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中学自習室

2016-07-22 00:31:46 | 秋田のいろいろ
秋田の人の多くは「中学自習室」を知っていることだろう。
自習室といっても部屋の名前ではなく、新聞連載。郷土の新聞「秋田魁新報」に掲載される、中学生向けの問題集のこと。


年度ごとに完結し、毎年4月に始まり、3月の高校入試直前に終わる。初回は勉強の進め方、最後回は入試の心構えなどのガイダンス的な内容。表示される連載回数は、その年度内での回数。

高校入試の5教科が、1回につき1科目掲載。現在は、日曜・祝日を除く毎日、紙面中ほどの「情報ひろば」面に掲載。【24日補足】ちなみに日曜日は、代わりに「本の世界へようこそ」という書籍を紹介する連載(読書面とは別。筆者名記載なし、配信記事?)が掲載。
情報ひろば面には、他に「キップ情報」「二世・易八大のきょうの運勢」「内外の歴史」などが掲載される。次の面は「おくやみ」欄がある総合面(国際記事の総合面とは別)のことが多い。
国語は縦書き、他の4科目は横書きになる
問題の解答は、同じ面の隅(広告よりは上)に、上下反転して掲載される。
昔は、違う日の紙面(次回連載?)に載っていたはず。
「解答はこの面の右下」とあるが、この日は「すぐ下」だ
近年は、スクラップして貼るためのノートを、購読者に無料配布するキャンペーンも実施しているらしい。

中学自習室は、僕が中学生の頃もあった。担任の先生が「魁を購読しているのなら、やるように」とおっしゃっていたが、あまり熱心にやらなかったような記憶がある。
時が経った今、問題を見てみると、たしかにいい問題が揃っている気がする。売っている問題集と遜色ない。
高校入試にどの程度の効果があるかは判断できないが、中学校で習ったことのおさらいには、なかなか有効だと思う。


魁新聞の記事本文は、モトヤというメーカーの「モトヤ新聞明朝」という書体を使っている。見出しの一部ではモリサワ製の書体も見られる。
しかし、中学自習室は問題、解答とも、アドビシステムズの「小塚明朝」のようだ。あまり違和感はないけれど、「き」「さ」のデザインが嫌い(下の写真参照)。

中学自習室に関して、謎が3つある。以下に考察。
1.よそでは?
魁(あるいは秋田)ならではだと思われがちな、教職員の異動名簿や、死亡届が出された人を紹介する「おくやみ」欄、解答速報は、他地域でも掲載するところがあった。
中学自習室はどうだろう。

「中学生新聞」のたぐいの購読者層が限られた新聞は別として、一般紙に学生向けの受験問題が連載されるのは、ネットで調べた限り、他には1つしか見つけられなかった。
「静岡新聞 中学生セミナー」というもの。
6月中旬から全70回連載(ただし1回に2科目掲載)。火・金の朝刊で出題、同日夕刊に解答というスタイル。
出題(パンフレットでは「出題監修」)は、地元に本部があり、広域展開する「秀英予備校」。

新聞に問題が連載されるのは、全国的にも珍しいようだ。※ほかに類似の連載がある新聞をご存知でしたら、教えてください。


2.歴史は?
僕が中学生の時からあったわけだけど、さらにさかのぼって、いつから始まったか。
明確には分からなかった。【下の追記参照】

ネットで調べると、僕より歳上と思われる方々で、自分が中学生の時に使ったという記述が散見された。
2015年のツイッターに「42年前(に使った)」との投稿もあり、それが正しければ1973(昭和48)年には始まっていたことになる。

