーストーリーだけど、歌と踊りをちりばめて美しく楽しい映像を見せてくれる。色彩設計も楽しめる。
「チャーリーとチョコレート工場」ティムバートンらしい悪夢の世界が映画に漂っていた。ジョニーデップ演じるウィリーウォンカ変わり者の謎の経営者であった。ティモシー・シャラメという日本流で言えばジャニーズ系の人気者を起用して、めっきり明るくなった。

ウォンカにアクの強さはない。毒の要素は、あくまでライバルチョコレート店の3人の店主とホテルオーナーに転化している。悪夢の世界もいいけど、好青年のイメージをもつティモシー・シャラメには似合わない。前回イヤミな少年少女もいたし皮肉めいた部分があったけど今回はない。子どもが観ても十分楽しめる。


映画を観ていて、次から次へとアカデミー賞級の英国の名優が登場するのに驚いた。しかも、悪役を押しつける。思わず、この作品が英国製作の映画でティモシーシャラメも英国俳優だったっけと思ったくらいだ。オリヴィア・コールマン「女王陛下のお気に入り」自体が、普通ではない女王様だし、今回の悪役ぶりが似合う。本年公開の「エンパイアオブライト」では若干の変態要素を持っていた。ひと癖ある役柄をこなすのはさすがオスカー女優の貫禄である。


逆にサリーホーキンスはウィリーウォンカにとって今は亡き優しいお母さん。彼女も個性的な役柄を演じることが多いけど、今回は割と普通だ。主演作「ロストキング 500年越しの運命」は本年公開作品の中でも自分のベスト上位である。目標に向けてひたむきに進む女性だった。今回はひたむきさは息子のウィリーウォンカに譲る。


加えて、久々に元ラブコメディの帝王ヒューグラントを観た。個人的に左利きのゴルフプレイヤーであるフィルミケルソンに似ていると思っていたけど、今回は小人でわからないなあ。この振る舞いだけは観ていて退屈になる。途中で味方だか敵だかわからないけど、最後は味方。あとはおかしな神父になりきるミスタービーンことローワン・アトキンソンが登場する。ただ、彼独特の個性が見せつけられる時間が少ないのは残念。それにしても、英国の主演級をよくかき集めたものだ。
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映画「マエストロ レナードバーンスタイン」 キャリーマリガン&ブラッドリークーパー

2023-12-10 18:12:16 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「マエストロ その音楽と愛と」を映画館で観てきました。


映画「マエストロ」はブラッドリークーパーが名指揮者かつ作曲家であったレナード・バーンスタインを演じたNetflix製作の新作で自らメガホンをもつ。マーラーの5番がバックで流れるモノクロの予告編のセンスがよく、キャリーマリガン演じる妻との語り合い場面がよく見える。予告編を観れば、説明がなくても、ブラッドリークーパーがレナードバーンスタインを演じているのがわかる。そっくりになるようにメイクしている。

このブログに登場する回数は、ブラッドリークーパー,キャリーマリガンともに奇遇にも11回目である。2人ともメジャーに這い上がってきた。もちろん2人の共演は初めてである。

1943年カーネギーホールのコンサートでブルーノワルターの代役としてニューヨークフィルの副指揮者だったレナードバーンスタイン(ブラッドリークーパー)が代役を務めることになりキャリアが開ける。ユダヤ系の父をもつバーンスタインはミュージカルの作曲家としても活躍していた。ホームパーティで妹の友人のチリ出身の俳優フェリシア(キャリーマリガン)と知り合い恋に落ちる。

時は流れ、レナードバーンスタインは名声を高め、フェリシアとの男1人、女2人の子どもが大きくなっていた。一方で仕事仲間の男性とバーンスタインが接近している姿を見てフェリシアはいい顔をしていない。世間でもバーンスタインの男色系の噂が流れるようになっていた。

