そのころ、世に数まへられぬ古教授ありけり。

この翁 行方定めず ふらふらと 右へ左へ 往きつ戻りつ

7月7日(火)七夕なれど

2020年07月07日 | 公開
  個人研究費がオーバーしていると事務所からメールが来たので、慌てて出頭する。ここのところ、古典籍や書籍の購入が重なったせいであろう。15,000円ほどオーバーしたというので、担当者にお目にかかれば、立て替え払い分なので、振り込み額が減じられるだけだと聞き、安堵する。これをもって、本年度の個人研究費は、すべて使用済みと相成りました。

  勤務先キャンパスに隣接する、尾張藩江戸下屋敷跡の公衆便所の斜め前の窪地へ行き、梶の葉を少し採集した。今日は、一応、七夕なのでな。そうは言っても、やはり、旧暦で行わないと、年中行事はいまひとつしっくりこない。空も雨模様だ。

  神楽坂を回って、飯田橋まで歩く。途中、手拭い展をやっているギャラリーを、2軒のぞいた。私は、手拭いしか使わない男なのだ。

  キンショーメロンが売れていたので、1つ購入する。鮮やかな黄色。この、いかにもマクワウリ系の、甘みの遠さが好もしい。1960年代の終わりに売り出されたそうだが、子どもの頃に、喜んで食した記憶がある。昨今はあまり見かけない。出荷時期もごく限られているらしい。

  小倉屋製菓で荊妻と待ち合わせ、あまからなんぞを大量に購入し、トラムで帰宅する。今夜は何にしようと…豚肉があるので、生姜焼きにすることとした。梶の葉をランチョンマットの上にあしらい、気分を出す。



  荊妻は飲み掛けのワインになさったが、私は日本酒をいただく。岸野寛の三島盃を梶の葉の上に置いて、片口は岡本作礼作のやはり三島。御飯茶碗も岸野寛の刷毛目で、全体、朝鮮ものっぽい演出と相成った。

7月3日(金)誕生日プレゼント

2020年07月03日 | 公開
  誕生日には、にぎり寿司をとってもらったが、荊妻に、プレゼントは何がいい?と尋ねられていたので、もしよろしければ小さな徳利をお願いしたいと、リクエストをした。目星を付けていたわけである。

  それで、雨の中、徳利が売れている神楽坂のお店に、夫婦で出掛けてみると、臨時休業だった。HPで確かめればよかった。仕方ないので坂下まで下って、「志満金」で鰻重を食べて帰った。

  結局、徳利は自分で買って来て、荊妻に渡し、また私に贈られるという、感動のない授受を経て、仕事机の傍らに置かれている。



  粉引面取草花文の小徳利。対馬は大浦陶窯の作家、武末日臣の作である。「ギャラリー川村」の主人は寡黙そうな方で、ふらっと入って来る私が、気に入りの酒器は、必ず次回、現金を握りしめて求めに来るということを、どう思っておいでなのだろう? 今までに朝鮮ものや、志野織部の小皿などを衝動買いしてきたが、このお店で買って後悔したことは、一度もない。

  この小徳利は、右手陳列棚にたくさん並べてあった徳利の中でも、ひときわ小さく、一輪挿しなのかと思った。だんだん酒量が落ちてきて、もう、嘗めるくらいでいいやと、思うようになった私に、ぴたっときた。

  しかし本当に欲しくなった理由は、別にある。画像に配されている雨盛の盃は、そのあたりで1つ200円也でもとめた、数ものであった。しかし、だんだん染みが雨漏手と化し、なんとも言えない風情に育っていた。この小盃に取り合わせるのに、この小徳利以上のものはないと確信した。

  最期まで酒を嘗めて、死にたい。