映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「渇きと偽り」エリックバナ

2022-09-23 20:18:09 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「渇きと偽り」を映画館で観てきました。


映画「渇きと偽り」エリックバナ主演のクライムサスペンス映画である。「ミュンヘン」「ハルク」などのエリックバナが久々に母国オーストラリアに戻って主演を張る作品だ。ベストセラー小説「the dry」ロバートコノリー監督で映画化した。余計なことだが、「秘密の森、その向こう」が大外しのつまらなさで、違ったテイストで選んだら、想像以上におもしろかった。

映画がはじまり、町の上空から広大な大平原を映す。これがアメリカといわれても誰も疑問に感じないであろう。キエワラの町は年324日晴れていて乾燥しきっている。火災が起きやすい状況になっている。観光大国のように見えるが、実はまさにdryなエリアということがわかる。

オーストラリアの連邦警察のエリートであるアーロンフォーク(エリックバナ)は、高校時代の友人ルークの葬儀に出席するために故郷のキエワラに帰郷する。ルークは妻子を殺してそのまま自殺した。言葉も話せない乳幼児だけ残してルークが自ら死んだのかルークの両親も信じられない様子をみて、警察官の職務としては休暇中にも関わらず真相を知りたいと動き出す。


高校時代の女友達グレッチェン(ジュネヴィーヴ・オーライリー)はアーロンを歓迎してくれたが、キエワラの町の人はアーロンをよく思っていない。それは、20年前に川で水死したルーク、アーロンの共通の友人エリーの死にアーロンが関わっている疑いが当時あったのだ。アーロンは父とともにそのとき町を離れている。エリーの死の真相も探りながら、ルークが本当に家族と心中を図ったのか地元の警官レイコーとともに調べていく。


謎解き要素が強いストーリーで徐々に引き込まれる映画だ。
結局2つの謎解きに付き合う。20年前の水死の真相と今回の一家心中の真相だ。ここでは、謎を追うアーロン自身が最初の水死事件の犯人とも疑われてもおかしくない状況にある。水死の前にエリーにアーロンが渡した「川で逢おう」というメモが遺品としてあったのだ。エリーの親や親類にいやがらせをうける。ルークにも水死事件の犯人になってもおかしくない振る舞いがある。


この映画では、映画の進行とともに、いろんな登場人物のうち誰が殺しをやってもおかしくないと観客が推理するような場面をいくつもつくる。これがうまい。自分も途中で、ある人物が犯人で決着するのかと思った。その推理をはずしながら展開するので画面から目が離せない。やっぱり、ミステリータッチのクライムサスペンスは良いねえ。

上映館は少なく、観客も少なかった。
でもおすすめのサスペンスである。
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映画「手 ロマンポルノナウ」 福永朱梨&金子大地

2022-09-22 20:21:19 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
日活ロマンポルノ50周年記念、ロマンポルノナウ「手」を映画館で観てきました。


映画「手」はニューロマンポルノシリーズの第一弾作品で、ちょっと思い出しただけ松居大悟監督がメガホンをとる。主演の福永朱梨、金子大地は名前を見てもピンとこないけど、どこかで観ているのかもしれない。18禁なのに中学から高校にかけて日活ポルノはよく観ていたし、松居監督の前作も気に入っていたので映画館に向かう。その昔日活ポルノの映画館では観客に女性の姿を見ることはめったになかった。時代も変わったのか?約20〜30%程度の若い女性がいる。

オジサン好きの25才の女の子(福永朱梨)が、転職が決まっている同僚の男(金子大地)と気がつくとひたすら交わる関係を続けるという話である。青春ポルノ路線というべきだろうか。

まあ普通って感じ。話の内容はどうってことないし、男女の絡みは激しくない。今年の前半戦で、今泉力哉監督と城定秀夫監督が組んで愛なのに」「猫は逃げたの2作をつくった。個人的には好きだし、2作ともよくできている映画だった。その路線に近いかな?


