来週土曜に参席する結婚式のドレスコードのことですったもんだし、雨も降るし、外へ出るのもなんだか億劫な気分になったが、UWのUさんの学会発表は、やはり聴きに参じなくてはと思い直す。同居人は明日の授業準備で、学生から提出させた課題のチェックに時間がかかるというので、行けないことになった。31名の課題をチェックしているが、長いものだと1人2時間かかるという、いやはや。教育ご熱心、頭が下がる。
「うたうたひ学会」の秋季研究発表会である。この学会、みつばち大学のN教授がこのたび会長というか、事務局におなりとのことである。私は会員ではないのだが、知り合いの方が結構いらっしゃった。
さて最初はUさんの発表、下発表のアドバイスを活かしてちゃんとパッケージになっていた。時間も守ってぴったりだった。質疑で、批判的な指摘や発言もあったが、ということは論旨はちゃんと聴衆に伝わったということである。また、学会発表というのは、その道の専門家との人脈を作る機会でもある。発表後、いろいろな方から懇切なアドバイスを受けていたが、これはそのまま博士論文の完成に資するところ大であろう。
続く発表2本も興味深い内容なので、そのまま拝聴した。2本目は今様の解釈だったが、もとの仮名の読みが間違っているんじゃないかなと思ったので、会員ではないのに手を下げて、質問をしてしまった。「いちゐ■の」ところ、高野辰之も佐佐木信綱も荻野三七彦も藤田経世も、そして発表者も、「を」とか「せ」とか読んでいる。少なくとも「せ」でないことは、次の行頭の「せ」と形を比べれば一目瞭然。これは、素直に見れば、「こと」(二つの文字がくっついた形)としか読めまい。研究者は虚心坦懐たるべし。発表後、ご挨拶あるかなと思っておったが、やはり私は当該学会員でないせいか、完全にシカトされた。
3本目はすばらしかった。本当にすごい調査をなさっている。途中2行分が切り出されているというお話も、口頭発表でなければ分からなかった。しかし、「おもへば我身は浮草の 〔欠〕 ゆくゑも知らず定めなき 旅の空にぞすみわたる」は明らかに小野小町、「柴のとぼその有明の 月を見るこそあはれなれ 我らがすゑもかくのみぞ 昏き山路に入り果てん」は和泉式部じゃないか!と思ったが、ご指摘は無い。後は眄眄・楊貴妃・明石上・紫上と和漢の女性を主題にした歌がペアになって続くわけで、女性歌人をモチーフにした2首なんだろうと思う。この作については司会をなさっていたCAMARADE大学のU教授に注釈的研究があるので、発表後Uさんに、あれはかくかくなんじゃない?と指摘をしたところ、あっ、気付かなかった!とおっしゃった。
前者は古今集・雑下の「わびぬれば身を浮草の根を絶えて誘ふ水あらばいなむとぞ思ふ」と、下句はおそらく玉造小町子壮衰書のイメージだろう。後者は拾遺集・哀傷の「暗きより暗き道にぞ入りぬべきはるかに照らせ山の端の月」 に拠ること間違いあるまい。そうすると、この一連の作は明らかに意図的に構成創作されたものとなるはず。読みは一層深まるべし。いや、興奮した。
私の後ろにBY先生(TY先生のご主人)、前に西行研究のUさんがお座りだった。BY先生からご著書をいただく。3本目の発表者ともかなりお話ができた。やはり学会発表は聴きに行くものである。N教授に、入会しませんか? 年会費4000円ですぜと誘われたけれども、考えてもいいかな。この土日はどっぶり「学術」インプットだった。ああ、生けるしるしあり。
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