[馬場あき子選]
○ ランドセル負いたる遺体抱きしめて自衛隊員泥沼の中 (浦安市) 白石美代子
そのような美談が重なってこそ、自衛隊員の方々の存在理由や価値が国民の間に次第に認識されて行くのでありましょう。
だが、こうした事を根拠として、憲法を改悪し、自衛隊員の戦地への派遣、更には参戦を認めて行こう、などと主張する勢力が在りますから、全く油断がならず、私たちもテレビが報道する美談に酔い痴れてばかりは居られません。
〔返〕 マスクもて善意を隠した人たちのニュースがこの頃報道されぬ 鳥羽省三
○ 警戒地の浜を嬉しげに奔りゐる黒牛の群哀しき自由 (高山市) 桐山吾朗
「哀しき自由」という「自由」も確かに存在するような気がします。
しかし、それも亦、増上慢に陥っている私たち人間から見た「自由」であり、「哀しき」であるに違いありませんから、本当のお気持ちは、「黒牛」さんご自身に聞いてみなければ判りません。
先日のテレビ報道によりますと、「警戒地の浜を嬉しげに奔りゐる黒牛」が飼い主によって間も無く捕縛され、そのうちに競りに掛けられる予定とのこと。
この“競り”に掛けられた「牛」が第二、第三の飼い主の間を転々としている間に、「黒牛」の“生産地ロンダリング”が始って、私たち消費者の口に入る頃になると、福島産の「黒牛」が“神戸牛”や“松阪牛”や“飛騨牛”として販売されるかも知れません。
それにしても「哀しき」宿命を背負った「黒牛」である。
〔返〕 代償は自由剥奪福島の黒牛が松阪牛に出世 鳥羽省三
○ ビンラディン殺して狂喜するアメリカ静かに警戒レベル上げる沖縄 (沖縄県) 和田静子
「沖縄」県民が「静かに」「上げる」「警戒レベル」は、元々は“基地受け入れ容認派”であった仲井間現知事に対する「警戒レベル」でなければなりません。
〔返〕 受け入れを突如認めるかも知れぬ自由無碍なる仲井間県知事 鳥羽省三
○ 心配はしなくていいよと電話切る福島に残る意志堅き子は (大和市) 澤田睦子
「福島に残る意志堅き子」は、福島大学の陸上競技部員かも知れません。
〔返〕 監督は川本和久「足の力を伝えるトレーニング」の福大陸上 鳥羽省三
○ ヤマボウシ牧場の空を白く染め七〇頭の牛なき五月 (福島市) 澤 正宏
「ヤマボウシ」が「空を白く染め」る「五月」の福島の「牧場」から見えなくなった「七〇頭」の「牛」たちの前に、これからどんな“生産地ロンダリング絵巻”が展開されるのでありましょうか?
〔返〕 洗っても落ちない心の傷を負い七十頭の牛何処に消えた? 鳥羽省三
○ 葬儀社の店も家族も霊柩車も流されてみなガレキとなりぬ (八戸市) 山村陽一
本作の作者・山村陽一さんが取締役会長を務めている“㈱山村陽一葬儀店”は、この度の東日本大震災の被災地の一つである八戸市に在りますから、本作に詠まれている事柄は、作者ご自身が直接に経験した事実のようにも思われますが、八戸市の“㈱山村陽一葬儀店”のホームページや同葬儀店に関するネット上の記事を閲覧しても、今のところはそういう事実があったようには書かれていませんから、本作に詠まれている出来事は、作者・山村陽一さんの仕事仲間の「葬儀店」で発生したことのようにも思われます。
作中の「ガレキ」となったご「家族」の葬儀を執り行ったのは、“㈱山村陽一葬儀店”でありましょうか?
〔返〕 商圏が拡大されたと喜んで詠んだ短歌と思われません 鳥羽省三
○ 小朱点哀しきまでに鮮らけき天魚売らるる季節となりぬ (舞鶴市) 吉冨憲治
本作の作者・吉冨憲治さんは、お住いのお近くの浜や磯での“海釣り”専門かとばかり思っていたのですが、“渓流釣り”もなさるのでありましようか?
「小朱点哀しきまでに鮮らけき」という詠い出しの新鮮さに感服致しました。
〔返〕 朱点無くアマゴに非ずヤマメなり塩焼きにすればそれでも美味い 鳥羽省三
○ 避難所に媼の三味の音の冴えて「芸は流されませぬ死ぬまでは (岸和田市) 高槻銀子
家財は津波に流されても、「芸は流されませぬ死ぬまでは」ということでありましょうか?
「避難所」での“口説き「媼」”の「三味の音」は、大勢の聴衆を得て、いよいよ「冴え」亘るのでありましょう。
〔返〕 演目は津軽じょんから媼弾く三味線の音のいよいよ冴えて 鳥羽省三
○ 牛飼の友漂泊に身を委ねわが家で夜弾くチゴイネル・ワイゼン (新発田市) 北條祐史
作中の「牛飼の友」が「漂泊に身を委ね」たのは、やはり東日本大震災が原因でありましょうか?
