広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

秋田から出雲へ

2009-09-06 18:14:02 | 旅行記
※この旅行記の1つ前の記事(計画編)はこちら
※この旅行記を通して見たい方は、旅行記とお土産など複数のカテゴリーに入っているため、2009年9月の記事一覧からご覧ください。

今回も昨年の広島旅行同様、「周遊きっぷ」を使った。往復の運賃は2割引、ゾーン内では特急の自由席が乗り放題。
今回は「山陰ゾーン(5300円)」で、特急を使わなければ移動しにくい島根県出雲市から鳥取までの山陰本線を軸に、出雲大社や鳥取砂丘などへの私鉄・バスも利用できてしまうので、コストパフォーマンスはいい。小銭の準備がいらないのも楽。今回もややマニアックな経路だったので、若干手間取って発券してもらった。

初日は秋田を15時半に出て「こまち」のルートで東京まで行って、寝台列車に乗る。周遊きっぷでは往復の特急料金等は割引にならないので、いかに安く乗るかよく検討した。
「えきねっと割引(JR東日本の会員制予約サービス)」や「東京でなく上野で降りて節約」などいろいろワザはあるが、今回は、
秋田から大曲まで普通列車に乗車し、

大曲から「こまち」に乗車した。
これで400円ほど安くなる。大曲駅での接続も悪くなく、今回は秋田駅を30分早く出発して、大曲で10分弱待てばこまちが来る。混雑時や急ぐ場合などは別として、なかなか有効な節約手段だと個人的には思う。

秋田から乗った普通電車、いつもの「701系電車」だが、今日の車両は発車・加速する時の音が違う。
通常は床下にあるモーターを制御する「インバータ」から「う~ん う~ん う~~ん」という音がするのだが、これは「しゅるるる~」と静かで、山手線などの新しい車両に似た音。
秋田地区の車両は製造から15年ほど経ちインバータが老朽化したため、更新が行われているようだ。15年間で技術革新が進み、あまり音が出ないインバータができて、それに替わったわけだ。
よく見たら、正面ガラスの編成番号表記が「N33.」とピリオドが付いている。ピリオド付きが更新済みの目印なのかもしれない。

こまちは盛岡で下車。駅弁を買って、盛岡始発の「やまびこ」の自由席に乗る。時間はかかるがこれで数百円は安くなるし、東京到着時刻がちょうど良くなる。
「はやて」の車両だけど「やまびこ」です
このやまびこでは車内販売で一ノ関駅の駅弁も積み込むそうだ(確か前沢牛めしとかにめしと言っていた)。一ノ関は地元業者2社が豊富な駅弁を出しているけど、なかなか買う機会がない。でも車内販売ではどうせ盛岡か仙台の駅弁しかないだろうと、盛岡駅で買ったのだが、失敗。
さらになぜか「こまち号でご好評の秋田の伝統和菓子、『金萬(きんまん)』を数量限定で販売いたしております」そうだ。きっとこまちの車内販売での売れ残り(といっても脱酸素包装なので期限に余裕はあると思うけど)処分だ。金萬は白あんが入っているが皮はカステラ風、そして戦後創業だから、それを指して「伝統和菓子」というのには笑ってしまった。仙台発車後も案内したが、売れただろうか?

台風が関東へ接近している。福島付近から雨が降ってきた。寝台が運休にならないか心配。
東京駅に着く
日曜の21時過ぎなのにたくさん人がいる。雨が強いが、どうやら運休ではないらしい。

発車までの間に、念願の電子マネー「Suica」を購入。秋田では使える店はあるが、カード自体は購入できない(電車にも乗れない)。僕が使っているJR東日本のクレジットカードからスイカにチャージすると、ポイントが多く付くことが分かり、欲しかったのだ。
明日の朝食を買いたいが、さすがにこの時間では構内のお店はコンビニ以外閉まっている。寝台が発車する9番線にはコンビニが1つしかないが、パン類など朝食向けのものはたくさん仕入れてくれていた。そこでサンドイッチを買ってSuica支払い初体験。便利だけど、簡単すぎて“お金を払った(使った)”気分にならないのが怖い。

