私が住んでる杉戸町は、埼玉県東部にある人口約4万7千人の町。
かつての日光街道の宿場町のひとつ。
目立たぬ産業はなにひとつない「農」の町だが財政規模は110億円近くあり、新住民も多くなっている。
小さな町とはいいにくい。
2年前、春日部との合併をめぐって町は二分したが、合併反対派が勝ち、ただその後は議会もオール与党化のような沈んだ空気になって町に活気がなくなった。
8月28日、杉戸町議選で新議員が決まった。
投票率は47・95%。(有権者数は3万8485人)
立候補したのは、現職9、新人7、元職5の計21人。
この結果を見ると、いいにつけ悪いにつけ「農」だけしかない従来からの古い町政にひとつの潮目がきたということを予感させた。
そのことをメモしておこう。
● 公明が1、2位とった杉戸町
選挙戦がはじまると公明党と共産党の組織政党の動きが活発だった。
碁仲間四段の人に「できればハムを頼むよ」と言われた。「ハム?」「うん。公明だ」
2政党比較ではハムこと公明党に軍配が上がる。
今回の選挙で公明党はスパッと現職を降ろして新人二人を擁立した。
外から幹部が参謀として入町、綿密な票読みを指導しているということも聞いた。
確かに1位と2位の票差は「1」でしかない。
● 共産党、13票差のすべりこみ
共産党は現職3名が全員当選。しかし前回の獲得票数は今回、2名の公明党の
後塵を拝した形だ。
町一番の共産党の論客森山が最下位当選。
一方で8期32年のベテラン婦人・阿部の方は安定当選。
阿部はこの先、36年間も町議を勤めるわけだ。
「いまや共産党は完全サラリーマン」の評を公民館の碁仲間から聞いたことがある。
たしかに36年間町議を続ければ多選批判は避けられまい。
この町でも世代は動きつつある。
新人を町に移住させ、辻立ち、どぶ板活動と汗をかかせて育て、その清新さをアピールすることをなぜしないのか不思議だ。
この姿勢は革新ではない超保守のものではないか。
一方、論客森山は
「町議選は、定数削減で当選ラインが上がり、きびしい選挙です。
みなさんのご支持を広げてください。お願い致します」
と、あろうことか選挙公報で堂々と訴えた。
21人の立候補者選挙公報でSOSを広報に盛り込んだ人は他にはいない。
共産党だけにこうした泣き言は聞きたくはなかった。
2名の候補者を新人に換えて臨んだ公明党のほうがを地方党組織に緊張感と戦闘性を高めた点で賢かった。
ともあれ、誕生した15名の新町議の内、組織政党は7名。
公共のほか、自民1、諸派(創新党)1の構成だ。
これら半数を占める政党候補が今後の議会活動をどう活性化させるのか見守りたい。
● 町長派、合計しても1000ゆかず
小川、市毛両候補者の支持票総計に驚いた。
ようやく町の歴史に新たな潮目がやってきたという人も多い。
小川候補は4期16年杉戸町町長にあった元町長の末弟であり、選挙前から千票は固いとされた。
だが元町長の末弟がその影響力を行使して談合疑惑などがかねてからあったという”怪文書”が広範囲に町に流された。
怪文書の類で驚かないとされた太っ腹の人だったが、兄の元町長のさまざまな後援組織とと影響力を考えれば、この票数はまさに完敗と言えよう。
元町長に支援され後継となった形の古谷現町長を支えるために立候補した若い市毛候補も完敗している。
両者の合計票はたったの905票。
もちろん他の現役候補者もその殆どが体制化し古谷町長を支えている中でも、この数は注目される。
● 選挙戦、不祥事ニュースかけめぐる
この選挙戦の最中、杉戸町の不祥事が報道された。
幹部クラスの町職員と業者が結託して、公金をだまし取ったとする事件で、NHKはじめ新聞各紙も揃ってとりあげた。
「わずか数十万円で、退職金を棒に振ったのか」と同情する声も聞こえたが、事件の根にあるものは意外に深い。
こうした究明と改革も新議員には期待したい。
町職員ら公金詐取容疑 埼玉・杉戸町
2011年8月25日 朝刊(東京新聞)
● 集会所が選挙事務所になる不思議
