つむじ風

世の中のこと、あれこれ。
見たこと、聞いたこと、思ったこと。

フィクション6

2012年02月15日 19時28分33秒 | Review

 その後、読書は更に進む。

 忍びの森 武内 涼/角川ホラー文庫
 この物語は織田信長を倒すことを主軸に展開する伊賀・甲賀忍者同士の戦いの話しである。しかし、話しの大方は龍雁寺における魑魅魍魎との戦いであって、信長との話は時間的な位置づけを明確にするための背景に過ぎない。人の欲望、憎悪、恨みや苦悩など煩悩から生まれた魔物との戦いが凄まじい。魔物達との戦いは3D-CGのようなスペクタクルで、いかにも現代版忍者モノだ。著者は群馬県出身なのだそうだが、何故か伊賀に思い入れがあるようだ。忍者は請けた仕事を忠実に履行する。そのためには非情を常とするのが忍者の宿命、しかし、伊賀の棟梁影正には人を信じる熱い心があるのだ。信長を討つことは出来なかったが、信長配下の甲賀の棟梁山中竹宗を討ち取って分厚い文庫本の最後を結んでいる。

 未亡人肛母 天城 鷹雄/フランス書院文庫
 俗に官能小説と言われる範疇になるのか、話しとしてはふとした切っ掛けからこれ以上先が無いという最終段階まで行き着く話し。この手の小説はたくさんあって、どれも同じような軌跡をたどるところを見ると、人の性的欲望のなれの果ては意外とこんなものなのかも知れないと思う。話しがどうしても同じような繰り返しになって、「飽き」が来てしまうのは官能小説の泣き所だ。

 ぼくと、ぼくらの夏 樋口 有介/文春文庫
 このような小説はなんと言えばいいのだろう。青春モノでもあり、サスペンスでもある。刑事モノでもあるような、、、。主人公の父親は警察の人間だが、あまり目立たないような配置である。主人公はその息子の高校生ということだが、これがまた今流行のプロファイラー顔負けの活躍だ。まあ、その辺が小説なんだけれども、それでも女友達との判っているようで判らない距離感、親子の遠いようで意外に近い距離感が絶妙でおもしろい。サスペンスとしての緊迫感は今一つなのだが、それが話しの中心という訳でもないので(著者のねらいがどの辺にあるのか定かではないが)それもさほど気にならない。

 銀行占拠 木宮 条太郎/幻冬舎文庫
 銀行に勤めたことはないが、「銀行恐喝/清水一行」といい「銀行占拠」といい、どうも銀行業務というのはカネを中心にした汚れ仕事にになるらしい。カネに絡んで限りなくダーティになるのが銀行業ということか。そんなイメージになるのが避けられそうもない。実際これは小説の中だけの話しではない。まあそれはそれとして、時系列で展開するこの小説は最初のうち戸惑いはあるものの、読み進むにつれてはまり込んでしまう。また組織と個人の関係や決してサラリーマン経験者でなければ判らないような思い(恨み)が込められている。主人公古賀と涼子、西山と康子の関係も悪くない。



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