詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

高柳誠『フランチェスカのスカート』(23)

2021-08-08 16:07:39 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

高柳誠『フランチェスカのスカート』(23)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「アガーテ」。アガーテとフランチェスカは、どう違うか。アガーテは、「あなたのこと、弟みたいに思えることがあるの。だから心配してるんじゃないの。」と言う。

                      「余計なお世話だ。姉
  さんなんかいらない!」そう言ってかけだす。怒りよりもやり場の
  ないもどかしさがこみ上げる。姉さんなんて…。なぜか、わからず、
  アガーテのことが急に憎らしくなってくる。

 最後の「憎らしい」は「愛しい」の裏返しである。それに気づいて、もどかしくなる。これは「恋愛」の定型である。高柳のことばの動きの一つの特徴に「定型」の安定感がある。

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高柳誠『フランチェスカのスカート』(22)

2021-08-05 10:22:37 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

高柳誠『フランチェスカのスカート』(22)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「オルガン」。

                       オルガンは、ぼくの
  胸をどこまでもふくらませ、やがて星空と一体化させる。星空と胸
  との究極的一致。オルガンの一音一音は、予想もしなかった音を響
  かせ、それぞれが自分の意思をもつように自由にふるまう。それで
  いて、全体できちんと秩序だった統制が取れていて、いつのまにか
  そこに大きな建築が出現する。

 「オルガン」「オルガンの一音一音」を「ことば」と読み替えれば、それはそのまま高柳の書いている詩になる。ぼくの胸と星空(宇宙/世界)の一体化。究極的一致。そこではことばが自由にふるまい、大きな「建築(言語空間)」をつくる。
 だが、この「建築」は、内部と外部が一転する。

              豊かさは内側へ内側へと運動していき、
  ついにその豊かさをかかえきれなくなった星空が、一挙に爆発して
  無限大に拡散する

 無限大に拡散するものとしての、「言語空間」の爆発。それが「一挙に」ということが、高柳には必要なことなのだ。「爆発」というのはいつでも「一挙に」に起きる。ゆっくり、時間をかけて爆発するということは、ありえない。だから「一挙に」は論理的には不必要なことばであるけれど、「一挙に」がなければ、高柳は「爆発」ということばを書けないだろう。
 「一挙に」のなかには、内部の充実と爆発の拡散の「究極的一致」がある。

 

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高柳誠『フランチェスカのスカート』(21)

2021-08-01 16:25:46 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

 

高柳誠『フランチェスカのスカート』(21)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「風の声」。高柳の詩を読むための手がかりになるようなことばがたくさん出てくる。たとえば、

     一つが途絶えたかと思うと、また別の一つが湧きおこるとい
  う具合に、風はたえず死と再生を繰り返しながら世界中を吹きわた
  って、その命が涸れることはない。

 「死と再生」「繰り返し」。これは「多にして一という特性」とも言いなおされていく。そして、空間と時間を超えるというか、融合するのだが、次の部分で、私は、これは高柳の詩の中ではじめて出てきたのではないかと驚いたことばに出会う。

                     この町の路地裏には、地
  磁気の影響のせいか、こうした縦横に走る風の道が交差して、ひめ
  やかな風が吹き溜まり交流する場所がある。ここでは、世界の本質
  を直に学ぶことが可能だ。

 「直に」には「じかに」。ルビがふってある。私は高柳の詩を繰り返し読んでいるわけではないので断言はできないが、この「直に」にびっくりした。
 たとえば「縦横」は「交差」、あるいは「交流」と言いなおされているが、この「直に」は言いなおされない。いや、言いなおされるが、それは「直に」とは相いれないものを描くことで説明されている。視力に頼ってはいけない。風の声を聴き分ける耳をもつことが必要だ、と。そして、最終的に、こう言いなおされる。