電車は発車10分少し前に入線。これから乗る「サンライズ出雲」は個室主体の寝台電車で、客車を使ったブルートレインではない。「サンライズ出雲」としては7両編成だが、途中の岡山までは同じ7両編成の高松行き「サンライズ瀬戸」と一緒に走るので、堂々の14両編成。
僕が利用するのは、いちばん室数の多い「B寝台“シングル”」で4度目の乗車。

さて、皆さんは寝台車で眠れるだろうか? 音や振動が苦手な方は多いと思う。
僕としては、機関車が客車を引っ張るブルートレインでは、発車時のガックンという衝撃(運転士の技術もあるが、連結器の構造上避けられない)で目が覚めがちだし、カーテン1枚しか隔てるものがないのも心細いし、古い車両だからあまり乗りたくない。
秋田を通る「あけぼの」には個室の「B寝台“ソロ”」があり、1度乗ったけれど、“窓付きの押し入れ”のようで、着替えに苦労するほど狭く、どこかがカタカタうるさくてほとんど寝られなかった経験がある。

でも、このサンライズは、電車なので連結器が違うからあのガックンはないし、1998年製造で新しい。狭いソロも1両だけあるが、シングルは約1000円高いものの、室内で立てるほど広くて快適。だから僕はサンライズに限っては安眠できていた。
 
これはシングル主体の車両の外観と車内。2階建てで車内の通路は整然とドアが並ぶ。僕が今まで乗ったシングルもこのタイプの車両だった。
でも今回僕が指定された車両は…
違う!
奥の方は窓が小さい。これは「ノビノビ座席」といって、寝台料金不要(指定席特急料金のみ)でウナギの寝床状態で横になれるもの。窓が上下になっているが、2階建てでなく、床は1層で巨大な2段ベッド状になっている。
で、手前に大きな窓があるが、これが僕に割り当てられた部屋。窓の大きさではちょっと優越感、というか7000円多く払ってるんだからね。
その車内
右が僕の部屋。向かいにも同じシングルがある。つまりこの車両は平屋構造で2部屋だけシングルがある。ノビノビ座席側からの通路がカーブしていて直接見えない奥まったような場所で、なんというか隠れ家的な部屋だ。
通路のドアの先は、デッキはなく、いきなり連結部の蛇腹(さらに先はトイレ)。そしてこの車両にはモーターが付いている(他のシングルのある車両にはモーターがない)。嫌な予感…
 
ともかく入室すると、部屋の広さは他の車両のシングルと同じだった。
窓と平行に寝る構造で、荷物や靴を置く場所もある(大型キャリーケースは無理かも)。
室内には鏡、広いテーブル(窓枠にも物を置ける)、NHKFMラジオ、目覚まし時計、コンセント(カミソリ用と表示があるが、携帯やデジカメの充電には使えた。電圧変化等があるかもしれないので自己責任で)、ハンガー、ゴミ袋、プラスチックコップなどがある。もちろん鍵がかかる(外出時は暗証番号を設定する)。300円で使えるシャワー室もある(人数制限あり)。
ベッドの幅は従来の個室でないB寝台と同じ70センチだそうだが、充分だし、転落する危険も低いし、寝たまま大きな窓を独り占めできる。
車内は明るい木目調。「M-Wood1」というミサワホームの木とプラスチックのハイブリッド素材を採用し、デザインも同社が手がけたらしい。従来の寝台車とは違う暖かみのある雰囲気。

22時ちょうどに発車。車掌は出雲・瀬戸に2人ずつ乗務しているが、「個室が多いため、検札に伺うのに時間がかかります」との放送だったもののすぐに来てくれ、着替えて寝る。浴衣というより、ガウン風の寝間着だった。
寝るとこんな感じ
他の車両の2階建ての部屋でも充分な高さだが、この部屋は平屋だけあって天井がとても高い(気がした)。“ソロ”のような“押し入れ感”はない。

