映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「きみの鳥はうたえる」 柄本佑&染谷将太&石橋静河

2018-09-20 21:11:47 | 映画(日本 2015年以降)
映画「きみの鳥はうたえる」を映画館で観てきました。


函館出身の作家佐藤泰志の芥川賞候補作品「きみの鳥はうたえる」の映画化である。原作は未読。海炭市叙景、そこのみにて光輝く、オーバー・フェンスと佐藤泰志原作の映画化作品はいずれも傑作であった。函館の町を舞台に社会の底辺をさまよう人たちに存在感を持たせる。今回も期待して映画館に向かう。

結果としては、前の3作ほど良くはなかった。でも、この映画でも若い3人の若者が函館の街に放たれている。寂れつつも独特の存在感を持つ函館の街の匂いが映画全面に漂う。クラブやビリヤード場の映像は今までの作品になかったところ、猥雑で喧噪な若者のたまり場に流れる雰囲気はいい感じだ。函館山や路面電車を3人のバックの映像にチラチラ登場させるのを見ると、直近に三度函館で遊んだ自分はなんかわくわくしてしまう。

調べると、この題ってビートルズ「And your bird can sing 」の日本語訳ですってね。アルバム「リヴォルバー」の中にあるジョン・レノンの曲、ジョンとジョージのツインギターで軽快に始まるジョン・レノンのヴォーカルが印象的な自分の好きな曲だけど、映画の中じゃ全然流れなかったなあ。全く気づかなかった。


函館郊外の書店で働く「僕」(柄本佑)は、失業中の静雄(染谷将太)と小さなアパートで共同生活を送っていた。ある日、「僕」は同じ書店で働く佐知子(石橋静河)とふとしたきっかけで関係をもつ。彼女は店長の島田(萩原聖人)とも抜き差しならない関係にあるようだが、その日から、毎晩のようにアパートへ遊びに来るようになる。こうして、「僕」、佐知子、静雄の気ままな生活が始まった。


夏の間、3人は、毎晩のように酒を飲み、クラブへ出かけ、ビリヤードをする。佐知子と恋人同士のようにふるまいながら、お互いを束縛せず、静雄とふたりで出かけることを勧める「僕」。

そんなひと夏が終わろうとしている頃、みんなでキャンプに行くことを提案する静雄。しかし「僕」は、その誘いを断り、キャンプには静雄と佐知子のふたりで行くことになる。次第に気持ちが近づく静雄と佐知子。函館でじっと暑さに耐える「僕」。3人の幸福な日々も終わりの気配を見せていた……。 (作品情報引用)


アパートで同居する男2人に女の子が絡まる函館が舞台の青春映画、僕と佐知子が何気ないきっかけでぐっと近づいていく。2人が働く本屋の店長と付き合っていたのに、佐知子は気がつくと若い僕との付き合いが楽しくなる。僕の同居人の静雄も加えて夜通し遊んでいくうちに静雄にも情が移る。三角関係になるわけだ。でも、激しい葛藤があるわけではない。淡々とストーリーが流れる。起伏の少なさが若干物足りない。

石橋静河がいい。石橋凌と原田美枝子の娘と聞くと驚くが、何となく面影はある。かわいい。ここでは柄本佑と軽い絡みを見せるが、バストトップは見せない。若くして大胆に脱いだお母さんとは違うなあ。母娘バストの形は似るというが、24歳だからかまだ出し惜しみだ。


クラブのシーンでは、ソロで踊ったりする。うまいというわけではないが、まあ味のあるダンスを踊っていると思ってプロフィルを見たら、一応はダンサーという肩書きもあるんだね。萩原聖人演じる中年の店長と不倫関係にあるという設定だけど、不自然さがない。大人びている。親も親なんでませた人生送ってきたんだろう。この若い2人がともに好きになってしまうような女の子ってこんな感じなのかな。最後の余韻は悪くない。
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映画「響 HIBIKI」 平手友梨奈&北川景子

2018-09-17 17:57:02 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「響 HIBIKI」を映画館で観てきました。

