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秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

千秋トンネル

2012-12-13 23:10:24 | 秋田の地理
12月2日に、山梨県の中央自動車道・笹子トンネルの天井板が崩落し、9名が亡くなった。
天井板の不適切な取付方法と、その後の点検の不備(手抜き)が原因の、完全な人災であり、いたたまれない。

「天井板」というものの存在は今回初めて知った。トンネル本体の上部を区分して換気スペースとして使うために設けられた仕切りのことで、いわば吊り天井であり、古い道路トンネルの距離が長いもので見られる方式だという。
秋田近辺では、国道46号線の岩手県境の仙岩トンネルで使われている。そういえば、仙岩トンネルの天井は平らだった。


秋田市では、笹子トンネルの事故を受け、翌日3日に管轄するトンネル5つの緊急点検を行った。道路維持課職員による目視点検で異常がないこと、また、秋田市には天井板のあるタイプのトンネルは存在しないことを発表し、報道されている。
国交省地方整備局や秋田県などと比べて、とても迅速な対応だ。これは、秋田市道のトンネルの数(後述)や距離が多くないことが大きな理由だろうし、ひねくれた見方をすればパフォーマンス的な感じもしてしまうが、市民や道路利用者には安心感をもたらす。(もちろん、国や県も含めて、内容的にはしっかりと点検してくれているはずですが)

その報道によれば、秋田市道には、トンネルが6つあるという。※秋田市が管理するトンネルという意味です。他には県や国管轄のものが市内にあります。
あまり多くなさそうに思っていたが、やっぱり少ない。アンダーパスは市道で番号が振られたものだけでも、15か所あるのに。

河辺岩見(旧河辺町)の「黒崎森隧道」は、土砂崩れの恐れで道路が通行止めのため、今回の点検対象外。
旧雄和町には「平尾鳥トンネル(雄和平尾鳥)」と「小又沢トンネル(雄和萱ケ沢)」。
以前からの秋田市域では上新城の「五百刈沢隧道」(秋田北IC近くの山道にあるらしい)、山手台の「山手台フォレストパス」、そして千秋矢留町の「千秋(せんしゅう)トンネル」。

はっきり言って、千秋トンネル以外は場所をイメージできないし、名前も知らなかった。(山手台ナントカパスはなんとなく知っていた)
そんなわけで、個人的に身近なトンネルといえば、やっぱり千秋トンネル。
西側・保戸野地区寄り。上は明徳小グラウンド
秋田市中心部の千秋公園の下を潜る、長さ189メートルのトンネルで、1979【2016年11月16日訂正】1978(昭和53)年にできた。
トンネルは、西側の出入口付近で緩くカーブしており、入口から反対側の出口がギリギリ見えるか見えないかといった感じ。また両方の出口を出てすぐの道路も緩くカーブしている。
【2013年10月5日追記】トンネル内はごく緩い坂。手形側のほうがわずかに高い。
西側から入ってすぐの場所から東側出口を望む
手形・秋田駅方面と新国道方面の主要経路として、車両の通行は多い。ただし、両入口の手前に信号付き交差点が多いため、信号のタイミングによってはまったく車が通らない時もあるし、出口付近でやや渋滞することもある。
トンネル入口
ここ数か月の間かと思うが、両方の入口に「トンネル内ライト点灯」という表示板が新設された。上記の通り、出口付近で渋滞することがあるので、追突防止、あるいは不測の停電に備えてだろうか。
表示板に強制力はないとはいえ、現時点では、昼間はライトを点灯しないでトンネル内を走り抜ける車も少なくない。
基本的には、表示などなくても暗い場所では自車の存在を周知するためにもライトを点灯するべきでしょうけれど。
内部は上下1車線ずつ。車線の仕切りは頑丈そうな柱が密に並ぶ
歩行者は、ひっきりなしではないが、秋田駅と千秋・保戸野の住宅街を行き来する住民や、トンネル両側が学区である市立明徳小学校をはじめ、秋田大学附属各学校、県立秋田北高校などの通学路にもなっていて、利用されている。歩道は比較的幅が広いものが両側についていて、車道との区分もしっかりしていて、通りやすいと思う。(車の騒音や排ガスはあるけれど)
外は雪景色(東側・手形地区寄り)
僕は、日常的には利用しないが、子どもの頃から歩いて何度も通っている。
学校行事でクラスメイトと歩き、雰囲気や長さが怖いような楽しいような気持ちで入り、結局はナトリウムランプのオレンジ色の光によって持ち物や服や顔の色が変わることや、声が響くことを楽しみながら通り抜けたものだ。トンネルを入る時は降ってなかったのに、逆側は土砂降りで、しばらく中で雨宿りさせてもらったこともある。
東側から西側を望む。震災後は、節電で照明が暗くされたことがあったが、今は戻った