ピンク映画出身の城定監督がいるので、エロティックな場面も目立った。その2作に比べると、せっかくの18禁なのに弱いなあ。ストーリーがあの2作ほど練られていないし、だからといって絡みで見せるわけでない。松居大悟監督の「ちょっと思い出しただけは良かったけど、ピンク映画で手慣れている城定監督と比べると修行が足りないってところだ。

⒈福永朱梨
好感のもてる女の子だった。性格も良さそう。張り切ってポルノ映画に出るだけ大したものだ。前貼りしていないように見えたけど、どうかな。往年の肉感的な日活の女優陣に比べると、ボディは迫力不足だけど、普通に演技している場面は悪くない。オジサン好きで付き合ったオジサンの実態の写真をファイルにまとめるシーンがおもしろい。親しみがもてる。

ついこの間観た「LOVE LIFE」にも出ていたというけど、え!出てたの?という感じだ。むかしの初恋の人とかとカラオケボックスでやっちゃう。今ってそんな奴らいるんだ。妹役の女の子が初体験の最中にお姉さんに実況中継で電話してくる場面には笑えた。


⒉金子大地
すらっとした優男で、女にはモテそう。残業で2人っきりになるのをきっかけに誘い出すなんて手はむかし自分も使った。結婚間近なのについついほかの女に手を出すなんて最低だと思うけど、不思議なことにそういうときに限ってチャンスが生まれるんだよなあ。若いときを思い出す。


大河ドラマにも出ているし、調べるとサマーフィルムにのせてに出ていて、あの文化祭用の映画の武士役だった奴なんだとわかる。あの映画大好きでおもしろかったな。映画を観てもまったく同一人物だとわからなかった。

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映画「3つの鍵」 ナンニ・モレッティ

2022-09-20 20:27:09 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「3つの鍵」を映画館で観てきました。


「3つの鍵(Tre piani)」はイタリアの名監督ナンニ・モレッティの新作である。自ら俳優としても出演している。原題は3階建という意味で、イスラエルの作家エシュコル・ネボの原作「Three floors up」ローマに舞台を移して、3階建分譲高級アパートメントに住む4つの家族に起きる出来事を描く。映像はある交通事故の場面からスタートする。

ある夜、猛スピードで走る車が女性を跳ね、3階建アパートメントに衝突する。女性は亡くなる。衝突した建物の3階に住む裁判官夫婦の息子アンドレアが運転していた。その事故を2階に住むモニカが外で目撃していた。でも、出産のため病院に向かう途中でかまっていられない。車が衝突した1階に住む夫婦は仕事場がぐちゃぐちゃだ。共働きなので向かいに住む老夫婦に娘を預けることになる。


ここから話を始める。この後、それぞれの家族で異常と思える行動をとる人物が出てくる。オムニバス形式で時間が経って話がつながっていくというのではなく、最初から少しづつ接触してつなぎ合っている

重厚感のある映画である。
最初に映る交通事故のシーンから不安を増長させる音楽が流れる。音楽から感じられるムードと映像でこの映画は格が違うなと感じる。ヴィジュアル、音楽両方ともトップレベルである。特にフランコ・ピエルサンティの音楽は絶品だ。

いくつもの家族の話をまとめるので、ストーリーのつなぎがぎこちない部分もある。それでも、逸話がいくつもあると、訳がわからない場合も多い。ここではそうならない。極端な人物をクローズアップしているので、頭の中に要旨が印象深く刻み込まれる。

ヴィジュアル的にはデザインが進化しているイタリアならではのオーセンティックなインテリアに包まれる。木の素材感を散りばめた素敵な天井高の高いアパートメントの部屋だ。主要場面では、タンゴの伴奏で奏でられるバンドネオンの音色を混ぜた音楽で観ているわれわれの視覚と聴覚両方を高揚させる。なんと素晴らしいのであろう。

⒈ナンニ・モレッティ監督の演出
ごく普通の男女がそれぞれ普段の顔と違う一面を持っている。その悪い部分をエピソードにして誇張する。映画を観ている方は登場人物が何でこんなことするのと思ってしまう。そう思わせるのがナンニモレッティの作戦だ。それぞれのストーリーごとに登場人物の心の揺れの方向を予想と違う展開に持っていき、楽しませてくれる。

逸話がいくつもあるが2つだけ抽出する。

⒉交通事故を起こした男
いきなりの交通事故を起こした男の両親はともに裁判官である。どちらかというと、母親の方が息子を強くかばう。本来であれば、事故により人を殺したわけである。もっと反省せねばならないのが普通だ。でも、そんな気配はないどころか、知っている裁判官を懐柔して刑を軽くしてもらってくれとしか言わない。

結局、反省の色のない息子を父親が見捨てていると感じ、息子は大暴れするのだ。一部の異常人物を除いては、どの観客も息子に同情しないであろう。また、そうなるような息子のパフォーマンスだ。悪い部分を誇張する監督の一面がでる。でも、このままではストーリーが終わらない。この映画では5年後、10年後の展開まで映し出す。善と悪のバランスを時の流れでとっていく。うまい。


