つむじ風

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八号古墳に消えて

2022年12月31日 16時55分51秒 | Review

黒川博行/角川文庫

 2021年10月25日初版(2004年1月、創元推理文庫から)。
久々の黒川作品。今回は狭い考古学界に渦巻く魑魅魍魎に立ち向かう刑事コンビの話しである。相変わらずのボケとツッコミ。しかし亀田刑事の創造的な分析力には鋭いものがある。そしてそれを怒りながらも「聞く耳を持つ」相棒の黒木刑事がまた素晴らしい。シリーズとしては四作目だが、「黒マメコンビ」はこの作で最後になっているらしい。肩の凝らない「ボケとツッコミ」も楽しいが、せっかく徐々に存在感を増してきた「黒マメコンビ」なのに、残念なことだ。

 313p「冷徹、傲岸、狡猾、狭量、そして執拗」これが学者の本性かと思えばゾッとするが、別に学者の世界に限ったことでは無い。どんな組織にも、どんな社会にも潜在する人間の「持病」のようなものだ。そこに「博愛、謙虚、公明、寛大そして穏便」も併存するから面白い。喜怒哀楽である。

 黒川作品の中に古墳が出てくるのはとても珍しいように思う。古墳を背景にした作品が多いのは、やはり「浅見光彦シリーズ」ではないだろうか。今回の「八号古墳に消えて」にも登場する「306p古事記」や「111p箸墓」の話は、作品とは別に私の中では既に定着したイメージとなっている。そんな話が作品の中でどう料理されるかもまた興味深いところだ。



 



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