映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ロマンスドール」 高橋一生&蒼井優&タナダユキ

2020-07-28 19:20:48 | 映画(日本 2019年以降)
「ロマンスドール」は実力派女流監督の1人タナダユキの新作である。主演は高橋一生と蒼井優で夫婦を演じる。ピエール瀧の逮捕騒ぎで公開が延期された上に、公開されるやいなやコロナ騒ぎでちょっと運がない。ラブドール工場に勤める男と美術専門のモデルとして工場に来た女が知り合い結婚した後で起こるさまざまな出来事を描く。

ラブドール、昔の呼び名で言えばダッチワイフを造る職人というと、なんか変態ムードあふれる映画化と思ったけど、ちがう。正統派というべきラブストーリーである。慌てずゆったりとした映像は非常に好感がもてる。


美大彫刻科あがりの北村哲雄(高橋一生)は先輩の紹介でラブドールを造っている久保田商会という工場で働くことになる。工場には造形師の相川(きたろう)と事務の田代(渡辺えり)がいて、新参者を歓迎してくれた。哲雄は相川の指導で、ラブドールの試作品をつくって久保田社長(ピエール瀧)に見てもらう。ところが、これではリアル感がないと造り直しを命じられる。

そこで、モデルを雇って実際の乳房の型を取ろうとして、美術専門のモデル園子(蒼井優)を工場によぶ。名目は人工乳房を造るためということにしている。さっそく脱いでもらい型をとるが、無理にお願いして実際の感触を確かめさせてもらう。そうしているうちに恋心が生まれる。いきなり付き合ってくれと告白してしまう。そして、あれよあれよという間に結婚してしまうのだ。


結婚して4年が経った。園子からとった型で大受けしたラブドールの後の新商品を生み出すために哲雄は夜遅くまで奮闘してしている。徐々に家のことが置き去りになることもあった。そんな時、先輩の相川が突然亡くなってしまう。それにもめげず新素材を使って中途入社の男と試行錯誤していたが、なんとその男は他社のスパイだったことがわかる。

ショックのあまり、夜の街を徘徊していると、泥酔したひろ子という女と知り合いそのまま抱いてしまう。その後、家に帰った時、園子から離婚したい、1人になりたいと言われて哲雄は狼狽するのであるが。。。


⒈しっとりと進むタナダユキの映画づくり
バックに流れる音楽は最小限だ。でも、映画の転換点はやさしい音楽で感情を揺さぶる。タナダユキ監督は職人に興味があったという。でも、よくもまあラブドールという題材を選んだものだ。よくある風貌の町工場の工房に高橋一生を放つ。なんと乳房の型をとるためのモデルにどう見ても貧乳にしか見えない蒼井優を連れてくる。それだけでもキャスティングの勝利である。それに加えて、きたろうをはじめとした脇役の的確な起用、それがこの映画の完成度の高さにつながる。

離婚を告げられた時からどう展開するかと思ったら、その後は華麗な詰将棋を見るような愛情に満ち溢れた展開である。ラブドールという持ち駒が生きてくる。お見事である。

⒉現代的職人肌
蒼井優演じる園子に先輩造形師の相川が何で哲雄に惚れたの?と聞く。不器用だけど優しいところと園子は言う。モデルで来てもらったとき、忘れ物をした園子を追いかけ告白する。意外にもあっさりOK、結婚式では緊張のあまり結婚指輪を相手でなく自分の指にはめて周りの失笑を浴びる。そんな哲雄も満足いく新商品がつくれないことにヤキモキ、夜もご無沙汰。挙げ句の果ては妻に三下り半を突き付けられる。

このままどうなってしまうのであろうかと心配になる。ここからはネタバレなので口を閉じるが、実はこの哲雄を見て自分との共通点がいくつもあることに気づく。徐々に気持ちが同化してしまう。