⒊老人が娘にいたずらしたのではと想像をする男
一階に住む共働きの夫婦は娘を目の前に住む老人夫婦に一時的に預かってもらう。老人の夫の方は若干ボケが進んでいる。物忘れがひどいと老人と遊ぶ娘が気がつく。それでもまたその老夫婦に預けるのだ。ところが、娘と老紳士が行方不明になってしまう。懸命に探して、父親が娘と一緒に行ったことのある公園に行くといた。老人は倒れて失禁していた。その時点で、父親は、老人が娘に性的いたずらをしたのでは?と疑う

老人はボケが進んでいているのに疑い方が半端じゃない。老人は何も覚えていないという。母親はいたずらするなんてあり得ないと思っていても、父親は血相を変えて老人に挑む。普通じゃない。


この話おかしいんじゃないの?と思っているときに、老人の孫娘が留学先のパリから帰ってくる。この孫娘は父親に男として好意を持っていて積極的に近づいていく。別に罠にはめようとしているわけではないが、気がつくと男女関係に進んでしまう。とんだところで脱線していくが、結局破滅に進む。


他にも、出産まもない母親の妄想やその夫の兄とのいざこざなどまだまだ盛りだくさんだ。こんな複雑な人間関係の話が続くと訳がわからないはずだが、そうならない。それ自体がナンニ・モレッティ監督のうまさなのである。ローマの崇高な背景の中で、ヴィジュアルよく描写しているのをみると、気分が悪くなってもおかしくない話なのに引き込まれていく見事だ
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映画「川っぺりムコリッタ」松山ケンイチ

2022-09-19 20:28:07 | 映画(日本 2019年以降)
映画「川っぺりムコリッタ」を映画館で観てきました。


映画「川っペリムコリッタ」は「かもめ食堂」の荻上直子が自らの原作をメガホンを持ち映画化したものである。出演者は松山ケンイチ、吉岡秀隆、ムロツヨシと主演級が揃う。予告編でみた時の田舎のほんわかした空気感に吸い寄せられ映画館に向かう。

富山の塩辛の加工工場に職を得た山田(松山ケンイチ)が紹介されて南(満島ひかり)が大家の集合住宅「ハイツムコリッタ」に住むことになる。人付き合いが苦手な山田は、静かに生活していくつもりだった。ところが、隣部屋の島田(ムロツヨシ)に声をかけられる。ずうずうしい島田と付き合うのを最初は嫌がったが、徐々に親しくなり、息子と一緒に墓石を売っている溝口(吉岡秀隆)などとも一緒にご飯を食べる仲となる。ただ、住人それぞれがつらい過去を持っていた。


田舎が舞台のほんわかしたムードは予想通りで、末梢神経を刺激しない穏やかな展開が続く。ただ、大きな起伏がなさすぎで、想像以上に何もなかった。孤独な男が徐々に周囲に心を許すようになるというテーマはよくわかる。でも、脂っぽさが少し足りない気もする。

⒈松山ケンイチと別れた父の死
塩辛工場に行き、社長(緒方直人)からここで頑張って更生してという言葉で、ムショ帰りなんだなというのがいきなりわかる。両親が4才で別れ、母親に1人で暮らせと高校時代に捨てられるなんて家庭環境は最悪だ。殺人事件の犯人といった凶悪犯でなく、いわゆる金銭的詐欺の片棒を担いだという。オレオレ詐欺の共謀者かもしれない。

生活するのがやっとなので、メシ食うために刑務所に入った方がマシだという。ようやく、職を得て住処も確保したのに、役所の福祉課から、父親が腐乱死体で見つかったと連絡があり戸惑う。ここからは、孤独死した父の身の上を考えたら、今の周囲と強調する暮らしがどんなにか幸せかというのが映画のテーマになる。


⒉満島ひかり
大家で娘と一緒に暮らしている。主人とは死に別れで、まだ夫への想いが断ち切れないという設定である。自慰を連想するきわどいシーンもある。松山ケンイチが働く水産工場をみて、満島ひかりが主役の川の底からこんにちはを思わず連想する。


⒊吉岡秀隆(溝口)
息子を引き連れ、飛び込みで墓石のセールスをする。こんなの簡単にうまく売れるはずがない。収入もなく家賃は半年滞納だ。普通、3ヶ月家賃滞納すると強制退去の訴訟を受けてもいいようなものだが、まあこの大家はのんびりとしたものだ。村上春樹「1Q84」NHK受信料係の主人公の父親が息子を引き連れて集金にあたった話を思い出した。まあ、子供連れても墓石売れないよね。ところが、劇中一回だけうまくいく。お祝いですき焼きだ。


