情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

旧日本軍及び当時の政府が責任をとるのは当然だ~ジュネーブ協定を教育しなかった罪は万死に値する

2007-06-12 04:45:58 | 有事法制関連
 旧日本軍や当時の政府の首脳が東京裁判で様々な名目で刑罰に処せられた。もちろん、死刑は行きすぎだと思うが、かといって、旧日本軍・政府の責任者が国際法的な責任を負わされるべきではなかったかといえば、そんなことはない。旧日本軍のいわゆる従軍慰安婦や中国民間人に対する非人道的な行為は、全て、旧日本軍及び政府が軍人に対して、ジュネーブ国際協定(1929)の存在とその内容を教えなかったことに起因する。そんなことは戦争につきものだ、などという言い訳は通用しない。情報を流通しなかったことによって、幾多の民間人及び軍人が失う必要のない命を失ったのである。

 ジュネーブ国際協定(←クリック。ただし、英文。どなたか訳してくれませんか?)は、1899年のハーグ陸戦条約のうち、捕虜部門について充実させた規定だった。その内容は、「Prisoners of war are entitled to respect for their persons and honour. Women shall be treated with all consideration due to their sex.(捕虜は、人格、名誉を重んじられなければならない。女性は女性としてふさわしく取り扱われなければならない)」、「Imprisonment is the most severe disciplinary punishment which may be inflicted on a prisoner of war.The duration of any single punishment shall not exceed thirty days.(投獄することが捕虜に対する最大の懲罰であり、その期間は、一つの事由について最大で30日間を超えてはならない)」などというもので、捕虜の人格を重視するものとなっている。

 日本は、このジュネーブ国際協定について、署名は行ったが軍部、枢密院の反対により批准しなかった。しかし、太平洋戦争開戦後の1941年12月27日、アメリカ合衆国は当時の日本における利益代表国であったスイスを通じて、同国が本条約を遵守する意思があることを伝え、また日本の意向について問い合わせてきた。さらに、1942年1月3日には、英国およびその自治領が同様に利益代表国のアルゼンチンを通じて問い合わせを行った。これに対し、日本政府は、1942年1月29日、スイス、アルゼンチン外交代表に対し「適当なる変更を加えて (mutatis mutandis)同条約に依るの意思ある」との声明を発表している。=ウィキペディア「俘虜の待遇に関する条約」

 つまり、日本政府は、1942年1月29日以降、捕虜に対して、非人道的な取扱いをしないように、ジュネーブ協定を軍人に指導する義務があった。これは当時の国際法上の義務だった。

 しかし、日本政府及び旧軍は、この義務に反したばかりか、ジュネーブ協定の趣旨に真っ向から反する「生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず」という戦陣訓を教育したのである。

 この結果、日本軍人は、勝利さもなくば死、という殺伐とした認識で戦争に従事せざるを得なかったため、自らは玉砕戦術を従容として受け入れ、敵国人及びいわゆる従軍慰安婦に対しては残虐な行為を行うこととなった。もし、日本の兵隊がジュネーブ協定を知っていたら、火炎放射器で焼かれるような死に方を選ぶことはなかったし、逆に、自殺しろと沖縄の市民に手榴弾を渡すこともなかったはずだ。

 この国際協定違反という犯罪は、まさに、万死に値するものであり、その一点をもっても、A級戦犯に対する東京裁判が正しかったこと示している(死刑は行きすぎだが…)。これに比べ、そのような協定の存在すら知らなかったB、C級戦犯が極刑に処せられたのは、悲しむべきことで、その責任は当時の政府・軍部首脳にあるというほかない。

 そして、現在の日本でも、この勝利さもなくば死という思想は、形を変えて生き続けている。「私は犯罪を犯さない。だから、犯すような奴には人権はない」という形で、あるいは、「中国に攻められたら日本人は奴隷にされてしまう」というような形で。このような思想が、犯罪を犯した場合の適正なルールの存在の必要性に思いを馳せることを防ぎ、また、せっかく9条という先進的なルールを持ちながら軍隊のない国際社会を生み出すにはどのようにするべきか真剣に考えることを妨げている。

 いまからでも遅くはない。アッツ島で、サイパンで、硫黄島で、玉砕した兵隊の家族は、日本政府を国際協定違反で訴えるべきではないだろうか。例え戦争時においても開示すべき情報を開示することをしなかったことへの反省がないことが、今回の反戦活動監視作戦の決行へと連なっているのだと思う。 
 














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2 コメント

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POW(Prisoner of war)ですが (アルファメイル)
2007-06-28 15:57:56
POW(Prisoner of war)というのは交戦国にとらわれた軍人または軍属のことですので、この条文は一般の民間人には適用されません。

よって「自殺しろと沖縄の市民に手榴弾を渡すこともなかったはずだ。」の部分に関しては、また別の問題になると思いますが。
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例の参院候補者の祖父の… (田仁)
2007-06-28 23:49:45
かの有名な「戦時訓」がジュネーブ条約に対する無知から来ている事は明らかでしょう。
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