
2015年1月22日(木)、橿原市商工経済会館7階大ホールにおいて、講演会「観光力創造塾」を開催しました(主催:南都銀行 協力:南都経済研究所)。テーマは「誘客に秘策あり!」。この日は
第Ⅰ部 講演「奈良県のインバウンド戦略」
講師 中西康博氏(奈良県知事公室審議官/観光局次長)
第Ⅱ部 講演「奈良の観光についての所感と提言」
講師 岡本彰夫氏(春日大社権宮司)
という豪華講師陣による講演の2本立てでした。ホテル・旅館、レストラン・料理店、土産物店、自治体の観光関連部署、観光協会・地域おこしグループなどの観光関連団体等から、125名の方にご来場いただきました。冒頭、南都銀行公務・地域活力創造部の和田悟部長が「県下各地からご参加いただくため、開催場所を橿原市としました」と挨拶。引き続き、講演が始まりました。講演の概要は、以下のとおりです。

和田部長の冒頭挨拶
第Ⅰ部 講演(中西康博氏)
県で観光を担当して約11年になる。最近は奈良県でも、外国人観光客が増えている。訪日外国人数は全国で第13位(2013年)。残念ながら外国人宿泊者数は少なくて第23位(同)。旅行上手といわれるフランスやドイツからの旅行客が多い。伸び率では台湾やマレーシアが大きく増えている。誘客で注目するのは海外富裕層の購買力。1本5万円~10万円の包丁を買ってくれる。食事にも1万円~2万円かける。一刀彫りも売れている。
観光プロモーション面では、世界各地で活動する「観光プロモーター」を4ヵ国に8人配置している。プロモーターと連携し、海外の旅行エージェントからの送客に対して国内で手配を行う「着地商品コーディネーター」も2人配置している。旧猿沢荘の場所に「外国人観光客交流館」(仮称)を整備する計画がある。ここから飛鳥や吉野方面へワンコインで乗れる「県内ぐるっとバス」のようなものを考えている。

会場の様子。司会は私が務めた
外国人観光客は、夜の9時以降に活動するという特徴があるので、ライトアップや夜のショッピングが楽しめる「おもてなしバス」も検討中だ。Wi-Fi環境については本年3月末までに、JR奈良駅から奈良公園の主な動線上で、無料・パスワードなしで利用できるよう整備しており、このような広範囲の「面」での取り組みはおそらく全国初だ。
2020年の東京オリンピックまで、訪日外国人客は増え続けるだろうが、その後は減る。だからリピーターを作らないといけない。「またあそこへ行きたい」と、何度も来ていただくことが大切だ。県では外国語によるガイドブック作成中である。通訳も養成中だ。「奈良公園観光地域活性化特区」において、特区に限定した通訳案内士を養成している。今年度は中国語・韓国語、2015年度には英語も加える。

中西審議官の講演
外国人観光客やお店などが困ったとき、外国人や店員に代わって電話で通訳する「多言語コールセンター」は、2013年度は奈良公園限定でスタートしたが、14年度には県内全域に拡大する。外国語で質問があったとき、その場でコールセンターに電話して外国語で用件を聞いてもらう、という仕組みだ。宿泊予約のできるWebサイトの構築も検討している。
インバウンドの窓口は観光プロモーション課(県観光局)。県は「何でも聞きます」「皆さんと一緒に考えましょう」という姿勢なので、ぜひお気軽にご相談いただきたい…。
第Ⅱ部 講演(岡本彰夫氏)
奈良県の観光は、南北(奈良~飛鳥~吉野)は強いが東西(宇陀郡~北葛城郡)が弱い。式年造替では、春日大社に来られた参拝客が、そこを出発点にして広く県下を回り、県中南部に宿泊するという流れを作りたい。

岡本権宮司の講演
奈良の特徴は、社寺の祭礼や法会に断絶がないこと。式年造替、春日祭、おん祭、東大寺二月堂修二会(お水取り)など、断絶なく今日まで続いている。京都は応仁の乱で途絶えている。遣唐使が持ち込んだ唐菓子(からがし)は、今も当時と同じレシピで作り続けている。神楽、舞楽も然り。
現代は、親の子殺し・子の親殺しなど、殺伐とした時代だ。これは、日本人が誇りを捨てたことが原因だ。誇りを捨てると自信がなくなる、すると正しい判断ができなくなる。自分の村(出身地)を愛し、家族を愛し、母校を愛し、仕事を愛する。それが誇りにつながる。
日本独自の文化は、外国語に訳せない。「たしなむ」というあいまいな言葉は日本独自のものだ。魚に湿った和紙を載せて上から塩を振る、という「紙塩(かみじお)」のような微妙な味付けもそうだ。