千秋トンネルも天井が平らだけど、これは天井板ではないのは素人目にも分かる。なんていう工法か知らないが、トンネル自体が四角いのだ。
たしか、何年か前に、天井の一部が崩れ落ちたかと思ったら、表面が剥がれ落ちただけだったという騒動はあった。


そんなわけで、親しみがある千秋トンネルだけど、その中に、子どもの頃に通って、なんとなく恐怖を感じたものがある。
今回の点検では、それだけは市職員では点検できず、6日に専門会社が点検を行った。(結果は異常なし)

それは、「送風機」。
換気の目的で、トンネル内の歩道部分の天井に計4台設置されている。(送風機が見えているという点からも、吊り天井ではないことが分かる)
右上にある物体
7日付秋田魁新報によれば「鉄製で直径80センチ、長さ3.4メートル、重さ535キロ。トンネルの両出入り口から中に40メートルほど入った歩道上の天井に設置」「トンネル内に有害な排ガスが充満すると作動する」「95年に送風機を分解して掃除し、2003年には目視点検を行った。」
今回は、足場に上って、目視や打音で点検を行ったそうだ。

まるで飛行機のジェットエンジンのような形状のもので、時折「ぶーん」【25日訂正】「ゴォー」【2013年2月7日さらに訂正】「ゴォー」&「ぶーん」という音を立てて中で羽が回っていることがあり、その時は歩道を歩いていると風を感じる(排ガスが充満してるってことか)。経験上、回っていないことのほうが多いと思う。(自然の風を受けて、軽く回っていることもある)
変化のない単調なトンネル内部において、その大きさと作動時の音と風が子ども心に存在感を感じさせたのだろう。
西側(写真奥)の送風機はカーブの終わり付近に設置されている
トンネルの長さ・大きさからすれば、この程度の物体で充分に換気できているのは、すごいことかもしれない。

調べると、この送風機は「ジェットファン」と呼ばれるそうだ。
そのトップメーカーが「パナソニックエコシステムズ(旧・松下エコシステムズ)」。パナソニックのホームページ(http://panasonic.co.jp/ism/jetfan/what.html)の地図「トンネル等換気設備・納入実績」によれば、秋田市の位置にもジェットファンが納入された印がついている。(それが千秋トンネルかどうかは不明)。

トンネル内のナトリウムランプで見るジェットファンは、
見慣れた光景だけど、ちょっと怖い?
フラッシュをたいてみると… ※フラッシュ撮影は、通行車両がいないタイミングで行いました。
こんな姿。点検の時に書いたのだろうか、天井にチョークで記号が記されている
別のファンは、
本体のガワ(筐体)はサビサビですが、取付部分や動作は問題ないということでしょう



最後に、今回初めて知ったのだが、千秋トンネルをいわゆる「心霊スポット」として認識する人もいるようだ。
Googleで検索窓に「千秋トンネル」と入力すると「心霊」が候補に表示される
「心霊スポット」という扱い自体、好きではないが、秋田の心霊スポットといえば、河辺の国道13号線の和田トンネル(現在は廃止され埋められた)とか、男鹿の茶臼峠や廃ホテルとか、浜田の梅林園とかは、知っていたし、それらは雰囲気的にそう呼ばれるのも分からなくはない。
ちなみに、トンネルの上の千秋公園も心霊スポットとされているようだ。「千秋公園でデートすると別れる」という“都市伝説”なら昔から聞くが…

僕は、千秋トンネルには、そういう雰囲気は感じない(霊感はないので、あくまで「雰囲気」ですが)。
たしかに、トンネルに接続する東側の道路は、切り通しになっていて、薄暗くて夜は通るのが怖いかもしれない。でも、トンネル内はあんなに明るいし、夜でも車はそれなりに通るのだから。(昔は、出入口すぐの所に、「社会に反するような組織の事務所」があって、違う意味で怖かったかもしれないが、今はいなくなった)
再掲)東側は切り通し ※この記事にも写真があります

また、秋田駅東西を結ぶ地下道路トンネルの県道「秋田中央道路」を、千秋トンネルと混同していることも考えられる。秋田中央道路の山王側出入口は、線形の不自然さ(当初上下線2本掘る計画だったものを、1本の対面通行としたため)や運転者の意識の低さなどによって、事故が発生していることを、霊のしわざだとかいう話が、数年前にちょっと広まった。(←霊にしたって、いい迷惑だ)


