つむじ風

世の中のこと、あれこれ。
見たこと、聞いたこと、思ったこと。

雲の階段(下)

2013年05月22日 12時34分55秒 | Review

渡辺 淳一/講談社文庫

 当文庫に「上巻」が無かったので、最初から通読することが出来なかったのが残念な所だけど、既にTVドラマで放送していることもあり、「下巻」だけで良しとしよう。

 この小説はミステリーでもあり、サスペンスでもあり、ホラーでもあるような、、。妙な作品です。主人公は相川三郎、離島の診療所で所長の村木の補助をしているうちに外科手術のテクニックを修得。必要に迫られて(必要な勉強もしたが)、手先が器用ということもあり、下手な医者より余程上手く外科手術が出来るようになってしまったことが、その後の主人公の人生を大きく狂わせる。いわば、「雲の階段」を登るきっかけとなる。

 相川三郎は、善人にもなれず、その努力もしない、かと言って悪人にも成り切れない。目の前に起こったことだけを条件反射のように反応し、その場しのぎをを続ける人間で、自分が主体的に目標を持って行動することがない「空っぽ人間」として描かれている。
 なんとなくいつも煮え切らない、場当たり人生。「偽医者」は例えの話しであろうけれども、優柔不断な自分に苛立ちを感じながらも、そうして生きていることに対する不甲斐なさ、情けなさ、腹立たしさといったものが不安となって現代人に「望んでもいない共感」を生んでいるのかも知れない。

 この小説は1982年単行本で発刊され、1985年には文庫本も発刊された。2013年3月、新装されたものが本書である。30年前の小説とは思えない新鮮さを覚える作品だった。偽医者の話は昨今も時々聞くが、30年前はどうだったか、我ながら定かでないけれども、折しも今、TVで放送中のドラマの原作だ。何でもこの小説のドラマ化は今回で3度目なのだとか、原作を読んで楽しみドラマの出来映えに注目しながらまた楽しむ。何と贅沢なことか。

 意味深なエンディング。思い切って脱出する、すべてが嫌になり逃避を決め込む、今度こそ自分の人生をと再出発する、そんな希望とも絶望とも取れるような日本からの脱出である。主人公と周辺の人々のその後は読者の想像に任せられるのか。それとも、実はあっと驚く展開が待っているのか、是非知りたいものだ。

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はんかくさい

2013年05月20日 10時51分58秒 | Weblog

 先頃の「日本維新の会」はどうかしている。まるで「日本維新の怪」といった按配だ。
1日、橋下徹、沖縄を視察。この時、米軍基地の司令官との話しに端を発するらしい。

13日、記者会見で、米軍司令官と交わした話しを説明。この中に「風俗業の活用を提案」したこと、及び「旧日本軍の従軍慰安婦制度について「必要なのは誰だってわかる」という発言」があった。橋下徹は一体何しに沖縄の米軍基地へ行ったのかな?まさか大阪風俗業の営業じゃないよね。

14日、橋下徹は、「(記事は)比較的正確に引用してくれていた」「フェアに出している」などとツイッターに書き込み、毎日新聞が掲載した一問一答について「ある意味全て」と評価していたのだが。

16日、在日米軍に風俗業の活用を提案したことについて、「国も価値観も違う他国への話の仕方として不適切だった。僕に国際感覚がなかった」と話し、表現が不適切だったことを認めた。一方で、「風俗業を活用すべきだ」とする主張自体は撤回せず、従軍慰安婦を巡る一連の発言についても問題はないとの考えを示した。

 橋下君、君はいつから風俗業の斡旋屋になったのかね。それをわざわざ在日米軍に進言するなんて。いや、それはオフレコの冗談なんだろう。何、本気だった!信じられん!?マジかよ。「国際感覚」が乏しい以前の問題だねこれは。「従軍慰安婦を巡る一連の発言」についてもいつまでも懲りないね君も。まあ、お笑いタレントだからね、仕方ないか。こんなのが政党の代表になったり市長になったりする訳だからタマランね日本は。一体どうなっちゃってるの!?

