情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

不当判決!~NHK番組改編事件で最高裁が歴史に汚点を残す判断

2008-06-12 19:38:40 | メディア(知るための手段のあり方)
 いま、NHK番組改編事件の最高裁判決報告集会の最中です。残念ながら敗訴です。NHK、その子会社NEP、番組制作受注会社DJ、いずれに対する請求も認められませんでした。詳しくは、また、書きたいと思いますが、NHK広報局が出した広報文を見れば、今回の判決の不当さははっきりと分かります。

 広報文(http://www3.nhk.or.jp/pr/keiei/news/080612.html)は次のとおりです。

【きょうの判決は、どのような内容の放送をするかは、放送事業者の自律的判断にゆだねられており、取材を受けた側が番組内容に特定の期待や信頼を抱いたとしても、原則として法的保護の対象とはならないことを明確にしたもので、正当な判断であると受けとめています。
 最高裁は、NHKの主張を認め、「編集の自由」は軽々に制限されてはならないという認識を示したものと考えます。
 NHKは、今後も、自律した編集に基づく番組制作を進め、報道機関としての責務を果たしていきます】

 これは、もはや、喜劇としか言えない。きょうの判決でも控訴審が認めた編集経過の不自然さが際だつ事実関係自体は認められている。安倍官房副長官と会った後、国会担当の局長が直接、番組制作スタッフに指示をして改変したうえ、さらに完成したテープを直接削ったという事実は消されない。それなのに、【放送事業者の自律的判断にゆだねられており】ということを言えるなって、思いませんか?

 【NHKは、今後も、自律した編集に基づく番組制作を進め】…「今後も」って…。

 いま、この広報文を紹介したら、失笑が漏れました。この失笑の意味を全てのNHKの関係者(もちろん、与えられた環境でがんばっている人がいることも分かっていますが…)にかみしめてほしい。

最高裁判決:http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=36444&hanreiKbn=01

高裁判決:http://www.news-pj.net/siryou/2007/nhk-kousai_zenbun20070129.html

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18 コメント

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今更ですが…。 (田仁)
2008-06-12 22:31:22
本件の最高裁判事は、肝炎被害隠蔽時に現役厚労省職員で、かの社保庁元長官の経歴もおありとか。
大変に判り易い構図である様に思います…。
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当然の判決じゃないですか (元キシャ)
2008-06-13 11:00:40
原告の訴えはなんだったんですか?
「政治家の介入によって番組が改変されたことが怪しからんから、内容改変の意思決定に関与した関係者は被害の賠償をせよ」と言う訴状でしたか?違いますよね。
バックグラウンドの意識はどうであるにしても「取材を申し込んできたときの説明と、出来上がった番組とが食い違っていて『期待を裏切られた』から、NHKは取材対象に損害を与えた」として損賠を提起したんですよね。
だったら、訴訟の論理構造から見て、どこにも「不当」な部分は見当たりませんよ。

一度完成した放送テープをオンエア前に再編集した『理由』、今回はたまたま「内部告発」があったために知られることになったにせよ、通常は再編集があったかなかったか、またはどのような力学関係や判断で編集が行われたかなど外部から覗うことはできません。
仮に覗えたとしても、それは「編集権」のひとことで切って捨てられるようなもんじゃないんですか?
民放であればスポンサー事情やウラ番組事情、出演者配慮・事務所対策等々があったとしても、それら全てを勘案して判断を下すのは各社の「編集権」の裁量範囲でしょう?
ヤメ蚊さんも元は記者だったのならご存知ではないんですか。

もしエントリーで御主張になるような論点を成立させるには、例えば番組制作者自身が原告に立ち「外部からの不当な圧力によって『NHKが自主独立的な編集権を放棄』し内容を改変」したために制作者が精神的被害を蒙った等々の論理立てが必要なんじゃないんですか。

取材対象が「勝手に期待したこと」を理由としてメディアの報道内容に「介入」できるとしたら、そんな世界では『報道』は成立しませんよ。取材対象者の求める「プロパガンダ」しか流せなくなります。

取材を受けた政権与党は「当然の権利」として政権礼賛をしない報道、政府与党に批判的な報道を相手取って損害賠償が請求できることになるでしょうね。
甲論乙駁で利害対立のある事象の報道で、それぞれが「自分の言い分に沿った報道」を「当然に期待する権利」が生ずるとしたら、両論併記の記事を書いたが最後、取材した双方から損賠を提起されるでしょう。

組織内部の規律の問題を、外部から(筋の悪い論理構成で)コントロールしようと言うのが、そもそも無理なんです。
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根本的に方法が間違ってます (伊賀 敏)
2008-06-14 00:40:51
またまた出ましたインチキ判決。 やるだけムダ。 まず裁判所を訴えないとダメでしょう。
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政治の不当介入を判断しない最高裁 (Unknown)
2008-06-14 02:03:28
まさに、
「権力に縛られたメディアのシステム」
の典型ですね。

