tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

雇用問題の復元にいくら掛かるか

2013年02月11日 12時47分06秒 | 経済
雇用問題の復元にいくら掛かるか
 デフレの中で、マスコミなども殆ど扱うことのなかった「春闘」が、今年は記事になるようです。連合も少し態度を変えてきているようで、1パーセントの賃上げの主張を強くするような気配で、「定昇維持でも仕方ないか」といった雰囲気は後退していくようです。

 10円の円安で、円建て名目付加価値が10パーセント増えた時、単にその分を、国内物価を海外物価に合わせるだけで調整してしまえば、結局は10パーセントのインフレで終わるでしょう。

 しかし日本人は円安によって生じた、国際競争力の回復を、新たな生産活動の活性化に向けて利用する努力を始めるはずです。
 輸出産業では、生産量の回復・増強、製品の高度化。 輸入品と競合部門では、内外価格差逆転を利用して国内製品への切り替え、海外移転の国内回帰、そのほかいろいろな形で、国内生産活動の活性化が始まるでしょう。

 こうした活動によって、円建て名目付加価値の増加は、実質生産の増加につながり、実質GDPの増加、経済成長につながります。経済成長の回復は、当然、今後の賃金上昇を可能にします。

 ところで、失われた10~20年で、最も皺が寄り、日本経済を歪め、社会の劣化につながった、た部分を考えますと、それは、解雇の増加、就職氷河期問題による失業率の増加、そして、非正規従業員の著増による格差社会の深刻化でしょう

 ざっと計算してみますと、例えば、失業率4.5パーセントは、正常な日本経済では3.5パーセント以下と考えれば、その回復に、1パーセントのベア相当の配分が必要です。

 更に関心の深い問題は、非正規雇用の正規化です。現在の非正規雇用はほぼ雇用者の35パーセントです。このブログでも書いて来ましたが、「勤務時間等に縛られず、非正規で自由に働きたい」という人もその中には20パーセントほどいるのです。主体は世帯主でない主婦、学生アルバイト、季節労働者、高齢労働者などです。

 つまり現状では、正規を希望しながら、非正規に甘んじている人が15パーセントいることになります。非正規の賃金水準は正規61パーセントというのが統計(労働力調査)のようですが、パートの場合は3割程度です。非正規のうちの15パーセントの賃金水準を正規と同じにするのに、40パーセント×15パーセント、約6パーセントの賃上げ相当の原資がかかります。非正規の賃金を正規の半分とすれば、7.5パーセントです。

 現在の10パーセントの円安を元に戻してはなりません。この円建の付加価値増はまさに苦難に耐えた日本経済に対する一時金のようなものです。そしてこの一時金の有効活用によって、今後、経済成長が可能になってくるとすれば、日本の企業、雇用者に対する安定した所得増は今後の経済成長の成果にゆだね、円安による一時的な付加価値増は、最終的に、「雇用増」「非正規の正規化」つまり歪んだ雇用の復元に使うという「労使の話し合い」はいかがでしょうか。

 年々の日本経済改善の中で円安分、それによる経済成長分と正確に分けることは困難でしょう。しかし雇用の正常化への復帰は、10円の円安分で十分に賄えると思えば、雇用改善に出来るだけ早く原資を振り向けるといった方針も可能なはずです。
 これには労使双方とも、大きな異存はないと思うのですが。


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