                         自らを虚心にし、
  その身体を共鳴装置と化したうえで、体幹を共振させ魂をゆるがす
  風の声を選べばよい。

 「共振」が「直に」なのである。「振動」を「一つ」にする。ただし「共振」は一体とは違うかもしれない。違う振動によって、新しい和音が生まれるということがある。そして、高柳の詩というのは、実は、この「共振による和音」でできているのだが、その「共振の原理」を「直に」に置いていることがわかる。
 この考えは、私には、矛盾に感じられる。しかし、矛盾しているからこそ、「直に」には私の知らない何か、高柳にしかわからない必然性がある。
 「世界の本質を学ぶ」ではなく、世界の本質を「直に」学ぶ、と言わなければならない何かがある。
 私は実は、高柳が「直に」を求めている詩人だと考えたことがなかった。だから、とても驚いた。

 


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高柳誠『フランチェスカのスカート』(20)

2021-07-29 09:51:46 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

高柳誠『フランチェスカのスカート』(20)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「二重性」。指で星をなぞっていくと、

  動物のかたちが夜空にとつぜん広がって、それぞれの物語をかたり
  始める。

 「とつぜん」は学校文法的には「かたちが広がる」の「広がる」にかかるのだが、私は「物語をかたり始める」の「かたる」にかかっていると読む。高柳のことばは、先へ先へと進む。その推進力のようなものが「とつぜん」であり、それは「文法」を飛び越えて先へ進む。
 「二重星」と「にじゅうぼし」と読むのだろうか。「にじゅうせい」と読むと「二重性」になり、それは「とつぜん」の動きを説明しているようにも見える。「ひろがる」と「かたる」の二重のことばを突き動かす力をもっている。

                 死んだら、あの二重星のそばに昇
  っていけるのだろうか。それなら死ぬのもこわくないのだが、なに
  もわからなくなって広い空ではぐれてしまったら、そう思うと…、
  こわい。

 「二重」の反対のことばは「単独」というよりも「はぐれる」だろう。ことばは「二重」の意味を持つことで、緊密な世界をつくりあげる。ことばにしかたどりつけない世界をつくりあげる。しかし、二重を失うと、どうなるのか。
 「こわい」と、高柳は、めずらしく「心情」を語っている。
 この作品は、そこがとても印象的だ。

 


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高柳誠『フランチェスカのスカート』(19)

2021-07-28 10:28:37 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

高柳誠『フランチェスカのスカート』(19)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「薬局」。この作品にも珍しく固有名詞が出てくる。「アガーテ」。少女ではなくアガーテと固有名詞にしたのはなぜだろう。「マックス」が「ぼく」の「鏡」(あるいは双子)であるように、アガーテは「フランチェスカ」の鏡だろう。もちろん、アガーテとフランチェスカは似ていない。似ていないからこそ、フランチェスカのなかにもアガーテが隠れていると読みたい。
 アガーテがフランチェスカを内部に閉じ込めているのか、フランチェスカの内部にアガーテが生きているのか、それは、このあとの詩の中でわかるだろう。

         ときによって大きく色を変える瞳をもつアガーテの
  世界は、どのようにその内部に広がっているのだろう。自分の感情
  のままに変化するのだろうか。あるいは、アガーテ固有のものなど
  なく、その時々の世界の本質をただそのままに映し出しているに過
  ぎないのだろうか。

 これはまた、「ぼく」にも「マックス」にも「フランチェスカ」にも言えることかもしれない。
 本質は個人(固有名詞)のなかにあるのか、それともそれは単に世界の本質を映し出した鏡なのか。「内部」と「世界(外部)」をつなぐものは「瞳」であり、「ことば」であるだろう。

 

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高柳誠『フランチェスカのスカート』(17)

2021-07-26 16:05:30 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

 

高柳誠『フランチェスカのスカート』(17)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「本」。この作品には、注釈をつけたくなることばがたくさんある。すべてのことばに注釈をつけたくなる。つまり「高柳語」がぎっしりとつまっている。
 本を「物体」と呼んだ後、こう書いている。