⒋ムロツヨシ(島田)
ミニマニストを自称している。最小限に生きるとして、節約に走るがそもそも金がない。寺の住職が友達で地元育ちのようだ。いきなり初対面で、給湯器が壊れたから風呂に入らせてくれと言ってきたり、自分が家庭菜園でつくった野菜を持ってご飯を食わせてくれとやってくる。ずうずうしい奴だ。そんな奴でも徐々に親しくなる。父親の死体の引き取りをためらっている山田に背中を押していかせたのが島田だ。


他にも、緒方直人や柄本佑などメジャー級が登場する。水産工場の社長役の緒方直人もここのところ役柄に恵まれ観る機会が増えた。TVシリーズ「六本木クラス」でも同じような食品会社の社長をやっている。中小企業の社長役ってちょっとイメージが違うと思ったが、もしかしてハマり役なのかも?

遺骨を取りに行ったときに対応するのが、公務員役の柄本佑だ。保管場所にはたくさんの遺骨が置いてあり、山田が驚く。孤独死で誰も名乗り出ない遺骨ってあるのであろう。ところが、引き取った後の処理に戸惑う。後半戦はその処置で話が続く。遺骨はそのまま捨てると犯罪で粉々にして撒くならいいらしい。初めて知った。
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映画「沈黙のパレード」福山雅治&柴咲コウ

2022-09-18 21:58:22 | 映画(日本 2019年以降)
映画「沈黙のパレード」を映画館で観てきました。


映画「沈黙のパレード」はおなじみ東野圭吾原作、福山雅治主演のガリレオシリーズの新作である。気がつくと、シリーズの前作真夏の方程式から9年経っている。福山雅治主演の映画って相性がいいのか好きな映画が多い。ノンフィクション系中心の読書性向なので、東野圭吾の原作は未読、先入観なく映画館に向かう。

ガリレオシリーズの前2作同様十分娯楽性があって楽しめる作品だった。
大衆を意識しすぎの要素や人間ドラマの部分などはもっと少なくてもと部分的には思うが、単純じゃないストーリーをうまくまとめた印象をもつ。

東京郊外の菊野市で飲食店「なみきや」を営む並木家の長女佐織(川床明日香)は3年前から行方不明になっていたが、遠く離れた静岡県牧之原市の火災現場で遺体が発見された。佐織は音楽の才能を認められて、音楽プロデューサー新倉(椎名桔平)の元でレッスンに励んでいた。火災現場は以前少女殺人事件の重要被疑者だった蓮沼(村上淳)の実家で、蓮沼の母親の死体も発見される。

警視庁捜査一課の草薙刑事(北村一輝)は以前蓮沼が犯人と目された事件に関わっていたので、自分が取り逃がしたせいかとショックを受ける。一方で同じ捜査一課の内海刑事(柴咲コウ)は大学教授に昇進した物理学者湯川(福山雅治)に相談するが、自分には関係ないと取り合わない。結局、殺人事件の被疑者だった蓮沼は釈放される。蓮沼は菊野市に仲間とともに住んでいた。蓮沼は自分に疑いをかけられていることを知りながら、「なみきや」に入っていき、釈放されたことをよく思っていない並木家の住人や店の常連に嫌がられる。


菊野市のイベントで仮装パレードが行われているその日、蓮沼が自宅で遺体で発見される。遺体に損傷はないが、窒息死だった。これまでの経緯で並木家の両親や周囲に恨みの犯行の嫌疑がかけられたが、いずれもアリバイがあった。今は菊野市の研究所にいる湯川は「なみきや」の常連でもあったので、捜査に協力することになるのである。


ここまでのあらすじもざっと言うのはむずかしいので、いつもより長い。
ここからが湯川の推理がスタートする本線である。得意の物理系知識を生かした推理を展開させていく。実に楽しい。
殺人事件の捜査なのに、街頭の防犯カメラの映像などのハイテク機能を捜査に活用していないと感じさせる映画がある。阪本順治「冬薔薇」はこれじゃ昭和の時代の捜査だね。ひどかった。別に湯川教授がどうのというわけでなく、警察が丹念に防犯カメラをしらべたりする現代の捜査になっていること自体が好感が持てる。

また、気づきづらいいくつもの軽い伏線を映画の中で散りばめている。映画の進行とともにきっちり回収して示しているのもミステリー映画の基本なので理に沿っている印象を受ける。

