広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

津軽の地名

2009-07-15 18:03:12 | 津軽のいろいろ
ネタ不足なので撮りためた写真による記事をご覧ください。

地名はよその土地の者には見当がつかないような読み方(例えば秋田市では川反(かわばた)、広面(ひろおもて)など)、不思議な由来のもの(手形からみでん(以前の記事)、将軍野(征夷大将軍・坂上田村麻呂の伝説にちなむ)など)があっておもしろい。

今回は、僕にとってはよその土地でありながら、4年住んで多少は知っている弘前市周辺の地名を弘南バスの車両の行き先表示を通してご紹介したい。
地名の由来をもっと調べたかったのだが、時間と資料が足りなく、不完全です。でも読みだけでもなかなかインパクトのある地名が揃っていると思います。
 ※使用した写真は以前にコンパクトデジカメで撮影したものがあります。路線変更などで現在は使用されていない行き先表示もあります。
 ※弘前市の地名は、すべて「大字○○」と大字が付くのが正式ですが、本記事では省略します。
 ※記事に間違いや詳しい由来等の補足情報がありましたら、お知らせください。
今では少なくなった赤系統の旧塗装のバス
「富田大通り 小栗山
僕にとって弘南バスいえば真っ先に連想する行き先。弘前駅前と弘前大学正門前の富田大通りを通り、小栗山地区にある弘南バス弘前営業所を結ぶ路線。沿線は住宅や高校が多いことと、バスの車庫への出入りを兼ねているため、弘前市内の路線バスにしては運行本数が多い。(5分間隔の時間もあれば30分ない時間帯もあるけれど)
「小栗山(こぐりやま)」とは栗の木があるような地名だが、「角川地名大辞典」には「かつては地名の通り、栗の産地でもあった。」とあるので、本当にそうらしい。
「富田大通り 狼森
小栗山線のうち、数時間に1便が小栗山へは行かずに手前で曲がり、小栗山の隣の狼森地区へ向かう。
「狼森(おいのもり)」は地名辞典によれば「狼の住みついた森があったことに由来すると思われる」そうだ。

狼森や小栗山は、今は傾斜地のリンゴ畑を臨む郊外の農村兼住宅地といったおもむきだと思うが、何百年か昔はオオカミがいたのか。
宮沢賢治の「狼森と笊森、盗森(おいのもりとざるもり、ぬすともり)」という、小岩井農場の周辺に実在する森をテーマにした童話があるが、東北にも結構オオカミがいたようだ。

なお、バスの行き先左に青で「35」とか系統番号が書かれているが、僕は(おそらくほとんどの人が)意識していない。実際、新しいLED式の行き先表示では番号は表示されない。
秋田市では、行き先表示に記号・番号が振られていないため、市も関わって表示する計画があるらしい(公共交通政策ビジョン)。外国人など不慣れな人のためには確かに番号表示は必要だが、地名を知っている人には文字の情報も重要。特に秋田のバス会社は、文字による表示が統一されていなかったり経由地が分かりにくいことがある(組合病院方面など)ので、文字表記の整備こそ必要なように思う。それに比べると弘南バスはシンプルすぎる場合もあるが紛らわしくはなく、それなりに分かりやすい。
「松森町 一の渡 座頭石
「一の渡」というのもちょっとおもしろいが、「座頭石(ざとういし)」は強烈なインパクト。時代劇の座頭市みたい。由来は分からないが、市民の森やハイキングコースがある、郊外の自然豊かな場所。

悪戸 市役所 弘前駅」
市内から相馬・西目屋方面のバスに乗り、りんご公園のある「常盤坂入口」を過ぎると「悪戸(あくど)」地区。
“悪”という字を使う地名でびっくりするが、秋田県能代市など、東北地方にはたまにある地名。柳田国男氏によれば「阿久津」などと同様、低湿地を示すという。
ちなみに、悪戸地区(「中央悪戸」停留所の真ん前?)には「相馬アイスクリーム商店」という、市民に親しまれているアイスキャンデー屋さん(秋田市南通りのかき氷屋とか能代市二ツ井の「ジャップ」的存在?)があるが、相馬さんというよりも「悪戸のアイス」の方が通じるはず。

