夢幻泡影

「ゆめの世にかつもどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに」

狸 3

2006年04月30日 12時25分52秒 |  河童、狸、狐

    さてさて、風任せ、波任せで船出した狸も三回目を迎えます。
    果たしてどこへ辿りつくのやら、たどり着いたときには船頭の私は生きているのかはたまた白骨死体でサルガッソウの帆船状態になっているのやら、神のみぞ知るでございますけど、、
    まだ書いているということは白骨にはなっていない、あるいはゾンビになっているのかな。それすら定かではなくなってきておりますよ。


メスって馬鹿だからって言葉を聞いて、いくら妖怪狸とはいえ、狸から人間が馬鹿にされたのかなってあまりいい気持ちではないなあと思っていると、狸はボソッと
「まあな、狸のメスだって、力があったり、頭がよかったり、俺のようにエリートだったりするのに魅かれるからな。メスの考え方なんじゃないかな」という。
「そりゃな、人間だって同じだよ。
ただ人間の場合はもっと社会も環境も複雑になっているから、力や金の象徴が車だったりとちょっとストレートにでてこない。
おまけに人間の場合は妊娠して、子供を育て上げるまで他の動物とは比べ物にならないくらいに長くて、一生モンだからメスの生き方はもっと深刻なんだ。
それに人間の場合はメスでも仕事をするのが増えてきているから、仕事のために相手を選んだりするのもいるし。
一緒に寝たからって子供ができないようなやりかたも進歩してきたしな。だから一生をともにする相手でなくても、たまたま好きになったり、力を貸してくれそうだったりしたらその相手と寝る事だってできるようになってきたからな。
メスはそれを自由になったって言っているけど。

でもそれ以上に物事を複雑にしているのが、この頭だな。
今でも金とか、目的や、利益で相手を選ぶってのが、不純だって、どこかで誰かが決めたみたいで、心の底では相手の金や力に魅力を感じても、自分では決してそれに気がつかないし、そうは思わない。あくまで純粋に相手を好きになったからって感じようとするんだよな。

相手の子供を生み、育てるメスとしては、先も見えない相手と、ただただ相手が好きだからで一緒になるのは失格だろうし、
自分の本当の気持ちの奥底が判らなくて、純粋に相手を好きだと思うのはもっとバカだろうな。
でも、今の社会では、自分の気持ちの奥底が判って、相手の金に魅かれたなんてこうげんするのはそれ以上に馬鹿。
本当に頭のいいメスは、自分の気持ちの奥底が判ってもそれを自分の目からは蓋をすることができる子だな」

「若いのに随分と辛らつじゃないか」古狸はにやにや笑いながらいう。
「そりゃ、お前さんみたいな妖怪狸からみれば、私は若造だろうけど、でも人間にして見れば結構歳を食ってるからね。これくらいは判るよ。
それに俺はオスだから、メスのことだけを言っているけど、オスだって同じだよ、ちっとも変らない。だからこそ人間が絶滅しないで生きてこれたんだからね」

それにしてもって古狸に聞いた。
「お前の言葉は俺にも、お前の連れ合いにも判るけど、お前の連れ合いの言葉は俺には判らないし、俺の言葉もお前の連れ合いには判ってないようじゃないか」
「それはお前と俺がテレパシーで話しているからだよ。お前が河童と会ったときにはテレパシーで話しただろう。お前は人間にしては珍しくその才能があるんだよ」

そう言われて、俺は特別な才能があるのかって喜んだら、
「もともと動物にはその才能はあるんだ。人間は理性を発達させていく間に逆にそれを失ってしまったんだ。理性的に理解できないものとしてな。だからお前は人間より動物に近いんだ」って言われてしまった。

「そう言えば河童と話をしているときにはテレパシーで話したけど、美登里とは普通に言葉で話しているよな」
「それは美登里って言うお前の河童の彼女が賢いからだよ。
人間の世界に住んで、お前とテレパシーで話していたら変に思われるだろう。
それにそれ以上にお前と彼女がテレパシーで繋がれば、隠し事が難しくなる。岬と東京に離れててもテレパシーは距離には関係がないんだから」
「でもテレパシーって頭で考えることがそのまま相手に伝わるんだろう」私は河童の長老に始めてあったときの失敗を思いだしながら聞いてみた。
「いや、そうじゃない。テレパシーも言葉と同じだよ。頭で考えてそれが口から出て行く。テレバシーも頭で考えることと発信することは別なんだ。ただお前がテレパシーに慣れていないので、その辺の区別がつかないだけだよ」
「へえ、じゃテレパシーってどこから出るんだ」
「額の真ん中にその発信と受信のモジュールがあるんだ」
「ああ、お釈迦様のあれね」
「そうだ、その能力があってちゃんと使いこなせる人にはそれが判るんだ。お前もテレパシーを使いこなせればだんだん判ってくるよ」
「そうか、ならお前たちが家のそばに来れば、俺もお前からテレパシーの使い方を教えてもらえるな」
「まあ、お前と話すときには使わざるを得ないから慣れてくるだろうな。でも慣れと判ることは違うけどな。お前が頭がよければ判るかもな」

狸に馬鹿にされるのはあまり気持ちのいいものではないけど、でも相手は何百年も経た妖怪狸、ここはしょうがないかと諦めながら、
「それならそろそろ家まで出発しようか」と狸を促す。




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