レナードバーンスタインのウラの一面をクローズアップする。
想像以上に見どころが多く、十分堪能できた。

音楽ファンはNetflixで見れるとケチらずに映画館の大画面で観るべきであろう。


センスの良い予告編を見るだけでは、50年代のモノクロ映画のような肌あいだと思っていた。レナードバーンスタインの若き日をモノクロで、中年以降をカラーの画面で見せてくれる。カラーの画面自体も解像度を落として70年代の映画を思わせるトーンだ。映し出す建物のオーセンティックなインテリアがゴージャスで、ロケハンにも成功して背景も美しい。コンサートホールも皆タキシード姿で正装だ。


演奏や舞台の場面は当然すごいが、1番の見どころは、キャリーマリガンとブラッドリークーパーのトークの絡み合いである。掛け合いがリズミカルでまさに職人芸の域だ。若き日のラブトークだけでなく、結婚倦怠期での罵り合いと両方である。さすがアメリカの超一流俳優の共演だと思わせる。エンディングロールのクレジットトップはあえてだと思うが、キャリー・マリガンである。闘病シーンも巧みに演じる。

映画ではバーンスタインのバイセクシュアルな振る舞いに触れる。若き日のレナードバーンスタインのところへ、ニューヨークフィルの音楽監督のロジンスキーから臨時指揮者依頼の連絡がある。その時、バーンスタインは裸で男性とベッドを共にしている。その場面を観て、初めてバーンスタインにゲイの要素があることを知る。それが、映画のストーリーを追うごとにエスカレートする。今と違って同性愛がタブーとされた時代だ。当然、妻のフェリシアの苦悩を追っていく。

映画で流れる曲の数々は,ブラッドリークーパーが選曲したという。センスある選曲だ。予告編で流れるマーラー5番は一度だけ。「ウエストサイドストーリー」もあの緊張感あふれるプロローグだけだ。

ミュージカルの場面やコンサートホールで指揮する場面もあっても、女性のオペラ歌手を従えてオーケストラを指揮する場面がこの映画の一番のハイライトであろう。レナードバーンスタインを意識したブラッドリークーパーの大げさな指揮ぶりも迫力がある。前半、ブラッドリー本人が連弾でピアノを弾いている場面が出る。リアルに鍵盤を叩いている。音楽的素養を感じた。


自分がクラシックを聴くようになった70年代前半の中学生の頃、レコード店のクラシックのコーナーでは,カラヤンのポスターがやたら目立ったものだ。それに対抗してCBSソニーがレナードバーンスタインを徹底的に売り込んでいた。4チャンネル録音のレコードもあった。

中学の同級生に高校生の兄貴がいて、マーラーが大好きだった。友人の家に行った時兄貴がレコードコレクションを説明してくれて影響を受けた。マーラーの指揮者はレナードバーンスタインだった。その兄貴は添削のZ会のペンネームもマーラーにしていた。映画「ベニスに死す」でマーラーの5番が全面に流れた後で、高らかに鳴り響くレナードバーンスタイン指揮のマーラーの交響曲を聴いたものだ。


映画の作品情報で、「ウエストサイドストーリー」の作曲家として紹介されているのに驚く。あの当時、超有名指揮者のレナードバーンスタインウエストサイドストーリー作曲していたという事実に逆に驚いた。ただ、「ウエストサイドストーリー」版権だけでバーンスタインは一生金には困らなかったそうだ。

指揮者の岩城宏之は追悼文で「ウエストサイドストーリー」について
「対位法やフーガなどのあらゆる作曲技法といい、音楽的ハーモニーの複雑な使い方といい、あの曲はびっくりするほど高度なものを盛り込んでいる。おそろしく高度な作曲技法を使っていてびっくりした。」(岩城宏之 文藝春秋1990年12月号)と大絶賛だ。
50年の時を隔ててレナードバーンスタインの伝記を観れたことがうれしい。
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映画「隣人X 疑惑の彼女」上野樹里

2023-12-09 08:17:37 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「隣人X 疑惑の彼女」を映画館で観てきました。


映画「隣人X 疑惑の彼女」は小説現代長編新人賞を受賞したパリュスあや子の小説「隣人X」を、上野樹里と林遣都の共演で映画化した作品だ。もちろん原作は未読。映画ポスターの上野樹里には、30代半ばの凛々しさがあって素敵だ。気になる。

