最近、ならまち(奈良町)周辺で「秘仏開扉 裸形阿弥陀仏 璉珹寺」という手作りの看板をよく見かける。寺名はとても難しい字である。璉珹寺は以前、みうらじゅんがテレビの取材(見仏記)で訪問していた。ご本尊は、木造白色の美しい裸の阿弥陀仏(トップ写真)で、下半身に袴(はかま)をつけている。
通常、仏像は男性でも女性でもないのだが、この仏さまは女性なのだそうだ。もとは袴を取り替える50年に1度だけしか公開されない秘仏だったが、約35年前からは毎年5月の1か月間だけ開扉されている。
ここでおさらいをしておく。奈良市内で裸形の仏像といえば、他に伝香寺(でんこうじ・小川町)の地蔵菩薩立像(=はだか地蔵・7/23公開)、新薬師寺(高畑町)のおたま地蔵(非公開)、西光院(高御門町)の弘法大師坐像(非公開)がある。
璉珹寺の所在地は、奈良市西紀寺町45だ。町名の「紀寺(きでら)」は、ここに建っていたといわれる古寺である。なお紀寺は、紀氏(紀貫之、紀友則など)一族の氏寺である。奈良検定公式テキスト(山と渓谷社刊『奈良まほろばソムリエ検定 公式テキストブック』)には「紀寺跡」(明日香村小山=天香久山の西・橿原市境付近)の項目があり《創建当時は1辺226メートルの寺域をもつ大規模な寺院であったと推定される》《藤原京の廃都に伴って、平城京の東南部に移転したと推定される》とある。
先日、このブログをご愛読いただいている三河人さんから《仏さまも素晴らしく、境内は花々の香りでいっぱいでした》《ぜひ、このブログで採りあげていただければと思います》というコメントをいただいたので、訪ねてみることにした。 璉珹寺は市内循環「紀寺町」または「田中町」バス停から徒歩3分。南都銀行紀寺支店から南へ→崇道天皇社の並びでもう少し南、とたどると分かりやすい。興福寺五重塔や石段(五十二段)のほぼ真南になる。
境内に足を踏み入れて、驚いた。甘い香りが漂っているのだ。視覚より嗅覚が先に来るというのは、初めての経験だ。香りのモトは、境内一帯に咲いているニオイバンマツリ(匂い蕃茉莉)だった。「蕃」は外国、「茉莉」はジャスミンのことだが、調べてみるとジャスミンの仲間ではなく、南米原産のナス科植物だった。咲き始めは濃い紫色だが、開くにつれ、白色に近くなる。写真でお確かめいただきたい。
靴を脱ぎ、ご住職の下間景甫(しもつま・けいほ)さんのご案内で、仏さま(阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩など)を拝ませていただいた。その後は、再び前庭や中庭で花の写真を撮らせていただいた。下間さんは、とても気さくで親切な女性である(私と同年代だと後で知った)。上記写真のオオヤマレンゲはそろそろ終わりのようだったが、きれいな花を見つけていただき、撮りやすいように手で支えて下さった。
次の赤い花はスイセンノウ(酔仙翁)である。こういうあだ名をつけたい人は私の周囲に何人もいるが、ナデシコの仲間である。
この写真はヒルザキツキミソウ(昼咲き月見草)だ。エノテラの別名がある。アメリカ・メキシコ原産の多年草で、最近はならまち界隈の歩道などでもよく見かける。
最後は、花瓶に活けてあった一重咲きのバラ。まるで造花のような鮮やかさだ。他にもお庭で、米粒のように小さくて黄色いメキシコマンネングサ、オレンジ色のサツキなど、たくさんの珍しい花を見せていただいた。
座敷はミニ・ギャラリーになっていて、このお寺が一番好きだという河瀬直美さんの額(毛筆で「まごころ」)や、フランス人画家・ペドロ・ド・レオン氏の絵画作品(4点)も展示されている。秘仏ご開帳は今月末まで。ぜひ早めにお訪ねいただきたい。
℡0742-22-4887 9:00~16:00 拝観料300円
http://www3.kcn.ne.jp/~mamama/nara/temple/renjyouji-temple01.htm
通常、仏像は男性でも女性でもないのだが、この仏さまは女性なのだそうだ。もとは袴を取り替える50年に1度だけしか公開されない秘仏だったが、約35年前からは毎年5月の1か月間だけ開扉されている。
ここでおさらいをしておく。奈良市内で裸形の仏像といえば、他に伝香寺(でんこうじ・小川町)の地蔵菩薩立像(=はだか地蔵・7/23公開)、新薬師寺(高畑町)のおたま地蔵(非公開)、西光院(高御門町)の弘法大師坐像(非公開)がある。
璉珹寺の所在地は、奈良市西紀寺町45だ。町名の「紀寺(きでら)」は、ここに建っていたといわれる古寺である。なお紀寺は、紀氏(紀貫之、紀友則など)一族の氏寺である。奈良検定公式テキスト(山と渓谷社刊『奈良まほろばソムリエ検定 公式テキストブック』)には「紀寺跡」(明日香村小山=天香久山の西・橿原市境付近)の項目があり《創建当時は1辺226メートルの寺域をもつ大規模な寺院であったと推定される》《藤原京の廃都に伴って、平城京の東南部に移転したと推定される》とある。
先日、このブログをご愛読いただいている三河人さんから《仏さまも素晴らしく、境内は花々の香りでいっぱいでした》《ぜひ、このブログで採りあげていただければと思います》というコメントをいただいたので、訪ねてみることにした。 璉珹寺は市内循環「紀寺町」または「田中町」バス停から徒歩3分。南都銀行紀寺支店から南へ→崇道天皇社の並びでもう少し南、とたどると分かりやすい。興福寺五重塔や石段(五十二段)のほぼ真南になる。
