多摩てばこ通信

食べもの、祭り、テニス、お酒、こだわりものを中心とした情報発信とひとりごと

最近読んだ本(その74)

2019年06月22日 | Weblog
最近読んだ本から
「ベルリンは晴れているか」深緑 野分著 筑摩書房
 色んな意味で中々の大作だと思う。舞台は1945年のベルリン。戦争が終わり連合軍が占拠し、ポツダム会談が開催されようとするとき、主人公の少女が事件に巻き込まれる。終戦直後の混沌とした日常の描写だけでなく、過去の戦時中ファシズムの台頭の頃の日常をも織り交ぜ、生きること自体が困難な時代を描いている。日本も戦時中や終戦直後は同じような時代だったのを私たちは忘れてしまっていないか。私自身終戦僅か10年後に生まれ、昔は親から空襲や防空壕の話を聞かされて育った世代なのに。ミステリだけどもあまりに描写がリアルで、まさにその時代に生きているような感覚にとらわれる。やはり中々の大作だ。
「新章 神様のカルテ」夏川 草介著 小学館
 シリーズの最新版の大学病院編。医局に戻った主人公一止は、チームリーダーを任されながら大学院生という複雑な立場。引きの栗原は健在のようで多忙ながら可愛い女の子の父親でもある。今回もほほえましい笑いから涙ありまで色々。主人公の患者に対するひたむきさで解決していく。それが悲しみだったり喜びだったり感動だったりと読む方も多忙だったが、本当に心が洗われるいい本だ。
「百歳人生を生きるヒント」五木寛之著 日経プレミアシリーズ
 人生百年時代に老後は年金だけでは2000万円不足なので、自助努力で投資しろという金融庁の報告書が公表され、大騒ぎになっている。百歳まで生きている人は身近にもいるが、私がそこまで生きれるとはとても思えない。それはさておき、生きるヒントは六十代の再起動(群れから離れる)、七十代の黄金期(学びの楽しさ)、八十代の自分ファースト(嫌われる勇気)という。そして九十代は瞑想のすすめ。もう人生の境地だ。

最近読んだ本(その73)

2019年06月09日 | Weblog
最近読んだ本から
「下町ロケット~ゴースト」「下町ロケット~ヤタガラス」池井戸潤著 小学館
下町ロケットを読むと本当に元気が出る。物語の構成がうまい。テレビドラマ同様の展開の妙がいい。佃製作所の佃社長と帝国重工の財前部長のコンビが今度はトラクターの無線自動運転を目指す。上手くいったり、挫折したり、企業の業績の浮き沈みもある。しかも下町工場ならではの人情部分もある。中小企業が生きていくにはもの作りの他、営業や融資や企業法務、知的財産、交渉・人間関係など多くの問題が複雑にからむ。著者はそれを上手く束ねバランスよく、自然にストーリーに落とし込む。バランスいいから心地よい。だから元気が出る。
「看護士も涙した老人ホームの素敵な話」小島すがも著 東邦出版
特養に勤務する看護士から見た老人ホームの色々な話。入居者が暴れたり騒いだり行方不明になったり亡くなったり、世間的には大騒ぎな事件がさりげなく書かれていることが、老人ホームの日常茶飯事さを表している。入居者が認知症になっても笑い飛ばす家族がいたり、死んでも連絡して来ないでという実の娘がいたり、人の数だけ様々な人生や生き方があり色んなものを背負って今に至る。血縁よりも赤の他人の方がいい時もあるという。
「鴨川食堂はんなり」柏井 壽著 小学館文庫
ご存じ鴨川食堂の第5弾! 正直このシリーズは大好きだ。京都のとある探偵食堂はまぼろしの味もさがしてくれるという。ふたりの別れる原因となった親子丼、妻子と食べた昔のきつねうどんはまだしも、遭難しかけた際におばあさんが食べさせてくれた芋煮は吹雪の中のまぼろしの家での話だ。しかしさがしてくれるだけでなく、人生の指針までアドバイスしてくれる。こんな食堂があれば、昔食べた思い出の横浜駅近くの鴨なん蕎麦やヒレカツ定食。今はもうないあの店のあの味を再現してくれ!