つむじ風

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手仕事の日本

2022年01月12日 17時25分20秒 | Review

柳 宗悦/講談社学術文庫

 2015年6月10日初版、2020年10月6日第三刷。これまた以前から気になっていた、読んでみたい本の一冊である。著書の後記は1943年正月となっている。何と80年も昔の話である。一種の「文化論」或いは「芸術論」であろうか。「美」とは何か、という一つの見識でもあると思う。それにしても、日本はこうもあまねく隅から隅まで「紙」の文化であり「織」の文化であり「焼」の文化であったのかと思い知る。そして悲しいことだが、伝統文化であっても流行り廃れがあり、時代の流れに抗して真に「美」を維持し続けることの難しさがあった。「美」を見失い細に過ぎて崩れていくのを見るのは忍びないが、復活もあるのだから捨てたものではない。

 著者の持論は「有用であり、健康であり、単純である」中にこそ「手仕事」の真の「美」があるというもの。だからこそ、素朴でありながら力強く、勢いがあり生き生きとしているという。健康であることは無事であり、尋常であるということ。もっとも自然な状態にあること。

 「日々の生活こそ全てのものの中心であり文化の根元」である。そして「生活をより深いものにするためには「美」と結ばれねばならない」という。そしてそれを仲立ちするのが器物であるという。「作品」と言わず「器物」というのは署名の無い実用のモノだからである。

 一見「いろいろな制約、束縛、不自由さ」がありながら、実用であること、用途に敵うこと、必然の要求に応じることで、確かさを受け取ることが出来る。余計なものが削ぎ落された単純で「健康な美しさ以上に、この世に幸福をもたらすものは決してない」と言い切る。

 真の「手仕事」は街の中心から少し離れた「雑貨、荒物、雑器」屋にあるらしい。正常の美、「渋さの美」は単純な姿を離れては存在しないという、今も変わらない「モノの見方」つまり「美」について、改めて教えてくれる一冊だった。





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