奈良県は昔から豊かな土地だった。江戸時代、北部は奈良晒(ざらし)という高級麻織物の特産地で、木津川の舟運を利用して京や大阪へ出荷した。中部は大和木綿を大和川を使って大阪へ運んだ。南部は吉野の木材を吉野川で流した。つまり、ものづくりも流通もあった。幕府は、そんな大和50万石が団結して幕府に反抗することがないようにと、分割統治した。
記紀神話にはたくさん大和が登場するが、記紀に載らない神話もたくさん残る。これらをまとめたのが『かみのみあと~大和の聖地~』(1,000円)という本で、奈良県神社庁から刊行されている。知る人が少ないのが残念だが、県下全市町村が登場する。奈良県神社庁に申し込めば買うことができるので、ぜひご一読いただきたい。
月刊誌『婦人画報』に、奈良県特集が連載されている。法隆寺のお会式、植村牧場、奈良の工芸、絶景、環濠集落、菓子・料理、川など。大和の郷土菓子の復活にも取り組んでいる…。
当日実施したアンケートでは「大変勉強になり、ヒントをもらえた」「県内各地域の特色を打ち出し、他県と差別化を図らなければ」といった声をいただきました。当塾は半年に1回程度開催し、誘客に必要なノウハウを学んでいただく予定です。今後も多くの方のご参加をお待ちしています!
第Ⅰ部 講演「奈良県のインバウンド戦略」
講師 中西康博氏(奈良県知事公室審議官/観光局次長)
第Ⅱ部 講演「奈良の観光についての所感と提言」
講師 岡本彰夫氏(春日大社権宮司)
という豪華講師陣による講演の2本立てでした。ホテル・旅館、レストラン・料理店、土産物店、自治体の観光関連部署、観光協会・地域おこしグループなどの観光関連団体等から、125名の方にご来場いただきました。冒頭、南都銀行公務・地域活力創造部の和田悟部長が「県下各地からご参加いただくため、開催場所を橿原市としました」と挨拶。引き続き、講演が始まりました。講演の概要は、以下のとおりです。

和田部長の冒頭挨拶
第Ⅰ部 講演(中西康博氏)
県で観光を担当して約11年になる。最近は奈良県でも、外国人観光客が増えている。訪日外国人数は全国で第13位(2013年)。残念ながら外国人宿泊者数は少なくて第23位(同)。旅行上手といわれるフランスやドイツからの旅行客が多い。伸び率では台湾やマレーシアが大きく増えている。誘客で注目するのは海外富裕層の購買力。1本5万円~10万円の包丁を買ってくれる。食事にも1万円~2万円かける。一刀彫りも売れている。
観光プロモーション面では、世界各地で活動する「観光プロモーター」を4ヵ国に8人配置している。プロモーターと連携し、海外の旅行エージェントからの送客に対して国内で手配を行う「着地商品コーディネーター」も2人配置している。旧猿沢荘の場所に「外国人観光客交流館」(仮称)を整備する計画がある。ここから飛鳥や吉野方面へワンコインで乗れる「県内ぐるっとバス」のようなものを考えている。

会場の様子。司会は私が務めた
外国人観光客は、夜の9時以降に活動するという特徴があるので、ライトアップや夜のショッピングが楽しめる「おもてなしバス」も検討中だ。Wi-Fi環境については本年3月末までに、JR奈良駅から奈良公園の主な動線上で、無料・パスワードなしで利用できるよう整備しており、このような広範囲の「面」での取り組みはおそらく全国初だ。
2020年の東京オリンピックまで、訪日外国人客は増え続けるだろうが、その後は減る。だからリピーターを作らないといけない。「またあそこへ行きたい」と、何度も来ていただくことが大切だ。県では外国語によるガイドブック作成中である。通訳も養成中だ。「奈良公園観光地域活性化特区」において、特区に限定した通訳案内士を養成している。今年度は中国語・韓国語、2015年度には英語も加える。