さっきの嫌な予感というのは、音と揺れ。走行中はモーターが動いているわけだし、一般的に車両の端では揺れが大きくなる。
寝て落ち着いてみると、案の定。モーターの音は僕には気にならないが、連結部がキュコキュコこすれる音がするし、ふわふわと揺れる。製造時期が近いせいか、今日最初に乗った秋田の普通電車に似た揺れで、横になって寝ると気になってしまう。東海道本線は線路状態がいいから、快適かと思ったが、その分スピードを出す(常時100~120km/h出ているはず)ので結局は変わらないようだ。多くの部屋では感じないが、モーター付き車両の端という特殊環境では、ボロが出てしまったということのようだ。
(全体的に考えれば居住性、速達性ではとてもいい列車だが、)この部屋は「ハズレ」ですな。
利点は隠れ家感、段差なしで入室できること(別に車椅子対応個室はある)、天井の高さ、トイレの近さだけ。初めて寝台やサンライズに乗った人がこの部屋に当たったら、「もう乗らない」と思ってしまうかもしれない(個人差や疲労度にもよるけれど)。
大船?
でも「あけぼの」のソロのカタカタ音よりはマシなので、寝られそうだ。
部屋を真っ暗にして外を眺めるのは不思議な感じ。カーテンを上げてしばし眺める。
横浜と熱海の間くらい、23時前に最後の放送が流れた。沼津辺りまで記憶があったが、次に気づいた時は煌々と灯りが灯る大きな駅に、電車にしてはかなりゆっくりと静かに停車する所。気を遣って運転してくれているようだ。
大きな駅
「太閤通口」「名鉄線」といった表示、ホームに「名代きしめん」があるから名古屋駅だ。時刻は2時20分過ぎ。
時刻表上は1時10分の浜松の次は5時24分の姫路まで停まらないが、途中で運転士の交代や信号の関係でドアを開けずに停車(運転停車)する。他の夜行列車では何十分も停まることがあるが、サンライズは短いようだ。名古屋も数分で発車。

また記憶がなくなるが、掛け布団は毛布だから暑く、室内の冷房(自家用車みたいな風向、オンオフを変えられる吹出口がある)はやや強く、暑かったり寒かったり微妙でたまに起きて調節。
次にはっきりと意識があるのが、やはり運転停車の大阪。4時半頃だったと思うが、もう寝られなさそうな感じ。ぼーっとしていると、徐々に明るくなり、静まり返った神戸市街や明石海峡大橋を通過。
 
6時少し前、兵庫・岡山県境付近だろうか、田園地帯で日の出。まもなく「おはようございます。列車は時刻通りに運行しております。あと20分で岡山到着です」と最初の放送。
お待たせしました。「サンライズエクスプレス」のお顔です
岡山で高松行きと分かれ、この出雲市行きは倉敷から「伯備(はくび)線」に入る。岡山から車内のラウンジで弁当やコーヒーの販売があるが、すぐ売り切れるという情報(実際は分かりません)だし、朝から弁当は重そうで、サンドイッチを買っていた。今まで僕が乗った下りのサンライズは東京に7時に着いてしまい、朝ゆっくりできなかったが、上りは終点までまだ3時間半もあるから、のんびりできる。

伯備線はカーブが多く、スピードが落ちた。ローカル線として造られ新幹線接続のために特急が走るようになったという経緯もあり、秋田の田沢湖線みたいだ。

でも、田沢湖線ほど山深くはなく、高梁(たかはし)川に沿って走り、なかなかいい眺め。山の高さや距離感がどことなく東北とは違ったり、赤い屋根瓦の家が多かったりして、遠くへ来ているんだなと感じた。青空が気持ちよく、ちょっとうとうとしてしまったり。
途中の備中高梁は、古い町並みが残り、「男はつらいよ」の寅さんの妹・さくらの夫・博の出身地という設定で2度、舞台になった場所。いつか降りてみたい。
県境を越えついに鳥取県へ。米子から山陰本線に入り、さらに島根県へ。主要都市や宍道湖を通ると、車掌が観光案内の放送をしてくれる。通常の定期列車では珍しいサービスだが、僕の部屋はあいにく大山(だいせん)も宍道湖も見えない側。