これは面白い。
コミックの原作の実写化である。文才のある高校1年生の響という名の少女が芥川賞と直木賞の候補になるなんて設定が面白そうと思い映画館に向かう。もちろん原作は未読。北川景子、小栗旬、柳楽優弥の主演級を脇役に退け檜坂46の平手友梨奈が主演を務めるが、これがいい。にやりともせずに、自分の世界で生きている。


ジャンル分けとしての大衆文学、純文学の境目というのはあいまいだけど、芥川賞と直木賞を同時受賞いうのも常識的に考えてありえないんじゃないかな?そのこと自体で少女の天才ぶりを示すということなんだろう。ここでは、鮎喰響の家庭を映しださない。父も母も姿を見せない。高校一年で親と同居しているのに出てこないというのは普通だとありえない。余計な設定は省略して、次から次へと主人公響の奇異な行動を列挙して映し出す。

そんな非現実であってもこの映画は痛快だ。原作者柳本光晴の着想に感心する。

響(平手友梨奈)は高校に進学し、クラブ活動必修ということで男友達と文芸部の部室に向かう。そこにはタバコを吸う不良たちがたむろい異様な雰囲気であった。入部したいという響に対して、親分格の不良が無理だと伝えると、響が逆らい不良が怒る。暴力を振るおうとするととっさに響は不良の指を折る。翌日、 部室に向かうと1年先輩の祖父江リカ(アヤカ・ウィルソン)がいた。その後紆余屈折を経て結局、響は文芸部員となる。


一方、編集者の花井ふみ(北川景子)は文芸誌の新人賞の準備にかかっていた。データで配信が必須という中で、封筒で送られてきた原稿を見つける。読んでみると、稀なる文才を感じさせる作品だ。しかし、封筒に鮎喰響という差出人名だけで発送元住所が書いていないので連絡のつけようがなく困っていた。その後、響から電話がかかってくるが、ふみの感想を伝えると一方的に切られたのだ。

ベストセラー作家祖父江秋人(吉田栄作)の新作が発売され、圧倒的な人気となっている。しかし、発行元はライバル出版社であった。編集長は祖父江の高校生の娘が小説を書きはじめたと聞きつけ、娘をきっかけに祖父江に近づこうとふみを祖父江の自宅に向かわせる。家に入ると、祖父江の書斎でたむろう少女を見つける。ここはあなたのいる場所でないとふみが叱責すると、何で出て行かねばならないのかと一悶着が起きた時に、偶然少女が鮎喰響だとわかり、ふみは驚く。祖父江秋人の娘が先輩のリカであったのだ。

その後、ふみは鮎喰響が新人賞をとると確信し、接触するようになる。各審査員の評判もいい。しかし、自分がムカつくことに暴力を振るう響の行為に戸惑う。それでも、一緒に発表の日を待つわけであるが。。。


TVのワイドショーではパワハラ、セクハラ、暴力指導の問題が蔓延している。呆れるくらいだ。たしかに、暴力を振るうのは良くないが、ちょっとした指導でもマスコミ総動員で叩くのはどうかと思うと世の中も思っているのではかしら?この主人公は少しでもムカつくと相手に暴力で対抗する。かよわい少女なのに格闘的な才能を持つということになっている。妙に我慢を重ねるわけでなく、ムカつく奴は叩きのめす。映画を見ていて逆にスカッとしてしまう。

一連の脇役
北川景子はTVドラマ「家売るオンナ」で演じた表情を変えない敏腕不動産屋営業ウーマンと全く真逆の常識人である。文芸誌「木蓮」においては編集者として新人発掘するのが大事な仕事である。悪態つく鮎喰響のしでかした尻拭いにも徹する。こういう役もいいかも?