中西審議官の講演
外国人観光客やお店などが困ったとき、外国人や店員に代わって電話で通訳する「多言語コールセンター」は、2013年度は奈良公園限定でスタートしたが、14年度には県内全域に拡大する。外国語で質問があったとき、その場でコールセンターに電話して外国語で用件を聞いてもらう、という仕組みだ。宿泊予約のできるWebサイトの構築も検討している。
インバウンドの窓口は観光プロモーション課(県観光局)。県は「何でも聞きます」「皆さんと一緒に考えましょう」という姿勢なので、ぜひお気軽にご相談いただきたい…。
第Ⅱ部 講演(岡本彰夫氏)
奈良県の観光は、南北(奈良~飛鳥~吉野)は強いが東西(宇陀郡~北葛城郡)が弱い。式年造替では、春日大社に来られた参拝客が、そこを出発点にして広く県下を回り、県中南部に宿泊するという流れを作りたい。

岡本権宮司の講演
奈良の特徴は、社寺の祭礼や法会に断絶がないこと。式年造替、春日祭、おん祭、東大寺二月堂修二会(お水取り)など、断絶なく今日まで続いている。京都は応仁の乱で途絶えている。遣唐使が持ち込んだ唐菓子(からがし)は、今も当時と同じレシピで作り続けている。神楽、舞楽も然り。
現代は、親の子殺し・子の親殺しなど、殺伐とした時代だ。これは、日本人が誇りを捨てたことが原因だ。誇りを捨てると自信がなくなる、すると正しい判断ができなくなる。自分の村(出身地)を愛し、家族を愛し、母校を愛し、仕事を愛する。それが誇りにつながる。
日本独自の文化は、外国語に訳せない。「たしなむ」というあいまいな言葉は日本独自のものだ。魚に湿った和紙を載せて上から塩を振る、という「紙塩(かみじお)」のような微妙な味付けもそうだ。

奈良県は昔から豊かな土地だった。江戸時代、北部は奈良晒(ざらし)という高級麻織物の特産地で、木津川の舟運を利用して京や大阪へ出荷した。中部は大和木綿を大和川を使って大阪へ運んだ。南部は吉野の木材を吉野川で流した。つまり、ものづくりも流通もあった。幕府は、そんな大和50万石が団結して幕府に反抗することがないようにと、分割統治した。
記紀神話にはたくさん大和が登場するが、記紀に載らない神話もたくさん残る。これらをまとめたのが『かみのみあと~大和の聖地~』(1,000円)という本で、奈良県神社庁から刊行されている。知る人が少ないのが残念だが、県下全市町村が登場する。奈良県神社庁に申し込めば買うことができるので、ぜひご一読いただきたい。
月刊誌『婦人画報』に、奈良県特集が連載されている。法隆寺のお会式、植村牧場、奈良の工芸、絶景、環濠集落、菓子・料理、川など。大和の郷土菓子の復活にも取り組んでいる…。
当日実施したアンケートでは「大変勉強になり、ヒントをもらえた」「県内各地域の特色を打ち出し、他県と差別化を図らなければ」といった声をいただきました。当塾は半年に1回程度開催し、誘客に必要なノウハウを学んでいただく予定です。今後も多くの方のご参加をお待ちしています!
教えていただいた「かみのみあと」を、私も「”大和の国中”には神様の御跡の何と多いこと!」と大変興味深く拝読致しました。多くの方に読んでいただきたいですよね。
当日の御礼が今頃になってしまいましたが、また第4回5回・・・と「観光力創造塾」の開催を楽しみにしています。ありがとうございました。
> 少々遅刻をして前半の途中からの参加でしたので、当日
> の詳細なレポがとてもわかりやすくて助かりました。
お役に立てて、良かったです。
> 「かみのみあと」を、私も「”大和の国中”には神様の御跡の何と多いこと!」
> と大変興味深く拝読致しました。多くの方に読んでいただきたいですよね。
はい、私も同感です。こちらの本も、当ブログで紹介させていただきます!観光力創造塾、早速次回の案を練っています。お楽しみに!