ミステリー作品には、ストーリーの先行きを一緒に推理し考える楽しさがある。探偵の鮮やかな推理よりも重要だと思う。その意味では、「意外性のある犯人」に加えて「ひねりのあるミステリー」という面白みを感じる。現代の作家の中で最も多い国内22本、海外6本の合計28本の映画作品を生んでいる東野圭吾作品はやっぱりいいねえ。福山雅治のムードはいつもながら好きだなあ。


映画の性質上ネタバレを避けるが、途中までアガサクリスティの「オリエント急行殺人事件」と同じ展開になるんじゃないかと感じていた。個人的には名脚本家橋本忍のオリジナルで小林桂樹と仲代達也主演の名作ミステリー映画白と黒の事件に類似性を感じた。まったく違う話だけど、根幹となる部分は一緒かな。でもこちらの方がひねっている。
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映画「LOVE LIFE」 木村文乃&深田晃司

2022-09-14 18:18:12 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「LOVE LIFE」を映画館で観てきました。


映画「LOVE LIFE 」深田晃司監督の新作である。よこがお」「淵に立つでは先を読ませないストーリーづくりのうまさに魅了された。日経新聞で宮台真司が強く推薦していることも後押しとなる。宮台真司の映画評もストーリー展開は若干ぼかし気味で予備知識なく観に行く。

ある団地に住む大沢二郎(永山絢斗)と妙子(木村文乃)には、妙子の連れ子の啓太がいる。団地の別棟には二郎の両親が住んでいるが、息子夫婦が籍を入れたにもかかわらず父(田口モトロヲ)はまだ結婚に反対していた。二郎の同僚の協力も得て父の誕生日祝いを二郎の部屋で行っている時に悲劇的な事件が起きる。その事件をきっかけに、失踪していた妙子の元夫(砂田アトム)が突如現れ事態は予想外の方向に進むという話の展開だ。

ひねりが効いたストーリー展開だ。
ついこの間観た「百花」は別に実話に基づいたわけではないのに、物語づくりがあまりに単純すぎた。深田晃司監督のよこがお淵に立つがもつサスペンスタッチはここではない。それでも、二度三度と思わぬ展開にもっていく旨さをこの映画に感じた。決してセリフが多い映画ではないが、所々でストーリー立てがはっきりわかるように登場人物がセリフを発していて明快さも備えている。

ただ、前半戦で夫の両親が発する言葉は、結婚への反対をわざと強調するために言っていることかと思う。でも、こんな言い方する人っているかな?と感じてしまう。


⒈役所勤め
夫の二郎は役所勤めで福祉関係の仕事をしていて、妻の妙子はホームレスの面倒を見たりする生活支援センターで働いている。元夫は生活保護を受けねばならない状態に陥っている。主人公が役所勤めだから、映画のストーリーが成立するわけでうまく設定したなあと感心する。不自然さはない。

二郎の父親が結婚を承諾していないことを知りつつ、二郎の役所の同僚が集まってする二郎の父親の誕生日を祝うパフォーマンスもこういう人たちなら、こんなことするかもしれないと感じる。普通の会社だったらあまりないよなあ。


⒉後半戦の展開とダメンズウォーカー
あくまで団地に住む役所勤めの普通の人って感じなのが、突如グローバルに世界が広がり驚く。元夫は失踪していた。しばらく、妙子が探していた。そのうちにあきらめて働くうちに今の夫と知り合う。もともと、元夫は話せない。手話でしか意思を伝えることができない。それだからダメ男と決めつけるのもどうだが、目の前に現れても、全くの無力だ。

途中の展開から妙子のダメンズウォーカー的な要素が強くなる。自分たちの目の前から姿を消したわけだよ。どうしてそうなるの?そう妙子に言ってやりたくなる。しかし、この辺りから思わぬ展開に深田晃司がもっていく。最終場面に近づくにつれて濱口竜介監督寝ても覚めてもにアナロジーを感じた。話の内容は全く違うけど、似た展開だと感じていたが、深田晃司はここでもうひとひねりを加える。思わず吹き出してしまった。


木村文乃は好演、手話がもともとできるわけではないだろうから割と準備が必要だったろうなあ。他にも語学も若干やる必要もあったから大変だったんじゃないかな。
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映画「百花」 原田美枝子&菅田将暉

2022-09-11 19:59:25 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「百花」を映画館で観てきました。


