前川 裕/光文社文庫
2014年3月20日初版、2016年5月15日第15刷。読み始めて、これは何の話かなぁと。大学の先生の体験談?、大学の講義風景?、なんて思いながら読み進むと、いつの間にか妙な空間に。
確かにミステリーとして面白い。ネタは既に死亡しているにも関わらず年金を受給し続ける年金詐欺?、それともなりすましオレオレ詐欺?、確かに現代はこの小説よりも更に凄まじいミステリーが渦巻いている。何でこんな事が?ということが度々起きるのが現代である。けれども、その詳細や真実は深い闇の中である。こんな風に心象、情景を交えて時間的な経過と共に描くことが出来るのは、やはり小説しかないだろう。立派に「さも今、見てきたかのように」書いているところがすばらしい。
河合園子の家で白骨化した矢島善雄の遺体が仰臥しているのを想像すると、ヒッチコックの「サイコ」を思い出す。主人公が地下室のロッキングチェアで白骨化した母親と話しをしている場面である。あのカメラワークもさることながら「身の気がよだつ」リアリティは決して負けていないだろう。
最後の「矢島善雄は依然として逃亡中である」ことで、読者も主人公と共に河合園子の犯罪に加担しているような気になってしまう「気持ち悪さ」があり、何となく背筋が冷たくなるのは、私だけではないだろう。まあ、暑い夏だからいいけどね。また、全てを知っている河合優(西野 澪)がどんなトラウマを抱えて生きていくことになるのかが、この先何とも恐ろしい。
主流に対する反主流ではないが、ミステリー界では本格派に対する変格派という流れがあるようで、作品数は少ないけれども著者は変格派になりつつあるらしい。いずれ日本のミステリー界に変革をもたらすかもしれない作家である。
書評コミュニティサイト「本が好き!」を運営しております、和氣と申します。
今回レビューを拝読し、ぜひ本が好き!にも書評を投稿していただきたいと思いコメントいたしました。
本が好き!URL: http://www.honzuki.jp/
本が好き!では、書評(レビュー)をサイトに投稿していただくと本がもらえる、献本サービスを行なっております。
献本は書評(レビュー)を1件以上ご投稿いただけると申し込み可能となります。貴ブログの過去のエントリを転載いただいても構いませんので、ご投稿いただければ幸いです。
(そのため、ご登録後すぐは献本サービスのご利用ができませんので、ご登録後にinfo@honzuki.jpまでご連絡いただければ幸いです。)
書評家さんの交流も盛んで、本について語れるサイトとなっております。
ご自身の書評サイトと併用で利用されている方も多いです。
(弊サイトの書評掲載画面に、貴ブログへのリンクを貼ることができます。)
よろしければ一度サイトをご覧いただけますと幸いです。
不明な点などありましたらお気軽にご連絡ください。(info@honzuki.jp)
どうぞよろしくお願いいたします。
サイトを拝見しましたが、格調が高すぎて、私の書評ではとてもとても、という感じです。せっかくお声を掛けていただきましたが、恥ずかしいやら、恐縮するやらで、気後れしております。投稿の勇気が湧いてくるまで時間が掛かりそうですが、努力します。
今後とも「本が好き!」が益々繁盛し、行く末は「本が好き!大賞」でも創設できるといいですね。頑張ってください。