ということで暑い中、昨日は府立で観戦してきました。
事実上のメインイベント、和氣慎吾vsジョナサン・グスマン戦については、
前記事のプレビューめいた記事で、あれこれつべこべと書きましたが、
試合自体は「こういう風にはなってほしくないなあ」と思っていたものがほぼ全て出た、
という感じでした。ざっと感想を。
初回、和氣はジャブ、ワンツーを見せる。グスマンは右から入って左を返す。
その迫力に場内どよめくが、過去の試合映像そのままの攻め口でしかないのも事実。
これに巻き込まれず、お付き合いせずに、外していけば勝機はあるはず。
そう思っていたのですが、対する和氣は、丁寧に足を使って外すことよりも、
これまでの試合同様、当てたい、打ちたいという意識も見える位置取り。
何より数回あったグスマンの強振のあと、動きが逆に小さくなっている。
そして、ガードもいつも通りというか、いつも以上に低い設定、悪く言えばルーズなまま。
それでも初回はヒットはされず終えはしました。しかし立ち上がりから、
和氣がひとつミスしたら、一気に踏み込まれる、攻め込まれる展開になってしまっている。
和氣は、相手が少ない好機で自分を倒せる力を持つ選手である現実に対し、
これまでの試合とは違う作戦、具体的に言えば攻防の配分や、防御態勢の設定を変えて臨む、
という風には見えませんでした。
「防衛線」の設定が見えず、従来通りの引き込み加減のバランスで立ち上がって、
いざ直面したグスマンの強振に、すぐに圧され、萎縮の兆候が見える。
考えていた中で、最悪の目が出た。それが初回終了後の正直な感想でした。
2回、それでも和氣がぎりぎりでも外していくうちに、良い流れができればと思い見ていました。
その状態がバッティングと、その後の追撃で崩されて以降、試合はワンサイドになりましたが。
序盤、相手が打ってくるときは、まず防御を優先して動き、打ち返すのは後回しにして、
とにかく動いて外す、くらいの意識づけが欲しい。攻めはジャブを格好だけ、という感じで充分。
試合前はそんな風に思っていました。
しかし実際の試合を見ると、そこまでのシビアな「防衛線」は設定されていなかったようでした。
もっとも、仮にその意識づけ、設定が和氣にあったとしても、
結局はグスマンがそれを打ち崩していたのかもしれません。
右から左と返す強打、好機に見せる強打と、冷静かつ狡猾な闘い方は、やはり「上手」と見えました。
ダウンを奪ったあとも、ひとしきり打ったかと思えば和氣のダメージを見る場面もあり。
和氣の反撃が少しでも出れば、間合いを変えて追撃の機会を与えず、一息おいて右のダイレクトで倒した
5回のダウンシーンなど、実に冷静な「ハンター」ぶりでした。
2回のバッティングによる切り込み、5回のゴング後の加撃など、感心しない部分も見えました。
6回以降は時に被弾もしていました。
しかし体力を巧みに温存して、圧倒的なリードを前提に、きっちり勝ちに繋げる試合運びは
これまでの試合でも見られた勝ちパターンで、それを手放すようなことはありませんでした。
今後、このパターン、前提を彼に与えない相手と対したときに、彼の真価が問われるときが来るのでしょう。
それはまた別の話になりますが。
試合全体を見返すと、あとはやはり、6回以降ですね。
和氣の奮戦は立派でしたが、同時に、5回終了時で棄権されているべき試合だったのではないか、とも思います。
もちろん、様々な意見があることでしょうが。
闘い方自体に正直言えば不満もありますが、やはりこういう強敵相手との試合に挑んだ
和氣慎吾に対しては、同時に拍手も送りたい気持でもあります。
良い経験にしてほしい、とは、安易に言っていいのかどうかわかりませんが、
世界上位の実力者と闘って感じたものを、もし再起するならば、生かしていってほしい。
そして、これまでのキャリアで実現しなかった、国内での上位対決などを通じて、それを見せてほしいと。
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この試合のあとの井岡一翔に関しては、見事な技巧を披露しての勝利だったと見えました。