百花は映画プロデューサー川村元気の原作をもとに菅田将暉と原田美枝子が親子役を演じる新作である。川村元気は自らメガホンを持つ。原田美枝子は自分と同世代,新作で認知症の母親役を演じるのを予告編で見ていたので、すぐさま映画館に向かう。認知症がテーマなのだからか、ちょっとこの人たち映画をみて大丈夫なの?と思わせるような杖をついた老人がやけに目立つ。

葛西泉(菅田将暉)はレコード会社勤務で、同僚の香織(長澤まさみ)と結婚していた。ピアノ教師だった母親百合子(原田美枝子)は徐々に認知症の症状がひどくなり時折行方不明になって泉を心配させていた。ヘルパー雇っても状況は変わらず、いよいよ施設に入所せざるをえない段階となる。荷物整理をしていた泉が小学校の時母親が突然家を出て行った秘密を知るという展開だ。


詳細は知らされないが、産まれた時から母子で暮らしている。にもかかわらず、母親は家を飛び出し男のいる神戸に行ってしまう。とても良い母親とは言えない。90年代半ばと現代と時間を交互にしながら、映像は進む。長回しが多い。ワンシーンワンショットで極めてむずかしい条件である。菅田将暉,原田美枝子いずれも好演である。美しい映像を見せてくれる。

しかしながら,映像の内容はともかくとして,内容は薄い。ストーリーはあまりに単純すぎて深みがない。想像していたよりも感涙にむせぶ状況にはならなかった。「半分の花火が見たい。」と言う母親百合子の希望を叶えてやろうとする息子の気持ちというのが映画のキーセンテンスである。その伏線は最終段階になって回収される。


ただいくつか出てきている場面の伏線が回収されてないじゃないかと思わざるを得ない中途半端なストーリー立てになっている。できてしまった男永瀬正敏の存在もいつの間にか尻切れトンボだ。映画を104分でまとめるというのは良い。ただ、ワンショットワンシーンにこだわりすぎて,肝心なことを忘れてしまっている気がした。

原田美枝子は自分と同じ時代に青春を過ごした。でもずっと大人で大地の子守唄(記事)」で若き日に気前よく脱いで我々をびっくりさせた。その原田美枝子が認知症の役柄を演じている。スーパーで誰かの幻影を見て,そのまま外に飛び出して万引きに間違えられたり,大人になった息子を探しに真っ暗な小学校の中に飛び込んで行ったり、いずれはこんなふうになってしまうのかとふと心配してしまう。


映像の時代設定を現在とすると,神戸にいるときに震災に遭遇するとすると、95年での原田美枝子の年齢設定は30代半ばすぎである。その年代の役柄もそのまま今回演じている。まさか娘の石橋静河という訳にはならないよね。色々と工夫して映したと思うが,よくがんばったなと同世代のよしみでエールを送りたい。
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映画「アフリカの光」萩原健一&田中邦衛&神代辰巳

2022-09-05 17:57:38 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「アフリカの光」を名画座で観てきました。


アフリカの光は1975年の萩原健一主演、神代辰巳監督の東宝映画である。名画座の神代辰巳特集で未見の作品を確認している。前年の「青春の蹉跌」がヒットしたおかげで東宝から連続して神代辰巳にオーダーが入るようになる。孤高の作家丸山健二原作の映画化で、アフリカでの出来事ということでなく、アフリカへの航海を夢みる若者2人が流れ者のように北国の漁港に入り現地の荒くれた男たちと交わる話である。架空の北国の町となっているが、知床の羅臼が舞台である。流氷が広がり、白鳥の姿も見える。極寒の中の撮影だ。

いきなり、流れ者の若者2人(萩原健一、田中邦衛)が飲み屋で現地の船乗りらしき男たちに絡まれ、大げんかして警察に留置されるシーンからスタートする。なんでケンカするのか、セリフなくいきなりのドタバタ劇だ。その後も、エロ系場末の飲み屋で桃井かおりが男の相手をしたり、飲んだくれ船員が暴れてという港町映画独特のムードでストーリーが流れる。

でも、じっと観ていても、話の内容がよくつかめない。有名俳優が多くても登場人物それぞれがどういう関係にあるのか説明的セリフもなさすぎて「櫛の火」よりもわかりずらい。藤竜也桃井かおりの情夫とわかっても、小池朝雄高橋洋子の父親とは映画見ている間ではわからない。作品情報を読んで初めてわかる。この映画はちょっとキツイなあ。おすすめ映画ではない。

