つむじ風

世の中のこと、あれこれ。
見たこと、聞いたこと、思ったこと。

迅雷

2017年04月23日 10時14分25秒 | Review

黒川博行/文春文庫

 2005年5月10日初版、2014年12月10日第10刷。「迅雷」は「封印」の次に発表された作品で、この後に「カウント・プラン」が来るらしい。作風で言えば「封印」を更に精査し培養したような作品になっている。そして稲垣の「わしは疫病神か」71pという台詞があるように、この後の「疫病神」へ続くような予感がある。実に面白い作品だった。
 設定もなかなかありえないことだが、うまくリアリティを醸し出している。この辺が著者の「いかにも今見てきたかのように書く」技術なのだろう。読者は主人公「友永彰一」の立場に最も近く、いやが上にも引き込まれ、一気読みしてしまう。

 ヤクザ嫌いの3人だがやることは極道顔負け、こんなことではいけない、これ以上深入りしてはマズい、等と思いながらも「優柔不断」ということではなく、引き込まれてしまう情けなさが辛い。それは、生きていくためであり「真っ当」に対する反感でもある。裸の自分、全てを受け入れてくれる仲間、しかし、それは最低のそれ以下は有り得ない、出来れば縁を切りたい、全てを投げ出して逃げ出したいと思うほど哀しい仲間である。緋野組と激突するなかで、徐々に消耗していく3人の若者たちの姿が痛々しい。ただ、なぜ「迅雷」というお題なのかはピンと来ないが。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