tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

「仏像の道」展

2007年07月30日 | 仏像
「…釈迦牟尼(シャカムニ)は 美男におわす 夏木立かな」

7/28(土)東京国立博物館(上野公園内)を訪れた。7/27から「仏像の道―インドから日本へ」という新展示が始まっていたからだ。しかも別途料金(たいてい1500円)のかかる「特別展」ではなく、追加料金無料の「平常展示」という太っ腹だ。高校生以下はもともと入館料無料なので、全くタダでこの貴重な展示が見られることになる。
http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=X00/processId=00

パンフレットには《誕生の地ガンダーラから中国、朝鮮半島、奈良時代の日本まで各地の仏像を選び、その歴史を展望する新しい平常展示です》《ひろい館内のたくさんの作品―きっと思いがけない出会いがあります》とある。
http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=4467

確かに、ガンダーラ(パキスタン北西部)や中国の石仏、朝鮮半島のごく小さな金銅仏など、見たことのない仏さまがずらり勢揃いしていた。日本からは法隆寺の如来坐像や薬師寺の聖観音菩薩立像(実物大のレプリカ)などが出展されている。

展示場所の「本館特別5室」で、最も人だかりの多かったのが写真の仏さまだ(ガンダーラ・如来坐像 2世紀)。入ってすぐの場所に展示されていて、女子中学生とおぼしきグループがカメラ付き携帯でパチパチ撮影していた。

仏さまがイケメンなこと、中学生が仏像に興味を示していたこと、そして写真撮影が可能なこと、という3つの点で驚いた。どうやら夏休みの自由研究に訪れたようで、説明板なども撮っている。

係の人に確かめると「写真を撮っていただいて結構です。ただしフラッシュはご遠慮下さい」とのこと。で、あわてて私もカメラを取り出したというわけだ。あとで館内の表示をよく見ると、「フラッシュ、三脚使用不可」という貼り紙があった。全く写せないところは「撮影禁止」と出ているので、区別できる。

さて冒頭の短歌は「鎌倉や 御仏(みほとけ)なれど…」の後半部で、与謝野晶子の歌だ。(三浦半島在住の南都さんには申し訳ないけれど)鎌倉の大仏さまが美男とは思わないが、この仏さまはハンサムだ。傷もなく、ほぼ彫られた当時そのままのお姿である。東寺(京都)の帝釈天像を連想させるが、向こうが京風の美男なら、こちらは洋風の美男である。
http://www.tonkatsuichiban.com/map/Toji1/taisyaku.html

館内には美女の観音さまもいらっしゃった。こういう仏さまの見方は邪道なのかも知れないが、信仰の対象であると同時に彫刻作品でもある仏像の鑑賞法は(不謹慎な態度でさえなければ)、人それぞれで良いと思う。

仏像の本場・奈良県内の中学生で、仏さまを自由研究のテーマに選ぶ生徒がどれほどいるのか知らないが、ぜひ東京の生徒に負けず、仏さまに興味を持って勉強してほしいものだ。
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名仏いろいろ(2)スーパー薬師寺の守護神

2007年06月27日 | 仏像
名仏(めいぶつ)シリーズ第2弾は、新薬師寺(奈良市高畑町)の国宝・十二神将像である。

奈良県下には3つの薬師寺がある。橿原市(藤原京)の「本(もと)薬師寺」跡(698年頃完成)、奈良市西ノ京町の「薬師寺」(718年)、そしてこの「新薬師寺」(747年)だ。

持統天皇が建立した「本薬師寺」は、平城遷都により西ノ京の地に移されて「薬師寺」となった。その後、別の地に光明皇后が建立した「新薬師寺」は、ニュー薬師寺ではなく、霊験「あらたか」という意味なので、いわばスーパー薬師寺だ。

本尊は薬師如来坐像だが、この寺は十二神将像(薬師如来の従者・守護者)で知られる。とりわけ伐折羅(バサラorバザラ)大将像は500円切手にもなっているから、ご存じの方も多いだろう。髪を逆立てた憤怒の顔は、劇画を思わせる。土という柔らかい素材をを練り上げて、まるで生きているような動感を表現している。
http://www.cnet-ta.ne.jp/p/pddlib/photo/stamp/basara.jpg

6/23(土)、この像を見仏(けんぶつ)してきた。ほの暗い本堂に足を踏み入れると、線香の匂いが立ちこめていると思いきや、何だか甘い香りが充満している。見ると、お堂の中には30人ばかりの女子大生集団がいて、若いお坊さんの説明を聞いている。物見遊山風ではなく、仏像や歴史の勉強に来ているという真剣な面持ちであった。
http://www.k5.dion.ne.jp/~shinyaku/juni.html

お堂の中央には丸い須弥壇があり、その上に薬師如来と十二神将が外向きに並んでいる。みうらじゅんが「こうやって走りながら見ると凄(すご)いよ。十二神将が次々に現れるからさ」と言いながら須弥壇の周りをぐるぐる走った、という話を思い出した(「仏像メリーゴーランド状態」『見仏記』角川文庫)。

とにかく彼女たちが移動するまでは、走ることも歩き回ることもできないので、しばらく入口近くの売店を冷やかしていると、カラフルな1枚の絵はがき(210円)を発見した。それは、色鮮やかに再現されたバサラ大将像だった。
http://www.cadcenter.co.jp/business/products/dvd.php

株式会社キャドセンター(東京都文京区)がこの像をレーザーで計測し、CGで再現したものだそうだ。裏面にはQRコードがついていて「スペシャル携帯サイト」にアクセスできるという(08年12月末までの期間限定)。
http://www.cadcenter.co.jp/mobile/sinyakusiji/basara/ez/wallpaper.html

