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名仏いろいろ(2)スーパー薬師寺の守護神

2007年06月27日 | 仏像
名仏(めいぶつ)シリーズ第2弾は、新薬師寺(奈良市高畑町)の国宝・十二神将像である。

奈良県下には3つの薬師寺がある。橿原市(藤原京)の「本(もと)薬師寺」跡(698年頃完成)、奈良市西ノ京町の「薬師寺」(718年)、そしてこの「新薬師寺」(747年)だ。

持統天皇が建立した「本薬師寺」は、平城遷都により西ノ京の地に移されて「薬師寺」となった。その後、別の地に光明皇后が建立した「新薬師寺」は、ニュー薬師寺ではなく、霊験「あらたか」という意味なので、いわばスーパー薬師寺だ。

本尊は薬師如来坐像だが、この寺は十二神将像(薬師如来の従者・守護者)で知られる。とりわけ伐折羅(バサラorバザラ)大将像は500円切手にもなっているから、ご存じの方も多いだろう。髪を逆立てた憤怒の顔は、劇画を思わせる。土という柔らかい素材をを練り上げて、まるで生きているような動感を表現している。
http://www.cnet-ta.ne.jp/p/pddlib/photo/stamp/basara.jpg

6/23(土)、この像を見仏(けんぶつ)してきた。ほの暗い本堂に足を踏み入れると、線香の匂いが立ちこめていると思いきや、何だか甘い香りが充満している。見ると、お堂の中には30人ばかりの女子大生集団がいて、若いお坊さんの説明を聞いている。物見遊山風ではなく、仏像や歴史の勉強に来ているという真剣な面持ちであった。
http://www.k5.dion.ne.jp/~shinyaku/juni.html

お堂の中央には丸い須弥壇があり、その上に薬師如来と十二神将が外向きに並んでいる。みうらじゅんが「こうやって走りながら見ると凄(すご)いよ。十二神将が次々に現れるからさ」と言いながら須弥壇の周りをぐるぐる走った、という話を思い出した(「仏像メリーゴーランド状態」『見仏記』角川文庫)。

とにかく彼女たちが移動するまでは、走ることも歩き回ることもできないので、しばらく入口近くの売店を冷やかしていると、カラフルな1枚の絵はがき(210円)を発見した。それは、色鮮やかに再現されたバサラ大将像だった。
http://www.cadcenter.co.jp/business/products/dvd.php

株式会社キャドセンター(東京都文京区)がこの像をレーザーで計測し、CGで再現したものだそうだ。裏面にはQRコードがついていて「スペシャル携帯サイト」にアクセスできるという(08年12月末までの期間限定)。
http://www.cadcenter.co.jp/mobile/sinyakusiji/basara/ez/wallpaper.html

早速買い求めてアクセスしてみると、タダで使える携帯用の壁紙などが入っていた。そのうちの1枚がご覧の画像だ。下からバサラを仰ぎ見たシーンである。(株)キャドセンターにメールでブログへの掲載許可を求めると、すぐに快諾していただいた。感謝感激である。

ところでこの日本最古の十二神将像、もとは岩淵寺(鎌倉時代まで存続)の像で、大水が出た際に新薬師寺に流れ着いたものだそうだ。12体のうち、江戸期に壊れ昭和6年に補作した1体(クビラ大将)を除き、すべて国宝に指定されている。薄暗いお堂の中で見る十二神将は、ド迫力だ。テレビも劇画もない時代にこの像を見た昔の人は、きっと度肝を抜かれたことだろう。

外に出ると参道では、お寺の人がハサミのついた棒のような道具で、枇杷(ビワ)の実を穫り入れていた。子供たちも見物している。寺の塀際にある大木に、実がたわわに成っているのだ。さほど大きい実ではないが、まるでミカンの木のようにたくさんの黄色い実がついている。暗いお堂で恐い像を見た後の、ホッと胸をなで下ろすひとコマであった。

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5 コメント

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素晴らしいです。 (おぜん)
2007-06-28 16:22:35
こんにちは。
新薬師寺の十二神将像、本当に素晴らしいですよね。
あの、薄暗い堂の中にあるのが、またいいです。
それにしても、いつも思うのですが、奈良は国宝がたいそうにしまわれてるのではなく、すぐに見られる、所にあるんですよね。
手の届くところに。地方に行くと、ガラス張りの
セキュリティーのしっかりかかったところに大事に保管されてるって感じなんだけど。

奈良の人は、国宝に慣れっこになってるような気がします。

今度行ったときは、是非走って見仏しようと思います。息子にも言っておきます。
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立体曼荼羅 (tetsuda)
2007-06-28 20:49:35
おぜんさん、コメント有難うございました。

> あの、薄暗い堂の中にあるのが、またいいです。
京都の東寺(講堂・立体曼荼羅)もよく似た感じですね。薄暗いところにたくさんの名仏がいらっしゃいます。

> 是非走って見仏しようと思います。息子にも言っておきます。
いちどお試し下さい。息子さんの見仏、進んでいますか?
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新薬師寺 (南都)
2007-06-28 23:55:13
神将も素晴らしいですがあの本堂はいつ見てもシンプルで美しいです。

東大寺と同じく傾斜地に建立されていて昔、敷地が広かった時代、伽藍がどのように設計されていたのか想像してみるだけでも面白そうです。

とくに写真美術館のあたりやその背後、奈良教育大敷地などは掘れば色々出てくるのではと思えるのですが。。。
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建立時の室内って・・・ (横田)
2007-06-29 15:56:06
新薬師寺は不束にも、未見ながら・・・
建立時の室内ってもとから薄暗かったのでしょうかね?
金箔華やかな仏像に彩色された十二神将と相まって、みうらじゅんの話も誇張ではないというのは肯けます。
遷都祭にかこつけて観客が集中しても良くないので、やっぱり仮想の須弥壇一式を設えてみて欲しいものです。
google earthは建造物だけでなくクルマなどの物体も登録されてますね。
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仮想・新薬師寺 (tetsuda)
2007-06-30 21:54:29
南都さん、横田さん、コメント有難うございました。

> あの本堂はいつ見てもシンプルで美しいです。
そうですね。私も何枚か写真を撮りました。青空だったので、いい雰囲気です。興福寺の東金堂に似た感じです。南都さんのご実家は、とても良いロケーションですね。

> 仮想の須弥壇一式を設えてみて欲しいものです。
(株)キャドセンターさんの力を借りて、仮想「新薬師寺メリーゴーランド」が作れれば素晴らしいと思います。
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