「スウィングガール」上野樹里に注目した後も三木聡のカルト映画「亀は意外と速く泳ぐ」「陽だまりの彼女」などが好きだ。いずれもファンタジーとまでいかないが、異類との交わりの要素をもつ。この映画にもその匂いを感じて映画館に向かう。

ある日、日本は故郷を追われた惑星難民X の受け入れを発表した。 Xは人間の姿をそっくりコピーして日常に紛れ込んだ。 X は誰なのか?日本中でX を見つけ出そうと躍起 になっている 。

スクープがとれない鳴かず飛ばずの週刊誌記者の笹(林遣都)が「X特集」の取材班に起用される。各取材記者にX 疑惑リストが配られて身辺を調べるよう指示される。笹のリストには良子(上野樹里)と留学生のリン(ファン・ペイチャ)の2人のリストがあった。2人は同じコンビニで働いていた。笹は正体を隠して宝くじ売り場で掛け持ちで働く良子に近づく。

ちょっとしたきっかけで強引に良子を食事に誘った後も、笹は積極的にアプローチするとともに距離を縮め良子の素性に迫る。そうしているうちに恋心が徐々に芽生える。しかし、Xだと示す決定的証拠が見つからない。編集長(嶋田久作)からは記事になるネタを出せと結果を求められる。クビ一歩手前だ。笹は契約社員でカネがない。スクープを取るために,良子の実家に行って両親に会うことを決意する。


次にどうなるかが読みづらい。
世間の諸問題をいくつも含んだ物語の構造で、意外性もある映画であった。


SF的な展開を予想したが,さほどでもない。非現実の世界を描くことは少ない。原作者パリュスあや子フランス居住で、イスラム系難民の話題から原作の発想を得たという。それを監督脚本の熊澤尚人がかなりアレンジしているようだ。しかも、上野樹里と監督がディスカッションした結果、セリフも都度書きかえて脚本にしているという。なるほど良くできているのもうなずける。

主人公良子(上野樹里)は、田舎に両親がいる36歳独身の1人暮らしの設定だ。感情の起伏が少ない。女性っぽい女々しさはなく泣いたりわめいたりしない。セリフは淡々としている。同世代の女性の目線で作り上げた物語に不思議なリアル感を感じる。

映画は、週刊誌記者の目線で物語が展開していく。スクープがとれない契約社員のダメ週刊誌記者が,世間で話題になっている宇宙から来た移民者Xの謎を明かす取材班に運良く加わることができた。功を急いで良子に焦点を絞って、ないふり構わず近づいていく。

もともとはスクープをとることしか考えていなかったのに、ずっと近づいていると徐々に恋愛感情が生まれる。ただ、いかんせん金がない。祖母の施設費用も払えなくて追い出されそうだ。編集長からも責められる。窮地に立たされて、好きになった良子の両親からXだという証拠をとることで解決しようとする。記者としてXの正体を暴くのと、恋愛を成功させるのはトレードオフだ。複雑な立場に頭を悩ませながらも功を急ぐ林遣都が上手い。自分が同じ境遇だったらきっと発狂しているだろう。


ずっと前から好きな上野樹里が30代半ばになってグッといい女になった。
かわいさで売る初期の作品も良いが、少し大人になって撮った「陽だまりの彼女」上野樹里が抜群に良い。中学の時いじめられっ子だった女の子が突然美しくなって目の前に現れる。そんな設定も良かった。そんな1人のファンとして30代半ば過ぎた上野樹里をここで再度見直す。ストーリー展開だけでなく、セリフまで提案するというのは、若くして数多くの作品に出演して映画を知り尽くしたからだろう。渡辺淳一の「失楽園」をはじめとして、素敵な女性主人公に30代半ば過ぎの女性が多い。また、彼女の出演作が観たい。


この映画を観て、反省しなければならないことがあった。Xの疑念を持たれた台湾留学生リンが登場する。学業に専念したいが、生活のためにコンビニと居酒屋の両方でバイトする。言葉が不完全なので、顧客の要望に応えられない時がある。映画では繰り返し登場する。それもテーマになっている。原作者パリュスあや子日本育ちでフランスに移住するあたりで似たような苦労をしたかもしれない。