社長にごまする高嶋政伸の編集長役もいい感じだ。

小栗旬は肉体労働をしながら、一人で悶々と原稿を書きシコシコ芥川賞を狙う売れない作家という設定だ。「苦役列車」の西村賢太のようなものだ。編集者に励まされながら、日夜パソコンで原稿を打ち続ける髪の毛ボサボサの小説家を演じる。普段演じる役と若干違うのも悪くない。


柳楽優弥はピザ屋でフリーターをしながら、創作に励む小説家の設定だ。勤め先でも屁理屈をこねて逆らう嫌なやつ。新人賞を争った鮎喰響に強烈な皮肉を言い一悶着が起きる。「ディストラクション・ベイビーズ」で見せた圧倒的な暴力での強さぶりとは別の面を見せたのがご愛嬌

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映画「寝ても覚めても」 東出昌大&唐田えりか

2018-09-02 17:54:35 | 映画(自分好みベスト100)
映画「寝ても覚めても」を映画館で観てきました。


予想外の展開に余韻が残ってしまいました。
柴崎友香の原作の映画化で、カンヌ映画祭に出品、東出昌大が一人二役という情報だけで映画館に向かいました。もちろん原作は未読で。先入観なしで、ストーリーを追った。途中まで、それなりの起伏はあったが、比較的平坦に進む。それが一転、あっと驚かされる。近来にないおすすめのラブ・ストーリーである。

泉谷朝子(唐田えりか)は大阪の川ぺりで鳥居麦(東出昌大)と運命的な出会いをする。2人は付き合うようになり、友人の岡崎(渡辺大知)や春代(伊藤沙莉)とともによく遊んでいた。買い物に行くといって夜帰ってこなかったり、麦は突発的な行動をとることがあった。そうして、急に行方をくらましてしまうのであった。


2年後、泉谷朝子は麦への思いを断ち切れないままに上京し喫茶店で働くようになる。朝子はある会社の会議室へコーヒーを届けにいくと、恋人鳥居麦に顔がそっくりな丸子亮平(東出昌大一人二役)と出会い驚く。いきなり、朝子は麦と語りかけるがちがう。それ以来、2人は街で何度も出くわすようになる。ぎこちない態度をとる朝子に惹かれていく亮平。真っ直ぐに想いを伝える亮平に、戸惑いながら朝子も惹かれていく。しかし、朝子は亮平に元恋人のことを告げられずにいた。

5年後、亮平と朝子は共に暮らすことになる。亮平の会社の同僚・串橋(瀬戸康史)や、朝子とルームシェアをしていたマヤ(山下リオ)と時々食事を4人でとるなど、平穏な日々を過ごしていた。ある日、亮平と朝子は出掛けた先で大阪時代の朝子の友人・春代と出会う。7年ぶりの再会に、亮平の顔を見て春代は驚く。麦とそっくりなので。大阪で親しかった春代も、麦の遠縁だった岡崎とも疎遠になっていた。その麦の現在の消息を朝子は春代から知ることになるのであるが。。。


1.唐田えりか
唐田えりかは久々に登場する逸材である。まだ20歳、今回は20代後半の設定と思しき世代まで演じる。ナチュラルメイクで、際立った清涼感を持つ。あえて言えば、若かりしときの深田恭子が近いであろうか?今回は比較的控えめな女の子を演じていくが、突如として大胆になる。このときの意外性あるパフォーマンスに将来性を感じる。今後、引っ張りだこになる可能性が高い。どちらかというと男性の保護本能をくすぐるタイプで、一般女性が陰で意地悪しそうなタイプかな?
映画では2人の友人役に対照的な女性を起用して補っている。



2.突然現れる同じ顔

映画を観ていて、一人二役の東出昌大が出てきたとき、いくつかの映画を思い浮かべた。ヒッチコック「めまい」キム・ノヴァック演じるいったん自殺したはずの女性にそっくりな女性がジェームズ・スチュワート演じる主人公の前に姿を現すシーン、「かくも長き不在」で戦争に行って行方不明になった夫が突然「第三の男」のヒロイン、アリダ・ヴァリ演じる妻の前に長い時間を経て現れるシーン。

要は同一人物じゃないかという連想をさせたのだ。実は映画の終盤に向かうまで、そういうことなのかと思っていた。その時、突如行方不明だった麦(バク)の存在がわかる。ここからがこの映画のヤマである。こういうもっていき方をするのか?と正直びっくりしてしまう。まさに肩透かし。これは観てのお楽しみであるが、その展開には驚いた。すごいと思わせる。

最後の余韻、これもよかった。もちろん、東出昌大は好演である。
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