16日、米国務省のサキ報道官は記者会見で、日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)の従軍慰安婦に関する発言について「言語道断で侮辱的なものだ」と非難した。

17日、14日のツイッターによるメディア評価はコロッと忘れて、今度は慌てて従軍慰安婦制度が「当時は必要だった」とする自らの発言を巡り、メディアの報道を「大誤報をやられた」と批判。散々メディアを利用してきた張本人なのに、自分の不始末をメディアの性に。「正式な記者会見以外の取材を今後拒否する」のだとか。

17日、続いて今度は「日本維新の会」の西村真悟衆院議員が「日本には韓国人の売春婦がうようよいる」と党代議士会で公言。「発言は橋下氏を擁護する意図」があったと言われるが、離党届と会派離脱届を提出するはめに。結局、「離党届と会派離脱届」では済まず、除籍処分とする方向に。このお調子者は後日「少々(?)不穏当だった」と反省するも、早晩、議員を辞職することになるだろう。

17日、共闘する「みんなの党」は記者会見で維新との政策協議を凍結する意向を示し「凍結解除されない場合、選挙協力はご破算になる」と発言。維新候補への対抗馬擁立を検討する考えまで示した。まあ、こんなイカレた連中と共闘すること自体がおかしいのだけど。

17日、またもや独りよがりの暴走老人「日本維新の会」の石原慎太郎共同代表は、つい先頃、橋下徹の「従軍慰安婦を巡る一連の発言」について「そんなに間違ったことは言っていない」と擁護していたが、今度は先の大戦の旧日本軍の行為について「侵略じゃない。あの戦争が侵略だと規定することは自虐でしかない。歴史に関しての無知」と語り、(戦争に負けたことで)仕方なく「侵略」とした橋下徹共同代表の見解を否定する始末だ。

 誤解されては困る。ここで言う橋下徹の「日本維新の会」、西村 真悟の「日本維新の会」、石原慎太郎の「日本維新の会」は、皆それぞれあたかも別の会派のような印象だが、実は皆同じ「日本維新の会」のことなのだから驚く。同会重鎮の平沼さんのコメントは無いのか。これが日本の新しい保守の姿なの?、ホントにお粗末だねぇ。私の田舎ではこういうのを「はんかくさい」と言うんですよ。

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Chain of Violence

2013年05月19日 10時47分54秒 | Review

―ゴルゴ13―
さいとう・たかを/小学館

 さいとう・プロは健在なり。収録は以下の4編。
 ・ラストジハード(最後の聖戦)
 ・スナイパーストリート
 ・スティンガー
 ・正義を行う者ジュスチセイロス

 いろいろな社会問題を背景にして「さいとう・プロ」が書き起こす超ロングセラーがゴルゴ13。おすらく日本において知らない人は居ないであろうと思われるシリーズだ。コミックとは言え、ストーリーの企画は充分調査され、また検討される。そのため、あくまでも作風はノンフィクションに近いリアルさがある。世界に貧困と差別がある限り、ゴルゴ13は延々と続くのかもしれない。いろいろな問題に対してゴルゴ13にご登場いただき解決するというのは漫画世界独自の考え方だが、ゴルゴ13には倫理観もなければ政治思想もない。ただ、引き受けた仕事を黙々と、しかも完璧にこなすのみである。

 只、そこにはゴルゴ13独自の判断がある。その判断は神の如く冷静で、いかなる情緒にも流されることはない。それが、裏切られ貶められ、利用された時は依頼主さえ命がない。ゴルゴ13はスナイパーであり殺し屋である。その意味で悪の権化なのだが、時として正義にも等しく味方する。それがゴルゴ13をゲリラや過激派とは違う孤高の人にさせている。

 もし、ゴルゴ13が勧善懲悪のヒーローであったなら、ここまで続きはしなかっただろう。悪はしぶとく生き延びるものだ。何時読んでも肩も凝らずに一気読みできるのがいいね。

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ダイナー

2013年05月17日 21時20分09秒 | Review

-Diner-
平山 夢明/ポプラ文庫

 ダイナー/Dinerは歴とした小説だが、通常小説とはちょっと異なる。同じような場面を描いたとしても、平山 夢明の表現とは異なるだろう。その違いは「ホラー」な点だと思う。「ダイナー」を読んで、なんとなく気色が悪いなぁと思っていたが、これが平山 夢明の小説の真骨頂だった。ダイナーはホラー小説ではないが、その雰囲気は満ち満ちているのだ。