さらに、秋田県立図書館の「秋田魁新報記事見出し検索」で調べると、1958(昭和33)年2月24日に「高校入試問題の批判 本社自習室出題者にきく」といった見出しがあった。
「自習室」としかないが、中学自習室と考えられる。おそらく、中学自習室の出題者が、その年の高校入試問題についてコメントしたものではないだろうか。「批判」より「批評」が適切だと思うけど、当時の感覚ではそうなのか、あるいはデータベース作成時の誤入力か。(近年では、中学校や学習塾の先生がコメントしている)
したがって、60年近く前から存在していた可能性がある。
【2017年1月14日追記】
2017年1月14日付秋田魁新報の読者投稿欄「声の十字路」に、茨城県牛久市の70歳の男性からの「中学自習室の思い出」という投稿が掲載された。
旧・大曲市で生まれ育った人で、2016年末に魁の紙面を目にする機会があり、そこに中学自習室欄を見つけて「思わず「あった!」と声が出た。」
「高校受験でお世話になった当時のことが思い出された。」という内容。
中学3年生の時に解いていたとのことなので、55~56年前である1960~1961年度の時点で既に連載が始まっていたことになる。(以上追記)
秋田魁新報社では、1956年から1993年まで「中学生学力テスト(通称・さきがけテスト)」という、中学3年生を対象にした模擬試験を実施していた。もしかしたらそれと連動して始まったのかもしれない。

魁の1面コラム「北斗星」は、1980年に始まった(※)から、それよりも長い歴史があることになり、有数の長期連載だろう。
※2015年元日の特集紙面より。ただし、1947年のごく短期間だけ「北斗星」というコラムが存在したとのこと。

【2018年4月13日追記】2018年4月の連載開始に当たっての広告に「連載66年。」とのフレーズがあった。したがって、1951年頃から続いていることになる。


3.出題者は?
1958年は出題者が表に出ていたらしいが、現在は誰なのか不明。(もしかしたら初回や最終回には書いてある??【2017年度時点では書いていなかった】)
現役の学校の先生だといろいろ面倒なことになりそうだし、静岡新聞のように学習塾の出題ならその名前を出して宣伝するだろうし、新聞社の記者の仕事でもなさそう。学校の先生のOBとかだろうか。

出題者の素性は分からないにしても、その個性がにじみ出ていそうなのが、国語の漢字の問題である。
6月24日の第66回(国語の14回)の書き取りでは、
エイガは劇場で見る」「映画「地球ボウエイ軍」」
7月19日の第86回(国語の18回)の読みでは、
「ドラマ「孤独のグルメ」」 ※小塚明朝の「き」「さ」の形に注目
なんか映画やドラマが好きそう。ちなみに、「地球防衛軍」は1957年の映画。【25日追記】「孤独のグルメ」は漫画が原作なのに、あえて「ドラマ」と前置きしている。

ツイッターを検索すると、中学自習室の漢字問題のユニークさ(?)に気づいた投稿がいくつかあった。それによれば、
2015年には「人気ゲーム「艦隊これくしょん」」、2014年には「「ようかいタイソウ第一」を踊ってみる」「「海賊王に、俺はなる!」と叫ぶ」がそれぞれ出題されていた。
2016年度と同一の出題者なのかは分からないが、趣味がやや違っている?


(映画は古いから別として、)問題を解く中学生に身近なアニメやゲームを題材にして、とっつきやすくしたということかもしれない。
だけど、それだと、特に読みの場合、前後に知っている作品名やフレーズが来ると、雰囲気で推測できてしまう。
試験本番では、運も実力のうちだから、そういう問題に遭遇したらラッキーだけど、日頃の練習問題を運で解いたら、練習にならない。

ついでに言わせてもらえば、「タイガドラマの舞台」「大学の集中コウギ」などもいい問題ではないと思う。
「大河ドラマ」を知らない中学生がいるかもしれないし、NHKの番組名(番組枠名)を中学生が知っている必要もない。
休暇中など短期間にまとめて授業を行う「集中講義」なんか、大学以外では使わない用語ではないだろうか。僕は大学に入るまで知らなかった。
まあ、下に答えがあるのだし、分からなきゃ調べて覚えれば、常識・雑学として身について悪くないでしょうけど。