感想としては、この磨き上げられた技巧をもって、世界王者に挑んでもらいたい、というに尽きます。
昨年のレベコ連勝により、世界上位の技量は証明されているんですから、そろそろと。
WBAから出たオーダー云々については、実際そうなっていない以上、無意味です。
王者エストラーダが、井岡と闘うことにどのような意義を見出すのか否か、と考えると。
「年末予算」から大盤振る舞いがあるにしても、それでも普通ならドニー・ニエテスの挑戦を受け、
その後はロマゴンを追って、という流れになるのでしょうし。
あと、負傷で休養中ですから、まずは回復してからの話でしょうね。
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日本スーパーウェルター級タイトルマッチは、野中悠樹が安定した技巧を見せ、丸木凌介をポイントアウト。
しかし丸木もコンパクトなワンツーなどで、地道に反撃を続け、健闘しました。
OPBFバンタム級タイトルマッチは、山本隆寛がレックス・ワオを初回ノックアウト。
二度のダウンを奪いフィニッシュしたのですが、それがどちらも驚くほど鋭いタイミングのボディブローによるもの。
カウンター気味に、体を締めるタイミングを外されて打たれたらしいワオ、相当ダメージ深く、なかなか立てず。
なんとか立ち上がったあとに見ると、右足が痙攣していて、片足でケンケンしている状態。
予想外の強烈な結末でした。山本隆寛、短い試合でしたがなかなかの充実ぶり。
そろそろ、益田健太郎との対戦なんか、面白そうです。次は久高寛之に連勝したマーク・ジョン・ヤップらしいですが。
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前座では6回戦、スーパーフライ級で好試合。
井岡弘樹ジムの幾田颯と、広島三栄ジムの井上太陽が終始、打ち合いを繰り広げました。
長身のサウスポー幾田は、体格で圧倒的優位。対する小柄な井上は、スイッチしながら果敢に出る。
遠いところからロングのパンチで圧倒する幾田に、伸び上がるような連打で対抗する井上。
日本、東洋のあと、世界戦までの合間に挟まれた予備カードということもあり、
場内はさほど盛り上がっていませんでしたが、間断なく続く激しい攻防は見ごたえ十分でした。
結果は幾田が3-0で勝利。これで6戦6勝(2KO)。新人王戦には出ない路線の選手だったようです。
井上は全日本新人王決勝で、帝拳の梶颯に敗れて以来の再起戦で苦杯も、またも果敢な好ファイトを見せました。
これは長丁場も辞さず、会場に足を運んだ者に対する、ちょっとしたご褒美といえる試合でした。いいものを見ました(^^)
むしろ意地を見せた後半の頑張りと、グスマンが思ったよりたいしたことないなあと思わせたのが印象的でしたね。
初回のゴングが鳴って、和氣の全く当てる気のないジャブと
相手が踏み込んでくるとつい頭を下げてしまう癖を見た瞬間、負けを覚悟したと言ったら言いすぎでしょうか。
私はTV観戦でしたが、井岡戦で10回のラッシュ時に解説の内藤氏が例の情けない声でレフェリーに向かって「止めろよ~」と叫んでいましたが、
和氣戦の9回くらいでしたか、私も同じように呟いていました。
これからどう頑張っても世界は遠いですね。
井岡選手は終始地味ながらお見事。
相手のロマゴンを思わせる止まらな手数にも落ち着いていました。
連打の中で伸びてくるロングが怖かったですが、
それさえ不用意にもらわなければまず勝てる雰囲気を出していました。
本当に地味ながら(笑)いいボディーを打ちます。
世界戦12勝の人に失礼かもしれませんが、これからに期待します。
和氣VSグスマンは、1Rの時点でこの試合の帰趨がはっきり読み取れるような立ち上がりでした。下馬評ではスピードで和氣が勝ると書かれていましたが、蓋を開けてみれば別にそんな事はないどころか、踏み込みの鋭さ・獰猛さの関係でむしろグスマンの方が上回っているようにすら見え、和氣は彼の凶打をおっかなびっくり危うく避けるので精一杯という状況。バッティングの有無など関係なく、あれでは早々に捕まっていたでしょうね。1RKOも普通にあり得るくらいに。
