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札幌市交通資料館

2013-10-08 23:49:36 | 旅行記
北海道旅行記。※前回の記事
バスの日にこじつけて少し紹介した「札幌市交通資料館」を、今度は鉄道の日にこじつけて。
1972年にオープンした、札幌市の交通事業に関する展示施設。札幌市交通局の外郭団体「札幌市交通事業振興公社」が運営する。入場無料。
前から見に行きたいと思っていたのだが、開館するのは5月から9月の土日祝日と札幌市立学校の夏休み中だけなのでタイミングが合わず、今回やっと行くことができた。

場所は、市営地下鉄南北線の終点・真駒内の1つ手前、「自衛隊前」駅。
駅の西側出口を出て南へ向かい、川を渡ってすぐ。
向かい側は自衛隊
地下鉄のシェルター付き高架の下を利用した、細長い施設。

あまり大きくない建物内には約1000点の資料、高架下には路面電車10両、地下鉄5両、バス4両の車両が展示される。
「22」
形式は「10形」。明治末期製造の名古屋で使われていた中古車で、1918(大正7)年に札幌市に初めて路面電車ができた時(当時は民営)にやって来た木造の車両。市営化後も引き継がれ、1936年まで運行された。
集電装置がパンタグラフではない
架線に接する部分が滑車状になった「トロリーポール」というもの。進行方向が変わる時は、紐を引っ張ってポールを旋回させて向きを変える。
秋田市電でも1965年の最後の運行までこれを使っていて、公営の路面電車では最後だったそうだ。

「D1041」
これはぐっと近代的。端正なスタイルの路面電車のように見えるけれど、路面「電車」ではない。なんと、ディーゼルエンジンで動く「路面ディーゼルカー」!
札幌市電には、国内唯一の非電化の路面電車(電車じゃないけど、なんて表記すればいいんだ?)があった。
1964年に製造されたこの車両は、路面ディーゼルカーとしては最後の形式。その後、非電化区間も電化されたため、1971年には廃車されてしまった短命な車両。

路面ディーゼルカーというのもすごいけれど、窓が大きく洗練されたデザインの車体も特徴的。
札幌市では、こういうデザインの車両が多かったようだ。

これは
札幌の冬の訪れを感じさせる風物詩といえば、路面電車の除雪車両「ササラ電車」。(例年10月中旬に報道公開をするそうだ)
資料館には、3両の除雪車両(2両がササラ、1両はプラウ式)が展示されている。上の写真奥が「雪8」、手前は1961~1971年に使われたディーゼルカーの「DSB1」。
DSB1のササラ
見た目は、シュロ製のホウキに似ているけれど、竹製だそうでかなり固い。どちらかと言えば茶道で使う「茶筅」みたいな感じか。


最後に地下鉄。
1000形(後に2000形に改形式)
1971年の開業時からの初代の営業車両が展示されていた。
全体的なデザインや地下鉄としてはかなり大きい窓が、路面ディーゼルカーとも共通する。緑色だからバッタとか、仮面ライダーにも似ているような。
2000形は1999年まで走っていたので、中学校の修学旅行でこの形式に乗ったかもしれない。

札幌の地下鉄といえば「地上を走る部分はシェルターに覆われている」ことと、「ゴムタイヤで走行する」のが大きな特徴。
シェルターは分かるけれど、ゴムタイヤについては地下鉄駅は暗いし、今はホームドアがあるので、見ることは難しい。乗り心地でレールとは違うと感じることしかできなかった。
交通資料館では、
ちゃんとタイヤが見えた!(市章が、正面・ドア・ドア間とやたらと付いている)
車体のわりには小さめに感じたが、トラック並みの大きさのタイヤを履いていたのを確認できて、感動。

鉄道好きとして恥ずかしいのだけど、僕は今まで札幌の地下鉄が「ゴムタイヤで走行する」という仕組みをうわべだけで、よく理解していなかったことを今回知った。※それでもなお、勘違いしているかもしれません。
ゴムタイヤで走る=レールがないと思い込んでいて、溝状の部分にゴムタイヤがはまることで、レールの代わりをしているのだと勝手に妄想してしまっていた。

ところがそれは間違いで、札幌の地下鉄にもちゃんと「レール」があり、そのレールが車両が道を外れないように“ガイドレール”として誘導しているのだった。
ただし、そのレールは2本ではなく中央に1本だけ。しかも、そのレールを走行用とは別のゴムタイヤで挟んで走行するのだった。
「案内軌条式鉄道」といって、台場の「ゆりかもめ」のような新交通システムもほぼ同じ仕組み。

文章だと分かりにくいので、他の車両の写真で。
「はるにれ」

「すずかけ」
地下鉄開業前に作られた試験車両。「はるにれ」は1965年製の第3次試験車。「すずかけ」が1967年製の第4次試験車で、作業用車両のような外観ながら、走行システムは南北線の営業車両とほぼ同じとのこと。
この2両の足回りを拝見。
 