⒊味のある先輩造形師
きたろう演じる先輩造形師がいかにも職人らしい顔立ちでいい感じだ。何かというと、近くの居酒屋に哲雄を誘う。こういう居酒屋には職人の居場所がある。


普通のおもちゃ製造会社に勤めて26歳で結婚したけど、離婚してしまう。実はこのころ後輩に騙された哲雄と同じような目にあってしまうのだ。離別してしばらくたった後、7才になった娘に再会したときの悲しい想い出がある。母親が再婚しているので、娘は自分を相川さんとしか言ってくれないと嘆く。飲んで荒れて警察の留置場に押し込められて、その時出会った警官がピエール瀧演じる今の工場の社長というオチまでつく。こんな昔話を語る先輩の姿の描き方が素敵だ。
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映画「トゥルーストーリー」ジョナ・ヒル

2020-07-21 20:18:44 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「トゥルーストーリー」Netflixで見つけた日本非公開作品である。


マネーボールの好演が印象的な個性的俳優ジョナ・ヒル主演で実話に基づく作品だ。
事実をでっちあげた記事を書いてニューヨークタイムズ誌を追われた記者が、自分の名前を名乗って殺人を犯した男と会う。元記者が無罪を主張する犯人から殺人の真相を聞き出版しようとするが、寸前になって犯人の証言が二転三転するという話である。当然、アメリカでこういう事件があったことすら知らない。でも、見てみると、意外に話の内容にスルッと入っていける。さすがにこのキャストじゃ日本では受けそうもなく、公開はスルーされた。

ニューヨークタイムズの敏腕記者である主人公マイケルフィンケル(ジョナヒル)はアフリカの困窮したエリアで取材して記事を書き掲載され反響を呼ぶ。会社の上司から個別に呼び出されたので、ほめられるのかと思ったら逆に記事の信憑性について問われた。クレームも入っているようだ。謝罪文を自ら書くのは記者であることを否定されることだと自ら退社する道を選ぶ。

マイケルは夫婦でニューヨークからモンタナへ引越し、次のチャンスを待っていた。そんな折、一家4人を惨殺した事件の犯人ロンゴ(ジェームズフランコ)が、逃亡中自分の名前であるマイケルフィンケルと名乗ったということを知る。何で自分の名を名乗ったのか関心を持ち、本人に面会する。マイケルが書いた記事のファンだったという。マイケルだけにこっそり真実を伝えるので、裁判まで黙っていてほしいという条件を伝えられ、面会で事件のいきさつを語るようになった。それをマイケルは一冊の本にまとめた。

裁判が近づき、マイケルはこの企画をある出版社に持ち込み、前金25万ドルを得る見込みがたった。しかし、いざ裁判となった時、ロンゴは実際には2人を殺して、2人は妻が殺したというマイケルへの告白と違う証言をして驚かさせるのであるが。。


⒈被疑者の告白
妻と子供3人を惨殺したという酷い事件だ。マイケルにはまったく何も関係ない。ただ、被疑者ロンゴはマイケルが書いた記事を好きというだけだ。きっとマイケルは自分のもとへ連絡をよこすであろうという予測を立て、来訪した時にはこう言ってやろうと頭を働かせていたのかもしれない。映画を見ている途中にはそうは思えない。よくある冤罪の話かと思ったくらいだ。でも、証言では2人を殺して2人は妻が殺したという。新たなストーリーを立ててマイケルに話す。


⒉元記者の出版への意欲
汚名挽回をねらう。一度でっち上げの記事を書いた男の話は誰も相手にしない。裁判の証言には呼ばれない。信用のない状況に陥った時のチャンスにすがりつく。出版社への売り込みは成功し、あとは出版を待つばかりである。ところが、逆転。改めて出版は保留となってしまう。


それでも、この元記者はへこたれない。判決の出るまでの一部始終を再度本とするのだ。執念だと思う。
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映画「ドリーマーズ」ベルナルド・ベルトリッチ