神代辰巳監督も一部作品で演出しているTVドラマ「傷だらけの天使」の撮影を終えた萩原健一が主演だ。訳もわからず、地元の船員たちとすぐ取っ組み合いだ。カメラの姫田真左久手持ちカメラでブレまくりに捉える。ショーケンの動きは「傷だらけの天使」の木暮修とまったく一緒なのに驚く。決してカッコいい役柄ではない。まわりに集団でリンチもくらう。桃井かおりから「あんた下手ねえ」と交わった後笑いながら言われる。それでも、70年代の萩原健一ファンなら、ドジな部分も残したパフォーマンスで気にいるかもしれない。


当時、「スケアクロウ」など男性がコンビを組んだ映画が流行っているせいもあってか、萩原健一の相棒役が田中邦衛である。本職の演劇の活躍は知らないが、映画では「若大将シリーズ」も終わって、仁義なき戦い他の東映ヤクザ映画でチンピラ的役をやった後だ。男色系映画のように妙に2人がくっつくのがちょっと違和感ある感じだ。

神代辰巳監督作品との相性の良い桃井かおりがここでも登場、ヤクザの情婦なのに平気で流れ者の2人に体を許す。萩原健一とは「青春の蹉跌」で雪の上で大胆に絡んでいた。それよりも低レベルの女を演じる。場末ムードがぷんぷんする。高橋洋子も神代作品3作連続で登場するけど、徐々にイマイチになっていく。
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映画「櫛の火」ジャネット八田&草刈正雄&桃井かおり&神代辰巳

2022-09-04 17:59:03 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「櫛の火」を名画座で観てきました。

櫛の火は1975年の神代辰巳監督作品、草刈正雄が主役でジャネット八田と桃井かおりが相手役である。昭和50年代に入ったばかりで町並みや部屋の古さが過渡期の感じがする。映画の存在は知っていても、DVDにない。観るきっかけがなかった作品のひとつである。日活映画主戦場の神代辰巳青春の蹉跌がヒットした後、東宝で一連の作品を監督をしている。人気監督として脂が乗り切っている。ジャネット八田のヌードは週刊誌のグラビア等で当時話題になった記憶がある。結局観に行っていない。古井由吉の原作はあるけれど、必ずしも忠実ではないようだ。

スタートから説明は少ない。映画が始まり草刈正雄がうなだれたパフォーマンスを見せた後、ジャネット八田の絡みと、桃井かおりとの絡みを交互に映す。神代辰巳作品だけに、ねちっこい。当時人気だった女性2人とも気前よく脱いでくれる。でも、一体何者なのかそれぞれのプロフィールが何も語られていない

しばらくして、桃井かおり草刈正雄に話し始める。学生運動にのめり込んだ後に草刈正雄と付き合い始めたようだ。そのうちに、病院内でヒステリックになっている桃井かおりを映し始めたと思ったら、いきなり病院内での通夜のシーンだ。ジャネット八田が人妻だとわかるのもずっと後、河原崎長一郎演じる亭主がいるけど、草刈正雄と関係を持つ。岸田森との怪しい関係もある。何かというと、すぐ戯れるくっついたままの状態は、日活ポルノ並みの絡み頻度で最近でいえば「火口のふたり」のようだ。

映画のストーリーを要約している文章を読むと、実際の映像とまったく違う映画を説明しているようだ。草刈正雄はMG5のモデルから役者になって2年目、セリフも不自然だし、まったくの大根役者である。しかもやせすぎボリューム感ある2人の裸体にはアンバランスなカラダだ。いいところがまったくない。それでも、当時の美人女優2人が気前よく脱ぐ相手役としてのカッコ良さがある。


改めて、神代辰巳の本を読むと、この映画はかなり編集でカットさせられたようだ。併映の萩原健一、岸惠子コンビの「雨のアムステルダム」との関係で30分近くカットされたという。名画座のフィルム状態が悪いのかもしれないが、ここまでカットされるとキツイ。高橋洋子が八田の夫役河原崎の愛人として出演しているが、中途半端な存在になっている。気の毒な感じがする反面、編集だけでなく映倫からもカットされた状態でもこれだけ濡れ場があるわけだから、実際にはどうだったんだろうか?と考えてしまう。神代辰巳監督の盟友撮影の姫田真左久これこそオ◯ンコ映画(映画監督 神代辰巳 2019 p219)だと言っているのもわかる。
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映画「スワンソング」ウド・キアー