今後の漢字の問題に注目です。
【随時追記】
7月25日91回(国語19回)は「世界のシャソウから」
ところが、この後は、ごく普通の出題ばかり。どういうわけか取り上げるべきものはなくなってしまった。
9月17日136回(国語28回)は「焼きのおいしい季節」「揚げうどん」「好物は天丼だ」「乾麺をゆでる」と、20問中5問が食べ物、しかも炭水化物系に偏った出題。
9月26日141回(国語29回)は「漫画「曇天に笑う」」。知らなかったけどそういう作品があるそうだが、雑誌連載は2011~2013年、2014年にアニメ化されたが秋田では放映されていない。中学生が知っているだろうか(知らないほうが問題としてはいいけど)。我々の世代で「曇天」といえば、たまの「さよなら人類」の歌詞(柳原幼一郎作詞・作曲)だけど、こちらは正式には「どん天模様の空の下」とひらがな表記。
10月1日146回(国語30回)は「海賊王を目指す男」「賢者の石」「特撮映画の傑作」と、直接的でないが、映像作品を連想させるもの。海賊王は2014年(?)以来の再出題。
11月2日171回(国語35回)では「タイガドラマの舞台」が再び出題。
11月29日191回(国語39回)では「翼君と君の黄金コンビ」。出典は漫画「キャプテン翼」。僕たちが小学生だった1980年代にアニメ化されブームとなり、近年も新作が作られてはいるようだが、今の中学生は知らないかもしれない。だから問題としては問題ないのかもしれないけれど、人名(姓)を出題するというのは… 「岬めぐりのバス(by山本コータロー)」でいいんじゃないの?
僕はキャプテン翼を熱心に見ていないのでよく知らなかったが、「黄金コンビ」ではなく「ゴールデンコンビ」が作中の公式な表記だったようだ。(別に翼・岬・葵の「黄金トリオ」があった)
12月17日206回(国語42回)では「第拾弐話「奇跡の価値は」」と「第十三話「サイカイ、母よ」」が出題。
何かのシリーズもののサブタイトルっぽい。12話と13話で連続しているかに思えるが、拾弐と十三と漢数字は揃っていない。
調べると、前者は「新世紀エヴァンゲリオン」、後者は「機動戦士ガンダム」のテレビアニメ版の話数とサブタイトルだった。1979年と1995年放送。う~ん…
2017年1月5日216回(国語44回)では「第二話「侵略者を撃て」」。
1966年放送「ウルトラマン」のサブタイトル(バルタン星人が登場する回らしい)だった。12月17日よりさらに古い作品になり、幅広い作品に詳しそう。出題者は相当なマニアなんだろうか?
2017年2月10日246回(国語50回)では「ゾクヘン映画に傑作なし」。

※2017年4月から、魁の紙面全体がリニューアルされたが、中学自習室は2016年度と変わらず継続。2016年度最終回では入試の心構え、2017年度初回ではガイダンス(+最初の出題)が掲載されたが、問題作成者の正体などをうかがわせる記述はなし。
2017年度は、国語以外の教科も含めて、出題の形式が2016年度までと少し変わった感じ。漢字の問題は、そっけなくなったと思っていた。あるいは出題者が変わったのかとも感じた。
しかし、7月5日の76回・国語16回では、「第二話「侵略者を撃て」」が再び出題! よほどウルトラマンがお好きなようで…
2017年7月31日96回(国語20回)では「来年のタイガドラマ」。ちなみに2018年の大河ドラマは「西郷(せご)どん」。
2017年8月18日111回(国語23回)では「第九話「瞬間、心、重ねて」」。再び「新世紀エヴァンゲリオン」のサブタイトルから出題された。
2017年8月30日121回(国語25回)では「SF小説「夏への」」。1956年アメリカの作品。「松田聖子「夏の扉」」じゃダメなんでしょうか。
2017年9月12日131回(国語27回)では「長江流れて六十幾里(いくり)」。「幾里」には「いくり」とルビを振っている。これは、県立秋田高等学校の校歌の、雄物川のことを歌った一節。
2017年10月2日146回(国語30回)では「歌集「悲しき玩具」」、「小説「塔上の奇術師」」。ちなみに作者は石川啄木と江戸川乱歩。
その後、しばらくこの手の出題がなく、
2018年1月4日216回(国語44回)では、「ドラマ「孤独のグルメ」」が再び出題、さらに「怪獣王ゴジラ」。これは映画より後の漫画の作品名らしい。

※2019年4月からは、解答だけでなく解説も掲載するとのこと。続きはこちら
【2021年5月12日追記】1974年度の状況について、コメントで教えていただいた。
入試科目が3教科時代だったので、自習室も3科目。
秋田放送ラジオでは、連動した「ラジオ講座」を朝に放送していて、秋田市内の中学校教員が出演していたとのこと。
コメント (12)
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