2020-07-18 21:07:58 | 映画(フランス映画 )
映画「ドリーマーズ」は2003年のベルナルド・ベルトリッチ監督作品


暗殺の森「ラストエンペラー」という傑作を残したベルナルド・ベルトリッチが3人の若者をクローズアップし、マーロンブランド主演「ラストタンゴインパリ」ばりに激しい性描写の映画を撮る。アメリカからの映画好きの留学生がパリで双子の姉弟と奇妙な三角関係の同居生活をするという設定である。ジミ・ヘンドリックスのしびれるギターが冴える「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」をタイトルバックに流しながらエッフェル塔を上下にカメラが捉え、気がつくと映画人救済のデモの中にいる若者3人を映す。

その後もジャニス・ジョップリンのパンチのあるボーカルやボブ・デュランの名曲、日本でも流行ったミッシェル・ポルナレフの歌が次々と流れる。2人一緒に裸で寝る近親相姦すれすれの恋人同士のような双子の姉弟のもとにアメリカ人の若者が居候する。若き性の興奮も手伝ってか、行為がだんだんエスカレートするのをベルナルド・ベルトリッチが追いかける。

1968年、パリの街は5月革命の嵐が吹いていた。19歳のアメリカ人留学生マシュー(マイケル・ピット)は、映画遺産の文化施設シネマテークフランセーゼの創立者アンリ・ラングロワが文化相から罷免されたことへの反対デモに出くわす。そして、映画ファンが多数参加するデモの集団の中でイザベル(エヴァ・グリーン)とテオ(ルイ・ガレル)という双生児の姉弟の2人と出会う。3人は意気投合し、マシューは、姉弟の両親がバカンスで留守にするアパルトマンに泊めてもらう。一つのベッドに裸で寝ている姉弟の姿にマシューは戸惑いつつ、3人の奇妙な同居生活が始まる。


若い3人は大好きな映画について語りあう日々を過ごすが、やがて性的な結びつきができていく。3人はアパルトマンにこもりっきりで昼夜の区別がつかない生活を送るようになる。ある夜、家の中に用意したテントの中で、3人は裸で仲良く横になっていた。翌朝、バカンスから戻ってきた姉弟の両親が彼らを見つけるのであるが。。。

1.映画マニアの3人
3人は映画マニアである。生活のすべてが映画のシーンにつながる。映画人の固有名詞にもこだわる。近年の作品だけでなく戦前のマニアックな映画も数多く話題になる。マシューがニコラスレイの特集をすべて見ていたことをテオとイザベルは知っていた。マシューとテオはチャーリー・チャップリンバスター・キートンのどっちが上かという議論をしたり、フレッド・アステアがタップダンスをする映画は何かというクイズを出したりする。

ゴダール映画「はなればなれ」で出演者が9分45秒でルーブル美術館の中を一周するシーンがある。実際にやってみようと3人が9分28秒でルーブルを駆け抜けるのは実に痛快なシーンだ。


2.エヴァグリーンの豊満なバストを囲む男2人
長身で顔立ちも垢抜けているエヴァグリーン演じるイザベルは、あまり似ていない一卵性双生児の弟と裸で一緒に寝ている。それをそっと覗き込んでマシューが驚く。姉が弟に自慰を強要する場面が出てきて徐々に3人の動きがエスカレートする。気がつくと、シャンソンの名曲「ラ・メール」に合わせてイザベルが脱いで全裸になる。そこには大きなピンクの乳輪の形の良いバストが隠されていた。


現在も活躍するエヴァ・グリーンの裸体には思わず興奮してしまう。その後で、古典的映画のある場面に関するクイズの罰ゲームでイザベルとマシューはメイクラブすることになる。その時、テオは目玉焼きを料理しながら同じ部屋にずっといた。行為が終わると、彼女の下半身に血が流れている。見ているこちらは生理中なのかと思ったけど、どうやらイザベルは処女だったのだ。