              印刷された文字を読み進めたとたん、一
  挙に別の世界が広がる。そんなふしぎな世界を、どうやってこんな
  小さな箱に閉じ込めていられるのだろう。

 「物体」は「箱」と言いなおされている。そして、そう呼びなおすとき「閉じ込める」という動詞がつかわれている。この「閉じ込める」は重要なことばである。高柳は、ことばで「高柳ワールド」を「閉じ込める」。
 そして、それは本を「開く」ときに広がるのだが、そこにはもうひとつ別の動きがある。

             紙に囚われているはずのそうした文字たち
  が、いつのまにか立ち上がって自由に動き、互いに連動しあって独
  自の世界を織り上げていく。

 「囚われている」は「閉じ込められている」である。閉じ込められている文字が、「自由に動き、互いに連動しあ」う。そして、新しい世界を「織り上げていく」。
 「織り上げる」は、一つの運動のなかにことばを「閉じ込める」、ばらばらだったものをある形に構成するということかもしれない。
 重要なのは、しかし、その織り上げられたものではなく、ことばが「自由に動く」ということである。自立するからこそ、それは「独自の世界」になりうる。
 しかも、

         本から生まれた世界は、ぼくたちが生活するこの世
  界以上に広い。しかも、この世界とは違った原理のもとに存在して
  いる。

 「原理」ということばが出てくる。「独自の原理」をもっているから「独自の世界」になる。「原理」がなければ、それは「世界」ではなく、「でたらめ」になってしまう。
 「原理」とは「法則」である。そして、このとき「法則」とは「運動」のことである。
 たとえば、最初に引用した部分には「とたん」ということばがあった。引用は省略するが、別な部分には「ただちに」ということばがある。どちらも「運動」が接続していることをあらわす。「休憩」はない。休まない運動である。休まない、ということが高柳の動詞の「原理」である。「閉じ込める」「開く」という運動は矛盾しているが、矛盾しているからこそ、即座に「止揚」され、新しい運動へと転換していくのである。

 


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高柳誠『フランチェスカのスカート』(17)

2021-07-23 10:40:53 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

 

高柳誠『フランチェスカのスカート』(17)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「手紙(二)」。

 砂漠を旅するひとから手紙が届く。そこにはそのひとが見た「目新しいこと」が書かれている。ほかに、こういうことも書かれている。

  砂漠を抜けた南の密林地帯には、人間に似た恐ろしく獰猛な動物が
  すんでいるし、一年中素っ裸で密林を歩き回る小さな人たちもいる
  という話だ。できることなら、そういう人たちにも会ってみたい。

 実際には見ていない。聞いただけである。ことばである。
 語りのなかに、もう一つの語りがある。それは最初の語りと同等の「意味/価値」を持っている。つまり、ことばである限り、それは直接的な報告であろうと間接的な報告であろうと(伝聞であろうと)、同じ重さを持つ。
 なぜか。
 読む人にとっては、どちらも自分の知らない「ことば」だからである。それは「事実」ではなく「ことば」であり、「ことば」にされた瞬間に「事実」になる。
 この考え方が、高柳のことばの運動を支えている。

 

 

 

 


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高柳誠『フランチェスカのスカート』(15)

2021-07-21 16:44:24 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

高柳誠『フランチェスカのスカート』(15)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「夢の種」は「一年に数回、空から夢の種が降ってくる」と始まる。雪に似ているが、雪と違ってさまざまな色を持っている。それは壊れやすい。壊れると匂いを発する。そして、

     その夢が美しいかどうかは、匂いが決定しているらしい。つ
  まり、いい匂いの種はいい夢をみせてくれるというのだ。だからと
  いって、つぶさない限りその種の匂いをかぐことはむずかしいのだ
  が…。