早速買い求めてアクセスしてみると、タダで使える携帯用の壁紙などが入っていた。そのうちの1枚がご覧の画像だ。下からバサラを仰ぎ見たシーンである。(株)キャドセンターにメールでブログへの掲載許可を求めると、すぐに快諾していただいた。感謝感激である。

ところでこの日本最古の十二神将像、もとは岩淵寺(鎌倉時代まで存続)の像で、大水が出た際に新薬師寺に流れ着いたものだそうだ。12体のうち、江戸期に壊れ昭和6年に補作した1体(クビラ大将)を除き、すべて国宝に指定されている。薄暗いお堂の中で見る十二神将は、ド迫力だ。テレビも劇画もない時代にこの像を見た昔の人は、きっと度肝を抜かれたことだろう。

外に出ると参道では、お寺の人がハサミのついた棒のような道具で、枇杷(ビワ)の実を穫り入れていた。子供たちも見物している。寺の塀際にある大木に、実がたわわに成っているのだ。さほど大きい実ではないが、まるでミカンの木のようにたくさんの黄色い実がついている。暗いお堂で恐い像を見た後の、ホッと胸をなで下ろすひとコマであった。
コメント (5)
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名仏いろいろ(1)阿修羅と不思議な仲間たち

2007年06月02日 | 仏像
「奈良は好きだけど、古墳と仏像だけは苦手だなぁ」と長年思っていた。だから奈良検定(奈良まほろばソムリエ検定)2級試験でも、このジャンルではほとんど点が取れなかった。

ソムリエ(検定の最上級)をめざす私としては、最近になって「これではイカン」と一念発起し、関連本を読み出すと、これがとても面白い。おかげで古墳も仏像も得意科目になりそうな勢いだが、せっかくなのでブログでも紹介することにした。で、まずは仏像編。私が好きになった名仏(めいぶつ)を順不同で連載する。

書き始める前に、興福寺・猿沢池畔の茶店(池にせり出している)で親子丼を食べることにした。いとうせいこう・みうらじゅん共著『見仏記』(角川文庫)によれば、彼らは奈良へ見仏(けんぶつ)に来ると必ずここで親子丼を食べるそうなのだ。

税込550円の親子丼は、卵ゆるめ・つゆだく(汁たっぷり)・濃口醤油使用、という今どきの大衆食堂風で、特にコメントはない(東向商店街の「ザ・どん」の親子丼・500円の方がうまい)。しかし、窓から眺める猿沢池の風情は抜群だった。

さて初回は興福寺の八部衆像を紹介したい。このブログでも取り上げたが、JR東海はテレビCMやポスターで、八部衆など興福寺を売り出し中だ。お寺の国宝館でも、6月10日(日)まで「八部衆 特別陳列」を実施している。阿修羅(あしゅら)をはじめとする乾漆八部衆立像(かんしつはちぶしゅうりゅうぞう)すべてが勢揃いしているのだ。
※八部衆全員の顔(JR東海の車内ポスター)
http://nara.jr-central.co.jp/nara.nsf/doc/gallery

今は修学旅行シーズンとあって、境内は児童・生徒で一杯だ。国宝館も混雑していた。山田寺の仏頭(みうらじゅんによれば「加藤登紀子」)、千手観音立像、阿吽(あうん)一対の金剛力士立像も良いが、やはり人気は八部衆、なかでも阿修羅像の前には修学旅行生が集まり、ボランティアガイドのおじさんが熱弁を振っていた。
※山田寺仏頭
http://www.e-t.ed.jp/edotori390332/syasin2syou/001021.jpg

この阿修羅像、夏目雅子に似ているので女性だと思っていたが、青年だそうだ。柴門ふみは「沖田浩之」だという(『ぶつぞう入門』文春文庫)。両脇にくっついている2つの顔は「貴乃花」に激似だ。
※阿修羅像(JR東海)
http://nara.jr-central.co.jp/nara.nsf/doc/cp_kofukuji

かつて堀辰雄は「なんというういういしい、しかも切ない目ざしだろう。こういう目ざしをして、何を見つめよとわれわれに示しているのだろう。それが何かわれわれ人間の奥ぶかくにあるもので、その一心な目ざしに自分を集中させていると、自分のうちにおのずから故しれぬ郷愁のようなものが生まれてくる」と書いた。

JR東海が阿修羅に添えたキャッチコピーも「私が、私と、向き合う」だが、確かにこの像と向き合っていると、青年期に抱いていた屈託というか「故しれぬ郷愁のようなもの」が甦ってくるから不思議だ。

阿修羅の仲間のうちでは、沙羯羅像(さからぞう・少年)のあどけない表情はとても可愛いしい、迦楼羅像(かるらぞう・顔面は鳥)は怪獣のようでコワい。迦楼羅はガルーダ(神鳥)で、インドネシアやタイの国章になっていて、ガルーダ・インドネシア航空は尾翼に神鳥を描いている。もともと八部衆は古代インドの異教の神さまで、それが仏教の守護神として取り入れられたものだそうだ。
※迦楼羅像
http://www.kohfukuji.com/kohfukuji/database/image/but00006.jpg

興福寺では、あちこちにJR東海の看板(八部衆像)が掲げられ、東大寺に比べややマイナー感があった寺の雰囲気は、とても華やいでいた。興福寺は今、中金堂の再建に向けて動いてる。この上げ潮ムードにうまく乗って、ぜひ立派に再建を果たしていただきたい。
※うましうるわし奈良・興福寺(私のブログ)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/9a8e0484faae77c738b2c7daf44a5bb4
※写真は、興福寺境内に貼ってあるJR東海のポスター
コメント (6)
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