千秋トンネルより、泉・外旭川地区のアンダーパス(特に5番「八幡田地下道」や通称「ゆうれいトンネル」こと番号なし「水口地下道」など)のほうが、暗くて窮屈でじめじめしていて、よっぽど怖そうに感じる。

佐竹氏が秋田に来て400余年。その城があった千秋公園周辺には、少なくとも400年以上前から人が住んでいる。
その間にこの街では、多くの人が生まれ、亡くなった。中には、不幸な死を遂げた人も少なくないはず。僕が生まれてから今まで30年強の間にも、そういう人、そういう場所(千秋トンネルではない)をいくつか知っている。
そんなことを踏まえれば、城下町なんて街じゅうが心霊スポットになるのではないだろうか。

今生きている我々は、多くの先人が残してくれたものを受け継いで生きている。そのことを時々は思い出して感謝し、むやみにおもしろがったり恐れたりすることなく過ごしていってはいかかだろうか。
なんかスピリチュアル(?)な話になってしまいましたが、千秋トンネルを興味本位の心霊スポットにされるのは、利用者としては不本意です。

※千秋トンネルに関する続きの記事はこちらこちら
※この後、2014年度に、千秋トンネルの照明のLED化ジェットファンの撤去が実施されることになった。

【2018年3月2日追記】東京都渋谷区に「千駄ヶ谷トンネル」というのがあるそうで、その構造(箱型、中央の柱、歩道の雰囲気など)が千駄ヶ谷トンネルにとてもよく似ている。
東京オリンピック直前の1964年に開通した61メートルのトンネルで、上が墓地になっているためか、心霊スポットとされるとのこと。

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10 コメント

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そうそう (のりぽん)
2012-12-14 01:01:54
なんか千秋トンネルって心霊スポット扱いになってますよね、ネットでは。
昔、深夜によく車で通りましたが、全然気にならなかったですよ。
それより、八橋の草生津川沿いにあるサンデーやマルダイの所が心霊スポットになってないのが不思議です。
あそここそ、いわくがある土地なのに・・・
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トンネル (りお)
2012-12-14 13:39:42
私が子供の頃、夏と冬に親の運転する車で雫石の小岩井農場に行くのが恒例行事になっていました。国道13号線から国道46号線を経由するルートで、仙岩トンネルを往復で通っていました。
笹子トンネルの事故の際、ニュースで紹介されていた笹子トンネルの構造があまりに仙岩トンネルに似ていた為、「もしかして?」と思っていたら、案の定同じ構造のものでした。
最近は通っていませんでしたが、もし通行時に事故が起こっていたら…と思うとちょっと怖かったです。

秋田では、肝試し自体やる人が少ないように思います。うちの学区では天徳寺の墓地が心霊スポットと言われていましたが、これといった謂れもなく、雰囲気で無理やり心霊スポットにされた感があります。同じように、明徳学区では千秋トンネルが「それっぽい」とされただけなのではないでしょうか?明徳学区には大きな寺や墓地は少ないですから。
私としては、千秋トンネルは真上に神社があるのですから、心霊スポットにはなりようがない感じがしますけど…。
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コメントありがとうございます (taic02)
2012-12-15 00:10:27
>のりぽんさん
開放的な雰囲気ではないものの、通る分には、まったく普通の道路という感じですよね。まして昼間は。

面影橋近辺ですか。たしかに、歴史的経緯を踏まえれば、そうですね。
まあ、出ない所では成仏していて、出る所にはよそから集まってくるからとか、理由の付けようはいくらでもありますから。
霊現象をまるっきり否定するわけではないですが、出るも出ないも、気持ち次第かと。

>りおさん
仙岩トンネルは僕もだいぶ前に通ったことがありました。長さもさることながら、閉塞感を感じたのは天井板のせいでしょうか。
今日の報道によれば、仙岩でも軽微な不具合がいくつか見つかったそうで、今回の緊急点検がなければ、将来的にはどうなっていたのか…

肝試し。そういえば、やったことないです。
個人的には、千秋トンネル=心霊スポットは、秋大のそば(ではあるけれど、あまり通る学生はいなそう)なので、大学生の間から広まったのかも、という憶測をしていました。
以前記事にした、弘前の「バカヤローカーブ」と同様、学生の間では知られているけれど、地元の人はほとんど知らないという感じで。