 この困難さのなかに詩がある。困難を超えて願っていたものが実現するときの喜びが詩である。
 それはしかし、「だからといって」ということばが象徴するように、「論理」でもある。ことばを書いてきて、そのことばが自立して、論理を展開する瞬間の、ことばのよろこび。ことば自身のよろこびをこそ、高柳が詩と定義しているものかもしれない。
 だから、この詩は不思議な形でおわる。美しい色彩をまきちらし、また匂いと夢をむすびつけて読者を酔わせた後、逆のことを「論理的」に語る。

     翌朝、目覚めてみると、つぶれた夢の種の残骸が、泥にまみ
  れてあちこちに固まっている。夢として開かなかった種は、あっと
  いう間に腐って耐えがたい悪臭を放つ。どぶ臭い匂いに耐えながら、
  人々は迷惑そうに夢の滓を片づけ始める。

 美しいもの、詩的なもの、あるいは絶対的なものがあるとすれば、それは「現実」ではなく、「論理」である。ことばの自立した運動、その自律性こそが高柳の信じる「絶対」である。

 

 

 

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高柳誠『フランチェスカのスカート』(18)

2021-07-12 10:54:28 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

高柳誠『フランチェスカのスカート』(15)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「時の糸」。「時の流れ」は「意識の流れ」。これは高柳の詩に共通する性質のように思える。「意識」は「想像」でもあり「理想」でもある。想像と理想が同じものであることは、ふたつのことばがともに「想」という文字を抱え込んでいるところからもわかる。

                  理想的な時の糸を常に選択して
  いけば、ひょっとして時の糸の方で勝手にこちらを選択してくれる
  ことがないとも限らない。

 「選択する」という動詞が「選択してくれる(選択される)」にかわる。人間(自分)が時を「選択する」と、時が人間(自分)を「選択してくれる」というのは、能動から受動への「文体」の変化だが、「文体」を能動にととのえなおすと、時が人間(自分)を「選択する」になる。
 これは何を意味するか。
 高柳は、実は、書かなくていいことを書く。「余剰」を書く。「余剰/書かなくていいこと」というのは言い過ぎだが、なんといえばいいのか、ひとつのことを裏と表、二重の視点から書くことで世界を「合わせ鏡」のように押し広げ、同時に閉ざすのである。
 「文体」の変化が世界を「完結」させる。
 これはもしかすると「悪い癖」かもしれない。「完結」せずにはいられない、という癖が、時里二郎と共通しているように思う。
 この詩では「選択する/選択される」という「完結」を破壊し、解放するために(作品の中につかわれていることばで言えば「寸断する」ために)、「時の糸」に「矢」が放たれる。糸に矢があたり音が鳴り響く。それが音楽になると展開するが……。

               長い糸から発せられる音楽は、あまり
  にも周波数が低いため人の耳には聴き取れない。それでもその音楽
  は、心の奥底にそれと知れずに忍び入って、ひそかにその人の運命
  と共鳴する。

 しかし、その「寸断」は「時=運命」ということばで、再び完結する。
 「ことばの肉体」にしみついてしまった癖(思想)というのは、なかなか振り切ることがむずかしい。

 

 

 

 

 

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高柳誠『フランチェスカのスカート』(14)

2021-07-11 10:31:09 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

 

高柳誠『フランチェスカのスカート』(14)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「泉」。町を潤す水脈。その水は甘い。

  人々は、星降る丘に降りそそぐ流星の成分が地中深くに溶けこむか
  らこそ、泉は星空のように甘いのだと考えている。また、水の音楽
  自体も、もとは満天の星たちが奏でていたものの残響だともいう。

 これは、美しい。しかし、このままでは美しすぎて、なにかはかない感じがする。それを高柳は、こう変えていく。

  一方、地下に眠る死者の記憶を透過することこそ、甘さの原因だと
  信じる人々もいる。結晶化した記憶の成分を含むからこそ、この水
  を飲み続けると、死者固有の記憶がしだいに体内に降り積もって、
  生きている人のなかで確かな経験に析出してくるのだし、水の音楽
  も死者が地中でうたう歌のひそかな反響にほかならないというのだ。

