tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

トルコインフレ進行曲

2021年12月22日 15時13分35秒 | 経済
ちょっとばかりトルコには失礼なタイトルですが「トルコ行進曲」を口ずさむ癖がありますので、お許しいただきたいと思います。

トルコリラの急落、トルコのインフレ率の急上昇、といった報道がされ、トルコ経済が心配されています。

アメリカがインフレ鎮静のために利上げをするという動きを見せる中で、日本の場合は円安が進み、世界では自国通貨のレートが安くなって輸入インフレが心配されるケースが増えているようです。

日本でも、この所ガソリンに見られますように値上がりがあり、その他の一般物価も輸入品の価格上昇、流通ネックなどでの値上がり、輸入穀物や肉類などの値上がりなどで加工食品などの値上げが増えているようです。

日銀の黒田総裁は、アメリカが利上げしても、日本は金融緩和政策を当分変えないと言い、多少円安に振れても、日本経済全体では円安のプラス効果の方が大きいという説明をしています。

通貨価値が下がるとインフレになって経済的困難に陥る国とそうでない国とがあるという事は確かにその通りだと思います。その違いは一体どこから来るのでしょうか。

原因は大きく分けて2つあるように思います。
① 自国通貨安で競争力が増す輸出や観光収入などの外貨獲得資源があるか。
② 輸入インフレを自家製インフレに転嫁してしまうか否か。

先ず①の外貨獲得資源があれば、通貨安になれば、輸出増や観光客の増加の可能性が大きくなります。それによって貿易収支や経常収支が黒字になり通貨安は止まるる可能性があります。

つまりその国がコスト安の国になり、お陰で経済活動が活発になって、インバウンドも増加、成長率も高まり黒字国になるわけですから、通貨安になる原因はなくなります。

丁度日本が、2013、年2014年の金融の異次元緩和政策で、円高から円安になり、長期不況から脱出できたのと同じことが起きる可能性が大きいわけです。

トルコでも今年の夏から、これまでほとんど赤字続きだった経常収支が黒字になり、これが唯一の希望と言われています。


次に②のインフレの問題です。現状のトルコはこちらの方が問題だと思われるところです

というのは、トルコリラ安になって、輸入物価が上がって来たのに対して、「これでは国民の生活が大変だ」という事で、最低賃金を大幅に引き上げています、

トルコでは労働者の50%前後が最低賃金の近辺の賃金でそれより低い場合もかなりあると言われます。
その最低賃金を2019年14%、2020年13%、2021年15%、2020年12%と大幅に引き上げています。(来年1月からはどうするかです)

もともとトルコは、賃金とインフレがスパイラルで10%以上のインフレ、10%以上の賃上げが続いていたような状況もありましたので、国際競争力が落ち、リラ安になりやすく、そこに資源インフレやアメリカの金利問題が重なってのリラ安、インフレ深刻化(最近は年率20%)という事だったのでしょう。

経済政策の王道から言えば、ここで国民の生活を賃上げや金融政策で救うのではなく(結果的にはそれは不可能)、リラ安によるインフレを耐え忍び、人件費をはじめとしてトルコ経済のコストをリラ安とともに下ることで、競争力を回復し、経済成長を軌道に乗せることが必要でしょう。