 平山 夢明は日本のホラー小説作家として確固たる立場にあるようで、今や「怖い本、怖い話し、実話怪談モノ」の権威なのだとか。著者は人の「狂気」「恐怖」を描いて当代随一と言われている。そんな作家が書く「ダイナー」は、およそ怖い話しが盛りだくさんと思いがちだが、さにあらず、ごく真面目な且つちょっと不気味な小説なのだ。

 主人公は「オオバ カナコ=大場 加奈子?=大馬鹿な 子(:著者の遊び心)」、物語に出て来る唯一正常な人間である。携帯闇サイトの仕事を安易に引き受けたばかりに、未知の暗黒世界に引き込まれる。舞台はすべてCanteenという「ダイナー」の店内で繰り広げられる。主人公がこの暗黒世界を脱して、以前のまともな常識世界に戻るまでの物語である。次から次に異様な人々が出現し、主人公が以前の常識世界に戻れるとはとても思えなかったのだが。

 どうも著者は「料理」に対してちょっとした確執があるようだ。彼によれば、「料理」というのは、見方によっては非常に残酷で、特に肉料理は凄まじい。ゲテモノ料理の珍味に至ってはその最たるものかもしれない。料理に使う道具もよく見ると恐ろしげなものがたくさんある。しかし、一方ではステーキもバーガーもリキュールもデザートも、料理の仕方によっては人間の欲望を満たす至福の時を作り出すという矛盾をはらんでいる。人は常々矛盾だらけの中で生きていかねばならない、と言いたいのかもしれない。

 著者のねらいは「読者に対してグゥの音も出ないほど徹底的に小説世界に引き摺り込み、窒息するほど楽しませる」ことのようで、例えば「羊たちの沈黙」他の小説が上げられているが、なるほどあのアンソニー・ホプキンスの世界と共通するものがある。著者はこの「ダイナー」で持てる力をすべて使い果たしてしまったとのことで、次の長編が書けなくなってしまったとこぼしているが、確かにこれは力作だ。そして最後、主人公に「人は自分に合った靴を履くべきだと思う。押しつけられた靴でなく、自分で探して納得した靴を。そうすれば驚くほど遠くまで歩くことができる。」のだから、と言わせるあたりは、やはり単なるホラーの域を超えている。

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刺客

2013年05月16日 01時01分44秒 | Review

-密命・斬月剣〈巻之四〉-
佐伯 泰英/祥伝社文庫

 水木さんの「ほんまにオレはアホやろか」から始まってこれが丁度100冊目。90冊を越えてから、100冊目がどんな本になるのかと気になっていたが、佐伯さんの長編時代小説になるとは思わなかった。前回の「御暇」に続く2冊目になる。

 主人公は仙石十四郎(=金杉惣三郎)は大岡越前の密命を受けて京都で起こったある事件を調査することになった。京都で金杉惣三郎を待ち受けていたのは刺客であった。京都から江戸へ戻る途中に次々と現れる7人の刺客。まあ直心影流「寒月霞斬り」の冴えること。刺客を四苦八苦しながらもバッタバッタと倒してゆく。最後はその刺客を差し向けた主犯格と対決する。これがまた妖怪のように変幻自在で遂に苦境に立たされるが、天が味方して何とか生き残ることが出来た。

 そもそもは徳川御三家(尾張、紀伊、水戸)の世継ぎ問題で、勝った紀州の吉宗と負けた尾張の宗春の争いを時代背景にする。7人の刺客は将軍吉宗を狙う宗春の陰謀であり、金杉惣三郎は時の幕府(吉宗)の隠密である。昔、「隠密剣士」なんて時代劇ドラマがあったが、或いは「柳生十兵衛」なども同様の時代背景かと思う。ただ、主人公は「隠密剣士」や「十兵衛」のように絵に描いたような格好良しではない。

 最終章、疲れ切った惣三郎はやっとの思いで何とか家族の元に帰ってきた。この辺を読んでいると何だか現代の企業戦士(サラリーマン)のようで、つらいものがあるね。佐伯さんも苦労人だからねぇ。