 「透過する」「結晶化」という高柳好みのことばが出てくるが、私がなによりも注目するのは書き出しの「一方、」である。
 ある存在を一方向から描く。それを、別の「一方」から見つめなおす。それは「鏡」の文体である。鏡の存在によって、実在と鏡像の間で、実在と虚構からあふれだしてくるものがダンスをする。
 それが高柳の詩なのである。
 一方に夜空の星の音楽がある。それは地上に降り注ぐ。一方、その地中には死者たちの記憶がある。それを人々は飲むことで地上へすくい上げる。これを「降り積もる」ということばで「降りそそぐ」と対照的に描いているも「鏡の文体」である。このとき「鏡」とは星空か、地中か。限定されない。あるいは、ふたつもとが「鏡」になる。そのふたつの「鏡」のあいだで人間が生きる。夜空と地中というふたつの存在を結びつけながら。

 

 

 

 

 


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高柳誠『フランチェスカのスカート』(13)

2021-07-07 00:00:15 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

2021年07月07日(水曜日)

高柳誠『フランチェスカのスカート』(13)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「画家」。

                       ぼくはとりわけ版画
  が好きだ。この世界からあえて色を抜き去り、線の力だけで白と黒
  の世界に還元する。

 「還元する」という動詞のつかい方が独特である。世界はもともとは色がなかったのか。世界には最初から色がある。そうだとすると「還元する」という動詞のつかい方は、間違っていることになる。もし「還元する」という動詞をこのようにつかうことが正しいとするならば、高柳の世界は、線と白と黒だけで構成されていたことになる。
 詩は、こうつづいている。

           なんという魔法だろう。対象となった風景にし
  ろ人物にしろ、色彩を奪われてもなお、いや奪われたからこそ、幻
  想のうちに鮮明な色を得て生き生きとした生命をおびてよみがえる。

 「幻想のうちに鮮明な色を得て生き生きとした生命をおびてよみがえる。」それは「鮮明な色を得て生き生きとした生命をおびて幻想がよみがえる。」ということか。「幻想」正しい世界であり、「現実」は間違っている。
 この認識が「版画」のように反転しているのが高柳の世界か。
 こういうことは、論理的につきつめていくとおもしろくない。いま私が書いたことは、論理的にどこか間違っていないか、という疑問を残したままに放置しておいた方がいいだろう。
 私が注目するのは、「色彩を奪われてもなお、いや奪われたからこそ、」という反語的な繰り返しである。「反語」によって意味を強める。そういう「文体の癖」が高柳にはある。
 「反語」の「反」は「版画」の「版」とは文字が違うが、音は重なる。そして、

          版画には左右が反転するという、印刷と同じ原理
  が働いている。

 とあえて書いているところをみると、「版画」とは「反転画」の省略形のようにも見えてくる。高柳は「反画」と書きたい欲望を抱えているのではないだろうか。
 詩の最後は、

             版からは想像もつかない豊かな世界が、線
  がもつ生命力だけで立ち上がってくる刷り上がりの瞬間は、息がつ
  まるほどドキドキしてしまう。

 と閉じられるのだが、「版からは」ではなく「反からは」と読み直したい衝動に、私は襲われるのである。

 

 

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高柳誠『フランチェスカのスカート』(12)

2021-07-05 09:45:24 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

 

高柳誠『フランチェスカのスカート』(12)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「血を流す木」。幹に傷をつけると赤い樹液を流す。血に見える。その樹液をなめると郷愁を誘う甘みがあり、愁いを忘れることができる。そして記憶を失い、過去を失う。その結果、現在を失い、未来も失う。しかし、

