11月30日、NHK朝のニュースで「イクメンブルー」なる言葉が登場した。イクメンという言葉さえ安っぽく感じるのに「イクメンブルー」とは何じゃらほい。ニュースを見ていたら、夫婦に子供が生まれて「会社の仕事・家事・育児に追われる夫が陥る精神病」のことらしい。
昨日までの日常とは多少違う「環境の変化」に対応できない者が、精神科に相談に行っただけで、何らかの病名を与えられ投薬を受ける。
この番組を見て、そしてこの言葉を聞いて気分が悪くなった。「江戸っ子親父」だと「てめえらで勝手に子供作りゃがって、イクメンブルーたぁ、笑わせてくれるぜ」とか言いそうだ。
番組ではいつものようにアナウンサーが「社会全体で……」と総括しようとした。「社会全体で……」とすると問題意識が希薄になりかねない。夫婦間の問題を社会全体に拡大するから、保育園に落ちた「日本死ね」となるのだ。
「妊娠・出産・家族が増える」という構図は、哺乳類に属する人間が連綿と続けてきた歴史の一部なのだ。「時差ぼけ」とも「カルチャーショック」ともつかないイクメンブルー程度で、天下のNHKがニュースで取り上げるほどのものでもない。また少し前までは「パタニティブルー」などとも呼んでいたらしいが、これもまた嘘っぽさが匂ってくるようだ。
かつて映画『ソルジャーブルー』という話題作もあった。プルシャンブルー・オリエンタルブルーなどは、壮大なロマンを感じさせる言葉だ。「ブルー」という言葉を安っぽく使ってほしくないものだ。