やがて、3人は部屋の中ではほぼ生まれたままの姿で生活するようになっていくのだ。エヴァグリーンの興奮させられる裸体を映すだけでなく、男性の竿もカメラが捉えていく。なかなかこれはきわどい映画である。


3.毛沢東の崇拝者とポスター
1968年という年は世界中が何かに反発していた。米国ではベトナム戦争への反戦運動、パリでも五月革命でドゴール政権への反発が繰り広げられていた。日本でも学生運動がピークに達して、翌年の東大入試は中止になった。

その頃、中共こと中華人民共和国では文化大革命の名の下、毛沢東が権力奪還しようと資本主義化に寄った政策をとる共産党幹部を毛沢東語録を手に持った紅衛兵を使って糾弾していた。しかし、言論統制もあり、中華人民共和国に関する情報は極めて少なかった。そういう中、時折日本のTVに映る天安門広場の中央に立つ毛沢東はいかにも中国人民のトップという姿を全世界に見せつけていた。自分も幼心にすごい人なんだと思っていた。


文化大革命に関する悪い情報が伝わらず、世界の至る所に毛沢東信者がいたと言ってもいいだろう。イザベルとテオの部屋にも毛沢東のポスターが貼ってある。パリの五月革命に関するネット情報を見ると、パリにも多数毛沢東信者がいたようだ。最後に向けて、デモの中に飛び込んでいくイザベルとテオの姿を映す。なんてバカな奴らだと思ってしまう。


自分は1970年代中頃、高校の倫理社会の授業の中で、思想家の誰かを選んで要旨を授業で発表するという課題があり、迷わず毛沢東を選んだ。ニクソン大統領毛沢東主席が歴史的な対面をしたあと、田中角栄首相主導で日中国交回復が成立した。毛沢東「実践論」、「矛盾論」という著作を残している。内容については今でも共鳴することが多い素晴らしい本である。管理職になってから仕事でもかなり役に立っている。

ただ、劉少奇元国家主席をはじめ文化大革命によって失意の中亡くなった人は多い。しかも、文化大革命は中国の経済発展のスピードを20年以上遅らせた。そういった意味では権力にこだわり結果的に混乱させた毛沢東の罪は重いと言えよう。ベールに包まれまったくわかっていなかった。毛沢東の動きが次々と変わって一番困ったのは日本の左翼系知識人であろう。彼らをを先導させた岩波書店にも問題は多い。

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映画「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」ウディアレン&エル・ファニング&ティモシー・シャラメ

2020-07-17 06:26:18 | 映画(洋画:2019年以降主演女性)
映画「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」を映画館で観てきました。

ウディアレンの新作である。こればかりは映画館で見るしかない。いつものようにWindsor フォントのタイトルバックで始めると、今回はどんな話なんだろうと心がときめく。郊外の大学に通うカップルがマンハッタンに遊びにいったけれど、2人で楽しい週末を過ごすつもりが思わぬ出来事に遭遇して雨の中で右往左往するという話だ。

ジャジーで洗練された音楽がバックに流れ、大人のおとぎ話のように話が展開する。ウディアレン自身が話すように早口にまくし立てるセリフに映画が始まって一瞬訳がわからなくなるが、毎度お馴染みのムードに心が安らぐ。


ニューヨークの裕福な家庭で育ったギャツビー(ティモシー・シャラメ)は、ブルジョワ好みで嫌いな母親から逃れるために、郊外の大学で学生生活を送っている。ギャツビーにはアリゾナ生まれのアシュレー(エル・ファニング)という恋人がいる。そのアシュレーが学生新聞の記者として、著名な映画監督ポラード(リーヴ・シュレイバー)を取材することが決まり大はしゃぎ。そして、インタビューをするニューヨークに2人で行きロマンチックな週末を過ごそうとしていた。