グスマンはグスマンで、あんな元気に振り回してこれは早期決着狙い、後半になったら急激に落ちると思いましたが案の定。多分コラレスも内山がどうにか凌いで長期戦に持ち込めていれば似たような急失速を見せていたと思います。この失速時に和氣に余力が残っていれば、或いは逆転KOも狙えたかも知れませんが……先手を取るという事の重要性とその困難さ、後手を踏まされた側の逆転の困難さを象徴するような試合展開に思えました。
グスマン、現状では並王者程度の実力が精々に思えます。怪物とは言い難い。リゴンドー・ドネア・クイッグあたりには普通に負け、ウーゴ・ルイスといい勝負出来るかなというくらい。この試合を糧にしてもう一皮剥ければわかりませんが、3回も防衛出来れば大したものでしょう。そして、そのくらいの相手に対して、日本トップクラスの実力者がほぼ何の見せ場もなく惨敗を喫した事実は、日本Sバンタムトップ戦士達にとってはショックでしょうね。実際、岩佐・小國・大竹・石本といった面々、全員グスマンには勝てないと思います。このあたりの階級になると、国内に籠って東洋のなんちゃってランカー叩いたくらいでは世界の舞台では通用しないのだという冷酷な現実を、和氣は高い代償支払って自ら証明したと言えそうです。生涯一度のチャンスと己を鼓舞し、棄権を拒んで必死に足掻き続けたその姿からは、リゴンドー戦からの『逃亡』の汚名を返上するに十分な気迫は感じましたが、同時に世界との差の大きさも強く感じた次第です。
それからすると、6R以降はよく頑張っていました。自分は彼が勇者とは思っていなかったのですが、その認識は改めさせられました。今後も応援したくなるファイトでしたが、結果として顔面崩壊しており、ダメージが心配です。
井岡はボディ打ちが良かったですね。しかし彼も27歳、"12時過ぎ"という表現があったような気がしますが、これ以上のレベルは年齢的技術的にも厳しい内容に見えました。すなわちダメージはないものの無用な被弾を結構許していた点。相手は変則で体力がありましたが、ボクシングの技術自体は、本職のボクサーと総合の選手くらいの差があったと思います。となると、あとは如何に高く売るか。プロはビジネスですから、その発想は当然と思いますし、その方向性がファンの目線と少しでも一致すれば良いのですが。
あのダッキングは、相手をしっかり見ずに目線を切っていて、膝も使えていないもので、あれを中南米の選手相手にやると、たいてい狙われて打たれますね。日本、東洋のレベルを相手に、ホームで試合をしていると、レフェリーが手助けしてくれることもあり、相手ともつれてる内に分けてくれるんですけど。なるほど、力量の差が見えた部分だったかもしれませんね。
井岡の試合は、まだTVの映像は見てないんですが、会場で見ていると、相手のパンチに力が無いのを見切った上での試合運びで、巧さをひけらかして遊んでいるように見えました。見事ではあるが退屈でした。この巧さを格下相手でなく、強豪相手に挑む試合で見せてくれたらいいのですがね。
>月庵さん
上記のとおり、井岡は余裕で相手に「やらせて」いる部分も含め、見事な巧さではありました。いただいたコメントや、試合後の報道などを見ると、キービン・ララは部分的にではあっても健闘し、ヒットや攻勢もあったということでしたが、会場で見た印象はそういう風ではなく、井岡が格下相手に余裕を見せ、早く倒してもTV局がいい顔しないことも含めて、敢えて長引かせているのかな、とさえ思い、鼻白む、という感じで見ていました。TKOの場面は場内、けっこう沸いていましたが、私はすぐに席を立って帰りました。同様の行動を取る方もかなりいましたね。
エストラーダ戦については昨年末からそういう構図だったと聞きますね。でも多分、大晦日にはタイの暫定王者と統一戦、という話にすり替わっているのではないでしょうか。エストラーダがもし、いつでも試合が出来る状態にあったら、今回のWBAオーダーが出たかどうか。疑わしく思っています。