それはともかくとして、道具立てがいささか揃い過ぎたようにも思われます。
〔返〕 牛飼いがヴァイオリン抱いて彷徨ってチゴイネルワイゼン哀しく弾いた 鳥羽省三
○ 漁止めの浜は白魚寄せる頃漁火はるか夢に灯りぬ (塩釜市) 鈴木久雄
俗に流れたような感じがする作品である。
〔返〕 白魚の踊り食いでも食べたいな塩釜漁港にもう一度行き 鳥羽省三
○ ランドセル負いたる遺体抱きしめて自衛隊員泥沼の中 (浦安市) 白石美代子
そのような美談が重なってこそ、自衛隊員の方々の存在理由や価値が国民の間に次第に認識されて行くのでありましょう。
だが、こうした事を根拠として、憲法を改悪し、自衛隊員の戦地への派遣、更には参戦を認めて行こう、などと主張する勢力が在りますから、全く油断がならず、私たちもテレビが報道する美談に酔い痴れてばかりは居られません。
〔返〕 マスクもて善意を隠した人たちのニュースがこの頃報道されぬ 鳥羽省三
○ 警戒地の浜を嬉しげに奔りゐる黒牛の群哀しき自由 (高山市) 桐山吾朗
「哀しき自由」という「自由」も確かに存在するような気がします。
しかし、それも亦、増上慢に陥っている私たち人間から見た「自由」であり、「哀しき」であるに違いありませんから、本当のお気持ちは、「黒牛」さんご自身に聞いてみなければ判りません。
先日のテレビ報道によりますと、「警戒地の浜を嬉しげに奔りゐる黒牛」が飼い主によって間も無く捕縛され、そのうちに競りに掛けられる予定とのこと。
この“競り”に掛けられた「牛」が第二、第三の飼い主の間を転々としている間に、「黒牛」の“生産地ロンダリング”が始って、私たち消費者の口に入る頃になると、福島産の「黒牛」が“神戸牛”や“松阪牛”や“飛騨牛”として販売されるかも知れません。
それにしても「哀しき」宿命を背負った「黒牛」である。
〔返〕 代償は自由剥奪福島の黒牛が松阪牛に出世 鳥羽省三
○ ビンラディン殺して狂喜するアメリカ静かに警戒レベル上げる沖縄 (沖縄県) 和田静子
「沖縄」県民が「静かに」「上げる」「警戒レベル」は、元々は“基地受け入れ容認派”であった仲井間現知事に対する「警戒レベル」でなければなりません。
〔返〕 受け入れを突如認めるかも知れぬ自由無碍なる仲井間県知事 鳥羽省三
○ 心配はしなくていいよと電話切る福島に残る意志堅き子は (大和市) 澤田睦子
「福島に残る意志堅き子」は、福島大学の陸上競技部員かも知れません。
〔返〕 監督は川本和久「足の力を伝えるトレーニング」の福大陸上 鳥羽省三
○ ヤマボウシ牧場の空を白く染め七〇頭の牛なき五月 (福島市) 澤 正宏
「ヤマボウシ」が「空を白く染め」る「五月」の福島の「牧場」から見えなくなった「七〇頭」の「牛」たちの前に、これからどんな“生産地ロンダリング絵巻”が展開されるのでありましょうか?
〔返〕 洗っても落ちない心の傷を負い七十頭の牛何処に消えた? 鳥羽省三
○ 葬儀社の店も家族も霊柩車も流されてみなガレキとなりぬ (八戸市) 山村陽一
本作の作者・山村陽一さんが取締役会長を務めている“㈱山村陽一葬儀店”は、この度の東日本大震災の被災地の一つである八戸市に在りますから、本作に詠まれている事柄は、作者ご自身が直接に経験した事実のようにも思われますが、八戸市の“㈱山村陽一葬儀店”のホームページや同葬儀店に関するネット上の記事を閲覧しても、今のところはそういう事実があったようには書かれていませんから、本作に詠まれている出来事は、作者・山村陽一さんの仕事仲間の「葬儀店」で発生したことのようにも思われます。
作中の「ガレキ」となったご「家族」の葬儀を執り行ったのは、“㈱山村陽一葬儀店”でありましょうか?
〔返〕 商圏が拡大されたと喜んで詠んだ短歌と思われません 鳥羽省三
○ 小朱点哀しきまでに鮮らけき天魚売らるる季節となりぬ (舞鶴市) 吉冨憲治
本作の作者・吉冨憲治さんは、お住いのお近くの浜や磯での“海釣り”専門かとばかり思っていたのですが、“渓流釣り”もなさるのでありましようか?
「小朱点哀しきまでに鮮らけき」という詠い出しの新鮮さに感服致しました。
〔返〕 朱点無くアマゴに非ずヤマメなり塩焼きにすればそれでも美味い 鳥羽省三
○ 避難所に媼の三味の音の冴えて「芸は流されませぬ死ぬまでは (岸和田市) 高槻銀子
家財は津波に流されても、「芸は流されませぬ死ぬまでは」ということでありましょうか?
「避難所」での“口説き「媼」”の「三味の音」は、大勢の聴衆を得て、いよいよ「冴え」亘るのでありましょう。
〔返〕 演目は津軽じょんから媼弾く三味線の音のいよいよ冴えて 鳥羽省三
○ 牛飼の友漂泊に身を委ねわが家で夜弾くチゴイネル・ワイゼン (新発田市) 北條祐史
作中の「牛飼の友」が「漂泊に身を委ね」たのは、やはり東日本大震災が原因でありましょうか?
それはともかくとして、道具立てがいささか揃い過ぎたようにも思われます。
〔返〕 牛飼いがヴァイオリン抱いて彷徨ってチゴイネルワイゼン哀しく弾いた 鳥羽省三
○ 漁止めの浜は白魚寄せる頃漁火はるか夢に灯りぬ (塩釜市) 鈴木久雄
俗に流れたような感じがする作品である。
〔返〕 白魚の踊り食いでも食べたいな塩釜漁港にもう一度行き 鳥羽省三