熟睡とは言えなかったが、活動に支障ない程度に寝られたと思う。12時間の乗車を終え、出雲市到着。今回の旅行で訪れる最西端だ。
島根県出雲市の駅は「出雲」と駅名に“市”が付く。地域名としての「出雲」と区別するためだと思うが、たまにある例。
まずは出雲市駅前に日帰り温泉入浴施設があるとのことなので、直行。2004年にできた「出雲駅前温泉らんぷの湯」で600円。茶色く濁った「含鉄-カルシウム・ナトリウム-塩化物泉」でいいお湯だった。木をふんだんに使った広い浴室も気分がよくてさっぱりした。(大きな鍵付きロッカーはないようなので、駅のコインロッカーを使用した方がよさそう)
玄関横の足湯。かなり濃く濁っている
さて、出雲市で見たい所は3か所。出雲文化伝承館、日御碕、そして出雲大社なのだけど、次回へ続きます

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4 コメント

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こんばんはー (miko)
2009-09-07 20:35:25
おかえりなさーい!^^

サンライズ出雲、随分と綺麗な列車ですね。
息子も東京駅で見たーと騒いでいました^^;
(乗り物好きの息子ですからー)
窓が独り占めできるというのもいいですね。
ノビノビ座席というのは、仕切りとかあるのですか?

寝台は旅心を刺激してくれるもの。
そして、taic02さんの旅行記を読んで、
ますます旅心が刺激されましたー
息子も多いに刺激を受けたようで
今後の学生の時にしかできない旅行の参考にしたいと申しております~

あ~遠くへ行きたい。
返信する
こんばんは (taic02)
2009-09-07 20:59:33
おかげさまで無事帰って参りました。
息子さんにも見てもらって、参考にしていただいているようで、うれしいです。

サンライズは目立ちます。2階建てで在来線としては大柄ですし、色合いも独特です。
ノビノビ座席は、窓に頭を向けて寝て、顔の部分だけに仕切り板があります。足の部分はずらりと向こう側まで見えます。肌掛けだけで枕や浴衣はないそうです。
ちらりと覗いたところ、個人的にはちょっと遠慮したいな…という感じでした 若い人は大丈夫でしょうけれどね。
人気があり、予約は早く埋まるようです。

夜行列車は風前の灯火で、我らが「あけぼの」「日本海」も先行きが不安ですが、独特の旅情は捨て難いです。
ぜひ息子さんにも経験してほしいですし、mikoさんもサンライズで山陰や四国の旅はいかがですか? 豪華なA寝台もありますよ!
返信する
たくさんあるね~ (あどれ)
2009-09-09 11:33:41
旅行記すべてが終わってからコメント入れようと思ったけど、どうやらまだまだ続きそうなので、ここで一つ書きますね!

この寝台車って、私が乗ったことのある寝台車よりちょっと豪華な感じがする!やっぱりちょっとお金を出しただけで、他人を気にすることなく、寝台で旅行が出来るなら、これは良いかも!

でもtaicさんは身長があるから、この寝台狭くなかった??
頭がつっかえちゃわない??
返信する
自分でも先が見えませぬ (taic02)
2009-09-09 17:38:08
当分続きますよ。これは…
久々の大旅行だったので、気合いが入ってしまって。たまに他の記事を入れるつもりですが、お付き合いくださいませ。

「サンライズ」は東京と四国・山陰にしか行ってない列車なのです。秋田に来るのは我々より年上の車両ですから。普通のB寝台料金プラス1000円でこれに乗れるんだから、いいでしょ。
ベッドサイズは気にならなかったなー。調べたら長さ196センチ(昔からのB寝台と同じ)だそうです。
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