「ロマントピア 水木在家
上の悪戸経由相馬方面行きの1つ。
近年、弘南バスではこのような20人も乗れば満員になるマイクロバスを路線バスに導入し、効率化を計っている。秋田市の南通築地や南団地方面に使われる小型バスよりもさらに小さい。小栗山線にも使われることがあるが、さすがにかなり混雑する。
ロマントピアというのは、旧相馬村から合併に伴い弘前市が引き継いだ「星と森のロマントピア・そうま」というレジャー施設。温泉もあって食事もおいしく安くて、なかなかいいです。その所在地が弘前市水木在家。
だから、小型車の狭い表示幕にあえて「水木在家」と書かなくても良さそうにも思う(市役所とか悪戸とかを入れた方がよさそう)けど、漢字4文字の地名が珍しく、「みずきざいけ」という響きもきれいで好き。
「水木さんが家に居ますよ」という感じの地名と思っていたが、角川地名辞典には「水木館跡があり、戦国期、浪岡北畠氏類族とされる水木氏の居城跡といわれる」とあるので、「水木さんのお城があった」わけだ。
桔梗野・金属団地 桜ヶ丘」
弘前大学の裏側、弘南鉄道大鰐線と土淵川を越えた住宅地「桔梗野(ききょうの)」を通る路線で、小栗山線ほどではないが比較的本数が多い路線。
由来は分からないが、「桔梗野」もきれいな地名だと思う。八戸市にもある。

嶽温泉(岩木スカイライン) 枯木平
LEDでない従来の幕式の行き先表示の車両は「枯木平」としか表示されていなかった。弘南バスでは、既存車両の表示器をLEDに交換することはしていないものの、新車のLEDでは経由地を表示してくれるようになったのは親切。
それに秋田市のバス会社とは表示器のメーカーが違うが、こちらの方が文字が太くて見やすいと思う(ただし明るい場所では発光が弱くて見にくいので一長一短)。

この路線は、弘前市から岩木山へ向かって進み、岩木山(いわきやま)神社前、百沢温泉、「嶽きみ」としてブランド化されたトウモロコシ産地でもある「嶽(だけ)温泉」、有料道路「津軽岩木スカイライン」入口を経由し、終点が枯木平という、観光路線の性格も持つ路線。スカイライン自体には乗り入れない。
「枯木平(「かれきたい」と思っていたが「かれきだい」かも?)」とは荒涼とした原野をイメージさせる地名だが、僕は行ったことがないので実際はどうなんだろう? 西目屋方面には「川原平(かわらたい)」というのもある。

岩木山に登るには、嶽温泉から全長9.8キロ、69のカーブのスカイラインを通るシャトルバスに乗り換えて8合目まで行き、リフトでさらに9合目まで登れるそう。
つまりこのバスでは嶽温泉までしか行かれないから、カッコ書きとは言えスカイラインを表示する意味はあるのかと思ったら、スカイラインとリフトはなんと弘南バスが経営しているそうだ。1965年に弘南バス自動車事業部として発足・開業し、1999年に岩木山スカイラインに商号を変えている。
自社の宣伝目的もありそうだが、車のない観光客にも有料道路を利用してもらおうとバスを運行する心意気は立派。バス会社だから当然と言えなくもないが、秋田のバス会社が経営する秋田県の男鹿半島の「寒風山回転展望台」行きの路線バスってあったっけ?

和徳 弘前ビブレ」
マイカルグループの再編で東北地方のビブレは「さくら野」に変わり、弘前では100円バスが運行され始めたので、今は表示が変わっているかもしくは路線自体が消滅したかもしれない。
これは駅前から駅裏へ行く路線。途中通るのが、駅北西の旧国道7号(県道260号)沿いの細長い町で、昔からの商店が並ぶ「和徳町」。弘南バスの「和徳車庫」もある。和徳城という城があったらしく古い地名だ。
何で和徳を取り上げたかといえば、その読み方。正式には(地名検索サイトなどによれば)「わとく」だが、弘前の人はそうは言わない。何と読むと思いますか?