                                                          一度
  飲んで、愁いがきれいさっぱり消えた感覚を味わってしまうと、そ
  の蒼天のような愉悦が忘れられなくなる。かくして、もはや自我な
  どという邪魔ものをもたない人々が、魂の奥底までを見透かせるほ
  ど澄んだ瞳で、樹木の血を求めて叢林のなかをかろやかに浮遊する
  すがたが目撃されるようになった。

 「自我などという邪魔ものをもたない人々」ということばが印象に残る。「自我」は生せ邪魔ものなのか。それは「見透かせない」ものだからである。「澄んだ瞳」の対極にある。不透明。そして、それは「かろやか」「浮遊する」の対極でもある。
 前後するが、要約紹介した部分を引用する。
 愁いが消えてしまうと……、

  それと同じくしておのれの記憶もなくなってしまう。記憶を失うこ
  とは、過去を失うことだ。そして、過去を失うことは、現在を、ひ
  いては未来を失うことにほかならない。

 この畳みかける論理のスピード。「かろやか」というのは、こういうことを指す。ことばがかろやかに運動する。「ひいては」ということばが特徴的だが、そのかろやかさは論理のかろやかさなのだ。
 「自我」とは別に、ことばにはことばの「論理」がある。ことばの「論理」は「自我」を無視してかろやかに浮遊する。これは高柳の「理想」なのである。その「証拠」のようなものが「ひいては」ということばのなかに隠れている。「ひいては」のかわりに、その直前につかわれている「それと同じく」、あるいは「そして」でも意味は同じ。しかし、高柳は、ここでは「ひいては」ということばをつかっている。単にことばの重複を避けるというよりも、ここには「論理」を解き放ちたいという欲望のようなものが隠れている。
 それは最初に引用した部分の「かくして」についても言える。論理的結論(因果関係)がことばの運動の自律的/自立的機能を促進する。ことばが自律的/自立的に動くのだから、「自我」はいらない。「自我」があるとことばは自律的/自立的(論理的)に動かなくなる。
 ここに書かれているのは「愁い」の問題ではない。

 


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高柳誠『フランチェスカのスカート』(11)

2021-07-01 15:53:30 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

 

高柳誠『フランチェスカのスカート』(11)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「鏡」。町から鏡が消えた。排斥運動が起きたのだ。
 鏡とは何か。

       おのれの内面のおぞましさを強調して映し出す偽りの道
  具。見る者をたらしこんで、自己愛を肥大させる退嬰への誘惑。左
  右を反転させることで現実への認識力を奪う欺瞞の坩堝。

 高柳好みのことばが一気に書かれている。「内面」「偽り」「反転」。どれがキーワードだろうか。「鏡」以外にも通用することばがキーワードだと考えた方がいいだろう。ほかの何かを書いたときでも「無意識」に出てきてしまう高柳の肉体になってしまっていることば。
 「強調して」の「強調する」ということばがキーワードであると私は読んだ。
 そこにあるものを「強調する」。いままで見過ごされてきたものにスポットをあて、それを増幅させる。
 その結果として、たとえば「退嬰への誘惑」「欺瞞の坩堝」ということばがある。「自己愛を肥大させる」では不十分。「現実への認識力を奪う」では不十分。だから「自己愛を肥大させる退嬰への誘惑」と書き、「現実への認識力を奪う欺瞞の坩堝」と書く。それは比喩か、象徴か。いずれにしろ、過剰なことばの運動である。
 詩は、過剰なことばの運動のことなのである。
 その過剰さは、鏡を排斥したあと、鏡ではないものを鏡にしてしまう、というところまで進む。

        雨上がりの晴れ間、つかの間できた水たまりについう
  っかりおのれのすがたを映し出してみない人など、一人としている
  わけもないのだ。

 それは「偽りの鏡」(偽物の鏡)であり、「反転した認識」であることによって、意識(内面)がつくりだししてしまう「現実」、ということができる。

 

 

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高柳誠『フランチェスカのスカート』(8)

2021-06-16 09:41:32 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

 

