夢幻泡影

「ゆめの世にかつもどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに」

なんとなく芹と聞くこそあわれなれ摘みけん人の心知られて 西行

2007年03月02日 10時55分15秒 |  気になる詩、言葉
トップの画像は、去年の暮れに付け合せの野菜として買ってきた芹の残りを水につけて育て、土に戻したもの。
同じ水耕でもデュランタライムなどはまだ寒いので部屋の中だけど、こちらは根が出始めたらすぐに外に出されて元気に育っている。

「なんとなく芹と聞くこそあわれなれ
  摘みけん人の心知られて」
         山家集 西行

芹を摘むっていうのは、若い女性が野遊びをし、芹を摘んでいるというイメージよりも、むしろ
「芹つみし昔の人もわがごとや
  心に物はかなはざりけむ」
という詩で表されるような、叶わぬ思いといった感じが強かったようだ。

昔々、後宮で庭の掃除をしていた男が后が芹を召し上がっているのをみて一目ぼれしてしまう。でも卑しい身分の自分を思って、簾の外に毎朝、芹を置いておいた。そしてもう一度お顔を見たいという夢も叶わぬまま、その男は恋病で死んでいったという。(俊頼髄脳 源俊頼) 謡曲の恋重荷や綾鼓の原型だといわれているらしい。

西行あたりの知識人の間では芹とか芹を摘むというのはそんなエピソードをすぐに思い出させる存在だったのだろう。
そして人の噂に上るからって言われて身を引いたやんごとない恋人(待賢門院璋子)への思慕を重ねていたのでしょうね。
「面影の忘らるまじき別れかな
  名残を人の月にとどめて」
        西行
 


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