情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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法制審議会を問う~法務省のお目付け役? 追認機関?(東京新聞)

2006-10-02 01:01:02 | 適正手続(裁判員・可視化など)
民主的手続の観点からは,謎の存在,うさんくさい存在だった「審議会」の正体を暴く記事(←クリック)を東京新聞が掲載した。記録しておく価値がある貴重な記事だけに全文を引用する。 

■■引用開始■■

 中央、地方を問わず、行政に付きものの「審議会」。本来、国民意思の反映、専門家による検証のためにある。その一つに法制審議会(法制審)がある。継続審議が続く共謀罪法案も、法制審を通って送り出されてきた。だが、議事録をめくると、論議となった数多くの疑問は話されずじまい。しかも、委員に法務官僚が少なくない。これでは官僚の隠れミノではないか。あらためて、法制審ってナンダ?

 法制審は法務省組織令に基づく法相の諮問機関。法務省が法律に関する重要事項を決める際、その是非を審議するお目付け役だ。

 現在、委員は鳥居淳子会長(成城大名誉教授)をはじめ二十人。内訳は学者十人、弁護士一人、検察幹部一人、裁判官一人、企業幹部四人、労組幹部一人、マスコミ人一人などだ。

 このメンバーが「親委員会」を構成し、その下に各部会がある。諮問内容は親委員会から部会に下ろされる。部会の可決を経れば、法律の専門家が少ない親委員会はほぼ素通り。法相の提案内容にお墨付きが与えられる仕組みだ。

 ■批判封じる人選

 一例として、共謀罪法案を審議した当時(二〇〇二年九月から十二月)の刑事法部会の構成をみてみる。委員は十五人で最高裁、東京高裁、最高検、警察庁から各一人、日弁連と法務省から各二人、大学教授ら学者から七人だった。まず、賛成が明確な政府寄りの委員の多さが目を引く。

 学者委員はどう決まるのか。この部会に加わった学者委員の一人は「法務省から依頼があった。学会の推薦はない。法務省の推薦で大体決まる」と話す。

 京大の中山研一名誉教授(刑法)も「かつては日弁連と法務省の対立の中、学者集団が主導権を握れた。出席した委員も学会で結果を報告した。いまは法務省の意向に合う人が役所から一方的に選ばれる。学会への報告もない」という。

 こうして事実上、役所主導の人選が進む。加えて、疑問なのは議事録だ。公開される議事録には、発言者が記載されていない。

 法務省は〇四年十一月の衆院法務委員会で「部会の性質によっては、外部からの圧力等の恐れがある」と非公開の理由を説明した。

 だが、共謀罪審議で部会委員を務めた岩村智文弁護士は「『法制審は政策的観点から発言するから、自説と違うこともありうる』と言った学者委員がいた。一度も発言しない人もいた。しかし、選ばれたからには責任持って発言しなくてはならない。だから、発言者の名前は公開すべきだ」と反論する。

 では、実務である部会での審議はどんな調子か。これも共謀罪法案を例に議事録からのぞいてみよう。

 ちなみに、この法案は窃盗、公職選挙法など六百以上の罪種を対象にするとして、国民世論や野党が猛反発。審議が四年近くも長引いているが、安倍新政権は成立を急いでいる。果たして、国民の疑問はきちんと審議されたのだろうか。

 第一回会合が開かれたのは〇二年九月十八日。〇二年十二月十八日まで計五回催され、最終的に一部修正された要綱案が賛成十三、反対一(日弁連委員)の圧倒的多数で可決された。

 第一回会合の最後には、「法相から来年の通常国会に法案提出したいとのごあいさつがあったので」という発言がある。こう時間が切られたのでは“追認”以外の選択は難しくなる。

 ■名前伏せて公開

 実際にはこの枠がはまり、法案の根本原理に関する質疑が交わされたのはほぼ第一回会合のみ。五回の合計審議時間は、休憩時間込みで、わずか十三時間三十九分だった。

 審議の中身はどうだったのか。法案の国会提出後は野党や日弁連から▽政府が共謀罪創設の根拠としてきた「国連国際組織犯罪防止条約」で「共謀罪」以外に「参加罪」という類型を選択しうる▽日本の現行法体系でも条約を批准しうる-などの指摘が出ている。

 ところが、〇二年九月の第一回会合では、事務当局が「参加罪は慎重な検討が必要。(中略)共謀の犯罪化(共謀罪の創設)を選択したい」と、委員たちの意見も聞かず、のっけから共謀罪を“指名”した。

 さらに一部の委員から「国内的に今回の法律に必要な理由が指摘されていないが」との疑問が出た。後に「共謀罪を作らないから日本には批准させない-などと国連から言われるわけではない」という批判にもつながる問いだった。

