詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

安藤元雄『「悪の華」を読む』

2018-08-12 19:34:16 | 詩集
安藤元雄『「悪の華」を読む』(水声社、2018年05月20日発行)

 安藤元雄『「悪の華」を読む』はタイトル通り、安藤がボードレールの『悪の華』をどう読んできたかを書いている。繊細な内容なので、私にはわからないことがたくさんある。
 第四章は「旅への《さそい》」。「旅へのさそい」をとりあげ、「微妙な異同」について書いている。「異同」はいくつかある。感嘆符が追加され、「ティレ(棒線)」が省かれる。それを取り上げて、安藤は、こう言う。

詩人自身が、一度は完成形として手放した作品を、制作当時とはいくぶん異なった角度から、あらたな相のもとに捉え直そうとする、微妙な意図の変化が感じられないだろうか。

 もちろん「意図の変化」があるから変えたのだろう。でもその「微妙」が、日本語でしか読むことのできない私には分からない。
 104ページには「文法用語」も出てくる。「条件法」「命令法」「直説法現在」などである。
 どんな国語でも、そのことばを離している人には「無意識」であっても、外国人には「意識」しないととらえることができないことばの動かし方がある。「意識化」するために文法用語があるのだと思うけれど、私はフランス語を知らないので、とても困ってしまった。
 安藤の書いていることは「正しい」のだろうと思うが、その「正しさ」を納得できない。
 音について書かれた部分も同じである。私はフランス語の音になじんでいない。ボードレールをフランス語で読んだこともない。そうすると、安藤の書いていることは「正しい」のだと思うけれど、「正しさ」を納得できない。
 これが、つらい。
 たぶんフランス語を知らない人にもわかるように、「正しい」分析をいくつも重ねる。「正しさ」が重なれば、それだけ論が「正しい」ものになっていく。
 しかし、これが「納得」に変わることはない。

 きっと「納得」というのは、違う反応なのだろう。「正しさ」にはこだわらないのだろう。もしかすると「間違っている」部分があるからこそ納得するということがあるのかもしれない。「正しさ」よりも、ぐいとひっぱっていく力が必要なのかもしれない。「正しさ」よりも、「ここが好き」という感情の動きの方が「納得」へと導くのだと思う。
 安藤もボードレールが好きなのだろうけれど、「好き」よりも「正しく」読んでいるという、その「正しい」が前面に出てくるので、フランス語を読めない私(フランス語でボードレールを読んだことのない私)は、なんとなく身を引いてしまう。
 安藤は学者なので、その「正しさ」は完結している。完結していて、矛盾がないということは、読んでいて「わかった」気になるが、だからこそ、困ってしまう。
 読んでいて、どきどきしない。
 この本を読みながら、どきどき、わくわくするためにはフランス語でボードレールを読めるようにならないといけないだろうなあ、と思う。
 「専門家」向きの一冊といえる。



*

評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』を発行しました。190ページ。
谷川俊太郎の『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして2000円(送料、別途250円)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。


「詩はどこにあるか」5、6月の詩の批評を一冊にまとめました。
詩はどこにあるか5、6月号注文


オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。



以下の本もオンデマンドで発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977




問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
『悪の華』を読む (水声文庫)
クリエーター情報なし
水声社

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 高橋睦郎『つい昨日のこと』... | トップ | 「詩はどこにあるか」7月号発... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

詩集」カテゴリの最新記事