マンハッタンのプラザホテルに着いたあとに、アシュレーがポラード監督へのインタビューに向かうと、監督と一緒に新作を見ることになってしまう。その時から元々のスケジュールが崩れ始める。その後に、アシュレーは憧れの人気俳優であるフランシスコ・ヴェガ(ディエゴ・ルナ)や脚本家のテッド(ジュード・ロウ)に出会ったり、2人に思いもしなかった出来事が次々と起こるのだった。。。。


主人公の彼はギャツビー、その名前は「華麗なるギャツビー」から引っ張ったのか?ニューヨーク生まれなら、ロングアイランドを舞台にしたギャツビーに引っ掛けてつけてもおかしくない名前だ。アシュレーというと、先日倒産したローラアシュレーを想像するが、違うよね。スペリングが違うもう1人のアシュレイも登場する。そんな主人公2人にいつものようにウディアレンが自らがしゃべっているようにしゃべりまくらせる。

⒈映画人の登場
女性学生記者となるアシュレーにも映画の素養がある。著名な監督の前では、黒澤明の名前も含めて著名監督の固有名詞が次々とでてくる。インタビューをしていると、気に入られて新作を観ないかと誘われる。一気に有頂天のアシュレー。恋人のギャツビーを映画終わったらすぐ戻るからねと言って電話するがそうはいかない。気がつくと、有名スターに会ったり、一緒に行ったパーティーでこれまた売れっ子の脚本家にあったり、もう舞い上がりっぱなし。


一方で空き時間ができたギャツビーがマンハッタンの街に飛び出すと、昔の仲間が路上で撮影しているところに出くわす。この仲間、いかにもウディアレンを連想させる風貌のメガネをかけた映画監督である。これもシャレか。突然映画のエキストラをやってくれと言われ、気がつくとキスシーン。相手はなんと旧知のガールフレンドの妹だ。そこでも足止めをくらい部屋に戻ると、人気俳優に新しい恋人ということでTV画面になんとアシュレーが映っているではないか!


そんなこんなであたふたするが、基調は映画「ミッドナイトインパリ」と似たおとぎ話のようなものだ。ありえない世界に引き込まれる。こんなことたった1日で起こるわけがない。ぎゅう詰めに短時間にハプニング小話を詰め込む。アシュレーと映画人のまったくかみ合わない会話なんかもいい感じ。ギャツビーが1人ぼっちになってホテルのバーで彷徨っているときに、美女と意気投合して実家に帰還してからの母親との会話が映画の見ものだ。

⒉窮地に陥るウディアレン
この映画を見終わって、いくつかネットで検索してウディアレンがプライベートで窮地に陥るのを初めて知った。その昔の性的虐待が問題になっているようだ。なんと、米国で公開されていないという。そんなことあるんだという感じである。ネット記事によれば、出演者のティモシーシャラメエルファニングを始めとしてこの映画に出たことを後悔しているなんて話を聞くと悲しくなる。

この映画でのエルファニングはいかにもウディアレン本人が乗り移ったかのような話し方で軽快に演技しているのにと思ってしまう。ウディアレン映画の往年のヒロイン、ダイアンキートンやスカーレットヨハンソンウディアレンをかばっているというのだけが救われる。


われわれはスカーレットヨハンソン主演の「マッチポイント」で予想もしない結末に唖然とする。この映画の終わり方もらしいと言えばウディアレンらしいとも言える。

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映画「タイガーテール ある家族の記憶」

2020-07-05 22:18:53 | 映画(アジア)
映画「タイガーテール」は2020年配信のNetflix映画


「タイガーテール」はNetflix内で何気なく見つけた心温まる映画である。台湾からアメリカに移住した老人が熟年離婚することになり、若き日の想い出を回想していくという流れである。1950年代、60年代後半、そして現在の3つの時代にわたって恋のはかなさを綴っていく。

とかく、陰謀とか麻薬とか、かなりきわどい話がからむ映画が多いNetflix映画の中ではセリフのテンポも穏やかで見やすい。どちらかというと、男性の方が気持ちが同化していくのではなかろうか?映画を観つつ、自分の過去を振り返ってみたくなる気持ちになる。