最近街中では、留学生のバイトを見ることが多い。確かに、たどたどしい言葉は聞こえずらいし、意思疎通を図りにくい。この映画では登場人物がかなり留学生をバカにしている場面がでてくる。ただ、自分を振り返ってそれに近いことをしていなかったのか?自分は絶対に違うとは言い切れないと思い、同じような場面に出くわしたら、こちらから目線を落として助けてあげねばならないのかと感じた。
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番外18 (高級居酒屋)

2023-12-08 20:09:53 | 散歩
東京のど真ん中の高級居酒屋でコースで食べました。
クルマで行ったけど🚶‍♀️歩くとなかなか遠いところです。
備忘録その1

これからスタート


和え物


造り盛り合わせ
ものすごくキレイ


白子




高級魚から揚げ


ずわい蟹


お肉


白身魚


明太子ごはん


デザート


うわさでは金満家が金主らしい
確かにネタはいい。すべておいしい。これから年末がスタート
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映画「朝がくるとむなしくなる」唐田えりか&芋生悠

2023-12-07 19:06:53 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「朝がくるとむなしくなる」を映画館で観てきました。


映画「朝がくるとむなしくなる」唐田えりか主演の新作でつい先日「こいびとのみつけかた」で主演を張っていた芋生悠が共演している。女流監督の⽯橋⼣帆がメガホンを持つ。2人の注目の若手女優が共演というのが気になる。瑞々しい2人である。サイン会兼ねた舞台挨拶付き上映に行った人うらやましい。

コンビニでバイトしている希(唐田えりか)は営業の仕事に疲れて会社を辞めたあと、1人暮らしで平凡な日々を送っている。たまたま、来店した加奈子(芋生悠)は中学の同級生で、希に声をかける。中学の時加奈子が転校して久々の再会だったが、それぞれの心の悩みを語り合う。

唐田えりかと芋生悠の2人の魅力的な若手女優を観に行くためだけの映画である。
これも低予算の映画であろう。先日「こいびとのみつけかた」の時もそうだったが、それよりも予算が少なさそう。コンビニや居酒屋など身近な所だけでロケをしている。コンビニの店員が芋生悠から唐田えりかに代わっただけで同じようなものだ。

ストーリーに大きな起伏がない。いろんな映画賞にエントリーしていると書いているけど、監督もさすがにずぶと過ぎる。悪いけど、そのレベルの映画ではない。でも、唐田えりかと芋生悠は魅力的なので許せる。


都会で就職したが、営業の仕事に疲れて辞めて悶々とバイトしながら暮らす女の子ってこんな気持ちを持ちながら暮らしているというセリフが続く。芋生悠も派遣社員の役だ。

大学新卒も一般職での募集は少なく、ほとんど総合職かつ営業でスタートの場合が多い。入社したては希望に満ちて元気がいいけど、すぐに夢破れ辞めていく。女性がやろうと思ってもたいていは脱落する。今の世の中には、この映画の唐田えりかみたいな女の子が多いと思う。

ただ、コンビニのバイトだけで家賃払って暮らしていけるのかな?別にマンションでなく普通のアパートでも都内周辺で家賃7万以上にはなる。この映画の設定では、会社を辞めたことは親には言っていない。生活の不足分がもらえる訳でもない。同じような境遇で、女性が付くスナックやラウンジには昼仕事してバイトしている女の子が東京にはわんさかいる。そうでないと生活できない。そう設定した映画をつくったほうが現代で考えると自然だと思う。そんな唐田えりかも見てみたい。


それにしても唐田えりかはかわいい。濱口監督「寝ても覚めても」で初めてみてから追いかけている。東出昌大に引っかかったのは運がなかった。世間のバッシングを浴びて気の毒だった。おそらくは、女性に嫌われがちの警戒されるタイプだろう。この映画での独白を聞きながら、あの低迷時期の彼女を想い、ジーンとくる。マスコミやへんな女にいじめられてかわいそうだったね。

