情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

政府・大企業による不正を見逃すことを許容するか否か~なぜ、表現の自由によって無罪となるのか?

2010-09-08 05:03:29 | メディア(知るための手段のあり方)
 前回、グリーンピース「横領」鯨肉「窃取」事件の判決を批判する記事を書いたが、この事件のポイントは、政府・大企業による不正・不当な行為を暴くことを尊重するか、それとも、政府・大企業による不正・不当な行為について、手をこまねいたまま見逃す社会でいいのか、ということだ。欧州人権裁判所がこの種の事件で、無罪あるいは罰金などの極めて軽微な判決であるべきだとの判断を下すのは、政府や大企業による不正・不当な行為を暴くことの重要性、すなわち、直接的な税金の無駄遣いなどの利益だけでなく、政府や大企業の不正・不当が明らかになることによって社会のあり方に対する有権者の投票行動が「正しくなる」という利益があることが理解されているからだ。得られた情報が民主主義社会にとって必要な情報か否か、という基準を持ち出すのは、その観点からのものだといえる。


●共同船舶は国策会社である●
 そのうえで、本件の民主主義社会における重要性を述べるならば、まず、調査捕鯨を請け負っている共同船舶は、政府主導によってつくられた会社であり、「民間会社」とはいえない。

 株主構成は次のようになっている。


1、財団法人 下関海洋科学アカデミー  1112株
2、財団法人 日本鯨類研究所       1112株
3、財団法人 漁船海難遺児育英会    1112株
4、財団法人 全日本海員福祉センター  1112株
5、財団法人 農林水産奨励会       1112株
6、共同船舶 役員               170株

 GPの佐藤氏の解説によると、

【1の財団法人下関海洋科学アカデミーの理事長は現下関市長の江島潔氏。私も前回のIWC(国際捕鯨委員会)でお会いしました。今回もチリで開催されるIWCに行かれるのではないでしょうか?

2の日本鯨類研究所はもちろん共同船舶に仕事を委託している調査捕鯨の主体。

3の漁船海難遺児育英会の理事長は鈴木俊一衆議院議員。自民党捕鯨議員連盟の会長でもあり、鈴木善幸元総理大臣の息子さんです。鈴木善幸元総理大臣と言えば、農林大臣だったときに商業捕鯨が全盛期だった方で、捕鯨を強力に推進された方としても有名です。

4の財団法人全日本海員福祉センターの会長は共同船舶の船員さんたちが加入する全日本海員組合の組合長。

5の農林水産奨励会の理事には非常勤で共同船舶の社長である山村和夫氏が名前を連ねています。】


 もともとは、共同船舶は水産会社が株主だったのだが、捕鯨に対する批判が高まったことから、水産会社は将来的に商業捕鯨をすることを諦め、その結果、調査捕鯨を続けることの意義を失った。そこで、共同船舶は存続自体が危ぶまれたが、上記のような財団法人によって息をつないだ。本当はそのこと自体が批判されなければならない。商業捕鯨の再開を担当する会社が存在しないのに、なぜ、商業捕鯨再開を目的とする調査捕鯨に税金を投入するのか、わけがわからない。

 いずれにせよ、この共同船舶が税金によって運営しているわけだから、共同船舶がお土産を渡したり、船員が鯨肉を持ち帰ることを見逃していたとしたら、それは極めて公的な事柄ということになる。

 
●土産を裏付ける資料なし●
 次に、彼らの行為及び公判を通じて、共同船舶が公式的な土産と称するものについて、実は、まったく、それを売買する契約がなかったことがはっきりしたということだ。

 本来、共同船舶が船員に土産を配るためには、捕鯨を請け負っている共同船舶が捕獲したクジラの所有者である日本鯨類研究所から土産用の肉を購入しなければならない。

 しかし、共同船舶と日本鯨類研究所との間にはそのような契約はなかった。

 共同船舶は、仕方なく、共同船舶が購入する販売用の肉の値引き率において、土産用の肉分を考慮したとか、請負代金において考慮したとか、荒唐無稽な説明をした。しかし、そのような考慮をしたことを示す書類は一切存在していないのである。

 共同船舶が明らかに、「隠された組織的な鯨肉分配行為」をしていたということだ。そして、その分配先は、国会議員や政府高官をも含むことが証言から明らかになっている。しかも、公式的には取れなかったとされる極めて極上の部分の肉(尾の身)がばらまかれていた。ジャーナリストの上杉隆さんは、年1回、国会議員が鯨肉を食べる会に招待され、非常にウマい鯨肉を食するのだと暴露した。


●不正な持ち出しも明らかに●
 もちろん、公式のお土産なるもの以外にも船員による不正な持ち出しがあったことも明らかになった。鯨肉の所有者の説明は、DNAという科学的な証拠と矛盾することが明らかになった。鯨肉を持ち出すのに利用していた運送会社を使わなくなったのに、別の会社で運んでもらう箱の数は増えていないこと(=前には鯨肉を運んでいたこと)が証言で明らかになった。


●民主主義社会において重要な情報が明らかに● 
 これらの事実から何が分かったのか。

 共同船舶が船員に鯨肉を配り、船員が鯨肉を持ち帰ることを許したのは、そうしなければ、船員が集まらないからだろう。

 共同船舶が国会議員に鯨肉を食べさせるのは、そうしなければ、税金の無駄遣いを指摘されるからであろう。

 つまり、本件の鯨肉横領の指摘によって、調査捕鯨の矛盾と調査捕鯨全体にかける壮大な税金が正しい使い方と言えるのかどうか、ということを再検討する必要性が明らかになったのである。


 政府が国策としてきた調査捕鯨、実際には、商業捕鯨となってもそれを行う業者さえいない調査捕鯨、そこへかける税金の莫大さ…。映画「ザ・コーヴ」をご覧になった方は分かると思うが、日本が国際捕鯨委員会で票を集めるために、捕鯨に関心のない国に委員会のメンバーフィーを出して出席資格を与え、さらに助成金を出して、日本に賛成するようにさせている=票を買っている=実態もある。


●鯨肉という現物があってさえ、本気で捜査しなかった検察●
 そして、DNA結果に反するような船員の言い分をそのまま飲み込んで起訴しなかった検察(ちなみに検察審査会にもDNAの結果は提出されなかった)のあり方自体、グリーンピースのメンバーが「鯨肉」そのものを確保する必要性があったことを裏付ける。

 現物を露わにしてさえ、検察は、船員の預金さえ洗わなかった。横領の捜査で金の流れを確認することはイロハのイ。つまり、検察は、国策における不正を暴こうとはしなかったのである。もし、現物がなければ、おそらく、検察は告発の受理さえ、拒み、メディアでも話題にさえならなかっただろう。

 
 あなたは、商業捕鯨の見込みのない調査捕鯨における税金の無駄遣いを暴く行為と宅配便を確保する行為とをどのように比較考量しますか?


 欧州人権裁判所は、こういう場合には、税金の無駄遣いを暴くこと、さらに、有権者の投票行為に与えるだけの重大な情報を明らかにしたことの重要性を重視した判断を下すはずだ。


★画像は、GPJ(http://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/whale/t2/photos/img_whalecircle_large.png)より



 



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Marine in Futenma must go back to your country. There is no place where the base of Marine is acceptable in Japan.

Okinawa and a lot of Japanese oppose the transfer of the Futenma base to Henoko


At least180 MPs of ruling parties say NO to Futenma relocation within Okinawa. Check this http://bit.ly/9jQIW8

 




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