夢幻泡影

「ゆめの世にかつもどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに」

狐 その2

2006年07月03日 00時34分37秒 |  河童、狸、狐
いくら頭の中で外の2匹の狐のイメージが湧いているとはいっても、やはりそこはしがない人間にしか過ぎない私は、自分の目で確かめなければというので、突っ掛けを履いて外にでてみた。
いるいる。以前狸が住んでいたところに、2匹の若い狐がいた。
一匹はもう一匹の首を甘噛みしながらこちらを不敵な目で見ている。
もう一匹はそれよりちょっと小柄な狐で、多分これが雌狐なんだろう、トロンとした目で上の空という感じ。
まったく最近の若い奴らは人目を気にするってことを知らない。
いつ産まれるんだって聞くと、来月くらいにはとの答え。
まあ、狐がいようが、狸がいようが、こちらは関係がないので、好きにすればっていうと、ちょっと怒ったような顔をして、こんなところに好きで来ようとは思っていないんだという。
じゃ、何故来るんだと聞くと、何となく言葉を濁しながらも、私の背後霊に関係があるようなことを言う。
私のテレパシーの能力がどうも背後霊の注目を浴びているようで、この狐はその状況を背後霊に伝えたり、背後霊のメッセージをこちらに流したりすることを言い付かったようだ。
流すってと聞くと、狐が神のメッセージを聞いて、こちらに伝えるということはなくて、狐は一種のリレーステーションで、背後霊のシグナルをこちら向けに増幅して発信するだけなんだそうだ。
じゃ、神のお使いなんて大したことないじゃないか、何故神様は直接シグナルをこちらに流し込まないのだろうというと、いろいろと複雑な訳があるからと歯切れ悪く答えた。
それにお前がテレパシーをさらに開発しようとするのなら、狸の後を私が補完することを頼まれているとも言っていた。
でも、それ以前にテレパシーそのものの事もきちんと知らないと、とんでもないことになるから、その辺を背後霊が心配しているのだとのこと。
なら、この若いのは俺の先生じゃないか、と改めて二匹を見直した。

河童や狸たちは私にこれ以上テレパシーの能力を与えないようにしようとは決めたのだけど、背後霊はそれとはちょっと違う考えを持っているようだ。
それにしても若いな。狸はもう古狸で、どこからみても妖怪みたいな存在だったけど。この狐はまだ子供、子供しているようだ。
狸は年を取っていくうちにだんだんとその妖怪の力を身ににつけていくらしいけど、こんなに若くてこいつら大丈夫なんだろうか。
そんなことを思っていると、狐は、狸なんかと一緒にするなという。狸は物凄く古くなるとたまたま妖術が身についてくる。付喪神みたいなもの。
付喪神というのは、道具なんかでも百年も二百年もたつと、人間の怨念が道具に移って、命が生まれるのだそうだ。だから妖怪狸のように長く生きてくると始めてこの種の神の力がついてくる。
でも狐は最初から神の使いとしての役割を担った選ばれた家系があって、その家系の狐は生まれたときから妖力をもっているのだそうだ。
おまけに、この種の狐は、それまでの先祖が身につけた知識や能力が最初から全部引き継いで生まれるらしい。だから子狐でも知識は大人以上だからということだった。
この二匹はそのエリート家系の狐らしい。両方の言葉も、考えている事もこちらに伝わってくるし、こちらの思っている事も両方に伝わっているみたい。

雌狐が自分のお腹をみて、雄をみた。
雄はちょっと慌てたように、お腹の子供が動いているんだ、巣穴もちゃんとしなきゃならないし、お産の準備もしなければいけないんだ。
人間だって出産の休暇が男にもあるのに、よりによって何でこんな時期にお前の面倒を見るように言われなきゃいけないんだってぼやいている。
河童は最初から妖力を持っているので、不老不死の力を持っているし、狸は妖怪狸になるとやはりその力を持つらしい。でも狐は、そのエリート家系に生まれても寿命普通の狐を変わらないのだそうだ。
ただ、妖力を持ったものはどの種類でも出産することが大変珍しいらしい。
不老不死だと死なないのだからむやみやたらに子供ができればあっと言う間に増えすぎてしまうからそれが自然なんだろうけど、狐もなぜか子供ができにくいのだという。だから彼女の出産はとても大変なことなんだと話をして、巣穴にもぐりこんでいった。
また、新しい経験の日が巡ってきた。


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