情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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裁判員HPに異議あり!その2~証拠調べ手続きは茶番か?

2008-11-12 08:02:42 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 昨日、裁判員制度に関する裁判所のHPに問題があると感じている旨指摘しましたが、その第2弾。今回は、弁論手続きに関するパンフレットの記述を取り上げる(http://www.saibanin.courts.go.jp/news/pdf/navigation/3_4.pdf)。

 弁論とは、証人尋問などを終えて、最後に検察官が「●●という理由で被告人は真犯人である。否認しており、反省が認められない。死刑を求める」とかいい(論告求刑)、それに対し、弁護人が「△△という理由で被告人の犯行とは認められない」などという(弁論)手続きだ。テレビドラマなどでもよく取り上げられるシーンだと思う。

 このことについて、裁判所は、次のような説明をしている。ひっかかるところがないか、考えてください。


■■引用開始■■

(弁論手続)
証拠調べ手続の終了後,検察官が「論告」と呼ばれる意見陳述を行い,最後に,被告人に対して懲役6年の刑罰を科するのが相当であるとの意見(求刑)を述べました。
次に,弁護人が「弁論」と呼ばれる意見陳述を行い,法廷で取り調べられた証拠では,被告人が犯人であると認めるにはなお合理的な疑いがあるから,被告人
は無罪であるとの意見を述べました。
事実に関する双方の意見は,それぞれの冒頭陳述とほぼ同じ内容です。
❖ ❖ ❖
最後に,被告人が「私は放火などしていませんので,公正な判断をお願いしま
す。」と述べ(最終陳述),この事件の審理は終わりました。

■■引用終了■■

どこに問題があると思いますか…。

そう、「事実に関する双方の意見は,それぞれの冒頭陳述とほぼ同じ内容です。」という一文です。この一文をここに書く必要ってありますかね?

私はこれを読んだ瞬間、昔、スリ未遂の窃盗被告事件で、犯行を目撃したというスリ担当警察官の尋問をした際、いかに目撃したという警察官の供述が怪しいかということについて細かく尋問を重ね、ある程度、警察官の供述の信憑性をたたいたつもりだったにもかかわらず、最後に裁判官が、「あなたのスリ担当警察官としての経験でこの人がスリをしようとしたと言えますか」と聞いたことを思い出した。

結局、一生懸命に証人尋問しても、無駄か…という徒労感…。

冒頭陳述とは、検察官と弁護人がそれぞれの事件の見方を発表するものです。もちろん、その最初のストーリーと最後の弁論が著しく違うことはないでしょう。でも、わざわざ、裁判員の説明のなかに、「事実に関する双方の意見は,それぞれの冒頭陳述とほぼ同じ内容です。」と書くことは、「まぁ、証人尋問とかありますけれど、たいしたことにはなりません。どうせ、証人尋問なんて茶番で、有罪ですからあまり一生懸命に証人尋問を聞かなくてもいいですよ」と言っているようにしか思えない。

証人尋問などの証拠調べ手続きを重視するなら。この一文の代わりに、「双方の意見は、証人尋問などの証拠調べの結果を受けたものとなります。双方が何を強調しているか、よく聞いておいてください」などのようなものにするべきではないだろうか…。




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