「わっとく」
小さい「っ」が入るだけだけど何となく親しみが増す。「わっとく」もかなり認知されていて、ここにあるお店のテレビCMでは「弘前市わっとく」と言っていたし、弘前市教育委員会のサイト「ひろさきっず」内の各学校へのリンクページ(http://portal1.hi-it.net/els/hi0001.html)では弘前市立和徳小学校の読みを「ひろさきしりつわっとくしょうがっこう」としている(ただしURLは「watoku」=わとく)。
「わっとく」と読めるようになれば津軽人ということ? ※その後の話題
【7月16日追記】現在は「城東循環100円バス・和徳回り」という路線があり、バスターミナル→和徳→駅城東口→さくら野→駅城東口→和徳→バスターミナルの経路で運行している。

最後はおそらく最難読地名。絶対読めないと思います。
小比内 さくら野弘前店」の「小比内」。
「こひない」? 「こびない」? いえいえ違います。
ヒント:これも歴史ある地名らしく、昔は「佐比内」と書いた記録もあるとか。
「さひない」? 「小百合」のように「小」を「さ」と読むからね。でも違います。

正解は


「さんぴない」
Macのかな漢字変換「ことえり」でも変換できる、正式な読み方。
「小」を「さん」、「比」を半濁音の「ぴ」と読むとは思いつかない!
由来はよく分からないが、「~ナイ」で終わる点、半濁音が入っていることから、個人的にはアイヌ語が関係しているのではないかと思うけど…

ほかにも弘前の隣駅「撫牛子」は難読駅名として有名(「ないじょうし」と読む)だし、「門外(かどけ)」、「十腰内(とこしない)」、「大秋(たいあき)」など個性的なものが多くて興味をそそられる。

弘前に限らず、先人から受け継いだ地名に誇りを持って、(できれば由来を理解して)後世に伝えて行くのが、その土地に住む人の努めだと思う。

【2015年2月4日追記】新たに知ったので追記。
賀田。バスの行き先でたまに見ていたが、読みは知らなかった(知ろうとしていなかった)。
「よした」と読むそうだ。(「よしだ」とも言われるようだ)

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4 コメント

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弘前市 (りみ)
2009-07-16 10:16:50
電車だけじゃなく、バスにもとても詳しいのですね。感心してしまいます
今はバスには乗らないけど、バスの行き先表示に興味が持てそうになりました。
産まれ育ちは旧中郡岩木町、今は弘前市(小栗山のすぐ隣り)に嫁ぎ住んでます。弘前市の記事、とても嬉しいです。地名は知っても詳しい由来は全くでして・・・勉強になりました。

「和徳」確かに「わっとく」と読んでます。その和徳です、モータースクールの裏側の和徳を「じゃいごわっとく」って呼んでるんですよ。年配の人には通用するみたいです。
「枯木平」は「かれきたい」と読むと思います、これに乗ると実家へ行けるんです。
「十腰内」の手前に「十面沢(とつらざわ)」という地名がありますょ。由来が気になりました
地名はおもしろい! (taic02)
2009-07-16 20:00:59
ありがとうございます。どこも厳しい経営状況の中、弘南バスは一生懸命やってる感じがして好感を持ってます。秋田市内でたまに貸切で来ている弘南バスを見かけるとうれしくなります。

「じゃいごわっとく」ですか! 「じゃいご」は「在郷」が転じた「田舎」って意味ですよね(秋田では「じゃんご」または「ぜんご」と言います)。「和徳の外れ」という意味でしょうか。おもしろい
十面沢、聞いたことがあります。記事中普通に書いた「西目屋、東目屋」も考えてみれば不思議な地名です。
「かれきたい」でいいんですよね。ネットで「だい」となっているのを見つけて不安になっていたので、安心しました。岩木山神社に行った時に乗りましたが、ぐんぐん近づいて行く岩木山が印象的でした。

秋田を棚に上げて弘前の地名を記事にしてしまいましたが、地名って奥が深いですよね。
弘前市和徳町の読み方 (ナルミン)
2015-10-19 22:44:21
弘前市和徳町の読み方ですが地元でも「わっとく」と読む人と「わとく」と読む人と別れます。
伊奈かっぺいさんがラジオ番組で「弘前市わっとぐまぢ」が正しいと発言されてました。
私は秋田県大館市民ですが昔から「わっとく」だと思っていました。
「わとく」と読むのは最近、伊奈かっぺいさんのラジオ番組聴いていて知りました。
モータースクールの裏の方です。
弘南バスの車内放送でも「次はわっとく小学校通り、わっとく小学校通りです」とアナウンスされてます。
わとくかわっとくか (taic02)
2015-10-19 23:18:33
秋田市に「下北手/上北手」という地名がありますが、「~きたで」派と「~きたて」派に分かれます。
元々は「で」だったのが、行政が「て」を公式な読みとしたため、それに従ったのが「~きたて」派なのかなと思っています。

「わとく」も同じような経緯でできた新たな読み方なのかもしれません。
現時点で、弘前市選管の投票所一覧では、「わとく」を読みとしています。

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