臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

今週の朝日俳壇から(10月14日掲載・其のⅠ)

2013年10月15日 | 今週の朝日俳壇から
[金子兜太選]


(養父市・足立威宏)
〇  身に染みし奴隷根性魯迅の忌

 10月19日は「魯迅忌」である。
 中国の近代文学の父・魯迅は、今から七十七年前の1936年10月19日午前5時25分(日本時間6時25分)、上海にて波乱万丈のその生涯を閉じた。享年56歳。 
 彼の代表的な小説作品である『阿Q正伝』は、彼の同胞たちを「身に染みし奴隷根性」から覚醒させようとして著したものとされている。
 〔返〕  身に染みし徒弟根性菅長官安倍の屁嗅ぎのいつまで続く
  鳥羽省三


(熊谷市・内野修)
〇  富士山に草は張り付きばった跳ぶ

 「跳ぶ」「ばった」はともかくとして、「富士山」に「張り付」いていて離れない「草」も亦、奴隷根性の権化ではありませんか?
 〔返〕  富士山の土に張り付くフジアザミ彼こそ将に奴隷の権化
  鳥羽省三   


(名古屋市・青島ゆみを)
〇  天高し凛と眼科医暗闇に

 天高く馬肥えるの秋、物見遊山に赴く事もせずに、眼科治療室の「暗闇」の中に「凛と」して立ち、「眼科医」としての稼業に勤しむ方も居られましょうか?

 〔返〕  凛として倒像鏡に真向へば美人のまなこが逆さに笑まふ  鳥羽省三  


(吹田市・柏原才子)
〇  空澄みて水澄みてなほ放射能

 吹田市に於ける実在の風景としたら、上五中七の「空澄みて水澄みて」までは納得しますが、下五の「なほ放射能」には納得出来ません。
 〔返〕  空澄みて水澄みてなほ大阪は大気汚染の疑ひの在り  鳥羽省三

 
(南相馬市・吉岡朝雄)
〇  瓦礫山越えて帰燕となりにけり

 あのつばくらめたちは線量計も所持しないで、来春には再び被災地の南相馬市に飛来して子作りに勤しむのでありましょうか?

 〔返〕  つばくらめ瓦礫の里を後にして北の故地へと旅立つならむ  鳥羽省三


(いわき市・坂本玄玄)
〇  福島いま地獄の如し彼岸花

 いくら何でも「福島⇒地獄⇒彼岸花」という連想ゲームは悪趣味に過ぎましょう。
 また「福島=地獄」という決め付け方にもいささかならぬ抵抗感を覚えます。
 〔返〕  福島は美し島いま被災地の丘に美しく彼岸花咲く  鳥羽省三  


(福島市・池田義弘)
〇  許されて防護服着て墓参かな

 「許されて」は、別の言い方をすれば「護られて」ではありませんか?
 それはともかくとして、今年再び「墓参」の機会を得たことは何よりの事と存じ上げます。
 〔返〕  許されて防護服着て墓参り苔生す墓に涙流せり  鳥羽省三


(名古屋市・松末光裕)
〇  新しきフルート妻の良夜かな

 「妻」も「フルート」も新しい方が宜しい、という訳ではありません。
 〔返〕  フルートにピカピカ月の照り映えて風も涼しき夫婦合奏  鳥羽省三


(下関市・内田恒生)
〇  わが頭へくそかづらをすぐ覚ゆ

 認知症が進行中の「わが頭」でも、「屁・糞」の名に負う「へくそかづら」は「すぐ」覚えられる、という訳でありましょうか?
 〔返〕  名にし負ふ屁糞葛の軒を這ひ臭し臭しと湯浴みをばせむ  鳥羽省三 


(長崎市・横山隆)
〇  蟋蟀の一夜こおろぎのコオロギの

 「こおろぎのコオロギの」とは、「鳴いて鳴いて夜通し鳴き止まざる」という訳でありましょうか?
 〔返〕  秋一夜鳴きて止まざる蟋蟀の翅脈ひとひら霜降りぬらむ  鳥羽省三 


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