町の公営施設がそのまんま元議長を努めた候補の選挙事務所になっていたことには驚いた。
公民館に似た建物のなかで「必勝」という各種ポスターが貼ってあり、長机の前にお年寄りが陣取って茶を飲んでいる姿はさながら昭和40年代そのまんま。
この町のひとつの現実の姿ともいえる。
だが、その人も前回に続き落選。
ここにも風が吹いている、としておこう。
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◇杉戸町議選開票結果(定数15-21)
当 1437 伊藤美佐子 58 公新
当 1436 平川忠良 49 公新
当 1286 須田恒男 64 無現
当 1231 宮田利雄 61 自現
当 1124 稲葉光男 57 無現
当 999 窪田裕之 46 無新
当 960 大橋芳久 30 無新
当 925 浜田章一 63 無元
当 863 阿部啓子 61 共現
当 840 石川敏子 60 共現
当 833 勝岡敏至 62 無現
当 822 石井幸子 48 諸元
当 802 上原幸雄 71 無現
当 797 坪田光治 38 無元
当 737 森山哲夫 52 共現
724 五月女経夫 62 無元
658 都築能男 43 無現
591 菅野泰孝 49 無新
498 小川健一 62 無新
407 市毛大助 59 無新
282 斎藤正雄 72 無元
かつての日光街道の宿場町のひとつ。
目立たぬ産業はなにひとつない「農」の町だが財政規模は110億円近くあり、新住民も多くなっている。
小さな町とはいいにくい。
2年前、春日部との合併をめぐって町は二分したが、合併反対派が勝ち、ただその後は議会もオール与党化のような沈んだ空気になって町に活気がなくなった。
8月28日、杉戸町議選で新議員が決まった。
投票率は47・95%。(有権者数は3万8485人)
立候補したのは、現職9、新人7、元職5の計21人。
この結果を見ると、いいにつけ悪いにつけ「農」だけしかない従来からの古い町政にひとつの潮目がきたということを予感させた。
そのことをメモしておこう。
● 公明が1、2位とった杉戸町
選挙戦がはじまると公明党と共産党の組織政党の動きが活発だった。
碁仲間四段の人に「できればハムを頼むよ」と言われた。「ハム?」「うん。公明だ」
2政党比較ではハムこと公明党に軍配が上がる。
今回の選挙で公明党はスパッと現職を降ろして新人二人を擁立した。
外から幹部が参謀として入町、綿密な票読みを指導しているということも聞いた。
確かに1位と2位の票差は「1」でしかない。
● 共産党、13票差のすべりこみ
共産党は現職3名が全員当選。しかし前回の獲得票数は今回、2名の公明党の
後塵を拝した形だ。
町一番の共産党の論客森山が最下位当選。
一方で8期32年のベテラン婦人・阿部の方は安定当選。
阿部はこの先、36年間も町議を勤めるわけだ。
「いまや共産党は完全サラリーマン」の評を公民館の碁仲間から聞いたことがある。
たしかに36年間町議を続ければ多選批判は避けられまい。
この町でも世代は動きつつある。
新人を町に移住させ、辻立ち、どぶ板活動と汗をかかせて育て、その清新さをアピールすることをなぜしないのか不思議だ。
この姿勢は革新ではない超保守のものではないか。
一方、論客森山は
「町議選は、定数削減で当選ラインが上がり、きびしい選挙です。
みなさんのご支持を広げてください。お願い致します」
と、あろうことか選挙公報で堂々と訴えた。
21人の立候補者選挙公報でSOSを広報に盛り込んだ人は他にはいない。
共産党だけにこうした泣き言は聞きたくはなかった。
2名の候補者を新人に換えて臨んだ公明党のほうがを地方党組織に緊張感と戦闘性を高めた点で賢かった。
ともあれ、誕生した15名の新町議の内、組織政党は7名。
公共のほか、自民1、諸派(創新党)1の構成だ。
これら半数を占める政党候補が今後の議会活動をどう活性化させるのか見守りたい。