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ヘイトスピーチ

2013年05月12日 13時35分30秒 | Weblog

 新大久保と言えば韓流の先端を行く街。私は行ったことは無いが、神戸や大阪など日本各地にある中でも代表的なコリアンタウンだろう。最近そんな街で「~を殺せ、叩き出せ、死ね」などと公然と放言しながらデモすること(ヘイトスピーチデモ)が行われているらしい。Youtubeの動画を見たとき、どこの国の出来事かと思ったが、何とそれは首都東京新大久保のことだった。その悪口雑言は、恥ずかしくもあり何の威厳もなくただただ下品で異様であった。

 このように排他的、排斥的な「人種、宗教、性に対する偏見や差別」を根底にした「憎しみ,嫌悪」をヘイト(Hate)と言い、公然と「~を殺せ、叩き出せ、死ね」などと言い放つことを「ヘイトスピーチ」と言っている。この種のデモは近年見たことが無かったが、何故今この時期になのだろうか。やはり、北方領土、尖閣諸島、竹島といった領土の問題が根底にあるのだろうか。

 報道によれば、デモ主催者は 桜井(高田)誠が会長を務める在特会(=在日特権を許さない市民の会)という排外主義組織の呼びかけによるものらしい。誰も相手にしないちょっとイカれた在特会だが、このNet時代にあって「ヘイトスピーチデモ」によってその過激さがYoutubeなどによって拡散し「類は友を呼び」、最近急速に組織拡大を図ることができたらしい。排外主義、或いはレイシスト(人種差別主義者)集団はどの国にも居る。ドイツのネオナチもアメリカの白人至上主義者も同じようなものだろう。共通して言えることは貧しいが故に無教養で狭量なことだ。

 在特会はそもそも首尾一貫した思想も特にある訳でなく、ただの目立ちたがりで今までの主な活動も「デモ」だけであった。ここで急拡大した組織を維持するために、更に過激な「目立ち」をしようと調子に乗っているにすぎないのだが。一人ではとても言えないが「みんなで渡れば怖くない」方式のデモによって過激な言葉も口に出来るということか。一方で日本の多くの企業がグローバル化し、軸足を海外に移しているという現状があるのだが、ただ彼らは外国人と一緒に仕事をしたこともなく、外国で仕事をしたこともない。外国に行ったことすらないのかもしれない。

 在特会の信者たちは社会の鬱積、閉塞感、不安感から何とか逃れようともがき苦しみ、低賃金で朝から晩までコキ使われて、孤軍奮闘も疲れ果てやり場のないストレスをかかえながら生きている、そんな人達のストレス解消の一端になっているような気もする。最近、在特会のような排外主義者には良識あるカウンターデモが対抗し、レイシスト(=人種差別主義者)には「レイスストしばき隊」があらわれた。ただ、右翼が極右に、左翼が極左になってしまっては本末転倒、常に立ち位置を確認し己の行動に陶酔、埋没せぬようにしたいものだ。そうすれば「日本もまんざら捨てたものではないな」と、少なからずホッとするのだが。

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主権回復の日

2013年05月05日 09時45分32秒 | Weblog

 去る4月28日、東京都千代田区の憲政記念館で政府主催の「主権回復の日」記念式典があった。だから何?ということだが、通常の式典とは異なり、かなり異様な雰囲気だったようだ。その様子はおよそYoutobeで確認できる。今回の式典で陛下の「お言葉」は無かった。式典の終了の際、両陛下が椅子から立ちあがり退場しようとしたとき、会場の何処からか「天皇陛下万歳」の声が、、。そして、場内は思わず三唱してしまった・・・。沖縄県の高良倉吉副知事も思わず手が、、。場の空気を読めないどこぞの惚けた知事が上げた声だったのだろうか。それとも綿密な計画のもとに動員されたサクラが居たのだろうか。両陛下は立ち去ることも出来ず、万歳三唱が終わるまでじっとこらえていたのが印象的だった。安倍晋三が描く「美しい日本」とは、こんな安物の欺瞞に満ちたものなのか。図らずも「美しい日本」の裏側が露呈した茶番劇だった。

 そして、我らが国営放送は例によって「天皇陛下万歳」の出だしをカットして放送、しかし、ノーカットのこの様子はあっという間にYoutobeで世界中に、、。中国、韓国は言うに及ばず近隣諸国はさぞかし眉をひそめただろう。この式典は政府が、というより安倍晋三が企画したようなものである。というのは、(国民の総意ではないことは確かなのだが)安倍晋三以外に誰がこの式典開催に賛成しているのか判らないからである。