若き日に台湾からアメリカに移住してきたピンルイ(ツィ・マー)が熟年離婚して再び独り者になったときに小さい頃台湾で育ったころの想い出に浸る。
台湾中西部の緑あふれる農業地帯で少年時代のピンルイは祖母と暮らす。父親は一歳の時に亡くなっていて、母親が生計を立てている。しかし、失業してしまい働き口をみつけるために祖母にピンルイを預けていた。やがて、縁のないこの地でユエンという少女がピンルイと一緒に遊んでくれるようになった。しかし、母親の元にもどるときにお互い離ればなれになり、連絡を取れなくなってしまった。

十数年がたち、青年になったピンルイ(リー・ホンチー)は母親とともに工場で働いていた。あるとき、偶然にも美しくなったユエン(ヨー・シンファン)と再会する。懐かしさでお互い気持ちが通じ合い、裕福な家に育ったユエンと急接近するのに時間はかからなかった。


そんなある日、工場長がピンルイに「アメリカに行きたいようだけど、一度私の娘(ジェンジェン)と会ってみないか」といい、お見合いをすることになった。ユエンとは恋人同士の関係であったが、結局ジェンジェンと結婚することになり、義父の援助を受けて夢のアメリカニューヨークに向かう。アメリカでは食料品店での下働きからスタートして、子宝にも恵まれたが夫婦の間は冷えた関係のままだった。

やがて長い時間が流れ、台湾での母親の葬儀を終えた後に、独り者になったピンルイは疎遠になっていた娘のアンジェラとあう。娘も家庭内の問題をかかえているようであるが。。。

1.悪いことをしたなと思う恋
幼なじみのユエンが美しくなってピンルイの前に現れる。(ユエンの若い頃を演じるヨー・シンファンはかなりのチャイナビューティ)それだけでも刺激的なのに、気がつくと付き合うようになっている。デートするのもたのしい。それなのに、工場長が絶好の話をもってくる。自分の娘と結婚してくれるならば、米国行きの費用は負担してあげるよと。打算がどうしても優先してしまう。

映画「青春の蹉跌」で主人公の萩原健一は、ご令嬢の檀ふみとの結婚のために恋人の桃井かおりを殺してしまう。こんなひどいことはしないけど、黙って結婚してアメリカに行こうとする。でも、こういうときにはよくあることだけど、2人で向かう車の車窓にユエンの姿が見えるのである。


20代から30代にかけての恋の想い出には、本当はこの人と結婚したかったのに、結局悪いことをしてしまったよな。そういう愛惜の気持ちを持つ人は意外にいるんじゃなかろうか?中年以上のオヤジたちも自分の過去に照らし合わせて、好きだった女の子の顔が目に浮かんでくるはずだ。われわれオヤジたちにはなんともいえない気分になる場面が続く

2.流れるオールディーズと時代背景
若き日のユエンとピンルイは地元のバーでデートする。そこでは、音楽に合わせてダンスをするためのダンスフロアもある。流れる曲はなんと加山雄三の「君といつまでも」の中国語版だ。へー!こんな感じで輸出されていたのか!ユエンの好きな2人の想い出の曲はオーティス・レディングの「ドック・オブ・ベイ」である。加山雄三の歌が1965年末発売の66年の大ヒット、オーティス・レディングの「ドック・オブ・ベイ」は1968年の全米ヒットチャートナンバー1である。

とすると、この曲をバーで聞いていたのは1970年前後と推測される。このときの年齢が22歳前後とするなら、1948年生まれと逆算できる。いまはもう72歳である。再会するユエンの現在はそうは老けて見えない。

1970年からしばらくした後に米国に渡ったとして1973年~75年くらいに子供が生まれていることになる。そうすると、娘のアンジェラは45歳から47歳、この映画ではちょっとそうは見えない。でもそうするなら、年齢的にはちょっとつじつまが合わないと思う。まあ、そのくらいのミスは仕方ないでしょう。


