黒川博行/新潮社文庫
2000年2月1日初版、2007年1月25日第8刷。シリーズで言えば「疫病神シリーズ」の最初の作品で、以降に5冊ほど続きがある。初期の「海の稜線」から「封印」「カウント・プラン」の次あたりの作品になる。本領発揮というかノリに乗った感のある黒川節炸裂作品だと思う。
かつて父親が幹部をしていたことで、切れそうで切れない組との関係、主人公(二宮啓之)は苦虫を噛みながら仕方なく付き合うが、出来れば遠慮したいのが本音。しかし、組の方(桑原保彦)でもカネの匂いを嗅ぎ付けてやってくる。いや、「疫病神」に取り付かれたのかもしれない。
互いに相手をとんだ「疫病神」だと思いながらも、互いの得意技を生かしながら、協力しあって問題の解決に当たるというストーリー。しかし、相互に信頼しあった協力関係というわけではない。
矛盾する信頼と不信の交錯する、何ともバランスの悪い、しかも相互に不可欠な関係が崩れそうで崩れない。そんなところにあからさまな人間味があふれているように思う。
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