DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

桜玉吉(1961ー)『日々我人間』(2016)第43回:(1)「体」と「自我」、(2)《習慣の束》、(3)老化と体、(4)①《恥の文化》・②優劣意識、(5)《人の常》&受容、(6)諦念

2017-12-11 21:08:18 | 日記
(1)「体」の欲望と「自我」の意志
月イチ位で体が無性に
「酢」を欲する時があり
そういう日は近所のファミレスに
出かけ
About once a month, my body desperately desires "vinegar".
On such a day, I visit a family -restaurant in the neighborhood.

《感想1》
欲するのは「体」であって、桜玉吉氏(自我)でない。
自我は「体」と別だ。
「体」は自我の環境だ。
「体」が欲するので、自我は「体」の指示を受け入れ、ファミレスに出かける。
このとき、自我のうちに、すでに意志が生じ、目的(ファミレスに出かける)が定立された。
《感想1ー2》
欲望するのは、「体」か「自我」か?
桜玉吉氏は「体」が欲望すると言う。
これは正しい。
「自我」は、「体」の欲望に、《従う》と意志することも、《従わない》と意志することもできる。
意志するのは、「体」でなく、「自我」だ。
※一般に、意志を、広義に「欲望」となづけてもよい。
《感想1ー3》
桜玉吉氏は、「体」の欲望と「自我」の意志(広義の欲望)を区別し、かつ「自我」の立場に立つ点で、分析的理性の人だ。
理性は「体」にでなく、「自我」に属する。

(2)《習慣の束》
バルサミコ酢の酢豚と
おかゆを決まって注文する。
I habitually order sweet-and-souer pork with Balsamic vinegar, and porridge.

《感想2》
「決まって」注文するとは、桜玉吉氏の習慣ということだ。
人は、《習慣の束》と言われるから、「酢豚とおかゆを注文する」ことは、この詩人その人自身だ。

(3)老化で体の機能が落ちる
そして、出された濃厚な
酢豚の一口目で必ず派手にムセるのだ。
And I regularly choke with very loud sound just when I eat a piece of very rich sweet-and-souer pork served at the beginning.

《感想3》
桜玉吉氏は1961年生まれだから、この漫画を描いたのが2014年なら、53歳。
老化で、物理化学的機械(構造物)としての体の機能が落ちている。
評者は、桜玉吉氏の、一回り上なので、この状況がよくわかる。
評者もたまに経験する。

(4)①《恥の文化》・②競争意識・優劣意識
とても
恥ずかしいので
次回は気をつけよう
と思うのだが
I am so ashamed of myself that I think I will be careful next time in order not to choke.

《感想4》
人前でムセるとなぜ恥ずかしいのか?
①ムセると大きな音が出て、《変な奴だと周りの人から注目される》ので恥ずかしい。
②《普通の人は、酢豚でムセることはない》ので、自分の体の機能に関し、《普通の人以下だ》と人に知られてしまい恥ずかしい。
《感想4ー2》
桜玉吉氏は、《変な奴だと周りの人から注目される》ことを、恥ずかしいと思う。
彼は《恥の文化》の人で、《罪の文化》の人でない。
《感想4ー3》
自分の体の機能に関し、《普通の人以下だ》と知られるのが恥ずかしいのは、人に競争意識・優劣意識があって、敗北・劣等は不名誉だからだ。
これは、おそらく多くの文化に、共通だ。
敗北・劣等が、賞賛されることは、まずない。

(5)《人の常》&老化の事実を受け入れる
なにしろ月イチの事
なので簡単に忘れ
又同じ事をする。
But, regretfully, I easily forget it because it happens only once a month.
As a result, I fail in the same way again.

《感想5》
月イチの事を忘れるのは、仕方ない。
これは、《人の常》だ。
しかしムセるのは、老化がなせる技(ワザ)だ。
これは切ない。
《感想5ー5》
それと同時に、自分の愚かさ(不注意さ)への赦しの雰囲気が、ここにはある。
再びむせるだろう自分を、許している、
そして老化の事実は、受け入れるしかないと、あきらめている。

(6)《諦念》
多分
来月も
ムセると思う。
I think that I will perhaps choke again next month.

《感想6》
これは、《人の常》と判断し、また自分の老化の事実を受け入れ、自分を赦す桜玉吉氏の《諦念》の言葉だ。
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実現しない幻

2017-12-11 01:09:34 | 日記
淋しさが君を蔽う。Saddness covers you.
逝った者たちが君に会いに来る。The deceased come to meet you.
君の喜び。It’s your pleasure.
君も黄泉の国に行きたい。You also desire to go to the land of the desceased.
生きることは偶然だ。To live is to be accidental.
瞬きの美。It’s a momentary beauty.
実現しない幻。An incomplete illusion.
二人はここにいるのに、決して出会えない。Both of them really exist here, but they can never meet together.
何もかも虚無だ。All things are nothingness.
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