―居眠り磐音(7)―
佐伯泰英/文春文庫
2019年5月10日初版。今回も「紅葉狩り」「鶴吉の敵討ち」「米沢藩士の苦悩」「不良浪人達との争い」相変わらず付け狙って来る「血覚上人一派」と忙しい。
お題の「狐火ノ社」は磐音が何かと世話になっている今津屋の年中行事としてお稲荷さんに参詣する話なのだが、江戸中央から出掛ける「お稲荷さん」には「王子稲荷神社」と「王子稲荷大明神」がある。作品の中ではこの二つが混乱しているようで、荒川鎮撫では「王子稲荷大明神」荒川区東尾久で、話の筋としては「王子稲荷神社」北区岸町のような気もしてくる。区は異なるが、この二つは徒歩で行けるくらいの距離なので、何とも紛らわしい。
「王子」といえば、王子~上中里は「浅見光彦」の自宅があるところ。「飛鳥山」「滝野川」「西ヶ原」は度々登場するところである。その王子駅の少し北側(北区岸町)に「王子稲荷神社」がある。
おこんさんが勾引されて危かったが、「天網恢恢疎にして漏らさず」で、罰当たりの根尾勘右衛門は雷に打たれて死亡した。「雷神は稲荷信仰の基底にある」とも言われているので、それを意識した話の作りだったのかもしれない。