 左側の方々は、「米軍基地を押し付けられ、いまなお半植民地状態に置かれる沖縄への配慮を欠いている。沖縄を切り捨てて何が “主権回復”か」と。
 右側の方々は、「沖縄の人々の思いをないがしろにして主権回復はない。北方領土も返還されていない。対米追従で主権回復というのはおかしい」と言っている。

 同じ右側でもこの式典出席に日章旗を振り、会場入りする天皇皇后両陛下を万歳で迎えた連中がいる。彼らは、「終戦の日、大挙して靖国神社を訪れる伝統的な愛国者たちとは一線を画す」らしい。チャンネル桜(日本文化チャンネル桜)の連中だ。

 同日、式典会場のすぐ近くの日比谷公会堂で「国民集会」というものがあった。右派論客や自民党衆参議員らが出席している。赤池誠章、小池百合子、宇都隆史、高市早苗、山谷えり子、西田昌司は自民党の議員。平沼赳夫、西村眞悟は日本維新の会の議員、他、西岡 力、井尻千男、田母神俊雄などが講演したようで、話の内容を聞いていると、どうも「チャンネル桜」の連中と変わらない式典開催賛成派だった。顔ぶれからすれば「安倍晋三の取り巻き」であることは明らかなのだが、これが只の「集会」なら判る。しかし何故これが「国民集会」なのかが判らない。我田引水も甚だしく「類は友を呼ぶ」異様な集団と化しているように見えた。緊張感のない気心知れた仲間内の不寛容な「集会」である。 ・・・何だ、この人達は・・

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風のなかの櫻香

2013年05月02日 12時15分52秒 | Review

内田 康夫/徳間書店

 内田康夫の作品は「2012/03/04砂冥宮」に続く2冊目で、「風のなかの櫻香」は奈良を舞台にしたミステリー&サスペンスである。作品集「浅見光彦シリーズ」の中の一つになると思うが、何しろ作品が膨大なのでよく判らない。とにかく大ベテランの現役作家であることは間違いない。内田康夫は、西村京太郎、山村美紗とともに、旅情ミステリー作家の代表的人物であり、作中の「浅見光彦シリーズ」は百作以上の及ぶというから、とにかく書きまくっている。他のシリーズやエッセイも合わせると、発表した作品の累計発行部数は1億部を超えるというから凄まじい。

 前回読んだ「砂冥宮」も面白かったが、「風のなかの櫻香」も負けず劣らず面白い作品である。何と言っても「風のなかの櫻香」という爽やかなタイトルがいい。ストーリーにピッタリのネーミングだと思う。更に、前回はそれほど感じなかったが、今回「風のなかの櫻香」を読んで、まるで遷都1300年の奈良を旅しているような雰囲気があり、そこにサスペンスも加わって何とも贅沢な時間を頂戴したような気がしている。弥勒菩薩(半跏思惟像)や阿修羅像も浅見さんと一緒に鑑賞している気分になってくるのだから不思議なものだ。

 著者公認の浅見光彦倶楽部公式サイト「浅見光彦の家」もある。充実した作りで、ファンにとってはミステリー作家らしいなかなか楽しいWeb Siteとなっている。

 http://www.asami-mitsuhiko.co.jp/

 作品の人気ランキングがあるので拝見すると、「砂冥宮」は番外だったが何と「風のなかの櫻香」は第9位に入っているではないか。納得です。残念ながらヒロインランキングの登場は無かったが阿修羅のような「日野西櫻香」も魅力だと思いますがね。子供は番外なのかな。
 他の作品では登場人物として「小説家・内田康夫」が出て来るものもあるらしい。自分で自分を登場させるというのはチャップリンやヒッチコックも使う手だが、まあここまで書けば、ネタも寂しくなるのは無理もないが。

 装丁など。
 この本は2013年1月に発行されたものだが、文庫本より少し縦長で上下2段の段組となっている。形としては問題ないと思うが1つだけ残念というか、悔しいというか、その部分は文字が小さいことだ。目は良い方だったが、この年齢ともなればやはり小さい文字は厳しい。段組してもよいから出来れば文庫本同様の文字サイズでお願いしたい。徳間書店さん、お願いしますよ。

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