高柳誠『フランチェスカのスカート』(8)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「手紙(一)」。主人公(?)船旅をしている。船旅は慣れることがない、という。その理由は。

  人間が海の上で過ごすこと自体、きっと道理から外れているのだろ
  う。なにしろ四六時中揺れている。足元が定まらないのは、やはり
  自然に反することなのだ。

 「道理から外れている」「自然に反する」ということばに注目した。「道理」と「自然」は同じ。「外れる」と「反する」は同じ。
 そのとき、何が起きるのか。
  
                        まだ見たこともな
  い未知なものに世界は満ちている。

 「見たこともない」ものが「世界」としてあらわれる。「見たこともない」は「道理」が見つかっていないということだろう。「道理」から解放された世界といえるかもしれない。あるいは、「自然」よりも、もっと「自然」なもの。私たちがふつうに「自然」というとき、そこには意識されない「道理」が隠れているが、その「道理」がまだ発見されていない(道理によって支配されていない)世界。それが「未知」というもの。たとえていえば「渾沌」とした世界が、「未知」を隠している。「未生の自然」といえばいいのか。
 それを「ことば」でとらえる。「ことば」で再現する。ちょうど「手紙」を書くように。つまり、「未生の自然(未知なもの)」が、ことばによって「生み出される」。ことばは、そういうものを「生み出す」ためにある。
 その実践例。

  スコールと夜空を焦がす稲妻に、とても立ってはいられない。こち
  らの稲妻は、水平線から立ち上がりたちまち空をかけ昇って、光の
  刃で視界を切り裂く。

 それは、

            命の心配を忘れて見とれるほどの壮絶な美し
  さだった。

 高柳は「道理から外れ」「自然に反する」ものを、ことばで生み出そうとしている。


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高柳誠『フランチェスカのスカート』(7)

2021-06-13 10:43:12 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

 

高柳誠『フランチェスカのスカート』(7)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「記憶の轍」は

  記憶にだけ通行可能の道がある。

 と魅力的なことばで始まる。つづいて、記憶が説明される。

                 記憶はそれ自体で、現実とは異な
  る独自の論理や体系をもっているので、町なかを勝手にうろつかれ
  て人々とやたらに接触するようなことだけは、なんとしても避けな
  ければならない。生硬なままの記憶の切っ先が、人々の日常に次々
  と外傷を生じさせて、生活を瀕死状態にしてしまうからだ。

 記憶と現実と日常。その共存(?)を可能にするために、町には記憶専用の回路がはりめぐらされている。その回路は、

    常に改訂され拡張され続けることを宿命づけられた、記憶その
  ものの秘すべき分類図、系統図だ。そこを伏流水のように純粋記憶
  が行き来する。

 いろいろなことばを通って、高柳は「純粋」ということばをひっぱりだしている。この「純粋」が高柳の求めているすべてである。
 「純粋」は「記憶」と同様、誰もがつかうことばである。だが、どう定義すればいいのか。高柳の定義は、こうである。

          長い年月をかけて個人の刻印を残らずふるい落と
  し、すでにだれのものでもない普遍的な記憶の実体そのものとなっ
  てこそ、この通路を往還できる。

 「純粋」は「普遍的」、つまり「個人の刻印(個別性)」を排除したもの。つまり、抽象である。あるいは、記号である。
 高柳のことばは、ことばの運動というよりも、どこか「記号の運動」という要素があるが、それは運動の「純粋さ」を明確にするための手段である。
 最初に「道」ということばがでてきた。しかし、それは「存在」ではなく、むしろ「運動」をうかびあがらせる装置としての「場」である。「道」が純粋なのではなく、「道」を行き来する記憶の「運動」が純粋なのである。
 この「記憶」を「ことば」と置き直せば、高橋の詩の夢が浮かびあがる。「純粋ことば」が行き来する(純粋に運動する)世界。ことばが自立して、ことば自体のエネルギーで動くとき、そこに出現するのが、詩の世界だ。

 


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