情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

グリーンピース「横領」鯨肉「窃取」事件、青森地裁判決は、形式的な逃げの判決だった~被告人控訴!

2010-09-06 18:54:39 | メディア(知るための手段のあり方)
 グリーンピース「横領」鯨肉「窃取」事件の判決が下された。時事通信は、【青森市の運送会社から鯨肉を持ち去ったとして、窃盗罪などに問われた環境保護団体グリーンピース・ジャパンのメンバー佐藤潤一(33)、鈴木徹(43)両被告の判決が6日、青森地裁であった。小川賢司裁判長は「調査活動として許される限度を明らかに逸脱した」と述べ、両被告に懲役1年、執行猶予3年(いずれも求刑懲役1年6月)を言い渡した。弁護側は即日控訴した。】(http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010090600467)と伝えている。

 実は判決後のミーティングで、控訴は何の躊躇もなく決まった。

 というのも、この判決が、グリーンピース・ジャパン(GPJ)の二人が行った行為について、実質的な判断を下していないからだ。

 判決は次のようにいう。

【被告人らの調査活動が、いかに公益を目的とした正当なものであったとしても、その調査活動の過程で刑罰法令に触れる行為をして他人の権利を侵害すること、とりわけ、本件のように、捜索・押収に類する行為をして他人の財産権ないし管理権を侵害することは、およろ法と社会が許容するところではなく、本件建造物侵入、窃盗の犯行は、その手段・方法自体、法秩序全体の見地からしても、また、社会通念に照らしてもみても、手王艇是認することができなものというべきであるから、これが正当行為に当たらないことは明らかである。】

 申し訳ないが、何も明らかではない。判決が言っているのは、法に触れるような行為をした場合は有罪だと言っているだけで、これでは、裁判官は不要だ。刑法を形式的に当てはめるだけなら小学生でも可能だろう。

 検討するべき重要な問題は、

 ①刑罰法令に触れることなく、船員らにおける不正を暴くことができたのかどうか、
 
 ②暴こうとした『政府側の』不正を明らかにすることで得られる社会的利益と、刑罰法令に触れることで生じる社会的不利益とを比較して、どちらが重大と言えるのか。

 ③結果的にいかなる社会的利益が得られたのか、

 である。

 しかし、判決は、それらについて何ら判断していない。

 これでは、政府側の不正行為については、それを知ったとしても、目をつむれ、ということだ。

 不正行為は公にして堂々と行われることはない。うわべは不正行為がないふりをする。そうだとすれば、不正行為の証拠をつかむためには、なにがしか、法に触れることをせざるを得ない。

 たとえば、内部告発をする際にも、会社にある社会には明らかになっていない文書をコピーするなどの必要がある。内部告発を受けたマスメディア側が、それをそそのかす場合だってあるだろう。その際、形式的には、窃盗、建造物侵入を犯すことになる。
 
 判決に従うならば、そのような行為すら違法なものとされうるということだ。

 そうであれば、政府側は不正のやりたい放題ということになる。

 そんな国もあったよね、確か、北朝鮮…。

 北朝鮮と言えば、こういう説明もできる。

 北朝鮮においては法的に表現の自由が制約されているはずだ。反政府的な活動を行うことも禁止されているだろう。そうだとすれば、その状況を市民が打破するためには、形式的に、それら表現の自由を制約する法律を犯さなければならない。犯さなければ、民主化を実現することはできない。そうだとすれば、北朝鮮の市民は抑圧された状態が続く。それでもいいのでしょうか?

 日本は勿論、北朝鮮よりは民主化されている。

 しかし、情報公開は十分ではなく、警察の不正・不当な行為をチェックする機関はなく、国家による無駄遣いについて争う法的な方法はなく、内部告発者を保護する法律はまったく不十分である。

 そういう社会で政府が関わる不正を暴く場合、どのような方法がありうるのだろうか…。


 裁判所は、【法秩序全体の見地からしても】と述べた。しかし、本来、法秩序全体の見地とは、上記のような日本社会の法的なシステム全体について検討したうえでの判断ということではないだろうか。

 『政府側の』不正行為が放置される社会と、『政府側の』不正行為が明らかにされる社会と、どちらを選びますか?

 仙台高裁が、実質的な検討をなすことを期待したい。


【補足】
 上記のような考え方では、警察だって違法行為をしていいことになるではないかというご指摘を頂いた。確かに舌足らずだったと思う。そこで、『政府側の』というかっこ部分を追加した。
 形式的に法に触れても構わないというのは、あくまでも、「政府(あるいはそれに類する巨大な権力をもっている組織)が関連した犯罪」に対する「民間人による告発」の場合に限定される。政府側(警察・検察)が捜査を行う場合に、形式的に法を順守することが重要であることはいうまでもない。
 なぜ、民間人による行為が法に触れても構わない場合があるのか?それは、政府側の不正を暴くことが民主的な社会では重要だとされるからであり、形式的に法に触れなければ暴けないことが多いからだ。もちろん、暴こうとする組織が有している権力の大きさ(け力との近さ)によって、許容される違法な行為の程度も変わってくるだろう。また、最初から無罪になるからどんどんしなさい、というわけではなく、結果的に無罪になりうる場合があるということだ。今回のケースは、船員らによる鯨肉横領に対する捜査のずさんさからも、グリーンピースのメンバーの判断は正しかったというほかない。

なお、冒頭陳述の際に使用したパワーポイントはこちら→http://www.greenpeace.or.jp/press/reports/chinjutsu.pdf
最終日の弁論要旨はまだ掲載されていないようだが、掲載されれば、お知らせしたい。

稚拙な反論として、「GPJの主張に基づけば、GPJが犯罪をしている場合、それを告発するためには事務所に入って証拠を取ってもいいことになる」というものがある。GPJの場合、具体的な事実に基づき、一定の証拠があるのであれば、警察に通報しさえすれば、警察は喜んでGPJに対して捜査を開始するだろう。つまり、このような反論は、政府側による不正は、警察が動かないことが多いから、それを知った民間人が動かざるを得ない、ということを見逃した議論だ。もちろん、たとえ一個人の犯罪であっても、それが与える社会的影響が重大であり、警察に通報する手段では回避できない場合には、法に触れてでも、防止する必要があるかもしれない。そういう例はあまり想定できないと思うが…。


★画像は、GPJ(http://www.greenpeace.or.jp/)より





●沖縄への連帯ツイッターキャンぺーン●

【ツイッターアカウント】@BarackObama

【メール】→http://www.whitehouse.gov/contactから


【ツイッター例文】
JAPAN IS NOT US'S COLONY! We won't support US BASE. All US BASE OUT! from our country.

Please HELP Okinawa. 75% of the American bases in JP is in the islands, only 0.6% of JP land. Relocate #Futenma base outside.

Marine in Futenma must go back to your country. There is no place where the base of Marine is acceptable in Japan.

Okinawa and a lot of Japanese oppose the transfer of the Futenma base to Henoko


At least180 MPs of ruling parties say NO to Futenma relocation within Okinawa. Check this http://bit.ly/9jQIW8

 




【ツイッターアカウント】yamebun

【PR】






★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。なお、多忙につき、試行的に、コメントの反映はしないようにします。コメント内容の名誉毀損性、プライバシー侵害性についての確認をすることが難しいためです。情報提供、提案、誤りの指摘などは、コメント欄を通じて、今後ともよろしくお願いします。転載、引用はこれまでどおり大歓迎です。


最新の画像もっと見る