冷静に考えると、そういう矛盾する部分はあれど、ユエンとの再会場面はなかなかいい感じだ。
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ドキュメンタリー映画「一人っ子の国」

2020-07-01 22:28:12 | 映画(アジア)
ドキュメンタリー映画「一人っ子の国」は中国系女性監督による中国の一人っ子政策の実態に迫るドキュメンタリーである。Amazon prime で無料で見れる。


1979年から2015年にかけて、中国では「一人っ子政策」なる計画生育政策がとられた。それにより、中絶手術が頻繁になされたり、生まれたての赤ちゃんが捨てられたり、海外へ養子として売買されることが起きた。

自らの出産を機に、米国に住む中国系女性監督ナンフー・ワンが故郷である中国江西省王村へ向かった。そして、その村の村長やお産婆さんなどに取材する。国家政策に従うため不妊手術や中絶を余儀なくされた女性たちは多い。その村のお産婆さんの証言では5万件以上あったという。

しかし、村の誰もが「仕方なかった」と捉えている。共産党への恨みもない。しかも、男子優先で1985年に生まれたナンフーには1990年に生まれた弟がいる。もし、女の子として生まれていたらこの世に生きてはいないかもしれないと弟は語る。


捨てられた赤ちゃんも多かったようだ。映像では無残にもゴミのように捨てられた赤ちゃんの写真も映し出す。外にすてられた赤ちゃんを売買していたブローカーがいること、1992年に始まった国際養子制度で海外へ向かった子供たちが大勢いること、それには役人の汚職があったことも語られる。双子姉妹の片割れが米国に渡り、ネット上でつながるシーンもある。

⒈中国経済の遅れと一人っ子政策のスタート
1960年代半ばから始まる文化大革命により、中国経済は30年以上遅れたと言われる。ブルジョワと責められ、失意の中で亡くなった劉少奇元主席をはじめとして、毛沢東思想に従う紅衛兵たちにより糾弾され政府関係者も数多く失脚した。

一度ならず二度も失脚した鄧小平が1976年の毛沢東の死後復権を果たす。権力を握ると資本主義経済原理を取り入れ、現在に至る経済成長の基盤をつくった。それ自体がスタートするのは1977年から79年にかけてのことである。当然文化大革命による経済発展の中断で中国の国民はみんな貧しかった。経済復興が始まるのと一人っ子政策のスタートはある意味一致するのである。


このまま、人口の増加が続いていると2000年には多くの国民が餓死するという瀬戸際だったのだ。現地の中国人に取材すると、このままだと人食いが始まったり餓死が多発したはずだと誰も仕方なかったという。1970年代後半の経済状態を考慮すると、確かに仕方ないと言えるのではないか。しかし、その後の中国の経済成長を考慮すると、一人っ子政策は2000年前後には終了していても良かったのかもしれないと感じる。

⒉1950年代における日本の中絶
日本では、戦後のベビーブームで昭和20年代前半すなわち1949年までは1年に250万人を超える赤ちゃんが生まれた。昨年2019年の出生数が86万人だったことを思うとものすごい数だ。戦後まもなくは食料事情も悪く、生活に困窮する人たちが多い中での「貧乏人の子沢山」である。

やがて、出生抑制がされるようになり、1949年に経済的理由による人工中絶が認められるようになる。1950年に中絶率10%だったのが、1954年には何と50%にまで上昇する。1955年に116万件、1960年に107万件の人工中絶があったというデータもある。(男女共同参画局HPより)
1955年の出生数が173万人、1960年の出生数が160万人(人口動態調査HPより)ということから見ても多くの赤ちゃんが生まれずにいたのだ。自分と同世代は本当はもっとたくさんいたのだ。


一人っ子政策というのはなかったけど、昭和20年代後半から30年代にかけての日本もたいして変わらなかったのかもしれない。
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