走行用とは別の少し小さいタイヤが、横に倒れた状態で車体の底に付いている。
そのタイヤが、1本だけのレールを挟んでいる。
走るためのタイヤを「走行輪」、横向きのを「案内輪」と言い、両方にゴムタイヤを使ったのは札幌が世界で初めて。

屋内には、タイヤが展示されていた。
説明板には「寄贈 ブリヂストンタイヤ(株)」とあった。同社は現在は「株式会社ブリヂストン」なので、改名された1984年以前に寄贈されたのだろう。
左が東西線、右が南北線
南北線用のタイヤは表面がツルツルで、後に開通した東西線用は溝がある。(もっと新しい東豊線は東西線と同じ?)
説明板では南北線のは「駆動輪」、東西線は「主輪」と表記が異なるが、どちらも走行輪ってことでしょ。
どちらも「スチールラジアルタイヤ」。南北線用は外径1090ミリ、幅290ミリ、重量60キロ。「タイヤ表面模様がなめらかな地下鉄用ゴムタイヤは世界で初めてのもの」。
東西線用は外径1000ミリ、幅370ミリ、重量65キロ。「特殊開発された扁平なスチールラジアルタイヤ」で、「世界最大の地下鉄用ゴムタイヤ」。

タイヤの履き方も違い、南北線はバスやトラックのように同軸に2本履くダブルタイヤ。東西線・南北線では1本だけで、パンクに備えた金属製の補助輪があるそうだ。
南北線と東西線・東豊線では、タイヤ以外のシステムにもいろいろと差異があるそうで、車両を共通化することできない。

ブリヂストンのロゴ(昔の)がちゃんと入っている
雪国では今シーズンのスタッドレスタイヤのテレビCMが9月から始まっている。ブリヂストンでは「札幌のタクシードライバーの70%がブリザックを選んでいます」というのを放送している(最近見ない?)けれど、札幌の地下鉄は100%ブリヂストンだ。
【10月19日追記】スタッドレスタイヤのCMを改めて見た。札幌のタクシードライバーの「10人中7人がブリザック」と言っており、字幕で小さく「71.6%」であるとしている。


資料館の敷地は細長いため、途中で狭いながら信号機付きの横断歩道で公道を渡る。
「真駒内」交差点。向かいが陸上自衛隊真駒内駐屯地

百聞は一見にしかず。おもしろく、ためになった。
展示物の維持管理のためには、有料にするとか、駅構内扱いにしてきっぷ所持者だけに公開するようにしてもいいのではないだろうか。
※札幌の地下鉄の仕組みについては、新さっぽろにある札幌市青少年科学館のホームページ(http://www.ssc.slp.or.jp/science-qa-box/qabox-traffic/919.html)も参考になります。

「かけこみは危険!」
自衛隊前駅構内にあった、駆け込み乗車をしないよう呼びかける看板に描かれるのは、2000形?


40数年前に札幌市が独自に新たなシステムの地下鉄を開発したことは、画期的で意欲的な挑戦だったのが伺える。
でも、今にして思えば、普通のレールによる地下鉄にしておけば、技術開発や建設の費用が抑えられたはずだし、JRとの相互乗り入れなど利便性が向上していたかもしれない。独自のシステムというのは「ガラパゴス化」したということだし、さらに路線によって規格が違っていては、車両の開発や運用の効率が悪い。
結果的には、北の200万都市を支える重要な交通機関として立派に機能しているわけであり、これはこれで間違っていなかったのではあるけれど。

※北海道旅行の続きはこちら(カテゴリーが違います)
※北海道のちょっとした話題(消火栓について)はこの記事後半でも
※旅行記カテゴリーとしての続きはこちら

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2 コメント

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北海道の車両他 (バスオタ)
2014-03-05 21:21:25
北海道では中央バスとじょうてつバスではほとんどu-(~95年式)の車両が見られなくなったのは残念です。あと中央バス高速路線車の96年式もです。じょうてつバスはほとんど96年式廃車になっています。でもロマンス車も落ちています。JHBはまだまだ残っていますし大丈夫です。おまけに中央バスの新車は北海道に向かっています。
私の好きな路線車
いすゞキュービック 市電3000形類 ロマン号
エアロスター
嫌いな車両はブルーリボンシティ リエッセ
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20年前の車 (taic02)
2014-03-06 23:25:27
広大でバスの需要が高い北海道だからか、大都市札幌周辺だからか、更新が早くて新しい車が多いですね。
一方、秋田は20年前の車もまだ現役です。
「ロマン号」というのは小樽のレトロ観光向け路線バスでしょうか。
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