情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

「敵愾心を激成せよ」決戦輿論指導方策要綱~昭和19年10月6日閣議決定

2007-07-01 11:36:12 | 有事法制関連
 
 敗戦の色濃くなった昭和19年10月6日、内閣は、「決戦輿論指導方策要綱」なるものを閣議決定した(現代史資料41「マスメディア統制2」みすず書房523頁)。この要綱には、より詳細な実施要項がついており、それによると、上記要綱の根本方針は、「(1)国体護持の精神を徹底せしめ(2)敵愾心を激成し以て(3)闘魂を振起することを目的」とする。

 そして、(1)については、「国体に対する信仰-従来はと角理論的観念的に流れ、甲論乙駁の議論が多かったのであるが、抑々国体に対する一億同胞の信念は悠久3000年に亘り受継ぎ受継がれて来た祖先伝来の信仰であって、この国民の内奥にある信念信仰を喚起し、これを深めることをこそ致すべきである。かくて皇土防衛の国体護持上絶対緊切なる所以を自覚せしめることが戦意昂揚の根本義である」とし、国体護持の目的が戦意昂揚であることだったことが分かる。そもそも、国体については色々な考え方があったことを認めつつ、戦意昂揚のために、国体護持を徹底するよう閣議決定したのである。

 そのうえで、(1)について、具体的には、①宣戦の大詔の趣旨を徹底させ、戦争完遂が皇国の自存自衛の為絶対必要なることを徹底する、②戦局が国家興亡の重大時期に到達していることの認識を徹底させ、国民の忠誠心を顕せること、③一億協力大和魂を発揮して戦えば必ず敵に勝つこという確信を強化させることを行うとしている。


 (2)については、「今次戦争は米英指導者の野望により誘発せられたものであることは言うまでもない。この点を解明するとともに米英人の残忍性を実例を挙げて示し、殊に今次戦争に於ける彼等の暴虐なる行為を曝露して敵愾心の激成を図るべきである」としている。鬼畜米英を煽り、敵愾心を徹底させることで、全ての国民を「特攻要員」としようとしていたことが分かる。

 このような形で(1)、(2)を行うことで、結果的に、(3)闘魂を振起しようとしたのである。

 すなわち、「国体護持」も「鬼畜米英」も、当時の政府が、国民の戦意を高揚させ、1人ひとりを、後方支援マシーン、殺戮マシーンに仕立て上げるために用いた「道具」でしかなかったのだ。

 そのような道具に踊らされ、多くの市民が命を失ったのだ。そういう意味でもジュネーブ協定を市民に知らせなかった罪は大きい。ジュネーブ協定とそれを守る合意が政府間でなされていたことを知っていたら、市民はこの要綱の施策によって操られることはなかったはずだ(ここここここ参照)。

 実施要綱の末尾は次のような言葉で結ばれている。
 
■■引用開始■■
 次の如きものは依然厳重なる取締を要すること勿論である。
 「戦争遂行上抑制すべき言論、特に国体に対する信仰に動揺を生ぜしめ、軍事外交上の機密保持に支障を生じ、若しくは国内分裂を招来するが如きもの又は厭戦和平的なるもの等に対しては厳重な取締を為すものとす」
■■引用終了■■

 なお、上記要綱には、「事実を率直に知らしむ」とあるが、それは戦意昂揚に役立つ事実については戦況が不利であることを含めて、報道させるという意味に過ぎず、その後も、軍・政府は検閲を行い、戦意高揚に不利な事実など不適切と考える事実は報道させなかったり事実をゆがめて報道させたのは上記末尾の言葉からも分かる。何でも報道させたなどという誤解のないように…。


 







★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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2 コメント

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感想は「何か、電通様っぽい」。 (田仁)
2007-07-01 20:29:42
まあ、電通様の母体が満州なことはご承知の通りですし。
しかし、B層(By電通用語)の社会比率って、社会状況によるんでしょうか?経済状況でしょうか?国際情勢?よりは国内問題のような気が…?!
何時の時代も変わらないと申しましょうか何と申しましょうか、今はインターネットもあるんだし、世界の富の8~13%も集めたバブルを経験したんだし、今度こそ根性見せないと!と思うのですが。
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「しょうがない」とは戦後レジーム信仰そのもの (「しょうがない」の真実)
2007-07-03 22:14:26
衆議院定数:480 うち社民6、共産9
参議院定数:242 うち社民7、共産9
国会議員総定数722 うち社民13、共産18
(722-(13+18))/722=95.7%
単純かつ乱暴に見積もって、総定数で95%もの「日米安保と核の傘」を信じている「しょうがない」国会議員を選出しているのが、わが日本国民である。
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