でも、のような美人がいても唐田えりかを口説く東出の気持ちはほとんどの男たちはよくわかるだろう。毎日、高級フレンチばかり食べていても、シンプルな和食が食べたくなるものだ。ただ、「寝ても覚めても」以降の主演作品はイマイチ。作品に恵まれてほしい。映画への予算が大きい韓国映画界に進出という記事もあり、それもいいかもしれない。


芋生悠は素朴な感じがよかった「ソワレ」で注目して「こいびとのみつけかた」で主演を張り、それも観に行った。彼女もかわいい。唐田えりかとは仲がいいらしい。もうちょっと、レベルの高い映画で2人の共演が見たい。
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映画「ナポレオン」 ホアキンフェニックス&ヴァネッサカービー&リドリースコット

2023-12-03 20:07:10 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「ナポレオン」を映画館で観てきました。


映画「ナポレオン」はリドリースコット監督がホアキン・フェニックス主演でナポレオンの生涯を描いた新作だ。予告編からスケールの大きい映画だと想像できる。戴冠式のシーンもあるようだ。初めてパリのルーブル美術館に行った時、ダヴィッドが描くナポレオンの戴冠式の絵がもつ迫力に圧倒された。幅が約10mと巨大で、名作の多いルーブルで最も感動した。ずっと目の前にいて唸っていた。


高校の授業でナポレオンのことを習った記憶がない。大学受験で世界史を選択していたので、フランス革命からウィーン会議にかけての出来事はこまかく暗記した。なじみのある名称の事件や戦争が続くが、映像で観るのは初めてかもしれない。ホアキン・フェニックスとの相性はいい。期待して映画館に向かう。

映画はマリー・アントワネットギロチン処刑からスタートする。ナポレオンも処刑場にいたことになっている。軍に入隊して、トゥーロンで英国軍を撃退して戦功をあげた後、ジョセフィーヌとの出会いや国内の内乱に絡むナポレオンを映す。エジプト遠征へ向かった後、国内のトップに上り詰めた時の戴冠式、ロシア、オーストリアとのアウステルリッツの戦いなど歴史をつないでいく。運命のロシア遠征のあと、エルバ島の島流しから復活して、いわゆる百日天下でのワーテルローの戦いとセントヘレナへの島流しまで約2時間半で映し出す。


86歳のリドリースコット監督によるスケールの大きい見事な作品だ。
戴冠式は別として、世界史でただ暗記していただけの事件が実際に映像になっていて、すんなり頭に入っていく。ともかく、戦闘場面の迫力がすごい。これも一部VFXとか使っているとは思うが、実際に颯爽と馬が走り、ぶつかり合う。圧倒される。音楽も実に的確に感情を揺さぶる。これもすばらしい。あとは、ジョセフィーヌへの愛情については、自分は知らなかったので興味深く見れた。

⒈人間味あふれるナポレオンとジョセフィーヌ
ナポレオンが戦功をあげて上流社会を垣間見るようになった時、ジョセフィーヌを見染める。愛人で子供もいたジョセフィーヌに一気に引き寄せられる。そこで見せるナポレオンは、自分の知らないキャラクターをもつ人間ナポレオンだ。ホアキン・フェニックスが巧みに演じる。単純にナポレオンの喜怒哀楽を示す。頑張って?も、ジョセフィーヌとの間にお世継ぎが生まれない。ナポレオンはずっとヤキモキする。バックでいたす場面とかもでてくる。この焦りが前面に現れる。

この映画は比較的セリフが少ない。だからといって、観客にむずかしい解釈能力を必要とさせる映画でもない。革命以降の基本的フランス史がわかれば、映像で理解できる。ジョセフィーヌ役のヴァネッサカービーは適役だと思う。男女の駆け引きを知る恋多き女のイメージにピッタリだ。「ミッションインポッシブル」をはじめとして、いくつかの映画で観たイメージと今回は通じる。


⒉戦闘場面の迫力
ナポレオンが名をあげるトゥーロン要塞の英国軍撃破から軍事の天才ぶりを示す。作戦のアイディアが次から次へとうまくいく。何から何までうまくいく場面を見せるのは痛快だ。

