新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

セルバンテスの企み

2015年02月14日 | 日記

 17世紀初頭に書かれた「ドン・キホーテ」には奇想天外、奇妙奇天烈、荒唐無稽などの形容語句が思い浮かぶ。聖書についで多くの言語に翻訳されているという話に合点がいく。
とにかくおもしろい。原文で読めればおもしろさは数倍になるはずだが・・。
 オランダ風の風車を巨人とまちがえて闘いをいどみ、全身にけがを負って帰宅するほど狂気じみたドン・キホーテに、二度とこのような無思慮な旅をさせまいと周囲の人が気をつかい、ドン・キホーテの書斎にある騎士道小説を捨ててしまおうとするくだりがある。1冊1冊をとりあげて手短な批評をし、捨てるものと残すものを選り分ける。訳者の注釈によればここで取りあげられた本はすべて実在するもので、作者セルバンテスの読書ぶり、博覧強記ぶりが垣間見られる。多くの書物に鉄槌をくだしたり救いの手をさしのべたりしながら、最後にひそかにセルバンテス自身がまえに書いた作品を忍びこませる。
「そのセルバンテスはわしのずいぶん古い入魂じゃ。詩作よりも不運になれた剛の者、ということもわしは知っとります。その作はなあ、趣向に多少の新味を持ち、何か見せようとしながら何も見せずに終わっとるので、書くという続編を待ってやるのが必要じゃ。・・・」(永田訳)
 まるで他人事のように自身の名前を挿入しながら、作品にはそれほど甘い評価もしていない。セルバンテスの意図がはかりかねる。




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