境内に足を踏み入れて、驚いた。甘い香りが漂っているのだ。視覚より嗅覚が先に来るというのは、初めての経験だ。香りのモトは、境内一帯に咲いているニオイバンマツリ(匂い蕃茉莉)だった。「蕃」は外国、「茉莉」はジャスミンのことだが、調べてみるとジャスミンの仲間ではなく、南米原産のナス科植物だった。咲き始めは濃い紫色だが、開くにつれ、白色に近くなる。写真でお確かめいただきたい。
靴を脱ぎ、ご住職の下間景甫(しもつま・けいほ)さんのご案内で、仏さま(阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩など)を拝ませていただいた。その後は、再び前庭や中庭で花の写真を撮らせていただいた。下間さんは、とても気さくで親切な女性である(私と同年代だと後で知った)。上記写真のオオヤマレンゲはそろそろ終わりのようだったが、きれいな花を見つけていただき、撮りやすいように手で支えて下さった。
次の赤い花はスイセンノウ(酔仙翁)である。こういうあだ名をつけたい人は私の周囲に何人もいるが、ナデシコの仲間である。
この写真はヒルザキツキミソウ(昼咲き月見草)だ。エノテラの別名がある。アメリカ・メキシコ原産の多年草で、最近はならまち界隈の歩道などでもよく見かける。
最後は、花瓶に活けてあった一重咲きのバラ。まるで造花のような鮮やかさだ。他にもお庭で、米粒のように小さくて黄色いメキシコマンネングサ、オレンジ色のサツキなど、たくさんの珍しい花を見せていただいた。
座敷はミニ・ギャラリーになっていて、このお寺が一番好きだという河瀬直美さんの額(毛筆で「まごころ」)や、フランス人画家・ペドロ・ド・レオン氏の絵画作品(4点)も展示されている。秘仏ご開帳は今月末まで。ぜひ早めにお訪ねいただきたい。
℡0742-22-4887 9:00~16:00 拝観料300円
http://www3.kcn.ne.jp/~mamama/nara/temple/renjyouji-temple01.htm
南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。
ところでお寺の場所ですが、五十二段の道沿いではありません。その道をまっすぐ南に下って、循環道路を渡ります。そして一本東にある道を南へ少しのところです(たぶんそのはずです)。
私はゴールデンウィークにお参りしました。
あまりの心地良さにまったりとくつろいでしまい、
花に殆ど気づかずに帰って来てしまいました。
風が渡り廊下を吹き抜けます。
このお寺には20年近く前に1度お参りしました。
久しぶりの仏様とお会いできました。
丁度その頃奈良公園は大変な人出、
こんなに静かで豊かな時間が過ごせるのも、
ならの魅力だと思うのですが・・・
私も、安直・適当なデジカメを卒業して、一眼レフで勝負したくなりました。
> 俳句を楽しむ方や絵手紙をお書きになる方、いろんな楽しみ方を教えていただけるお寺だと思います。
良いお寺を紹介していただき、深謝です。壁に貼ってあった人生訓も、含蓄のあるものでした。
> ありがとうございました。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。
おかげさまで、成仏できそうです。
> ご主人が中学生の時に社会を習った下間先生であることが分かり驚きました。
奥さん(ご住職)は私と同年代(ということは蔵武Sさんの少し下)ですので、先生とは、この方のお父さんではないでしょうか。お堂に遺影があり、説明のテープでお声を聞くことができます。
> お寺の場所ですが、五十二段の道沿いではありません。
ご指摘有り難うございました。表現を変えておきました。
> こんなに静かで豊かな時間が過ごせるのも、ならの魅力だと思うのですが・・・
おっしゃるとおりですね。堂々たる名刹も良いですが、こういう「かくれ寺」も、また格別です。
> 安直・適当なデジカメを卒業して、一眼レフで勝負したくなりました。
コンパクト・デシカメを持ち歩いていると、良からぬ写真を撮る人と間違われるリスクがありますが、大きな一眼レフだと、その点は大丈夫です。花のアップはマクロレンズを使いましたが、やはり便利なものです。
> 「歳がずいぶん離れているんです」とのことでした。
あぁそうでしたか、これは大変失礼しました。
ぜひ最終日に行かれて、阿弥陀さまを拝んできて下さい。恩師の奥さまに、どうぞよろしく。
すごい反響だし、朝日新聞が月末に紹介してくれたので、6月になってもしばらくは訪ねる人が来ると開けようか、とのことでした。
> 住職さん、このブログのこと、とても喜んでおられました。
> 笑いながら「歳も明かされてしまった」とも。
そうでしたか、それは良かったです。おトシは、産経新聞で拝見しました。まだまだお若い!
> すごい反響だし、朝日新聞が月末に紹介してくれたので、6月に
> なってもしばらくは訪ねる人が来ると開けようか、とのことでした。
それは良いことです。ならまちに掲示しているポスターを、少し修正しなければいけませんが。
秘仏公開の期間中、お寺の向かいの老人が看板を見て始めて来たとか。5月に公開しているのを今まで知らなかったそうです。住職さんが自転車に看板を積んで走り回ったのが実を結んだわけです。野立看板って、あまり効果がないと思っていた考えを改めねば。
きょう気づいたのですが寺名の2字目は“城”ではなく“珹”です。奈良検定試験が筆記式なら、殆どの人が間違うでしょうね。かく言う小生もお寺でもらったパンフレットで知った次第。