そして、アウステルリッツの戦いだ。雪の中、戦場を映す。静かな雪景色はきれいだ。相手のオーストリア兵の動きを見て的確に指示を出すナポレオン。雪に向かって撃った大砲は雪の下の湖(川?)を露わにする。凍った水面に落ちる兵士たち。そのそばを大量の馬も走っている。こんな面倒な水中シーンよく撮ったな。兵士役の俳優たち大丈夫だったかなと気になるくらいだ。


⒊侮ったナポレオンとロシア遠征
ナポレオンは常にロシアを意識している。アレクサンドル1世の動静を気にしているのが映画でもわかる。トルストイの「戦争と平和」はまさにこの時代を描いた大作だ。

1812年のロシア遠征で失敗して、ナポレオンが勢いを弱めるのはあまりにも有名だ。モスクワからの退却で冬将軍には敵わなかった。映画でも物資補給がうまくいっていない場面がでる。日本軍の末期も補給がなく、ドツボにはまるのは同じだ。


クラウゼヴィッツの戦争論でも、ナポレオンの戦いについての言及がある。
「1812年にナポレオンがモスクワに向かって進軍したとき、その戦役の主眼とするところは、アレクサンドル皇帝に和を乞わしめるにあった。。。たとえモスクワに到るまでにナポレオンの得た戦果がいかに輝かしいものであったにせよ、しかしこれに脅かされてアレクサンドル皇帝が講和に追い込まれたかは依然として確実でない。」(クラウゼヴィッツ戦争論上 篠田訳 1968p.229)

諸国に対するナポレオンの脅威が徐々に弱まり、直前の戦争の時と同じのようにあっさり講和してくれなかったということだ。これが思惑に反したのと同時に、退却で損害を受けその後ナポレオンの尊厳がなくなる。

⒋ワーテルローの戦い
往年のベストセラーで渡部昇一「ドイツ参謀本部」という本があった。若き日に読んだが、おもしろくて常に書棚に置いている。この中でナポレオンの戦いに言及している。
エルバ島を脱出したナポレオンが皇帝に復帰してワーテルローの戦いに臨む。その時、ウエリントン率いる英国軍と戦う前にプロイセン軍と何度も戦って勝っている。
渡部昇一の本によれば
「プロイセン軍は敗戦が命取りにならないうちに巧みに退却するのである。外見では敗戦であるが,退却している方の指揮官と参謀長は敗戦だと思っていないことを,ナポレオンはどうも最後までわからなかったように見える。」(渡部昇一 ドイツ参謀本部1974 p.85)

「プロイセン軍はウェリントンと連合作戦を取りやすい方向に向かって兵を引いたのである。。。以前のナポレオン戦争では,戦場の敗者は敗残兵だったが,今やそれは整然たる戦場撤退軍に変わっているのだ。」(渡部1974 p.88)

「フランス軍はワーテルローに陣取ったウェリントンに猛襲を加えた。。。午前11時半ごろから夕方まで繰り返して押し寄せるフランス軍の攻撃をよく持ち堪えたのである。その戦線は突破される寸前だった。その時,予定のごとくプロイセン軍が右手の方から現れてきたのである。」(同 p.89)

まさにこの映画でプロイセン軍が援軍として押し寄せてきたときである。

「一昨日の戦場の敗者は,ほとんど兵力を減じないで猛攻に出てきたのである。ワーテルローの戦いでナポレオンの軍隊は戦場の敗者であるのみならず,まったくの敗残兵になった。戦場で敗れても整然と引き上げると言う事はナポレオンの辞書にはなかった。彼は戦場ではほとんど常に勝っていたのだから。」(同 p.90)

若き日に初めてこの本を読んだとき,この場面を読んでゾクゾクした。天才ナポレオンがこのように敗者となったのかと感嘆した。そのゾクゾクした場面を実際に映画「ナポレオン」では映像にして見せてくれるわけだから興奮しないわけがない。しかもすごい迫力である。この映画を見て本当に良かったと思った瞬間であった。
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