 しかし、これも事務当局が「条約締結のために必要な犯罪化等を図っていきたい」と一蹴(いっしゅう)してしまう。

 ほかにも「(運用には)通信傍受や室内傍受など盗聴が必要になる」と危ぶむ意見も出たが、別の委員の国際潮流を理由にした「この法律は、きちんと作らなければいけない」との声にかき消されてしまう。

 「条約は適用範囲を越境的犯罪に絞っているのに、法案要綱では国内法的なものにまで適用されてしまう」と批判する委員もいた。後の国会質疑で問題となったテーマだが、このときも事務当局が「国内法の作り方としては、そういう(越境犯罪の)性質と無関係に作っておきなさいというのが条約上の要求」と、反対論を封じ込めた。

 前出の岩村氏は「日本の刑法体系が変わる法律なのに根元の議論がなかった。(学者ら)他の委員も『条約だから』と反対しなかった」と当時を振り返る。

 一方、「自説と違うこともありうる」と述べ、岩村氏に批判された学者は「論点は全部出尽くし、意見交換もされていた。(共謀罪か参加罪かという)議論は条約を審議した前の国会でされるべきだ。審議会は国会で決められた枠内でしか議論できない」と話す。

 とはいえ、同様に審議に加わった神洋明弁護士は「学者委員の意見に期待したが、ほとんど発言しない人もいた。委員になるのがステータスと思っている人もいるのでは」と手厳しい。

 こうした法制審の現状を刑事法に携わる関係者らはどうみているのか。

 関西地方の刑法学者は「(八年前の)少年法改正論議で、国会議員から『法制審は時間ばかり食って使えない』といった無用論が高まり、法務省は存在意義をアピールしなくてはならなくなった。それで、人数や回数を減らした結果、原案通りという傾向が強まってしまった」と憂慮する。

 岩村氏も国会審議のあり方に疑問を呈す。「特に刑事法関係の法案が素早く通ってしまう。ピッキングに関する法案は、日弁連が意見書を作っている最中に通ってしまった。共謀罪は対決法案になったが、他はシャンシャンと通っているのが、今の日本の状態。審議会は法務省の翼賛機関ではないのだから、しっかりしなくてはならないが、国会の方も考えないと」

 先の刑法学者も「少年犯罪の重罰化や被害者の声の反映、テロ対策などを求める意見が強く、与党も昔なら難しかった立法をどんどんやっている」と危機感を募らせ、こう提言する。

 「刑事立法は時代の要請や政党の思惑でやると、後で困ることになる。(空洞化している)法制審も廃止するより充実させ、慎重な議論を定着させてほしい」

<デスクメモ>ここ数年、日々気づかぬ間に新しい法律ができる。そして、社会は息苦しさを増している。「こちら特報部」は一昨年以来、共謀罪反対キャンペーンを張ってきた。でも共謀罪とて「氷山の一角」にすぎない。野蛮からの脱出を原点とする近代刑法が崩れつつある。目を凝らして、想像力を駆使するしかない。 (牧)

■■引用終了■■


なかなか書けないことをずばっと書きましたなぁ。






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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
記事で「裁判員制度」をなぜ外すのか? (高野 善通)
2006-10-02 01:22:42
 記事中で問題のある感じた部分です。

>特に刑事法関係の法案が素早く通ってしまう。ピッキングに関する法案は、日弁連が意見書を作っている最中に通ってしまった。共謀罪は対決法案になったが(以下省略)



 なぜ「裁判員制度」を例に出さなかったのでしょうか?裁判員制度は刑事法関係法案の中でも目玉中の目玉的存在。これを例示から敢えて外すというのは、市民に対して「絶対に裁判員制度への批判の目を向けさせない」姿勢ではないでしょうか?これは、「裁判員制度」に関していえば作為的な悪質記事です。
ご指摘の点はもっともなところもありますが… (ヤメ蚊)
2006-10-02 01:48:15
今回の記事の狙いは,審議会批判と共に,共謀罪阻止だと思われます。恐らく,裁判員制度まで配慮する余裕がなかったのだと思います。



また,東京新聞が特に裁判員制度を支持しているとは思えません。



http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060926/eve_____sya_____004.shtml



ただし,誤解を招かないようご指摘があったことについては,東京新聞にお伝えします。
臓器売買、良心までも? (デカルト)
2006-10-03 01:31:09
司法の世界が、ひどい無法地帯になっていますね。



食品安全委員会のプリオン調査会も、最近はプリオン同好会になってしまったし。



学者も弁護士も裁判官も、みんな、保身のために,良心を悪魔に売り渡してしまったようです。