飛鳥編 内田康夫/角川文庫
飛鳥編なんていうことだから「旅と歴史」からすると古墳の飛鳥時代に関係のある話しの背景かと期待する。ところが本を開いてみると飛鳥デッキプランなるものが?、何で船が関係あるの?と。ここでハタと思い出した。数年前に横浜の桟橋で見かけた船は確か「飛鳥」だったような。そうか、古墳ではなくてこの船中が舞台の話しなのだと納得する。そんなに有名な船ならば、もっと格好よく撮っておけばよかったと反省しきり。大きな船と言ったらクイーンエリザベス号と氷川丸しか知らないものだから、、、。この時(2012/11/02)の船は「飛鳥Ⅱ」でした。
(CASIO EX-P700で撮影)
さて、話しはいきなり貧乏な浅見さんが豪華客船「飛鳥」のクルージングを取材するということでスターとする。勿論、費用面は影のスポンサーが払ってくれるので心配することはない。しかし、そんなことで取材費が出るはずも無く、そこには何かしら魂胆が。浅見さんが飛鳥に乗船するとすぐに「貴賓室の怪人に気をつけろ」という伝言が届く。
ところが、このメッセージは最後まで解決することなく終わってしまう。世界一周の船旅も始まったばかり、理由は「続編」でということらしい。今まで読んだ「旅と歴史」の旅情ミステリーとはちょっと違った背景で描かれている。この手の作品はトラベルミステリーということになるようで、豪華な船旅気分満載であることは確かだが、「旅と歴史」を期待する読者にとってはちょっと当てが外れる。 それにしても、登場人物の多いこと。この辺は内田さんも苦労したに違いない。
当初(13冊目まで)旅情ミステリーを書いてきたが、その後コロッと作風が変わる。本人曰く、これもまた作家自身の一面なのだとか。つまり、作品は確かに作家の一面を表出するが、それが作家自身の全てを表している訳ではない。もっと言えば、出来上がった作品は(作家と無縁とまでは言わないが)「確固たる自己主張」を始める。作家とは刹那的な関係はあったかもしれないが、完成と同時に独立した「個」になってしまう。作家は生みの親であることは確かだが、二十歳になった子供が親権を離れるように、作品もまた(作家の人格に関係なく)一人歩きしてしまうのかもしれない。
もし、作家が過去の作品にあまりにも拘るとしたら、確かに新しい作風は望めない。それは親馬鹿のようなものか。読者は作品に魅力を感じることは確かだが、しかし、そのまま作家の人格の魅力につながるわけではないことを承知しておかなければならないだろう。
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