情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

グリーンピース「横領」鯨肉「窃取」事件で裁判所が提示命令!

2009-08-01 08:58:11 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
 週明けには東京地裁で裁判員第一号事件が始まる予定で、マスメディア各社はきっと大きく取り上げるだろう。しかし、これまでの報道で、裁判員裁判の準備として公判前整理手続が行われることはだいぶ知れ渡ってきたが、そこでの争点整理と証拠整理が決定的な意味を持つことはどの程度報道されているだろうか?裁判に提出される証拠が決まれば、自ずから結果も決まってくるわけだ。

 ちょうど、担当しているグリーンピースのメンバーによる横領鯨肉窃取事件(捕鯨船員による横領が疑われる鯨肉入りの段ボールを運送中に確保した事件)が青森地裁で公判前整理手続中だが、今週、重大な動きがあった。

 裁判所が弁護側が検察側に開示を求めた証拠について、提示命令を出したのだ。この提示命令とは、弁護側が検察官が持っている証拠を開示するよう求めた際に、裁判所がその必要があるかどうかを判断するために、検察官に証拠を裁判所だけにまず見せるように命じるものだ。

 えぇ、弁護側は、検察官が持っている証拠のすべてにアクセスできるのではないのか?と、驚かれた方は、非常に常識的な感覚を持たれている。

 しかし、日本では、なぜか、検察官の判断で出す証拠、出さない証拠を決めることができる。したがって、調べた結果、無罪を裏付ける証拠があっても、それを弁護側は知ることができない。なんて野蛮な国なんだろう。これで、先進国面しているんだから、たちが悪い。

 少し脱線したが、そういう制度のもと、弁護側は、少しでも有利な証拠を開示させるために、現在の制度の中で認められた方法を追求することになる。

 現行法でも、検察官が出そうとしている証拠の信用性にかかわる証拠や弁護側の主張にかかわる証拠については、裁判所が提出するよう検察に命じることができるのだ。

 グリーンピースの事件でいえば、弁護側は、メンバーが確保した鯨肉が本当に横領されたものかどうかが、争点だと主張している。そこで、弁護側は、メンバーが確保した鯨肉を自宅に送っていた船員の調書やこの船員に鯨肉を譲ってあげたと述べている船員らの調書など横領があったか否かを明らかにするために必要な証拠を明らかにするよう求めたのだ。

 ところが、検察側は、メンバーが横領された鯨肉だと思って接取したことは認めるから、本当に横領されたかどうかを争点にする必要はない、と主張し、証拠を開示することに抵抗している。

 という状況のもとで、今週、裁判所が提示命令を出したわけだ。

 これは大きな意味を持っている。

 なぜなら、裁判所が横領が争点にならないと考えたら、提示命令すら出す必要はない。単純に、争点ではないから、開示の必要がないという判断をすればいいだけのことだ。
 
 裁判所も横領の事実が争点となると考えているからこそ、提示命令を出したのだ。

 来週、ネブタの真っただ中の青森で公判前整理手続のための期日が開かれる。

 不正を暴くためには、形式的には法に触れることも許容されることがある…このことがテーマとなる裁判となりつつある。    

  


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