夢幻泡影

「ゆめの世にかつもどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに」

狸 6

2006年05月01日 20時05分51秒 |  河童、狸、狐
狸 6


昨日の寝しなのメッセージで何となく気持ちいい目覚めができた。
ただのコギャルかと思ってたけど、みんないろいろ考えることがあるんだね。

さて今日は念願のテレパシー教室の始まり始まり。


目を瞑って、額の真ん中に意識を集中しろ。お前はすでにテレパシーを感じられるのだから、意識の中心を右から左、上から下へと動かしてみて、どこかで何か感じるところがあると思うからそこの位置を覚えろ。これが狸師匠に最初に言われたこと。
朝からずっとそれをやっているけど、何も感じないじゃないか。
古狸は暖かい太陽の下で、ワイフ狸に毛繕いさせて目を細めてうとうとしている。
「ちぇ」すぐにでも強力なテレパシーの能力が得られるのかと思っていたから、改善の兆しもない努力をするのがあほらしくなってきた。

古狸はそんな私を見て、へらへらと笑いながら、なら自分の思っていることを額の中心から吐き出してみろっていう。
そんなら、ってことで「たんたん狸の。。。。」って頭に浮かべたら、ワイフ狸が身をよじって笑い出した。
古狸はしぶい顔をして「不謹慎な」って言ったけど、目は笑っていない。それどころかたいそう驚いた顔をしている。
「どうしたんだ」って聞くと、考えられないくらい凄いパワーでテレパシーが出ているという。自分にはその力が出たことさえ感じられないのだけど、テレパシーの能力のないワイフ狸にすら私の思ったことが通じたのだから、そうなんだと思わざるを得なかった。

そんなパワーがでるんだったら、美登里にも伝わるかなって、美登里に伝えるメッセージが何かあるか考えた。うん、いいのがある。
私はそのイメージを頭に浮かべ、美登里の顔を思い出そうとした。
「ぎゃー、止めて止めて」って美登里のあせった大声が聞こえる。
「これ貴方なの。どうしたの。貴方のメッセージは今まで弱くって薄いブルーの色をしていたのに、今のは凄く強力でピンクよ。
それに私のおっぱいなんか宣伝しないでよ。恥ずかしくって人に会えなくなるじゃない」
古狸はそれでもかなり深刻な顔をして、美登里と話を始めた。

「こいつ以前からこの手の力を持っていただろうか」
「そうね、前にもいろいろあったことを話してくれたし、どうかしたときに凄い力をふっと感じさせるときがあったわ。でも力を閉ざせないし、コントロールできないから、何も教えてはいない」
「物凄い可能性を感じるし、テレパシー以外にも、能力があるみたいだな。もしかしたらとんでもない相手に教えようとしているかもしれない。どうしようか。俺一人では決められないかもしれない」
「手に負えなくなったら、私のおじいちゃんにも手伝わせて頂戴。おじいちゃんも彼の力には気がついていたと思うから、言えばすぐにわかるわ」
「判った」

私が何がテレパシー以外の能力だって聞くと、古狸は吃驚したような顔をして、今の話が判ったのかという。
「はっきり聞こえたよ」って答えると、
「今の話はお前には聞こえないようにブロックして話していたのだけど、たった額の中心に意識を集めるって言ったあの言葉だけでお前の力が鋭敏になってきている」って答えた。
額の中心には目やテレパシーの送受信のアンテナだけでなく、さまざまな能力の中心になっているところで、どうも俺にはその力がありそうだという。

「おれは少し怖くなってきた。河童の長老や狐のボスと話をするからレッスンはちょっと待ってくれ」という。
まあ、師匠がそういうのなら、弟子としては無理強いはできないなって思いながら、今日もレッスンは中断かと思っていると、上から郵便屋が来るのが見えた。
「郵便屋が来るぞ」っていうと狸たちは家の影に隠れた。
郵便を受け取り、配達夫が帰ると、古狸が出てきて、お前には郵便屋が見えたのかと聞く。「うん」と答えると、「お前はずっと目をつぶっていただろう」って聞くから、そうだ目を瞑れというから、瞑ってたなと今になってあれっと思う。

第三の目が開いたんだ。だから目を瞑っていても見えたんだって、古狸はちょっと興奮気味に教えてくれる。それがどうしたことなのかよく判らないけど、「そうなんだ」って答えると、そのそっけなさにちょっといらいらした様子だった。
いずれにしろ、皆と相談する。それまではあまりテレパシーで交信することを考えるな。今物凄く強力になっているから、お前の考えていることが誰にでも判ると思う。テレパシーをコントロールする力をつけることがまず必要だっていう。「判った」って答えてふと上を見ると、今度は犬が入ってきた。

「おい、犬が来た」っていうと古狸は慌てて、
「犬は来ないって言ってたじゃないか」っていうから、
「来たもんはしょうがないじゃないか」って答えるしかない。

犬は上から降りてきて、ちょうど狸が昨日作った巣のあたりで地面の匂いを嗅ぎ、狸の巣の方へ歩いていく。
ワイフ狸が悲鳴を上げる。「私の巣」
古狸はぐ「ぐー」ってうなり声を上げながら、犬の方へと走りよる。
犬は、狸と私を見て「うー」とうなり声を上げるが、声が小さく、目には哀願するような光がある。
ワイフ狸がふっと犬の方へ行く。
古狸は慌てて止めようとするが、ワイフ狸は犬の鼻先に行って、「くー」と鳴く。
犬も「くー」と鳴いて、鼻を狸の鼻に近づける。

ワイフ狸は、こちらを振り返り、この犬はもうすぐお産する。お腹も空いているし、体も弱っている。命も危ないかもしれないという。
「だがそこは、俺たちの巣だ」って古狸がいうと
「子犬が産まれるのよ、そんなことを言っている場合じゃないでしょう」ってぴしゃりと答える。
「私のお産までにはもうちょっとあるは。私たちの巣はこの下の家にもう一度作りなおせばいいわ。そして貴方、水と食べ物を持ってきてあげて。とにかく力をつけなきゃ、死んじゃう」ワイフ狸の剣幕に、古狸と私は言われたとおりのことをするしかなかった。
母親は強い。



                            05/01/2006 00:56:57


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