婚外子の国籍裁判で反対意見を述べた横尾和子氏が裁判長では、市民の立場に立った判決は、最初から期待できなかったのかもしれませんね。
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最高裁、不当判決に異議、異議、異議の声 (歌姫(元ジャーナリスト))
2008-06-14 10:31:25
 昨晩、岩波セミナーホールで開催された「対米従属」とナショナリズムについての講演。講師は朝日新聞コラムニストのH氏でした。講演が終わって私は質問しました。「NHK番組改編の最高裁不当判決が昨日出ましたが、そもそも問題の発端となった安倍元総理による政治的圧力については、ふれられませんでした。マスメディア編集の自由に対する判決と、その原因を作った政治圧力問題について、ご意見をお聞かせください」。
 H氏はこう応えました。「安倍さんの政治的圧力が問題なのに、問題の根本原因に触れられることなく、かえってその圧力で改変された番組に編集の自由権があるなんて、本末転倒。おかしいですよね。これでは、政治圧力を容認する結果になってしまう。本来の企画の意図を変える編集をするようにとの官邸の圧力を受け入れた“改変”にこそ“編集の自由権を侵害する”問題の本質があるのに、最高裁はこの前提を無視して、“報道機関の独立性”問題に言及することなく“(圧力によって)変更させられる編集”に自由を与えてしまう判決を出した。これが自由といえるのか?おかしいです。納得できませんね」。
 私もこのベテランジャーナリストに全く同感です。最高裁は報道倫理と、ドキュメンタリー製作現場の常識が全くお判りでないようです。取材協力者がなぜ、協力するかの心理も理解していない。取材協力する動機は、製作側の意図に納得し、説明に同意したからです。ところが、その前提条件が崩れ、改編されるとなれば、番組内容そのものが別物にすり替わってしまう恐れがあります。「それでは当初と話が違う」と、協力者や出演者が抗議するのは当然です。改編された番組がそのまま放映されたら、同意した時点とは異なるメッセージを発信する背信行為に加担したことになります。「これは騙しだ」「話が違う」と、サギにあったような気持ちになるでしょう。
 この判決の深刻さは、番組編集・製作側が「やりたい放題」のお墨付きを最高裁からもらったようなものです。出演者や情報提供者を騙してまでも、ある(政治・イデオロギー的)恣意的な番組作りに“善意の協力者”を利用する“自由”を、許可されたも同然です。
 もしも、提供した情報やコメントが改編され悪用された場合、その「騙された」と感じた協力者が「話が違う」「謝罪、訂正せよ」と権利侵害を訴え出ても、裁判所は今後、市民の権利擁護をしてはくれないということでしょうか?この不当判決は、表現の自由と情報コントロール問題に、深刻な疑問を投げかけました。
 誤判決に対して、市民と報道関係者は反対キャンペーンを張って、声を上げ続けましょう。言論機関に対する、政治ファッショをこのまま容認してはなりません!おわり。
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6・13エントリーの(元キシャ)氏に反論します (元プロデューサー)
2008-06-14 12:02:12
《当然の判決じゃないですか (元キシャ)》さんの6・13日ご意見に反論します。TV制作現場のいいかげんさ、法意識の低さは周知の通りですね。現場を知る者の1人として、申し上げます。リサーチャーのADが取材対象者に説明した当初の編集方針が、政治圧力により大幅に変更され、出来上がってみると「同意」時点の説明内容と全く異なる作品に変容していた。これは明らかに、心理的苦痛をもたらした理由により、損害賠償責任と違約金が発生しうる状況です。
また、「公権力の監視」がメディアの使命である以上、政府政権与党と市民(市民団体)の権利を、同列に語ることは理にかないません。「市民が損害賠償請求するなら、政権政党だって、賠償請求できることになるじゃないか」という論理には無理があります。
もしや、この方の真のIDは(元キシャ)ではなく、法務省か検察側の回し者または監視者ではないか?とも疑いたくなります。やっぱ、検察・官憲は、ヤメ蚊さんブログを監視しているのかなあ?だとしたら、リベラル弁護士は結構、つらい家業だといえますね。ご健闘を祈ります。
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サイテー裁判所 (小林少年)
2008-06-15 00:22:00
こんなショーもない判決でも判例として後のあらゆる裁判所の判断を拘束するというのは、制度的欠陥というか人為的災害としか言いようがありません。
裁判官を名指ししつつ徹底的に批判・論破すれば何か改善する見込みはあるのでしょうか。
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そのとうりです (こやぶ)
2008-06-15 01:45:50
個人的うらみでもあるんじゃないですか?
ネトウヨなみですね。
私もいつもそう感じていました。
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Unknown (Mitsu)
2008-06-15 14:18:09
歌姫さんや元プロデューサー氏などのご意見に全面的に賛成します。ただ、最近、注目している裁判の判決前に一番思うことは、裁判官が法律と良心に基づいて判決をくだそうとしているかどうか、その期待がもてる人かどうかということです。ほとんどの裁判官は、事実を正確に判断することより、もろもろの条件を勘案して形成した自己の主観に沿う判決を書いているように思え、たまにそうではないと思うケースがあると感動(?!)したり、驚くべきことですが、時にはその裁判官の身が心配になったりします。
なぜこんなことになったのか。80年前後の元裁判官や弁護士の方の発言や対談などをみてみると、そのころすでに「裁判がおかしくなりつつある」「田中耕太郎時代の自然法に回帰しつつある」などという危機感が大変強くうかがえます。裁判官の指名傾向などで周到に準備されて今日のような事態になっているのかもしれないなどと素人考えで思ったりするのですが、いかがなのでしょうか。
藤田省三(「天皇制国家の支配原理」の著者)は、90年に「世界」のインタビューで、戦後、文部省とともに司法省も一度潰すべきだった、と言っています。「思想統制を暴力的にやったのは内務省警保局特高警察だけど、日常的にやっていたのは文部省教学局と司法省の思想課です。司法省もほんとうは一度解体しなければいけなかった…」 最近はどうもこのようなことが気になります。
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Unknown (真実)
2008-06-15 18:55:05
今更ながら日本国民というのは本当に平和ボケしすぎというか危機管理といった意識がまったくないのでしょうね…
最近なんかはこれだけネット上で善悪は別にしても国民に対して事前にそれなりの情報が入ってくるにも関わらず「まさか日本でそんなことはないだろう」なんて考えだからいざ問題が起きた時に自身の準備不足は棚にあげて慌てふためきヒステリックを起こすだけ…
これでは誰が相手でどのような問題であっても好きなように料理されて終わりでしょうな…
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