和氣に関しては、闘い方自体、彼我の力関係や特性をどう見ていたのかな、という疑問を持ちました。序盤からまともにやり合ってかなう相手ではない、という認識は少なくとも見えなかったですね。もし失点を重ねても、グスマンに手応えを与えず序盤を乗り切れれば、やりようはあると思っていました。まあ実際はそれでも難しかったのでしょうけど。
グスマンの6回以降は、失速半分、あとは安全運転半分だったのでしょうね。ペース配分というほど上等なものかはわかりませんが、圧倒的リードを担保に、常に余裕を持った試合運びではありました。しかしこんな展開が世界上位の強豪相手に作れるとも思えず、現状は仰るようなところでしょうね。
和氣の現状については、小國戦の快勝以降、非常に高い評価を得ている反面、国内上位との対決がまったく組まれない(勝った相手との再戦も、負けた相手への雪辱戦も)ことを奇異に、不満に思っていましたが、今回の試合ぶりからすると、そういうものとはまた違う次元の不足が和氣にはあったかな、と思い直しています。素材としては良いし、強打も秘めているが、思った以上に「部品」が足りていない部分があったかな、と。
>neoさん
あのダックとは呼べない上体折りは、上記したとおり、彼我の技量力量差の表れだったかもしれませんね。外すなら外すで徹底して欲しかったですが、それもならずでした。6回以降は、グスマンも敢えて厳しく詰めなかった感じですかね。少しくらいやられてもすぐ相殺出来るという手応えもあったのでしょう。和氣はそれに乗じた部分もありましたが、限界ははっきり見えていました。むしろ記事にも書いたとおり、あそこからやらせるべきだったかどうかという気もします。
井岡は終始余裕に見えましたが、部分的には打たれていた、という風な試合だったのでしょうか。皆様の見解を見て、じゃあ録画見てみようかなという気になりつつあります(笑)今後の展開については、良い想像と悪い想像の、悪い方がより現実に近かろう、というくらいにしか思っておりません。「ファンの目線との一致」が、そういう方向で実現するのだろう、という...。
和気君は硬い序盤に頭でダメージを負い、また5Rのゴング後の攻撃でも大きなダメージを負い、レフリーの処置が悪い不運はありましたがそれを差し引いても完敗でしたね。あんなに顔面がら空きなのにリードでまともに突き放さず、横に動かず(動けず)、不用意に正面に引き付ける戦い方しか出来ないとは思いませんでした。よく反撃した、と見る向きもありますがその反撃もあの身体が思いっきり開く左ストレートだけでは厳しいですよね。以前韓国の選手にもそれで苦戦したのに何も学ばなかったのか、または今回の試合で出せなかったのかは分かりませんが皆さん仰るように、世界やるにはかなり不足がありましたね。
井岡については勝って当たり前の相手に当たり前に勝っただけ。正直試合運びは手堅く地力はありますがつまらないです。アムナトに負けた後より手の合う相手選びをする傾向が強いため、このままだと彼の技はエストラダレベルだとクローズドスキルに陥るのではないでしょうか。最近試合はつまらない割にコメントや有名人相手のお付き合い等は随分派手になっていて、変わっちゃったなあ、と思いました。
和氣の闘い方については、前記事や本記事にも書いたとおり、基本右回りで、ジャブ、たまに左、ダックと繰り返せれば一番良かったのでしょうが、そんな余裕はなかったですね。ならジャブを格好だけという感じで、まずは外すことに専念してほしかったですが、そういうことでもなく。残念ながらこうなっても仕方ないという印象でした。確かにあの頭と、直後の鋭い追撃はけっこう露骨に酷いなとは思いましたが、あれもまた、常日頃の後楽園ホールのレフェリングに対する慣れが引き起こした事態なのかもしれませんね。
井岡に関しては会場で見ていて、非常に退屈でした。弱い相手に巧さをひけらかして楽しいのかね、という。これで本当にエストラーダとやったとして、確かに長身選手相手のときよりは、力も巧さも発揮出来る相性ではあるかもしれませんが、こんな緩い試合運びを覚えてしまっていては、という気にもなります。まあ十中八九やらないと思いますが。