● 町長派、合計しても1000ゆかず
小川、市毛両候補者の支持票総計に驚いた。
ようやく町の歴史に新たな潮目がやってきたという人も多い。
小川候補は4期16年杉戸町町長にあった元町長の末弟であり、選挙前から千票は固いとされた。
だが元町長の末弟がその影響力を行使して談合疑惑などがかねてからあったという”怪文書”が広範囲に町に流された。
怪文書の類で驚かないとされた太っ腹の人だったが、兄の元町長のさまざまな後援組織とと影響力を考えれば、この票数はまさに完敗と言えよう。
元町長に支援され後継となった形の古谷現町長を支えるために立候補した若い市毛候補も完敗している。
両者の合計票はたったの905票。
もちろん他の現役候補者もその殆どが体制化し古谷町長を支えている中でも、この数は注目される。
● 選挙戦、不祥事ニュースかけめぐる
この選挙戦の最中、杉戸町の不祥事が報道された。
幹部クラスの町職員と業者が結託して、公金をだまし取ったとする事件で、NHKはじめ新聞各紙も揃ってとりあげた。
「わずか数十万円で、退職金を棒に振ったのか」と同情する声も聞こえたが、事件の根にあるものは意外に深い。
こうした究明と改革も新議員には期待したい。
町職員ら公金詐取容疑 埼玉・杉戸町
2011年8月25日 朝刊(東京新聞)
資材代金を架空請求し、公金数十万円をだまし取ったとして、埼玉県警捜査二課と杉戸署は二十四日、詐欺容疑で、同県杉戸町住民参加推進課主幹船川正治(58)=同町倉松三=と、土木工事会社「吉村工業」(同町)取締役吉村正美(68)=同町下高野=の両容疑者を逮捕した。
逮捕容疑では、船川容疑者が都市施設整備課主幹だった二〇〇九年三月ごろ、二人は共謀し、同社が道路維持の資材を納入したように装って代金を町に請求し、現金数十万円を吉村容疑者の預金口座に振り込ませ、だまし取ったとされる。
捜査二課によると、二人は容疑を認め、船川容疑者は「遊ぶ金が欲しかった」と供述している。
民間信用調査会社によると、同社は一九七六年創業、八一年設立。資本金一千万円で、二〇一〇年三月期の売上高は約一億三百万円。
逮捕容疑では、船川容疑者が都市施設整備課主幹だった二〇〇九年三月ごろ、二人は共謀し、同社が道路維持の資材を納入したように装って代金を町に請求し、現金数十万円を吉村容疑者の預金口座に振り込ませ、だまし取ったとされる。
捜査二課によると、二人は容疑を認め、船川容疑者は「遊ぶ金が欲しかった」と供述している。
民間信用調査会社によると、同社は一九七六年創業、八一年設立。資本金一千万円で、二〇一〇年三月期の売上高は約一億三百万円。
● 集会所が選挙事務所になる不思議
町の公営施設がそのまんま元議長を努めた候補の選挙事務所になっていたことには驚いた。
公民館に似た建物のなかで「必勝」という各種ポスターが貼ってあり、長机の前にお年寄りが陣取って茶を飲んでいる姿はさながら昭和40年代そのまんま。
この町のひとつの現実の姿ともいえる。
だが、その人も前回に続き落選。
ここにも風が吹いている、としておこう。
==============
◇杉戸町議選開票結果(定数15-21)
当 1437 伊藤美佐子 58 公新
当 1436 平川忠良 49 公新
当 1286 須田恒男 64 無現
当 1231 宮田利雄 61 自現
当 1124 稲葉光男 57 無現
当 999 窪田裕之 46 無新
当 960 大橋芳久 30 無新
当 925 浜田章一 63 無元
当 863 阿部啓子 61 共現
当 840 石川敏子 60 共現
当 833 勝岡敏至 62 無現
当 822 石井幸子 48 諸元
当 802 上原幸雄 71 無現
当 797 坪田光治 38 無元
当 737 森山哲夫 52 共現
724 五月女経夫 62 無元
658 都築能男 43 無現
591 菅野泰孝 49 無新
498 小川健一 62 無新
407 市毛大助 59 無新
282 斎藤正雄 72 無元