2022-09-01 19:47:37 | 映画(自分好みベスト100)
映画「スワンソング」を映画館で観てきました。


映画「スワンソング」はゲイのヘアメイクドレッサーの話で、ポスターもなんか好きじゃないなあと思っていた作品。ただ、老人のロードムービーという宣伝文句が気になり映画館に向かう。好きなジャンルだからだ。これが予想以上に良かった

オハイオ州、死期を待っているような老人が多い老人介護施設にいるヘアメイクドレッサーだったパット(ウドキアー)の元に、以前上得意だったリタ(リンダエヴァンス)の弁護士が訪れる。つい先ごろ亡くなり、遺言にはパットに「死化粧」をやってほしいと書いてある。報酬は高いが、今さらもう無理ということで断る。ところが、過去の出来事が走馬灯のようによみがえり、施設を抜け出し葬儀場に向かう話だ。


好きだなあこの映画
施設にいるパットは普通によくいる男性の老人である。ゲイの香りはしない。でもいたずらっ子が大きくなったみたいな男だ。その老人が彷徨うロードムービーは味がある。昔の知人の配役もピッタリでストーリーに不自然さがない。バックに映るオハイオ州の広大に広がる畑の風景やアメリカンテイストの家も素敵で、音楽もセンスもよくヴィジュアル的にも快適な時間を過ごせる。元気よく勧められる作品だ。

実際にいたヘアメイクドレッサーのモデルがいたという。きっと偏屈でお茶目なやつだったのだろう。トッドスティーブンス監督もゲイ、彼が若き日にパットに出会っている。


⒈葬儀場に向かうパット
老人施設にいるパットの周囲には生きているのがやっとの老人も多い。心臓疾患があるにも関わらず、タバコはやめられない。施設の担当者にタバコを取り上げられても、こっそり隠している場所をまさぐる。そんな老人のもとに死化粧を依頼した故人の弁護士が突然来て、25000$の多額の報酬を提示する。一瞬驚くが、ヘアメイクとも遠ざかっているからむずかしい。

でも向かう。気になってしまうのだ。
金は施設預かりだから、ほぼ無一文だ。思い立ったパットはすぐさま施設を脱走する。単なる老人の格好でゲイの姿をしているわけでない。死化粧には化粧道具も必要だ。ヒッチハイクで老女のトラックに乗った後、昔ゆかりある場所を次々とまわる。


依頼してきた弁護士に出くわすと、用意のための支度金をもらおうとするが、故人の資産は凍結ですぐもらえない。それでも、元の自分の住処や御用達の化粧品店、知っているビューティーサロンなどや仲の良かった相棒の墓にも向かい何とか調達しようとする。

ここから先の話は見てのお楽しみだが、ロードムービー特有の人との出会いがある。老人のロードムービーにはデイヴィッドリンチ監督の名作「ストレイトストーリー」がある。最近では英国を縦断する傑作「君想いバスに乗る」もある。いずれも長距離移動だが、ここでは以前住み慣れた街の徘徊だ。それでもドラマがある。いずれもディープだ。

⒉愛情をもった周囲
その昔はゲイっぽく着飾ってステージも立った。町では有名人だった。でも、新しく町に来た人は知らない。ただ、いくつかの親切に助けられる

昔の自分のイメージを崩したくないパットは、ファッションも決めたいとブティックに入る。そこで、服を物色すると店の女性店員に声をかけられる。
「あなたはもしかしてビューティーサロンのパットでは?覚えていないかもしれないけど私は一度だけ入ってヘアメイクしてもらったことがあるのよ。そのヘアスタイル本当に気に入っていたの!」
パットは店員の名前を言い、そのときのヘアスタイルや産んだ時の子どもの名前まで思い出して言う。その昔町の有名人だったパットにそこまで思い出してもらって店員は超感激である。

このシーン観て思わずうなった。好きだな。このやりとり
むかしのことなんてきっと忘れているだろうと、お客様の方が思っていても意外に忘れていないもんだ。自分も40年近く前のお客様との付き合いでも会話の内容とかディテールまで思い出せる。それで得することもある。


出会いのエピソードにも十分こだわって最後まで盛り上げる。ゲイバーでのパットのパフォーマンスもすっかり笑える。トッドスティーブンス監督が実際にゲイなので、このバーの中のパフォーマンスはリアルなのかもしれない。

平凡なようでも十分内容がある素敵なストーリーだ。もっと老いた時、自分も同じような心境でむかしご縁あったところを方々まわるかも。自分にとっては決して遠い先の未来ではないので胸にしみるいい作品だ。
コメント
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