平和公園は、斎場の近くではありますが…
梅林園、一つ森公園、金照寺山なども心霊スポットとされることがあるようで、身近な里山の宿命でしょうか。
平和公園に確実に出没し、危険なのは、霊よりも熊ですね(笑)
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Unknown (sats)
2012-12-15 01:42:06
千秋トンネルというと太い柱の印象が強いですね。
今はナトリウムランプじゃ無い普通の色合いのランプを点けたトンネルが増えてきたので、ああいうやや暗めの所にナトリウムランプってのは独特な雰囲気があります。

中央道の話が出ましたが、これからの時期は特にトンネルや陸橋などの「カーブしながら傾斜してる」所は特に気をつけて走らなきゃいけませんね。
ざっと思いついた所では、横山金足戦の手形山トンネル+その前後の道、河辺の和田駅近くの跨線橋(ここ実際に滑った事あります)とか…。

ちなみに「五百刈沢隧道」は近所にあり、自転車で何度か通った事があります。
一応舗装してて車道ではあると思うのですが、車一台がやっとの細い道で前後の道も細くとても車で行く勇気はありません。
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カーブしているので (mugi-shochu)
2012-12-15 16:26:21
千秋トンネルも手形山トンネルも、中でカーブしているので通行時は注意が必要ですね。
もっとも、私が千秋トンネルを通る時は大体いつも混んでいるので、それ程スピードは出せませんが・・・

千秋トンネルを歩いて渡ったことはありません。
子どもが歩いて渡ると、あの巨大な送風機はやはり怖いかも知れませんね。
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コメントありがとうございます (taic02)
2012-12-15 22:49:26
>satsさん
改めて見ると、柱の存在感がありますね。対向側と隔てられた、後戻りできない一方向の一本道という気にさせられます。

カーブと傾斜では、千秋トンネル近くの手形陸橋も若干そうでしょうか。
風が抜けるので凍りやすいこともあるのでしょうが、これからは気を抜けない季節です。

ネットで五百刈沢隧道の訪問記をいくつか拝見できますが、周辺の道も含めて、すごいトンネルですね。まさに「隧道」と呼ぶべきような。

>mugi-shochuさん
事故があったという話はあまり聞かないですが、冬は要注意ですね。
保戸野側入口には数年前から、「トンネル内一車線通行」という看板が立っているので、渋滞時などに無理な運転をする車がいたのでしょうか。

慣れないと歩いて通るには抵抗があるかもしれませんが、余計なものが目に入らず、冬でも歩きやすく、ある意味、歩くことに集中できますよ?!
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心霊スポット (あんなか)
2012-12-16 16:57:05
いつもためになり楽しく読んでおります。
私もあんまり心霊スポットと騒ぐのは好きでないですね。
院内銀山も某タウン誌がでっち上げたと聞いたことがあります。
ただ千秋公園の北側に小さい人工の滝がありますね。
私が子供の頃そこで亡くなった方がいて新聞にも載ったことがあり
それが噂になり脈々と受け繋がれ都市伝説化したのかも知れません。
私が小さい頃は大森山の塩曳潟の方が有名でした。
月日と共に心霊スポットも移り変わるのでしょうね。
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そういえば (taic02)
2012-12-16 22:28:30
院内銀山も聞いたことがあります。大森山の塩曳潟は初耳でした。
千秋公園の滝付近の話は、聞いたことがあります。千秋トンネルの近くといえば近くですね。
町に近い広大な公園とか山では、そういう悲しい事件も実際に起こっているのでしょうし、そこから広がった可能性もありますね。

千秋公園には、戦争中に掘られた防空壕が残っているという話もあるし、不良・変質者・カモシカなどが出没することもあるし、そういう話が変化したり、事故防止のために心霊話が“創作”されたりといったこともありそうです。
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こんにちは! (たむたむ)
2012-12-18 10:37:00
千秋トンネル!
今年、何度か通過しました!
朝の渋滞時間帯など軽自動車などは、
2列になりつつあるからかな~?と・・・
トンネルを抜けると、2列になりますものね~。

子供のころ、天徳寺がヤバい?なんて噂はありました。
金照寺山も、色々噂がありましたね~。
懐かしい・・・。
私自身、一番ゾッとしたのは、梅林園です。
素敵な場所なのですが、長時間いることができず
退散してきました。
返信する
こんばんは (taic02)
2012-12-19 00:38:07
トンネルを出た先の脳研の通りとの丁字路の赤信号が長いので、つい焦ってしまうのでしょうか。
カーブしていて見通しは良くないので、落ち着いて通行したい場所です。

金照山は、そうですね。1度だけ昼間に行きましたが、周囲と隔絶されて、なんとなく独特の雰囲気はあったかもしれません。
梅林園も一部はじめっとした感じがしなくはないですが、鈍感なので… 山が深そうで迷いそうな印象はありました。
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