さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

9年後の敗北

2010-05-01 00:44:03 | 長谷川穂積
9年前、初めて長谷川穂積の試合を直に見た日、彼は敗者としてリングを降りました。
5年前、ところも同じ武道館で、彼は世界チャンピオンになりました。
そして今日、久々に直に見た長谷川穂積は、フェルナンド・モンティエルに敗れました。


9年前の彼については、拙サイトに観戦記を書いたことがあります。
私はその時、才能ある若者が、ボクシングの持つ残酷な宿命に飲み込まれ、その才能を花開かせることなく去ってゆくのだろう、という諦観と、しかし自分の目に焼きついた才能の煌きに心が揺らぎ、どうにも整理のつかない思いを抱いていたものです。

9年後の今日、王国メキシコの軽量級を代表する名手、フェルナンド・モンティエルと相対する長谷川穂積を見て、試合開始直前「信じられんなぁ、ホンマにやるんや...」と思わず呟いてしまった自分がいました。


試合については皆様ご覧のとおりです。
長谷川の右リード&パーリング、そして速く重い左は、モンティエルを苦しめ、その力を封じつつありました。
しかし、序盤、懐に入れず苦しんでいたモンティエルは、右リードと同時に右足をはっきり前に出し、スイッチして体をひねり、パワーをためた左フックを狙い出し、長谷川を脅かしていきます。

4R残り10秒、右リードから左フック、その繰り返し、結果として4連打。
長谷川穂積は完璧に打ち込まれ、己の身体を支えられず、さらなる追撃を受け、試合はこの回残り1秒で終わりました。
ボクシングは誰の目にも止まらぬうちに、取り返しのつかない形で、勝敗、優劣、明暗が切り分けられてしまう闘いです。
これまで、幾多の強者を打ち破ってきた長谷川に、敗北が与えられる姿を、9年ぶりに見ました。


しかし、私の心中に、9年前の諦観、哀しみを見てしまった悲観はありません。
彼がこの9年の間に重ねてきた数々の勝利、それによって打ち立てられた天才の証、慢心することなく成長し続けてきた姿は、たったひとつの敗北によって、無になるような不確かなものではありません。

この敗北をも、さらなる力に変えてさらに飛躍しうる、それが長谷川穂積なのだと。
さらに偉大な王者となって、再び起ち上がってくる、長谷川穂積になら、それを期待しても大丈夫なのだと。
私は、そう信じています。

コメント (13)
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